映画「オオカミの家」+「骨」


原題:La Casa Lobo (スペイン語): The Wolf House(英語)
directed by Christobal Leon, Joaquin Cocina
starring :Amalia Kassai, Rainer Krause

美しい山に囲まれたチリ南部、「助け合って幸せに」をモットーに他との接触を絶って暮らすドイツ人集落「コロニア」。動物が大好きな少女マリアは、ブタを逃してしまったために厳しい罰を受け、耐えきれずに集落から脱走する。森の中の一軒家に逃げ込んだ彼女は、そこで出会った二匹の子ブタにペドロとアナと名付けて世話をするが、やがて森の奥からマリアを探すオオカミの声が聞こえる。マリアが怯えていると、子ブタは恐ろしい姿に変わり、家は悪夢のような世界になっていく。

同じ時期に同じシネモンドで上映があった「コロニアのこどもたち」を見たかったなぁと思う。そうするとより一層、マリアの怯えていた「オオカミの声」が何だったのか、強烈な映像体験とともに強い印象を味わっただろうと思う。
チリに第二次対戦後に作られたドイツ人入植者の集落・・・ナチスの教えが色濃く、性的虐待や拷問などが行われていた宗教カルトで、ピノチェト政権下で恐怖政治に加担していたとされていた「コロニア」

とにかく、本作はストップモーション・アニメーションで、描いては塗りつぶして、また描いて・・・なのかな? 描いて撮って、消してまたちょっとだけ動いた絵を描いて撮って、また消して・・・なのか、とにかく塗りつぶし跡(消した痕跡)が残っている状態で上塗りされ、また撮って・・・という・・・・その厚塗り感がすごくて、なんかとんでもない凄いものに飲み込まれていくような、身体が熱ってくるような感覚のアニメーション・・・さらに、音!! 音がものすごかった!!

メリメリメリ、パチパチパチ、キュルキュル・・・パラフィン紙を丸めて握るような音が最初から終わりまで止むことがない。その間に時折、「マリア〜」という男性の声が・・・これが彼女を追ってきたオオカミの声なのか。
豚・・・はどういう存在なのか・・・マリアの愛する者のようで、実はなんだか姿が変わり果てていくのは、愛情かけても伝わらないものは伝わらない、分かり合えないってことを言いたいのか?
  とにかくストーリーはあってないような感じだが、「ブラームスの子守唄」が美しく歌われる・・・のだが、「マリア、眠ってはいけない」と戒めの言葉もあったような。
美しい声で嘘を歌う・・・逃げても逃げても追ってくる者・・・なにか締め付けられるような恐怖が、ものすごい絵の洪水と、メリメリ、パキパキの音の渦の中に翻弄され、終わったとき・・・「ああ、映画を見ていた・・・だけだったんだ、よかった〜」という気持ちになった。

ところで、本作の前に小さな作品、モノクロで「骨」という作品が併映されている。
100年くらい前に作られた映像作品を修復して・・・と言っていたけど、それすら「ほんまか? 実は、そういうふうに思わせて今作った映像作品なんじゃない?」と思わせているのかって勘繰ってしまう。
この「骨」が、死んだものの骨を組み立て蘇らせる・・・みたいな感じで、アート作品としての色が濃いが、これ、美術館で観たいと思った。

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