映画「罪と悪」


directed by 斎藤勇起
Starring:高良健吾、大東駿介、石田卓也、村上淳、しゅはまはるみ、佐藤浩市、椎名桔平

3人が中学生だったとき、ある事件が起きた。町外れのボロ小屋、自転車の修理やら便利屋をやってる男は中学生たちとよく遊んでくれるおじさんだったが、実は近づいてくる中学生に性的暴行を繰り返す異常性ももっていたのだ。そこに結構足を運んでいた正樹。しかし、彼はある日、町の中心にある橋の下で発見された。どこかで頭部を殴られ、そのまま川に投げ込まれたというのが警察の見たてだった。正樹の同級生の春、晃、朔の3人は、そのボロ小屋の男の仕業だと確信し、小屋に押しかけ、もみあいになる。そして、その男は少年の一人に殴り殺された。当時、何も仕事をせずに自分を殴る父親との折り合いが悪かった春が、小屋に火を放ち、警察に自首をして事件は終わったはずだった。
  20年後、晃は警察官だった父の後を継いで刑事になって、父の死をきっかけに町に戻り、朔や春に再会する。街の暗部に精通し、さまざまな汚れ仕事を請け負う春の姿に、複雑な思いを抱く晃、そして警察官としての父が決して清廉潔白ではなかったことが上司の佐藤(椎名桔平)から明かされ次第に晃も街の暗部の姿に気づいていく。さらに20年前と同じように、ある少年が橋の下で遺体で見つかる・・・心の奥にしまっていた過去の事件の扉が再び開き始める。

 経緯も事件の内容もどこか「ミスティック・リバー」を彷彿させる内容だ。主になる3人の子役時代を演じた中学生たちがいずれも少年らしい、爽やかさと憂さと思春期特有の苛立ちと瞬発力を充分に発揮していたので、よけいに、20年後の大人を演じた高良健吾さん、大東駿介、石田卓也の3人の心に抱えるものの重さが伝わってくる。これだけイケメンを揃えたなら、恋愛話を絡めなかったことが実によかった。ここは3人の中学時代に背負ってしまった暗部・・・本当に正樹を殺したのは誰だったのか・・・最初に思い込んだのとは全く違う「事実」が明らかになっていく。そして20年前の男を殴り殺してしまった晃と罪を全部被った春。春がその後、街の「半グレになりそうな若者たち」の受け皿的存在になり、もっと大きな組織・暴力団とは一線を引く立場として存在している・・・・そしてその春の立場を警察が利用している・・・というかなり捻れた位置・・・それを許せない気持ちの晃・・・この3人の心情が組み、捻れ、ほぐれて、最後に事実が浮かび上がってくる・・・この辺の構成はすごく見応えありました。

 ほんまに1シーンだけ出てくる佐藤浩市・・・いやはや、ここで出てくると存在感がはんぱない!! たった1シーン、セリフもちょっとだけなのに、見終わって1週間、2週間、それでも佐藤浩市さんのシーンが鮮やかに浮かぶ・・・これはもう、この人でしか出せない空気感でしょうね。

前宣伝がほとんどなかった作品ですが、なかなかの良作でした。

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