映画「まる」

directed by 荻上直子
starring : 堂本剛、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、おいでやす小田、濱田マリ、柄本明、五月女太一、片桐はいり、吉田鋼太郎、小林聡美

美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家(吉田鋼太郎)のアシスタントをしている男、沢田(堂本剛)。ボロアパートで、毎日毎日、隣の部屋の男(後から漫画家とわかるが):綾野剛の呻き声と物音に悩まされながら、独立する気もなく、気力も覇気もない、言われたことを黙々とこなすだけの日々。しかし、通勤途中に事故に遭い、腕を怪我して仕事を失ってしまう。部屋に帰ると蟻が一匹、キャンバスを這っていく。その蟻に導かれるように描いた「○(まる)」。古道具屋に持って行ったそれが、何十倍もの値段で売れ、いつしかSNSで拡散され、正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名となる。「円相」・・・はスピリチュアルな作品として、誰もが知る存在となった。「さわだ」は次第に、「まる」に囚われていく・・・

  現代アートの現状を風刺してるようにも感じた。「何でもあり」「始めたもん勝ち」的な「危うさ」だったり、大御所的な作家がアシスタントに全部作らせてるのに、なんだか高額な作品となるとか、「摩訶不思議さ」や「カオス」が作品として成り立ってたり・・・

 円相ってあったよなぁ・・・それのどこが?と思いながらも、でも、なんか強烈に惹かれた「まる」ってのも確かにあった。
 
ひょんなことから、一攫千金みたいに、一気にスターダムに上り詰めた「さわだ」
一方で、毎日毎日描いて描いて描いてるのに、技術はすごいのに、ちっとも日の目を見ない漫画家
また、こつこつと、バカにされても腹立つことがあっても、心の奥にしまい込んでいるのか、いつも淡々と仕事をきちんとしているコンビニバイトの男。
このコンビニバイトの男を森崎ウインさんが、なかなか印象的に演じてた。きっと心の奥底ではすごく葛藤や怒りがあるのかもしれないけど、でも、それを自分自身で浄化させて、諦観もあるかもしれないけど、日々をコツコツと黙々と営んでいく。こういう人が実は一番多いけど、そのことに価値を見出す人は少ない。
でも、日の当たらない場所でも素直に生きている人・・・
「さわだ」は、アシスタントをしていたときも、「円相」で一躍スターダムになっても、心休まることがなかった。心に平穏がなかったのだ・・・
でも、同じ1日を過ごすことはどの人にとっても平等で、それをどういう表情で1日を生き切るかは、その人しだい。どこにも角がない「まる」・・・生きることを慈しむ心があるかどうかなんだろうな。


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