自信を失った保守
コラム『あまのじゃく』1953/4/30 発行
文化新聞 No. 689
メンツを潰した平良候補の取り巻き
主幹 吉 田 金 八
落選した平岡良蔵候補の推薦者として飯能町では小林町長、町田議長他議員30名中25名が顔を揃えたにもかかわらず、得票の結果は大江、寺本2町議が支持した平岡忠次郎候補が4600票で25町議の平良候補が6700票と言う得票振りであった。
しかも3000票近い票が他の山口、横川などに逃げており、せっかくの町長以下の声援も、単に形式だけの並び大名的であったことが暴露され、今更に町長、町議が町民と遊離している現実を立証するに至った。
この結果は今後の町政の上にどういう影響をもたらすかということが興味ある宿題となってきた。
町民の中で気の早い者は、町民与論の動向を無視して心なき候補に諂った町長、町議は引責辞職すべきだとの論を出すものも多いが、「地元自由党候補が町民の支持が少ないために落選したからといって、これを担いだ町長、議員が辞職するほどのこともない」として今まで平良氏の無言の威力を背景にして自信満々で町政に臨んでいた小林町長、町田議長、関口、土肥、石井、遠藤氏なども今度の自分たちの振った旗の通りに町民が動かなかったことに自信力を失って、今後の町政に対する発言力も弱められるのではないかとみられている。
これに対して今次選挙を傍観した、もしくは革新勢力を支持した大江、峯村、篠原、師岡、寺本などの陣営が急に自信を深めて、在来も野党としてかなり保守派に食いついたのが、さらに縦横無尽の活躍をするのではないかと言われている。
さらに野党派とは志を異にしているが、在野の知識層新人群で町がボス勢力で壟断されつつあることに面白からぬ感じを持ち、メンツにのみこだわって、純理でことを運ばない旧勢力一掃を企画している一群が、今後の元加治問題の処理は到底現議会の事なかれ、退嬰的スタッフでは完全な結果は期待しえず、おそらく同問題のために現議会も総辞職の運命は避けられぬものと見ており、その際の総選挙には思わぬ新人群が競って立候補するのではないかと言う機運をはらんでおり、町民中にもこのことを期待する向きが強いようである。
コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】