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プロ意識

責任の範疇を定めたいと思う。

「お客様は神様」価値感の延長上にしか人生がないのは、哀れすぎるだろう。
ひたすらに消費者の生き方。それはそれで楽なのかもしれんけど。
責任感を持って、とか、持つべきという正義面の言葉を吐くやつに見え隠れする、「絶対に責任をとりたくない」の表情の卑劣さ。
自己決定出来ないモノ独特の弱さ。
でも、そんなやつが、わたしより権限が上だったりするからなあ。

わたしは薬剤師なので、病人に薬を渡す。
もしくはその代理人に薬を渡すわけだが、たまに間違う。
AIがわたしにとって代わってくれたら良いのだが、明日その予定はなく、わたしは人間なので間違うわけだ。
そうすると、鬼の首とったみたいに責められるわけだ。
薬剤師は医療のゴールキーパーなわけだから、間違うのはご法度なのだが、間違う。
で、薬を取り換えたり、謝ったりするのだが、それでも責めは続く。
わたしだって間違おうと思ってそうなったわけでは無い。

他の病院や薬局で、調剤ミスや監査ミスで裁判沙汰になったケースは今まで何度もあり、ニュースになったり当該薬剤師や管理者が書類送検になったりした。
そんな重大過誤は滅多にないわけで、御多分に漏れず、わたしもそんな大きな過誤を起こしたことは無い。
というより、ほとんどの薬剤師たちはそんな重大なミスを犯すことはないし、医療過誤がおきないようなシステムを各薬局、病院が腐心して構築している。幾重もの監査をとおり、初めて薬が病人に届く仕組みになっているわけだ。
でも、それでも間違うときはある。
規格やメーカー違い、体重換算や年齢制限の見落としなど。
大抵すぐに発見し、薬の交換をする。
で、責められる。
そういった間違いで、病人がわたしを責めるのは仕方ない。だって、わたしが悪い。
しかし、服薬期間を過ぎてしまったから薬が無い、とか、聞いてもいない併用薬との相性が悪かったとか、そんなこと言われても、知らんがな、と思う。
はっきり言って、入院していないなら、服薬管理は自己責任だ。
というより、それも治療の一環だ。
そこまでの服薬管理をして欲しいなら、別途料金が発生するが、それはイヤな様子。つまり、「お客様は神様」だから、面倒見ろということのようだ。
医療は奉仕の精神だとでも言いたいのか。
わたしはマゾヒストに奉仕される側で、する側ではないのだが。
あんたの健康にそれほど興味がない、という真実を知れ。
「お客様は神様」価値観を医療に持ってくるのは危険だ。
わたしのような医療従事者がいることを、肝に銘じたほうがよい。

本当にしんどいのは、執拗に責める現場の存在だ。
いつまでもしつこく、わたしの間違いに言及する。
責任感をより強く持って欲しい、とのことだが、わたしは責任の範疇を定めたいと思う。
わたしの責任の範疇は、~今やっていること。
まあ、つまりこれ以上には働かない、ということだ。
私用の時間にまで連絡がきて、仕事をし、より細かい気配りや努力を求められても、無理だから。そんなに仕事が大切な訳じゃないから。

その執拗な責めは、もはや責任転嫁のようだ。
ちいさなミスが起こるような体制を、責められたくないのだろう。
ひたすらにわたしが悪いのだ。現場や体制に欠陥は、無い。
特に自己決定出来ないヤツはたちが悪い。集団でくるからね。

わたしにとって薬剤師という仕事やこの職場は、わたしを責める人たちが思ってるほどの価値はない。だから、そんなに言われても、困り果てる。
わたしとわたしを責める人たちとの、プロ意識のズレかな。
魂や尊厳をかけるほどの仕事ではないよ。もっとドライにやっていきたかったのに。








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