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14歳の栞
夏の気配を感じると必ず思い出すことがある。
中学校二年生の6月。期末テストも終わり、班の皆で理科の授業をほったらかして、夏休みがあと何日で始まるのか真剣に数えていたときのことだ。
正直、中学2年生の時の記憶は既に鮮明なものではなくなってきている。けれど、風通しの良いあの理科室で夏休みが来るのを心まちにしていた時の高揚感は忘れることができない。
あれから8年近くたったけれど、僕の中の14歳の栞はずっとこの場面に挟まったままで、夏が近づくと自然に開いてしまう。
14歳にきっと特別な意味はないし、誰しもにとってそれは人生の通過点にすぎない。そしてその時の仲間も一度中学校という枠組みを飛び越えて社会に出てしまえば、ほとんど思い出すこともないのだろう。
楽しかったこともある。後悔もある。
けれど不思議とあの頃に戻りたいとは思わない。きっと戻ることができても僕は僕でしかないので何も変えることはできないだろう。
あれから8年経った。
僕は誰もが憧れるような特別な人間にはなれなかった。
僕は特別になれないけど特別な人間も僕にはなれない。
それだけで充分特別だ。