映画「彼方のうた」
directed by 杉田協士
starring : 小川あん、中村優子、眞島秀和、荒木知佳、新部聖子、金子岳憲、伊藤沙保
書店員の春(小川あん)は、道を尋ねるふりをして、ベンチに座っていた雪子(中村優子)に声をかける。春は、雪子の顔に見える悲しみを見過ごすことができなかったのだ。同じ頃、春は剛(眞島秀和)を尾行していて、その様子を確かめる数日を過ごしていた。春にはまだ自分が子供だったころ、街中で見かけた雪子や剛に声をかけた過去があった。春は、たびたび雪子の家で、雪子が作るオムレツを味わったりするランチタイムを過ごすようになっていた。しだいに自身が抱えている母親への思い、悲しみの気持ちと向き合っていく。
「春原さんのうた」と同じ、カフェ「きのこや」が一つの起点にはなるんだけど、本作は、ストーリーが割と明確で、しかも、主人公の春さんが結構、はっきりした雰囲気、どっちかというと沙知さんよりは、春さんの方が、私的には感情移入しやすかった。雪子さんと剛さんの関係性が、実ははっきりとは説明されないんだけど、元夫婦?なのかな? 剛さんの後を尾行してた春さんって、ちょっと大胆・・・というか、まぁ、そういうところが、沙知さんは絶対しないだろうな?って感じは受ける。でも、私てきには、春さんの方が、私自身に似てるかもって思う。
流れに身を任せる感じの沙知さんと、流れを自分で作っていく春さんと・・・ってのが大きな違いなのかな。
雪子さんの家に結局上がり込んじゃって、オムレツを作ってもらったり、ある時は一緒に作ったり・・・この手元を完全に見せないところが、心憎いよね~、なんでオムレツまで見せてくれないの~?おいしそうなのに~じれったい~ってオーディエンスに思わせるところ、なんか思わせぶりな?ってところ、ギリギリのところで自然に見せて撮ってる。あんまりその手法に酔ってるって思っちゃうと、作品全体がいや~な感じになっちゃうんだけど、そこへ行き過ぎず、距離感を保っている・・・つまりは「杉田協士ぶし」ってことなんだろうけど。
ず~っと主人公がマスク姿だった「春原さんのうた」よりは、その瞳の強さと同じぐらい、くっと唇を引き締めた表情の春さんを追った「彼方のうた」の方が好きですね~、ただね、余韻というところでいうと、「彼方のうた」は残念ながらあまり余韻が残ってないのよね~
確かに映画賞なんかも「春原さんのうた」に対して評価が高いのは、こういうところなんだろうね。
わかりやすさからいったら、「彼方のうた」なんだけどなぁ。
なぜにか、残ってないんだよね~