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インクルーシブ・シアター・プログラム「家電の王子様」

SDGsとよく叫ばれているけれど、いまいち実感がわかない・・・持続可能な社会の実現を目指して・・・と日本語で言われても、具体的にピンとこない。
「インクルーシブ(inclusive)」は、むしろ単語一つなので、直訳してみる。「包み込む」という意味。
どんな状態の人も対象にする・・・年齢、性別、国籍、障害うんぬんを全部ひっくるめて、まるっと一緒に・・・ん? そんなに目新しいことではない・・・かなと感じました。

脚本家・・・のピンク地底人3号さん・・・金沢21世紀美術館(まるびぃ)の活動の中で何度かお話しさせてもらったり、ワークショップに参加したりして、関わり合いのある方です。
まるびぃの教育普及活動の「みんなの美術館、みんなと美術館」というプログラムに何年か、ゆる~く、ちょこちょこっと参加させてもらってました。

目が見えない方と一緒にアート作品を「見る」ってどういうことか、耳の聞こえない方と一緒にアート作品を楽しむってどういうことか・・・私自身は手話がなかなか覚えられないけど、でも、ただ隣同士で一緒に作品を鑑賞することが、特別何かを覚えるとかしなくても、普段通り自然にできるって素晴らしいよね・・・そんな思いを持ってました。

  この「みんなの美術館、みんなと美術館」というプログラムに参加していて良かった・・・と強く強く感じたのは、夫の後遺症との付き合いが始まってからです。
   言葉がうまく使えなくても、世界はもっともっと豊かで深いものだと・・・
   病気になる前の夫は、そのことに全く関心がなかったと思います。
   今もまだ、実感がないと思います。
   でも、私は、ほんの少しだけかもしれないけど、一足先に、「体全体を使ってのコミュニケーションは楽しい」ことを知っている。だから、そういった場にどんどん夫を連れ出していこうと・・・思っています。

「家電の王子さま」では、朗読、手話、どの家庭にもある普通の家電、ろうの役者、盲の役者、まるびぃのボランティアさんが登場し、映像や字幕も合わさって構成される演劇ですが、観客席の方も、赤ちゃん連れ、幼児さん連れ、盲の方、ろうの方、要約の方、と様々な状態の方が同じ場に居るわけです。
そういった「場」・・・今までの夫が全く知らなかった世界だと思います。
   まだ馴染めてない表情ありありでしたけど(苦笑)。

お話の展開は、とてもハートウォーミングであり、でも、成長と忘却という「一方向にしか進まない時間」によって作り出される残酷な二面性、そして、治せるものと治らないもの、いつか必ず壊れる・・・という真理など、考えさせられる深い内容も秘めていました。

     感想聞いたら、「最初から真相に気づいてた」みたいなこと言ってたけど(ほんま?)
   
   でも、インクルーシブってことを目指しての「みんなの美術館、みんなで美術館」というプログラムは、私を支えてくれたと思いました。突然、青天の霹靂のごとく、一緒に暮らしてる人が前と全く同じ・・・ではなくなった、でも、ずっと一緒に生きていく・・・ことへの「気持ちの持ち方」を支えてくれたのは、ゆるく浅くでも、こういうプログラムに関わりを持っていたからこそだと・・・つくづくと思いました。
ありがとうございます!

   

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