「逆じゃねぇ!」その2
それではお口直しに替え玉一丁。
男性諸氏におかれては「美容室」を利用した経験がお有りだろうか?
ワシは生涯一度だけある。そしてもー死ぬまで行くことはない。
忘れもしない18歳、睾丸の美少年当時、場所は高田馬場である。
当時は月曜日が理容室の定休日と決まっていて、どっこもお休みで仕方なく勇気を振り絞って「美容室」のドアを開けた。
なーんのことはない。ひげ剃りが無いだけで別段理容室と変わりはない。ほっと安心。
さて散髪も大方終了し、シャンプーである。
「こちらへどーぞ」
あれ?なんでシャンプーするのに一々席立つのかなぁ?と不思議に思いながら行ってみると、なーんと洗面台&ベッドのようなリクライニングシートがでーんと控えている。
ほぉ?なるほど。女性はこういう洒落たポーズで洗髪するのね。
何だか感心しながら早速横になり待つこと暫し。
リラックス気分でうとうと・・・しかけたら?
さっきまで沈黙していた客のババア連中が妙にうるさい。ひそひそ話が耳障りだ。
「こっちが良い気分でうとうとしてんのに、うるせーよぉ!」と怒鳴ってやろうかと思ったら、やっと担当美容師さん登場。
「お待たせしましたぁ!」
ちなみにこの美容師さん、ワシの好みにぴったり&ナイスバディである。
「こんなおねーちゃんにシャンプーしてもらえるなんて、幸せだなぁ・・・ひっひっひ。うーん、おねえさん。早くやって!」
ところが、である。
おねーちゃんは立ちすくんで動かない。
なんだか妙な雰囲気とともに気まずい沈黙が流れる。
「あの・・・・お客様・・・・あの・・あの・・逆なんですけど・・・」
「はぁ?何がぁ?」
「あの、あの・・・うつ伏せではなく・・・その・・・普通に・・・仰向けで・・・そのぉ・・・」
「逆だぁ?えぇ?逆???」
どーりで体痛いと思ったぜぃ。逆エビ体勢だものなぁ。
なんとワシは逆エビ正常位体勢でリクライニングシートを抱きかかえていたんである。
「逆?あぁ、こーねぇ。あーこりゃ楽だねぇ。」
その瞬間、ババア連中は我慢しきれず大爆笑である。
さっきからのひそひそ話は、我が体勢をあざ笑っていたんである。
担当の美容師さんはと見れば・・・・?
そこはプロ。お客様に対してまさか大爆笑なんてしない。
ただ、下を向いて、肩を振るわせ、必死に笑いをかみ殺し、その場に立ち尽くしていた・・・・。