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蔵出し 壱

    夏のとこは水の匂い

インドのお香
ブラジルの唄
ゆるやかなリズム…
そして、プール熱。

体があつい

今日の朝は目覚めが悪かった。

『 目を閉じて、あおく深く息を吸い込みましょう…』
まぶたの上を虹がかれ
その上を赤い電車が通りすぎる……

その上をあかい電車が通りすぎる……

鼻先がうつなので「 どうしたのかしら 」と、思ったら
わたくしとこの上でした。
水枕みずまくらの水がたぽんたぽんと何度も何度も私の頭になみ返し
『ああ、わたしは熱にうなされているのだ…』
そう気付いた途端とたん
冷凍庫の奥深い、あの独特な水の匂いが
私の鼻孔びこう直往ちょくおう
り切れない思いになやまされる…
何日間かのあいだ
水を見ると鼻先はなさきに残った水臭すいしゅうよみがえ
水がちょせなくなる。
ああ、胃が重いです…
誰かわたくしの為に、
「おかゆをこしらえて下さい……」


 暑がりながらもう一度夏の蒲団ふとんもぐり込む。
蕎麦殻そばがらまくらは足元にきていて
その枕を、左足の親指と人さし指にはさ
カサカサといじくりまわす……。
どういう理由わけか今日は起き上がることができなかった
遠くから誰かがわたしを呼んでいるが
夏蒲団なつぶとんとケットの中からでは、白い膜におおわれて、その声は
遠く閉ざされてしまっている……。

日の当たる公園では子供たちの奇声きせいのざわめきと
ゴムまりを付く音が聞こえます…

向かいの団地から蒲団ふとんを叩く音…
そして、虫籠むしかごの中からギリギリとれる歯痒はがゆ
ふかみどりがもったりと会話している

さおな空
一台の飛行機( この行機こうき何処どこへ行くのでしょう?)

……様様さまざまな擬音が交叉こうさする中
( 体が  あ、つ、い )
その中でわたくしは、もう一度眠りにはいりました……。

もし、目醒めざめた時は
冷えたトマトをグシャグシャになって食べよう。
そのトマトを食べ終えた時
空に打ち上げ花火が花咲満開はなさきまんかい


ベランダしに居るわたくし内股うちももの辺りを
一ピキの蚊・新鮮な血を吸い込む
『ぷくうっ』とふくれ上がったその部分を
時々思い出したようにきながら
私の夏は終わるのです…

 目が覚めたのは
確か16時27分でした……。

水枕の水も微温ぬるみ
わたくしの熱はの中にいます……。

「 さあ、トマトを食べましょう 」
そして今日は花火大会の夜です。
私は眠りすぎた酸素のまわりきらないあたまを2・3振って……
ベランダへと食卓椅子を1つはこぶ
空には、まだ打ち上がらない花火を空に見ながら
この誰にも説明することのできない想像を幾度いくどとなく繰り返す……

「 風鈴がチリリと鳴りましたよ…」

生温なまぬるい風が吹き抜けました。



こんなのが出てきました。
ちょっぴりだけ手を加えて/飛白 魚子
本当は縦のイメージです。笑



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