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悩み


「私、病気みたい」
私は、思い込んだ顔で、そこらへんの猫に話してみた。
「にゃんの?」
茶色と白の賢そうな顔をした猫は、前足を舐めながら私に聞いてきた。
「すぐ、良くない方向に考えてしまう。被害妄想っぽい」
私は、地面をみたまま、思いつめた表情で猫に言った。
「にゃおで?」
猫は今度は自分のお股を舐め始めた。
「それで、悶々とずっと、考えてしまう。自分の話だったら良いけど、娘に及ぶことだと、変な方向にいきそうで、怖い。思い込みも激しいし、どうしたら良いのかよく分からない。」
「それに、家の事だけで精一杯で、働きもせず、特に何もしていないし、何も特徴がない。ひとっりこだし。いつのまにか、口もよく開けられなくて、話すことが少なくなってきていて、めっちゃ、暗くなっている。昔は、もう少し、明るくて友だちもいて、飲みにもよく行ってたのに、いまじゃ、全く駄目だ。できるだけ、人と交流したくなくて、気持ちが沈んだまま、どうしようもない、鈍臭いというか、キモイというか、面倒な人間になっている気がする。」
「娘にもあまり良い影響を与えていないんじゃないかと思って。私がもっと明るくて友だちもいたら、娘も明るい子供になったんじゃないかと、思って。何が心配かって、自分みたいになってほしくない。」
気が付くと、私は猫相手に、ブツブツと愚痴をこぼしていた。
茶色と白の猫は、大きな欠伸をして、
「そにぁ、たいへんニャー、フニャフニャべー。阿保にゃから、仕方ないニャー」
と、毛布を被って寝ようとしだした。
なんで、ここに毛布を被って寝ようとしている猫がいるのか、しかも、私の話を聞き相槌まで!
「何やねん!あんた、なんで猫なん?っていうか、真剣にきかんかい?私、めっちゃ、悩んでるんで!!!」
「ほにゃほにゃ、わては、眠いねん。あんた、阿保の頭で悩んでも時間の無駄にゃーーーーまたにゃ===。」
いつのまにか、その猫は扉まで閉めてしまった。
なんで、扉があるんや、わけ分からん、私の壮大な悩みは、どこ行ったんやーーーーー!

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