映画「蛇の道」

Le chemin du serpent(French)
directed by黒沢清(Kiyoshi Kurosawa)
starring: 柴咲コウ(Kou Shibasaki)、西島秀俊(Hidetoshi Nishijima), ダミアン・ボナール(Damien Bonnard),マチュー・アマルリック(Mathieu Amalric),青木宗高(Munetaka Aoki)

8歳の娘を惨殺されたアルベール・パシュレ(ダミアン・ボナール)は、新島小夜子(柴咲コウ)というパリ在住の日本人心療内科医の協力を得て、犯人と見られる男(マチュー・アマルリック)を拉致・拷問する。そしてアルベールの娘の死に組織的な臓器提供を主目的な児童人身売買が関連していることがわかり、さらに、小夜子が徐々に不審な動きを見せ始める。

全編、フランスロケ、主要人物はフランス語で・・・という映画、でも、日本人監督の黒沢清監督で角川が制作しているわけで・・・しかも、1998年、同じ黒沢清監督で撮られた「蛇の道」のセルフリメイク作品・・・もはや邦画とか洋画とかというジャンル分けも無意味かな。
 柴咲コウさんがフランス語で、冷めた表情で、男たちを手玉にとってこき使っていくのが痛快。さらに男たちの監禁場所・・・その無機質感がすごくいい。
 男たちを手玉に・・・翻弄して・・・とはいえ、エロ仕掛けじゃないところが良い。心療内科医としての冷静さ、人の心理に巧みに入っていく様が、そんなキレキレって感じじゃないのに、凄みがある。日本女性の「芯の強さ、得体の知れない怖さ、不気味さ」を武器として操る・・・真意を見せない、いわゆる「能面のような表情」がフランス人男性の中にあっても、引けを取らない、渡り合っていく様がとてもよかった。
  展開的にはかなり強引、そんなわけないやろ! 的な乱暴さは大いにあるけれど、まさしく「蛇」のような執念深さがずっとつきまとう・・・この柴咲コウさんのキャスティング、これは慧眼だと思った。今の女優さんたちの中でも小柄で顔立ちも派手ではないのに、フランス人俳優の中において目立たないのに、「芯の強さ」を感じさせるキャラクターとして彼女を置いた・・見事に成功していると思う。しかも多くを語らないから謎めいていて印象に残る・・・なるほどなぁというキャスティングだ。
 ラストに行くに従って、どんどん追い詰められていく「相棒だったはず」の彼も、自分自身で偽ろうとしていた「自分自身の犯した罪」に気づいていく。心療内科医だからこそ、彼を相棒に選んだ・・・なるほどねぇ、上手いなぁと唸らせられた。

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