映画「SONG OF EARTH」
directed by Margreth Olin
starring :Margreth Olin, Jaargen Mykleen
ノルウェーの人里離れた山間部。フィヨルドの町、遠く氷河をのぞむ厳しくも美しい自然に囲まれた場所。年老いたひと組の夫婦が暮らしている。作家となった娘が、二人の姿をカメラに止めようと帰郷した。84歳になった父親は、「この国で最も美しい渓谷」と呼ばれる場所オルデダーレンを日々歩いて娘を案内しながら、自分の生い立ち、祖父や自分の父親のこと、最愛の妻への想い、そしてこの土地で自然と共に生きてきた何世代にも渡る人々の人生について、静かに語り始める。
とにかく、氷河の音・・・延々と続く巨大な氷の塊だが、実は水であることが、あちこちにできる瀑布が物語る。その氷の塊がゆっくりと流れる、低いゴゴゴゴという唸りのような音が圧巻だ。
一年を通しての、その自然の美しさ、壮大さ、神秘的な美しさ、もう息を呑む・・・
84歳の父親が、山道を登っていく・・・あまりに軽装に感じるけどね。日常の散歩コースなのか。
冒頭に、「初恋の相手は自然だった」という言葉・・・印象深かった。
人間のちっぽけさ・・・そこで人が何世代も渡って営みを繰り返していても、壮大な自然は全てを包んでその懐に抱かれる・・・しかし、時に自然は人々の生活を押し流し、命も奪ってしまう脅威的な存在でもある。
美しさと共に感じる「畏怖」
しかし、明らかに氷河が小さくなっていて、地球温暖化の大波に、このオルデダーレンも例外なく、さらされている・・・
冬になって、湖が凍ったときの透明さは、もう現実とは思えないほどの神々しさだった。
単なるネイチャー番組にならずに、映画として作品となっていることは、この父親の語り、そして夫婦の静かな眼差しと愛情満ち溢れる仕草だ。人の営みは、自然の尺度に比べれば確かに短いし、あっという間ではあるけれど、その中で精一杯生きていく人を支えるのは、やはり慈しむ心だと・・・そこが感じられるから、映画としても美しいのだと感じた。
ラストに「初恋の相手を忘れないで」という言葉もある。
人は最後まで自然と共に生きる愛おしさを忘れてはいけないのだ・・・