定食屋で隣の【見ず知らずの男性】につっこみを入れられた話
まだ私が20代前半だった時の「コロナ」のコの字も無かった頃の話。
仕事の昼休憩に、仲の良いスタッフMと2人で定食屋に行った。
オフィス街ということもあり、そこそこ混んでいる店内。
私は大好きな【鶏肉の甘酢炒め定食】を注文し、ウキウキと料理が運ばれてくるのを待っていた。
食事を待っている間、なんでもない話に花が咲く。
その日は理由は忘れてしまったが何故か「上杉謙信」の話になった。
しかし私はその時「上杉謙信」の苗字「上杉」がどうしても思い出せず……
私「ほら、武田信玄のライバルの…」
M「え、誰?」
私「なんとかケンシン」
M「緋村剣心か!」
私「いやそれ、ジャンプの漫画!ほら、ケンシンだよケンシン!」
M「飛天御剣流か!」
Mは完全にふざけている。
私は少しイライラしつつも、なんとか思い出せないか頭を捻った。
スマホで答えを検索しなかったのは、使ったら負けだと言う、ちっぽけな意地があったからだ。
私「ケンシン………」
M「天翔ける龍の閃き」
私「いやもうマジで」
M「龍槌閃」
この時……隣の席で和風ハンバーグ定食を完食した、サラリーマンが立ち上がった。
サラリーマン「…上杉です」
私&M「!!?」
私「ああああありがとうございます」
M「す、すいませんねぇ、バカなもんで!」
前払い制の店内だったため、サッと立ち去ったサラリーマン。
ちょうど私の大好物の【鶏肉の甘酢炒め定食】を運んでいた店員さんが現れた。
店員さん「お、お待たせ、し、しました…くっ」
お、おまえ笑ってるやろ!!
よく見たら後ろ、反対隣の客も「ふっ」だの「くっ」だの「ウケる」だの言っている。
私「緋村剣心って言ってたの冗談よね?」
M「いやマジでわからんかった」
いきつけの定食屋で、バカを晒してしまった私達。
Mは気にせず「チキン南蛮定食」を完食していました。
おしまい。