映画「にびさびの巣」

directed by 岡田深

Starring:竹内啓、岡田深、ノブヲ、夏目志乃、一芭、有希久美


東京で暮らす晴人(竹内啓)は、恋人(夏目志乃)との関係もうまくいかなくなり別れてしまった・・・その頃、地元・能登半島で暮らす姉の茜から、祖母の家の取り壊しの連絡が入る。祖母に遺言があって「家を壊す時は、その家の整理を必ず晴人と茜でやってほしい」と言われたので、本当に何年ぶりかで地元に降り立つ。地元に暮らす幼馴染(ノブヲ)と飲みながら、変わらないと思っていた故郷の街も変わっていき、人も変わっていくことに、とまどい、時間の変化の波に乗れない自分に戸惑い苛立っていた・・・


45分ぐらいの短い作品・・・

私が初めてこの映画を見たのは、2年前だろうか、金沢21世紀美術館の「広坂シネマクラブ」で、試写会があったのだ。

勉強会での試写会だったかなぁ・・・

その直前か直後に、是枝監督が、能登半島・輪島で撮った映画「幻の光」も、フィルム上映会の候補作ということで試写会で鑑賞してるんですよね。


この2本とも、今、能登半島地震後、能登半島応援上映ということで、今、金沢のシネモンドでかかってるんだけど・・・


なんか不思議・・・どちらも能登半島地震の前に劇場版で見ていて、お正月に能登半島地震が起き、映画のロケ地は大きな被害を受けてしまってる。


この「にびさびの巣」では、自分が幼い頃から何度も訪れていて、あるのが当たり前だった家も、でも、自分が大人になったのと同じ年月を経て、住む人は老いていなくなり、家は古びて痛んでいて、いよいよ壊すことになる・・・

使い込まれた台所では、コップ一つ、古い・・・今時こんなコップを使ってる家ってないやろ?みたいに時代を感じるし・・・

幼馴染の男性が「この家、無くなってしまうんや、寂しいな」と2回くらい繰り返すが、「誰にも止めることができない」時の流れ・・・をひしひしと感じる。

姉と晴人との距離感は結構遠いものがあって、二人の会話は噛み合わない。

でも、古い写真を次々と窓(結構汚れてて、長く手入れされてない感じが印象的)に貼っていく、繰り返し作業が次第に二人の距離を縮めていくところ、何かじんわりと伝わっていくものがあった。

私も妹と長くよそよそしくなったままだけど・・・


晴人が海へ出るシーンがあるが、そう、この辺って、何度も何度も・・・私も金沢に越してきてから30年、何度も何度も「のと・里山里海道路」から見ていた景色だ。遠浅で、砂浜がず~っと続く海岸線・・・晴人が後から姉に「海が近くなってて、怖い」とつぶやくシーン・・・能登半島地震で津波被害も出た今、そのセリフを聞くと、すごくぐさっと心に刺さる・・・

いつ起きるか誰も予想できない地震・・・でも、今から思うと・・・痩せていく砂浜に対して、何もできなかった・・・んだろうか??

危機意識って・・・どうだったんだろう??

いつまでも大丈夫、いつまでもこの遠浅の浜は優しくて強くていつも変わらない・・・ってみんな信じてたよなぁ・・・


でも、変わらないものって、あり得ないのだと・・・

寂寥感がぐっと伝わってきた、今回の鑑賞でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?