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大正浪漫を感じる入間の西洋館「旧石川組製糸西洋館」がとても良かった話

脱コロナの流れの中で迎えることになった2023年のゴールデンウィーク。
ニュースやSNSでは、人であふれかえるターミナル駅や観光地の様子が次々に流れてきます。
自分もどこかに出かけたいけれど、混んでいないところはないものか…?
いろいろ考えた末、以前から気になっていた「旧石川組製糸西洋館」に行ってきました。

旧石川組製糸西洋館について

旧石川組製糸西洋館は、石川組製糸の創業者である石川幾太郎(1855~1934)により、商談相手である外国商人を招くための迎賓館として、1921年(大正10年)に建設されました。
平成13年に本館・別館が国の登録有形文化財に指定され、現在では入間市の所有となっています。

外観

本館、別館とも、外観はレンガ調のタイルで覆われています。
本館は2階建て、別館は平屋で、どちらも木造です。(別館は写真を撮り忘れました…。)

本館を斜め前から。

西洋館ではあるものの、和風の玄関ポーチや屋根の軒部分の雷紋(ラーメンの丼ぶりによくあるうずまき模様)が特徴的です。

一見和風な玄関ポーチ。入母屋造り(?)のような屋根が独特

また、玄関ポーチの隅の部分には、石川家の家紋である笹竜胆があしらわれています。

内部の様子

内装で印象的だったのは、その豪華さや部屋ごとの意匠の細かさです。
大切なお客様をもてなし、会社の権威を示すという迎賓館の役割を果たすため、贅沢な空間が広がっていました。

①豪華すぎる天井

1階の中では、応接室と食堂の天井がひときわ印象に残ります。
応接室は折上げ格天井が採用されており、格式高く、重厚な印象です。

応接室の格天井。壁紙も創建当時のものが残っているとのこと

一方、食堂の天井には独特の幾何学模様が施され、こちらは西洋風でモダンな印象を受けます。
模様が彫られた折り上げ部分も特徴的です。

大正浪漫を感じる天井。湖池屋スコーンのCM撮影場所にもなった

2階では、貴賓室の天井が圧巻でした。
雲の模様に加え、格天井や折り上げ部分の装飾など、和の要素がちりばめられています。

きらびやかな貴賓室の天井。シャンデリアは石川家の家紋入り

②美しい階段

玄関ホール右手から2階へと続く階段も見どころの1つです。
流麗な手すり、欄干の彫刻や格子状の造形などこだわりを感じます。

独特な造形の欄干
採光性抜群の大きな窓
階段下の1階部分に施された格子状の造形

階段は2階ホールにつながっています。
ホールは壁と天井が漆喰で塗られ、窓からの光が広がる明るい空間に仕上げられています。
1階もそうですが、明るい白壁のホールとそこから部屋とのコントラストは、来客に対し、各部屋の重厚さ、格調の高さを強く印象付けたのではないかと思います。

階段の上から。シャンデリアは創建当時のもの
段差がつけられた漆喰の天井。明るい雰囲気

③和室・大広間にも注目

この建物の2階には、二間の和室も設けられています。
海外からの客人が、商談の合間にくつろいだのでしょうか。

畳敷きの和室の中から見る洋館の壁と窓。なんだか不思議な感覚

畳は和室の周りにも伸びており、縁側のような造りとなっているのも特徴的です。

和室横の廊下。縁側状に畳が敷かれている
畳の外側は市松模様。単なる板張りでないのも珍しいような?

また、同じく2階には、真っ赤な絨毯が敷かれた大広間があります。
迎賓館として使われていたころは、華やかなパーティーが開かれていたのでしょう。

大広間にはステンドクラスがあり、蘭、梅、竹、菊が描かれています。

右側2枚(竹・菊)
左側2枚(梅・蘭)
説明板によると、菊とされる図柄は、この地域特産の茶の花という説もあるとのこと
ステンドグラス裏側の階段部分。奥の窓が良い雰囲気

④こだわりの意匠は他にも

このほか、デンタル紋で天井を縁取った1階の客室や、模様が付けられた玄関ホールの天井など、細かい部分まで手が込んでいます。

1階客室。位置的には2階の貴賓室の真下
玄関ホールの天井。格子状の模様が付けられている

また、床には部屋ごとに異なる寄せ木模様が施されているほか、調度品についても、建物と共通の意匠が施されたものがあるのだそうです。(これは帰宅後にパンフや入間市のWEBサイトから得た情報で、現地では気づきませんでした。)

まとめ

旧石川組製糸西洋館については、数年前からその存在は知りつつも、外観の地味さや自宅からの微妙な距離感もあり、後回しにしていました。
実際に訪れてみると、細部までこだわりの詰まった名建築で、何でもっと早く行かなかったんだろう、というのが率直な感想です。(きちんと見るなら半日使うレベルだと思います。コロナ対策的に長時間滞在は歓迎されないでしょうけど。。)
しかも、入館料はたったの200円。入間市恐るべし。

建物の場所等について

竣工:1921年(大正10年)
設計者:室岡惣七
最寄り駅:西武池袋線入間市駅(徒歩で10分弱)
公開日:入間市ホームページで事前確認要(土日を中心に月4日程度)
料金:大人200円
その他:いるま歴史ガイド(https://www.alit.city.iruma.saitama.jp/irumashiseiyoukan/)を見てから行くとより楽しめるのでおすすめ
※訪問日(2023年5月3日)時点の情報です。

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