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鳴尾競輪での殺傷・放火

『あまのじゃく』第43号 1950/9/12 発行 
文化新聞  No. 43号


 競輪場内に予備隊兵舎では⁉
 
     主幹 吉 田 金 八

 またしても阪神鳴尾競輪で殺傷・放火事件が起きた。今度のはゴテゴテの文句抜きで、いきなり穴場に殺到して売上金を強奪、と言う問答無用の軍人型であり、消防自動車をひっくり返して流れ出たガソリンで放火をするなど、やることがだんだんと派手になってきた。
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 これに応じる警官隊の鎮圧振りも洗練されたというか、鍛錬されたというか鮮やかになって発砲による死傷者二名、検挙二百名とは競輪騒動も冗談ではすまなくなった。
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 本命の選手がいつも優勝と決まっているのなら、何を手間ひまかけて競争させる必要もないし、車券に賭ける興味もないはず。番狂わせこそ賭けの真骨頂であるべきに、番狂わせがあると八百長だと騒ぎ出して、その都度投石、放火には恐れ入る。
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 こんなヤクザ息子同様の競輪などやめちまえと言いたいが、ヤクザ息子も地方自治体のドル箱である以上、簡単には止められない。
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 それには僕に面白い提案がある。それは競輪場内に警察予備隊の兵舎を併設して、騒動鎮圧の実際訓練と治安保持を兼ねさせることである。競輪のあがりで予備隊を賄えばマサに一石二鳥のアイデアであろう。


 コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
 このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】

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