2月23日の想い出
今から10年以上前の同日、僕は地方都市に住む大学生3年生だった。いわゆる就活生。そして、東京渋谷のあるカフェで作業をしていた。
当時の就活事情
あの頃、いわゆるリーマンショック(米国の低所得者向けの金融ローンが崩壊)による世界恐慌で、なんやかんや回り回って、日本経済もすこぶる悪化していた。
・新卒採用を今年は取りやめる企業
・新卒採用の採用枠を減らす企業
・内定を取消す企業
とくに内定取消しは、学生が同意書を提出する前なら違法ではないけれど、さすがに学生の一生に関わる事柄であって、社会問題にもなった。
僕の周りの先輩にも、内定取消しにあって、大学に相談している人もいたことを覚えている(たしか、無料で卒業期間を延長する大学もあった)。
就活生の行動
・就活サイトに登録、企業に応募 ⇨
・エントリーシートを出力 ⇨
・紙に手書きで書く ⇨
・企業に◯月◯日必着で送る ⇨
・書類選考 ⇨(落選したら振り出し)
・筆記試験 ⇨ (落選したら振り出し)
・面接〜複数 ⇨ (落選したら振り出し)
・最終面接 ⇨ (落選したら振り出し)
・内定!!🎊
これを内定をもらうまでループする。まるで、嫌なことしか続かない、すごろくゲームのよう。
当時はスマートフォンもなく、無線LAN(Wi-Fi)も普及していなかったため、紙郵送がメインだったのは、時代かもしれない。
さらに、大まかなスケジュールとしては、以下のようなものだった。
・大学3年生の年末⇨合同説明会が開始
・新年⇨企業選考が始まる ※2月23日はココ
・3月末⇨内定者が出始める(最初のクール)
・大学4年生4月⇨本格的に就活が始まる
・6月まで⇨おおむね学生が内定をもらう
(ここで内定がないとわりと追い詰められる)
・8月まで⇨ほとんどの学生が内定をもらう
10年以上前の同日(2月23日)
東京は、渋谷の道玄坂にあるカフェに、わざわざ地方都市から2、3時間かけて、来ていた。
なぜかというと、エントリーシートや履歴書を、集中して書くため。
東京渋谷の郵便局は、たしか24時まで営業していて、ギリギリまで書類作成に時間をかけられるメリットがあった(いまは営業時間は短くなったらしい)。
エントリーシートや履歴書を書くのがすごく苦手で、いよいよ締め切り間近となって、ようやく書き始めるという有り様。書類作成を常時継続することがストレスだったので、東京渋谷のカフェで集中して執筆⇨渋谷郵便局で発送⇨帰るという日を意図的につくっていた。
周りの学生は、自宅か大学の図書館で作業している人がほとんどで、その意味では、僕は一風変わった学生だったかもしれない。
渋谷のカフェで作業していると、天皇誕生日のため、道玄坂には、右翼団体の街宣車がスピーカーでなにかを主張して、警察の警備体制がしかれていたのをいまでも覚えている。
新卒採用のなにが嫌だったか
新卒採用を振り返ると、(誤解を恐れずにいうと)思ってもいない志望動機を取り繕い、学生時代に取り組んだこと等の話を10倍くらいに膨らませて語り、たいして御社で活躍できるイメージも沸かないくせに根拠のない自信をもって、面接で受け答えする。
就職活動はある意味で欺瞞に満ちているが、企業側だって都合が悪いブラックな部分があっても、言わない。このような就活をしていると、仮面を被っているような気持になってくる。🎭
「あなたはどのように活躍しますか?」
「どんなやりがいをもって取り組みますか?」
こんな面接官の質問に、当時の僕は、働いてもいない会社なのにわかるわけないよね?なに言ってんの?という本音を隠して、受け答えしていた。
就活は恋愛と同じ?
ある大企業の人事担当が、「就活は恋愛と同じです」といっていた。
つまり、この人と一緒にいたい(働きたい)と思えるかを見ています、と。たしかに、好きな人を前にして、しかも初対面で、自分自身をよく見せるのは当たり前なことだ。それができない(または、あえてしない)のは、ある意味で孤高の人。
企業人になると、自分自身をよく見せることの必要性がわかってくる。(仮に欺瞞だったとしても)必要であるならば、取り繕う行動がやれる人なのかどうかということ。それが、企業人としての常識なんだと。
ましてや、SNSなどの情報化社会において、悪いイメージは一瞬で広まってしまう。よく見せる取り繕う能力があるかは、必要なことなのかもしれない。
東京渋谷でエントリーシートを嫌々書いていたあの日から、社会人になって10年以上が経った今日。僕は、相変わらず、自分自身を人によく見せることは苦手だなぁと感じている。