創作昔話 善鬼坊(7)
村人は衰弱しきった老僧が元は鬼であり
人食い鬼であると 代替わりはしても人食い鬼の話しはずっと続いていた その本人がいた
もしこれがなんの信頼もなく 人付き合いも
ないまま真実を知ったなら討ち取りもしたろうが
今の村人やその親世代にしては気の良い僧であった過去があり 苦悩の顔つきばかりが浮かんだ
だが今の村人には気の良い僧 それで良いのだ
善鬼は村人達の顔に受容の相が見え始めるや否や遺言として自分が食べてきた人々の遺骸が
自分が住んだ洞穴の近くにあると そこに宝篋印塔を建立し 弔ってほしいと言った後 息を引き取った
村人は遺言の通りに古びた洞穴の付近に石を重ねた墓を見つけ そこを近在の村の僧を呼び 念仏を唱えながら穴をほると遺骸が何十体も出て驚きを隠せなかった その隣に村人の浄財により村の石工によって宝篋印塔が建てられたのだ