発酵文化芸術祭:大手町洋館(旧・山田邸):遠藤薫「三六〇、六〇、九〇を(内科室にて)」
発酵文化芸術祭もこつこつ回っているのだが、今回の場所はすごかった。
よく通った場所にある、あれ? この近くは何度も来てる・・・夫も「ここはよく知ってる寿司屋がある、ここは何度も通った」と言ってたし・・・
白鳥路ホテル、KKRホテルが並んでいる場所の並びにある・・・へぇ~~
すごい建物だった・・・旧・山田邸
昭和初期に建てられた洋館。もともとお医者さんの家で、金沢大学医学部の教授も務められた、山田詩朗氏の邸宅。ドイツのハーフ・ティンバー風のデザインを取り入れながら、日本の伝統的な木造技術や工芸的技術も生かした贅を尽くした建物・・・と公式ガイドブックにある。
近くを通っていた経験もあるのに、全く知らずにいた建物だった・・・
その内部、いや、前庭からお庭も含めて、邸内に遠藤薫さんの作品「三六〇、六〇、九〇を(内科室にて)」を鑑賞。
実は、発酵芸術文化祭、ちょ~っとアート作品としては弱いなぁと・・・正直、がっかり感を感じていたところだったのだが、ここへきて「真打登場!」と喝采を送りたくなった!
この邸宅見学だけでもすごいのだが、そこの一階の部屋という部屋、全部を使ったインスタレーション作品で、これぞ現代アート!!と小躍りしたくなるほど、見事でした。
いやまて、発酵!だから・・・と思い直して、もう一度「発酵」という観点から見ていくと、すごいすごい!と感嘆していたときに気づかなかった細部に「発酵」が織り込まれていることに気づく。
陶の破片のうち、真っ黒なもの・・・途中で、どきっとした。これ、珠洲焼きの破片? 後から公式ガイドブックを辿ると、やっぱりそうで、ただ私が最初に思った「1月の地震で壊れた破片?」ではなかった。作家が焼き損じや何かで壊した破片が集まっている集積所みたいのところから集めてきた。陶は土から作っていて自然に優しいのか?と思っていたが、実は発酵させて練って作って焼いたものだから、自然に還らないんだそうだ。ああ、そうだ何千年前の陶器が出土してるやん。
陶芸に発酵が絡んでるとは思ってなかったなぁ・・・
さらに、何百と繭玉がある・・・そして、しわちゃけた布、藍染の布のハギレ・・・藍染は発酵させて、すごい匂いの中で染められていくなぁ・・・その古い古い絹の古布に土をかけてあったり、ああ、あれは藍の葉か、そして薄い白い透けるような絹は、医者の家だからたくさんあるシャーレなどにカイコを這わせて作らせた薄い薄い絹の膜だそうだ。
ところどころに、大きな写真・・・暗くてよく見えないけど、近づいてよく見ると、ろくろを回す手が見える・・・濡れた粘土に添えられる手を大きく引き伸ばしてある。なんかドキッとする。
まだ外からは厳然として建っているが内部は住む人もいない、どんどん朽ちていくような、この建物の部屋の中を、見事にアート空間として、作品として強く訴えかけてきた・・・
うん、まだ大野地区と鶴来地区が残っているが、この「旧・山田邸」の作品で、「ああ、発酵文化芸術祭、チケット買ってよかった!!」と思わせてくれた。