奥能登芸術祭2023 ひとり旅−3 :人の営みと作品
今年5月の連休中に起きた震度6を超える大きな地震、珠洲市が震源地で家屋に大きな被害が出ました。奥能登芸術祭の開催そのものも危ぶまれたわけですが、会期を少し後ろにずらしての開催。
「アートどころではないやろ」という憤りもあったかと思います。
実際、冬を迎えるこの時期でも、屋根にブルーシートがある家屋、門扉に「被害状況判定証明書」が貼られているところも多い。
今回の芸術祭では、特に有料の作品のところでは、近くの農家の人が野菜などを販売しているところが多かった。里芋、椎茸を買って帰ったけど、香りがよかったし、里芋はよく「切ってみて初めて傷んでるのがわかっちゃう」ってことが多いけど、とても新鮮で美味しかった〜
珠洲市は寺社が多く、とにかく祭が多い。しかし、祭の担い手になる人が、特に若い人がどんどん減って過疎化が進んでいる。子供たちも減ってしまい、芸術祭の会場になるのは「廃校になった小学校」「閉鎖になった保育所」の多いこと、多いこと・・・保育所など建物がとても新しいのに子供たちがいなくなったのだ・・・
そんな切ない気持ちにもなるし、また、北前船で栄えた大きなお屋敷、大きな蔵、漁師の生活にかかせない「魚網の倉庫」・・・
前回の芸術祭でも使われた建物が、今度は別の作家さんの作品の場として新たな展開となっている・・・そんな「複数回使われている建物」が結構あって、おもしろいなぁと感じた。前回の記憶を呼び起こすことが結構楽しかった。
シリン・アベディニラッド:「流転」・・・この魚網の蔵、前回も違う方の作品があった。
こっちの方が好み・・・作品だ!という印象が鮮明
梅田哲也:「遠のく」・・・能登にこんなに大きな養蚕飼育所の建物があったなんて知りませんでした。まだあちこちに養蚕のなごり、蚕のまゆが残ってたり・・・そんなだだっ広い倉庫みたいなところに、残されていた扇風機とかバケツ、電球などを使って、密かにこっそり、ひっそり動いてる・・・
河口龍夫:小さい忘れ物美術館・・・実はたぶん初回から何度も見てる、この廃線になった飯田駅の駅舎を使った黄色い部屋は知ってるけど、今回初めて、階段登って上のホームに停まってる貨物車の中・・・これ、実は今回初めて鑑賞しました。今まで、ここは街中に近いこともあって、自転車で自分で回ってたんですよね。階段の上は単に道路に出るんだと思い込んでました・・・この上こそホームだったんだ〜! 貨物車の中にちゃんと3回目にしてここを発見したことを書き記しました。
北山善夫:人間は赤ちゃんから生まれる・・・奥能登芸術祭2023 私てきにベスト1の作品
作品の力という点ではなく、演出力というか・・・
まず公式ガイドブックの紹介文・・・これ、作家さんは何か注文つけたんでしょうか?「アレについては書かないでくれ」みたいな。
それとも、このガイドブックが出た時点では、まだこのドローイングしかできてなかったのか??
にしても、この紹介文とドローイングで、あの作品と全く結びつかない・・・ですよ。
いや、作家さんとしては「ちゃんと書いてるよ、エッセンスはしっかりはっきり書いてあるでしょ!」と言いたいんだろうなぁ(苦笑)。
質問したら、絶対そう答えるよね?
でも、見事なぐらい「良い意味での裏切り」でした。
最初から作品の絵を掲載していたら、こんなインパクトは生まれなかったと思う。
強烈でした!!
怖かった・・・
人形ってこうも怖いものなのか・・・夢に出そうです・・・
やっぱり「ひとがた」・・・自分の身代わりに災難を被ってくれるもの、子供の頃に捨て去ってきた時間に生きていたもの、過去・・・とにかく、これでもか、これでもか・・・と並んでいる人形には、もう圧倒されました。
人の営み、そしてもっと大きく宇宙の摂理にまで及ぶ「世界観」
後々、ほんまに夢に出てきましたよ〜