「アニメ史上最高のライブシーンは何か?」の追求を諦めて「人それぞれ」という結論に落ち着くまで
いまドハマりしているアニメ「シャインポスト」10話を見ていたところ、後半のライブシーンで椅子から転げ落ちた。
それほど自分にはインパクトのあるライブシーンであり、アニメ視聴後もこれはすごいと何度も繰り返し視聴した。最高のライブシーンだ!と思った。
しばらく経って落ち着いてきた頃、ふと疑問が湧いてきた。
「なぜ最高と言えるのか?」
Ⅰ.最高のライブシーン?
僕はアニメ好きだが見る専である。楽しめればそれで良い。だからこれまでアニメのライブシーンを意識して観たことはなかった。
「3Dだとカメラワークすごいな」「手書きは柔らかい印象だけど大変そうだな」その程度。
普段はそれで良いのだが、今回は誰かとこの気持ちを共有したくなった。
でも、何が良いのか説明できないのに「最高のライブシーン」と言っても、他の人にはその魅力が伝わらないのではないか、と感じた。
Ⅰ-1.自分が信じる最高と「誰が見てもそう思う」最高
ここのラーメンおいしいよ、と教えてくれた人が普段あまりラーメンを食べない人なら、その情報はちょっと疑わしいと感じる。
「美味しいラーメン」と言われたら、年間600食ラーメンを食べる人も、普段ラーメンを食べない人も、誰が食べても美味しいと感じるものであってほしい。
「最高のライブシーン」も然りである。
Ⅰ-2.Web上で評判のライブシーンを視聴してみる
だから自分がたくさんの優れたアニメのライブシーンを視聴・比較するという経験でもって
「他のライブと比較して1番優れているのはこれ!」
と誰かに説明するための根拠を手に入れたいと考えた。
そのためにWeb上で評判のライブシーンをリストアップし、週末にまとめてそれらを視聴してみることにした。
Ⅰ-3.最高のライブシーンの確信は揺るがなかったが…
視聴後の感想を言うと、心変わりはしなかった。最高のライブシーンは冒頭のシャインポストのライブシーンである。
ただしそれは前述の主観的な評価のまま。
視聴者それぞれの主観を超越して唯一の存在となる作品・条件を見つけることはできなかった。というか、少なくとも現時点では「無理」だということがわかった。
視聴者それぞれがどの作品とどのくらいの深度で関わってきたかという背景が全く違うからである。
今は「そりゃそうだ」と思うが、視聴する前はここまで影響が大きい要素だとは考えていなかった。
と、ここまでで本筋の話は終わりである。
以降は今回見たライブシーンで特に印象に残った作品への感想と共に詳細を振り返っていきたいと思う。
Ⅱ.ライブシーン一覧と、特に印象に残ったものの感想
上記は各種サイトで最高のライブシーン、おすすめのライブシーンとして紹介されていた作品たちである。
他にも何作かあったが、今回の趣旨からズレると感じたものはリストから除外している。
Ⅱ-1.過去作はレベルが低いか?
技術の進歩は著しく、アニメ業界も例外ではない。3DやAIを活用した作画などはわかりやすい。おそらく音響面も進化しているだろう。
ということは、少なくとも今より古い作品であれば今の作品よりレベルが低く見えるのではないか、というのが自分の想定だった。
Ⅱ-2.製作陣へのリスペクト
その想定が間違っていると気付くのに時間はかからなかった。リストのアニメを試聴していくうち、自然と正座で試聴するようになっていた。
それぞれの時代での全力を尽くして創られ、時間が経っても語り継がれている作品が素晴らしいものでないわけがない。
Ⅱ-3.取り上げるライブシーン選択の観点
どれも素晴らしいライブシーンだったが、そのうちでも特に印象に残った作品の感想を記載している。
「1.映像」「2.サウンド」「3.演出」それぞれの観点で3作品ずつピックアップしながら振り返っていきたいと思う。
※以降の画像・動画は公式に配信されているもの。該当するシーン・曲が公式から配信されていない場合はPVやCMなどのイメージ動画を掲載している。
※ネタバレは極力抑えるよう表現した
感想1.映像が印象に残ったライブシーン
ここで言う映像とは、画全般。
キャラクターのデッサンや背景のパース、表情・動き・背景の色など我々の視界に入ってくる作品の画部分で印象に残ったものを選定している。
映像① 製作陣の執念を感じた「アイドルマスター」の手書きライブシーン
「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ! 本編」より
「M@STERPIECE」歌:765PRO ALLSTARS
映画ということもありライブシーンの動画は公式から配信されていなかったためPV。
TVアニメ25話でも見せた手書きでグリグリカメラを回す映像をさらにクォリティを上げて表現しており圧巻。ズームアウトしながら回してみたりズームインしながら回してみたり…。
3Dの強みは自由なカメラワークだと思っていたが、手書きなのにまるで3Dのように画面を動かしまくる演出で、キャラクター達のかわいらしさは損なわれないどころかさらにその強みを増して画面の前の我々にアピールしてくる。
元々莫大なファンがいる作品のアニメ化、そして劇場アニメ化ということで、製作陣にはプレシャーもあったろうが、アニメから感じるのは「いいものを作る」という信念と出来上がった作品の圧倒的な価値である。
その気合を受け止めるだけの資源がつぎ込まれたのだとは思う(そうであってほしい)がそれにしても素晴らしい作品。
今回のテーマである「史上最高のライブシーンを決める」が「絶対無理」だと確信したのはこの時である。
2005年にアーケード版のゲームが稼働してから劇場版公開の2014年まで、実に9年の歴史があってのこのクォリティである。ファンにとっては、唯一無二のライブシーンに違いない。
その想いはその作品を応援し続け、作品と共に過ごしてきた人たちだけの特典であり、今からそれを手に入れることはできない。
そういった背景がそれぞれの作品・視聴者にあることを理解したので、史上最高のライブシーンは今はまだ決まらないと感じた、ということである。
映像② 楽器の美しさが際立っていた「響け!ユーフォニアム」の演奏シーン
「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」:
関西吹奏楽コンクールでの演奏
映画ということもあり演奏時の動画は公式から配信されていなかったためPV。
ライブか?と思ったものの最高のライブシーンというテーマで名前を挙げる人がいたため視聴。
京都アニメーションと言うだけで映像の美しさが保証される。特に印象に残ったのは楽器で、コンサートホールのライトの照り返しなどの表現が綺麗。そしてそれが演奏者全員分である。さらに画面を回転させるシーンまであった。それも手書きで…。
よくこの内容をアニメ化しようと思ったな、という驚き。引き受けたことがすごい。
吹奏楽がテーマのアニメと言われたら、引きの画面でキャラクターと楽器を大量に書かなきゃいけない、ということは想定できるはず。しかも世間は全編京アニクォリティの映像を求めてくるから手の抜きどころもない。
それをやりきるような会社だからこそ京アニは尊敬されるブランドなのだろう。
映像③ エフェクトに見惚れた「Angel Beats!」のライブシーン
「Angel Beats! 第1話 「Departure」」より
「Crow Song」歌:Girls Dead Monster
「Crow Song」をBGMに戦闘が行われるシーン。ライブシーンと戦闘が交互に描かれる。
ライブシーンは光の演出が特徴的でもやがかかったような表現になっており、それが曲の伸び感と相まって神々しく見える。
最後は輝く紙吹雪のエフェクトで締めるが、綺麗だと思って見ているとその正体で少し力が抜ける。
2010年の歴代アニメランキング第2位とのことで、このシーンが1番印象に残っている人もいそうである。
感想2.サウンドが印象に残ったライブシーン
ここで言うサウンドとは音全般。効果音、音声、BGMなどを想定している。
サウンド① ユーモアあふれる歌詞が耳に残る「けいおん!!」のライブシーン
「けいおん 20話 またまた学園祭!」より
「ごはんはおかず」歌:放課後ティータイム
公式のアニメ映像がなかったので作中で放課後ティータイムの中野梓役の竹達 彩奈さんのライブシーンより。
今回リストアップした曲の中では最もストレートにユーモアが溢れる曲。歌詞が楽しいだけではなく、メロディーも耳に残るキャッチーなもの。当時学生バンドなどでこの曲を演奏した学生たちは盛り上がったに違いない。
映像面ももちろん京都アニメーションクオリティ。
この回はライブ後のメンバーの会話シーンが非常に印象的で、ライブの内容と合わせてそのことを記載している人も多かった。
サウンド② メロディーがキャッチーすぎる「うたの☆プリンスさまっ♪」のライブシーン
「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000% Op.1 七色のコンパス」より「マジLOVE1000%」歌:ST☆RISH
楽しいが過ぎる。一度聞いてしまうと耳から離れないメロディー。何度も見たくなる映像。
「うたの☆プリンスさまっ♪」は次作の「2000%」の1話でも同様のライブシーンがある。どちらも視聴者を著しく楽しい気持ちにさせてくれるライブだった。
1話でこれだけのライブを持って来られると、2話以降にも期待したくなる。
10年以上の歴史があり、2022年10月現在は劇場版が公開中である。きっといいものになっていると期待できるので、近くに劇場がある人は見に行って貰えると良いと思う。
サウンド③ 歌姫たちの歌声が激しくも心地よい「戦姫絶唱シンフォギアGX」のライブシーン
「戦姫絶唱シンフォギアGX EPISODE 01 奇跡の殺戮者」より
「星天ギャラクシィクロス」歌:マリア×風鳴 翼
劇中のマリア、風鳴 翼それぞれのキャラクターを演じる日笠さんと水樹さんの歌声がよく伸び、よく響いているライブシーン。さすが日本武道館でライブを行っただけある、と納得させられる。
エフェクトが凝っておりキャラクターの動きも非常に滑らか。映像面でも満足できる内容。
感想3.演出が印象に残ったライブシーン
ここで言う演出とは、アニメをより効果的なものに仕上げている映像・サウンド・その他を想定している。
特にキャラクターや背景の色彩、魅せ方、リズム感やサウンドのタイミングなど。
演出① 画面のカラフルさに目を引かれる「BanG Dream! 2nd Season」のライブシーン
「BanG Dream! 2nd Season #13 キズナミュージック♪」全編通して
最終回ということもあり動画が公式から配信されていなかったため予告映像。
今回取り上げた中では唯一の3Dアニメ。13話は全編ライブシーンで構成されている。
劇中ではポップで可愛らしい音楽が特徴のPoppin’Partyをはじめ、アイドル、ロックなどテイストの違う5つのバンドが順番に登場するため、映像もサウンドもコロコロ変わって盛りだくさん感が凄まじい。
画面においてキャラクターの締める割合が大きいと感じた。クローズアップが多いわけではなく基本的にキャラが大きく映っている印象である。
衣装・装飾品、表情などが大きく映ることでキャラクターの特徴が伝わりやすく、好ましい表現方法だと感じる。
演出② ライブ中の演出でファンの心を掴んだ「少年ハリウッド」のライブシーン
「少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49-/少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 50- 第26話 -HOLLY STAGE FOR 50- HOLLY STAGE FOR YOU」より全編通して
最終回にあたる26話では全編ライブシーン及びMCで構成されている。
強烈に印象付けられたのが途中で行われた演者にもファンにも秘密だった、という仕掛けである。
こういった演出をしてくれたら、これまでに挙げたアイドルアニメ作品のファンは嬉しいだろうな、と思えるものであった。
「makuake」で行われたクラウドファンティングでは目標金額の約4倍を達成し、完成版の最終話が作られた。こうして作品と共に歩む形はファンからするととても貴重で嬉しい、他では手に入れられない経験だろう。
演出③ キャラクターの魅せ方が印象的な「シャインポスト」のライブシーン
「シャインポスト 第10話 黒金蓮は《戻りたい》」より
「GYB!!」歌:HY:RAIN
記事冒頭のライブである。主人公チームのライバル的立ち位置のグループHY:RAINがこれまでほとんど絡みがなかったところからの圧倒的実力差を見せつけるライブシーンのインパクトは絶大であった。
元々今期トップクラスの映像をさらに一段階押し上げた美しい表現とスタイリッシュなサウンドからその実力は視聴者にも伝わり絶望感を共有することになった。
歌詞やパフォーマンスから特にリーダーである黒金蓮のキャラクターは強烈に印象付けられる。
Ⅲ.まとめ
各ライブの評価を調べている時「リアルタイムで見たかった!」「劇場で見たかった!」というコメントをいくつも見かけた。
冒頭で挙げた「シャインポスト」は現在放映中のアニメである。また「うたの プリンスさまっ」も劇場版が公開中だ。
リアルタイムのアニメ放送も劇場での鑑賞もその時限定で2度と味わえないイベントなので、ぜひリアルタイムの臨場感を楽しんでもらえると良いと思う。
今回は自分が考えた検索ワードで、上位に表示されたものだけを視聴した。おそらく抜けているものもあると思う。ここに挙げたもの以外でもおすすめのライブシーンがあれば教えて貰えると嬉しい。