北欧の若者に聞いてみた!~主権者教育・政治意識の実態に関するインタビューから見えたこと~
みなさん、こんにちは!
DAKKOインターン生の遠藤です。
DAKKO note記事の第四弾となる今回は、北欧の主権者教育・若者の政治意識の実態とは?についてのアンケート結果を発表していきます!
アンケート概要
・回答者: エストニア国籍またはフィンランド国籍の、21歳以上34歳以下の若者(大学生・社会人を含む)
・サンプル数: 7名 (男女比3:4)
・方法: Google Formにて、5段階評価・自由記述を含む質問票を作成。英語にて回答。
・アンケートの全質問において、必須項目ではなく自由回答項目とした。アンケート参加は事前に了承を得て行われ、全ての回答は、本記事の執筆・記事公開に関わる事項以外の目的で使用しない旨を事前に伝えた上で、回収された。
質問は、エストニア/フィンランドにおける、若者の政治意識・主権者教育・政治参画や、日本の政治の印象などについての構成にしました。
また目的として、エストニアとフィンランドの若者の意見調査、と設定し、参加者の主観的な意見を含む、若者の意見収集を行いました。
※主権者教育などについての、経験に基づく内容は、当事者が過去に受けたものを解答しているため、現在の内容と異なる場合があります。ご了承ください。
質問と結果
[テーマ1: エストニア・フィンランドの若者の政治意識について]
Q1. あなたにとって、家族や友達を含む身近な人と、政治的な話題について、日常的に話すことは当たり前ですか?
A . はい(とてもそう思う・そう思う)と答えた割合は、85%以上という結果が出ました。
また、国レベルで見ても、政治についての話題を話す人が多いかについて、8割以上は同意、1名に関しては”そうは思わない”、と回答しました。
Q2. では、どんな政治的・社会的な問題が、日常の会話のなかでよく話題に上がりますか?(自由記述)
A . 構造的不平等・パワーダイナミクスの話題。政治腐敗についても、自身のコミュニティではよく話題に上がる。(34歳・エストニア)
A . 地方政治の腐敗やスキャンダル。国際的な事件や戦争。(21歳、エストニア)
A . 現在進行中のニュースをみることが多い。最近では、フィンランドの大統領選挙について。(24歳・フィンランド)
A . 気候変動、中絶の議論 (23歳・フィンランド)
その他、政党の動向や、将来の選挙、高齢者介護、移民、男女の賃金格差、LGBTQ+の権利、といったキーワードが、回答者から出ました。
[テーマ2: 主権者教育について(シティズンシップ教育・民主主義教育を含む)]
Q1. あなたがこれまでに受けた主権者教育について、教えてください。例) カリキュラムや授業内容、どの学年かなど。
A . 高校では、国の歴史や基本的な民法、市民権の特典や責任について学ぶ科目がありました。フィールドワークはなかった。かなり短く、残念ながら少し物足りない内容で、歴史に重点を置いていたが、生徒側では政治的な議論もたくさんあった。(21歳・エストニア)
A . フィンランドでは、自国の民主主義システムを理解するためのトピックを必修科目としていました。議会制度、選挙、市民権、民主主義制度の歴史について学びました。7~11年生(13~17歳頃)に受けました。(23歳・フィンランド)
A . フィンランドでは、社会科(yhteiskuntaoppi)は総合学校(peruskoulu)の4年生から始まり、総合学校の教育が終わるまで続きます。社会科教育では、社会構造、民主主義の原則、市民の権利と責任、経済、歴史、グローバルな問題など、さまざまなトピックを扱います。これらの学習の目的は、生徒に社会の構造や現象に関する基本的な知識を身につけさせるとともに、社会参加と積極的な市民性を養うことです。フィールドワークはなかった。高校(ルキオ)では、生徒は社会科の科目をより多く選択することができ、その結果、6時間の入学試験でその科目を受験することになることが多い。(25歳・フィンランド)
その他、フィンランドのシティズンシップ教育では、EUやアジア/アメリカの政治構造・制度について学んだと言う回答者もいました。これは、自国がEUに加盟しているからこそより重要である、と言えるかもしれません。
Q2. あなたが受けた主権者教育の、良かった点と改善点を教えてください。
[良かった点]
A . 模擬国連のイベントに、学校からの勧めで参加することができ、政治への関心向上と、議論の場への参加の良い入口となっていたと思う。(21歳・エストニア)
A . 諸外国の政治制度についても学ぶことができるので、多様な視点を養うことができる。(24歳・フィンランド)
[改善点]
A . 生徒が教室で、政治について議論する機会も多くある。ただ、歴史に重要性が置かれることが多く、シティズンシップ教育そのものには、あまり触れていなかった。(21歳・エストニア)
A . ヨーロッパの政治を広く扱う科目や、他国の歴史についてもっと学べるカリキュラムが導入されること。(21歳・エストニア)
A . 大抵入門コースのようなものであり、トピックを深く掘り下げることがあまりないこと。(23歳・フィンランド)
[テーマ3:若者の政治参画について]
Q.1 「政治参画」と聞いて、あなたが思い浮かべることは?
A . 選挙 (4人が回答)。イベントを自分で開催する。政治に関わる組織への参加。
署名活動(2名が回答)。デモ抗議への参加。
このほか、日々の消費選択も政治に関わるので、意識している。との回答もありました!
Q.2 あなたの国では、若者が積極的に政治参画する機会は、充分にあると思いますか?
A . 7割の回答者が”はい”(とてもそう思う・そう思う)と答えた一方で、約3割の回答者は”どちらでもない(21歳・エストニア)・そう思わない(24歳・フィンランド)” と回答しました。
Q2では、年齢・国籍による偏りは見られませんでした。
Q.3 これまでに、あなた自身が経験した「政治参画」について教えてください。(経験がない方は、政治参画に関わるアクションを将来起こしたいと思うか教えてください。)
A . 選挙に投票にいく。(24歳・26歳・フィンランド)
A .家の近くの森林伐採に反対する署名活動に参加した。(25歳・フィンランド)
A . 自然保護と気候危機に関する署名活動に参加した。また、選挙に投票するチャンスがあるときは、これまでに欠かすことなく投票している。(24歳・フィンランド)
A . “Fridays For Future”のデモ活動に参加した。まだ、これといって政治参画のアクションを起こしていないので、将来的にもっと関わりたいと思う。(21歳・エストニア)
選挙への投票や、署名活動、気候変動に関わる参画が多く見られました。回答者の中には、政治参画は経験したことがなく、これからも参画する気はない、と回答した方もいました。
[おまけ: 日本の印象について]
Q . 日本の政治や社会問題について、何か知っていることや印象はありますか?
まず、顕著だったのは、「男女不平等」についてです。(8割以上が回答)
特に、政治の場における女性の割合の少なさについての指摘、また、就労における男性優位な思想についての言及が多くみられました。
またある方は、少子高齢化問題や雇用の減少について知っている、と回答しました。
以下一部回答を抜粋。
A . 年齢的なヒエラルキー制度が日本社会にはインパクトを与えている。フィンランドではそのような文化はあまり見られない。(25歳・フィンランド)
A . 敬意とマナーを重んじる国であると同時に、ハイテクで革新的である。(24歳・フィンランド)
A . 汚職が多いイメージがある。エストニアの政治でも汚職はあるが、例えばそういったスキャンダルで議員が責任を取って辞職するケースは少ない。また、色々な社会不満がある人も多いと思うけれど、変化を嫌う高齢化した国民によって、実質的な変化が妨げられていると思う。(21歳・エストニア)
A . 近隣国との、外交や安全保障上の問題があり、日本にも大きな影響を与えていると思う。(23歳・フィンランド)
筆者のひとこと ~ アンケートから見えたもの ~
今回、7名のエストニア人・フィンランド人の若者に、生の声をインタビューしました。
政治意識については、普段から周りの人と議論する風土があり、日常で議論する内容もニュースから、安全保障の問題、気候変動、選挙、など自分自身の生活に特に関わることが話題に上がりやすいのではと思いました。
また、自国が加盟しているEUやNATOに関する議論をする、という意見もあり、ヨーロッパという地理的条件も、政治意識に大きく影響しているのだなと、感じました。
また、主権者教育については、
「社会構造」「民主主義の原則」「市民の権利と責任」「議会制度」「選挙」「市民権」「民主主義制度の歴史」といったキーワードがあがり、政治的なシステムや選挙の仕組みのみならず、国民に与えられた権利についても、広く教育されていることがわかりました。
詳細なカリキュラムや、日本の主権者教育との違いの考察については、更なるデータ収集を要するため、今回は取り組めませんでしたが、今後の大きな示唆となりました。
※エストニアの主権者教育の簡単な概要については、こちらを参照下さい。
政治参画については、個人差はありますが、まず「投票」が真っ先に思い浮かぶ人が多い、と言えるかもしれません。その他、署名活動/デモ抗議も、若者の政治参画では広く取り組まれているといえます。
特に、署名活動は日本でも、オンライン署名プラットフォームなどの広がりを受け、参画する若者は増えているとおもいます。
フィンランドの若者の例でも、自分自身が特に関心をもつトピックに関して、署名をつかって声をあげている、実態について知ることができました。
おわりに
NPO法人DAKKO note記事 vol 2, vol 3, vol 4 では、これまで日本と、北欧を中心に、主権者教育や若者の政治意識について、執筆者の視点や調査データを元に深堀りしてまいりました。
これらの執筆を通して、「”北欧”の主権者教育の実態」や、「エストニアの電子投票システム」「若者がいま政治に思うこと・実際に起こしているアクション」「海外の若者からみた日本の政治・社会」など、少しでも読んでくださる方に「へえ ~ 」と思ってもらえていたら幸いです。
これまでの執筆者:遠藤 による投稿は以上となりますが、これからもこちらのNPO法人DAKKO noteアカウントにて、様々な記事を投稿予定ですので、興味がある方はぜひ読んでいただけると嬉しいです!
それでは、また次回からの記事をお楽しみください!