創作昔話 善鬼坊(1)
これは私が若年の頃に採取した昔話である
昔 東北のある地方で人食い鬼が出る という
山があった 名のある修験者 僧侶が調伏
せんと足を踏み入れたが 還ってくる者は
一人とていなかったそうな 近在の村などは
その山を通らなければ人馬の行き来が出来ない
為に非常に難儀をしていた その時 村の
旅籠に泊まっていた 修験者で名を
金剛院 善峰といい 顔つきは鍾馗様のように
厳ついが とても穏やかに喋る人物であった
村の総代である 十兵衛が善峰に近在を悩ます
鬼を退治してほしいと願ったとき 善峰は
頷き 村にある無住の寺に安置してある
不動尊に祈祷をしたのち 無住の寺に集まってきた村人に これで大丈夫と言い 村を後にした