映画「明日を綴る写真館」
directed by 秋山純
starring : 平泉成、佐野晶哉(Aぇ!group)、嘉島 陸、咲貴、吉田玲、佐藤浩市、吉瀬美智子、高橋克典、田中健、美穂純、赤井英和、黒木瞳、市毛良枝
新進気鋭で評価も高いが、自分自身では納得できず憂鬱顔で無愛想なカメラマン・太一(佐野晶哉)は、ある写真展で、ケーキの前に微笑む女性を撮った、鮫島(平泉成)の写真に心を奪われる。岡崎でさびれた写真館を営み、無口で初老の男の鮫島の元に、太一は東京での華々しいキャリアを捨て、鮫島に弟子入りを志願する。鮫島写真館の入り口にも、そのケーキの前の女性の写真が飾られていた。家族とのコミュニケーションすら避けていた鮫島は、写真館の客に対しては丁寧に会話を重ね、カメラと被写体という関係を越えてまで深く関わる鮫島の姿に太一は驚きを隠せない。やがて、あのケーキの女性とも出会い、「ケーキちゃん」と読んで、彼女が営むケーキ店の宣伝にもインスタグラムを通じて深く関わった。無口でいきなり行動に移す鮫島の姿に振り回されながら、太一は次第に自分に足りないものに気づく。一方で、鮫島にも家族・・・とりわけ息子との間の「想い残し」があることを知り、また、太一もずっと心にひっかかっていた母親との関係に目をむける。互いに一歩踏み出した二人の起こした奇跡のようなイベントは・・・
80歳にして、俳優生活60年にして初の主演作・・・平泉成さんが、何かを作り込むことなく、そこに存在して、言葉少なく語る・・・もうそれだけで「絵になる」・・・素敵な作品だった。
寂れた写真館・・・の佇まい、なんということない、生活空間が素敵・・・特に、愛犬を繋いでる大きなソファみたいなのが置いてある、部屋?・・・がなんとも素敵で、そのまんまアトリエになるような造り・・・これ、建物のどの位置にあるんだろう、すごく印象的だった。
まるで外みたいな? 柔らかな自然光に包まれる部屋。
平泉成さんは、もう数えきれないぐらいの出演作の中で演じてきた、脇を支えるバイプレイヤーだけど、ほんと味があるというか、もう立ってるだけ、カメラを構えてるだけで存在感がある、そういう役者さんだけど、対する佐野晶哉さんは、アイドルグループのイケメンだけど、最初はほとんど話さず・・・目線も上げず・・・の気鬱そうな硬い表情での冒頭からのシーン、この二人の冒頭のシーンで、この作品の質の高さが十分伝わってきた。セリフがほとんどなく、夕日の中をひたすら無言でカメラを構えるバックに印象的な音が流れてる・・・この長さがとても印象的だった。
その後、ストーリーが進んでいくにつれ、太一の表情と声がどんどん明るくなる。特に「ケーキちゃん」と呼んでる女性の前では本当にかわいい表情を見せる・・・
この後、互いの家族関係の修復へと話が進展していく中で、今は年齢相応に落ち着いている鮫島が、激しさで家族を翻弄してきた過去があること、息子との関係がこじれていること、この辺、他人である太一にむける目と、実の息子に向ける目が違ってて、でも、その根底にあるのはどちらも温かいものだ・・・という、そういう展開と、太一自身が次第にオープンマインドへと変わっていく展開とが重なっていく。
「写真は、被写体を撮っているようで、実は自分自身を撮ってるんだ」という鮫島の言葉はとても印象的だった。今や人の数だけカメラがあり、誰もがパシャパシャ撮って、しかもその場ですぐに見れて、現像だプリントだの時間が必要がなくなった時代・・・その中で「カメラマンという職業がちゃんと存在する」、そして、撮るカメラマンが違うと、写真が違うということも、「実は自分自身を撮っている」という言葉にすると、すごく納得感がある。
最後に残っていた、自分自身の一番身近な人たちに対する「想い残し」を・・・解いてあげることができるのは、これも写真のできることなんだ・・・
なかなか素敵な結びだった。
舞台挨拶付きの上映会で、太一を演じた佐野晶哉くんがめっちゃ関西弁だったのね。そして後から知ったことだが、実は、私の母校の高校の遠い遠い後輩だったんだ~
へぇ~~~、西宮っ子なんだね~
これからも注目しとくね!