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90歳の祖父

祖父が体調不良で本日緊急入院することになった。

2年前に下咽頭癌の診断を受けここまで、放射線療法と抗がん剤療法を行い、なんとか癌をとっちめた。

画像検査でも癌は跡形もなく去ったのだ。(癌がGone・・・なんつって)

そんな祖父もこの夏は流石にバテてしまったのか、はたまた癌の再発か。

何度も検査のために鼻腔からカメラの管を突っ込まれるのは、あまりにも辛く目を逸らしてしまいそうになる。

涙目になり、えずく祖父は辛そうだった。

ただ祖父は普段からなかなかのモラハラっぷりなので、泣いてしまうほど同情はしなかった。
(入院と決まって祖母は不謹慎だったが心なしか喜んでいた)

一通り検査を終えて看護師さんが迎えに来てくれるまで、大きな窓がある廊下で祖父と待っていた。
「景色、悪いな」
と咽頭が腫れて声が出しにくいのだろう、しゃがれた聞き取りにくい細い声で、独り言のように話す。
元の声を聞いたのは最後いつだったか、覚えていない。

車椅子に座っている祖父からは見えないだろうが、私の視界には祖父の家が見えていた。

もうすぐお盆が来る。
ナスやキュウリに乗って死者が帰ってくる。

もし祖父があちら側に行って、お盆にナスやキュウリに乗って帰ってくるとしても、ナスやキュウリに文句を言うだろうな。揺れすぎや、とか、乗り心地が悪い、とかなんとか言って。

その日の晩の入院食には、漬物のナスもキュウリも出たらしい。

私と母と叔母と祖母で、この日は久しぶりに外食をした。中華だった。


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