映画「バカ塗りの娘」


directed by 嶋岡慧子
starring: 堀田真由、坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、酒向 芳、松金よね子、篠井英介、鈴木正幸、王林、木野花、坂本長利、小林薫

青森県・弘前。青木家は津軽塗職人の父・清史郎(小林薫)と、スーパーで働きながら、父の仕事を手伝う娘・美也子(堀田真由)の二人暮らし。母(片岡礼子)は家を出て他の人と再婚してしまっていて、兄(坂東龍汰)も父の仕事を継ぐつもりはなく、家を出て美容師として働いている。
しかし、清史郎はいずれは長男が家に戻って津軽塗りを継いでくれるか、そうでなければ、もう自分の代で終わりにしようと考えている。また清史郎自身、なかなか自分の父の作品を超えることができず、限界を感じていたのだ。
しかし、美也子は誰にも期待されていないことは知っていながらも、津軽塗を続けたいと考えていた。寡黙で不器用な清史郎は、津軽塗で生きていくことは簡単ではなく、女には無理だと突き放すが・・・

10月始め、弘前市を訪れたとき、町中に「バカ塗りの娘」のポスターが貼られているのを見ていたので、シネモンドで上映があったのですぐに見に行きました。
実は、ちゃんと津軽塗りの品物自体見てなかったなぁと後悔。
輪島塗の金沢から来てるんだし、津軽といえばやっぱりリンゴにシードルだろうし・・・と思ってて、ちゃんと見てなかった・・・
塗っては研いで、研いでは塗ってをひたすら繰り返す津軽塗。表面に菜種の種を巻いて丸い点々を表面につけて独特の模様をつけたり、塗っては研ぐことを繰り返すことで何通りもの模様を作り出すことができる。
ひたすら塗るので、「バカ塗り」と呼ばれるそうだ。
  「漆、続けたい」という自分の想いを父になかなか言い出せない美也子・・・じれったくなるぐらいだが、そこもまた津軽の人・・・ということかもしれない。
  兄が、同性愛者で、父・清史郎の想定外な方向へ行ってしまう・・・もう自分が津軽塗やりたいと言い出せる機会もなさそう・・・と気持ちの行き場がなくなってしまった美也子に声をかけたのが、兄のお相手の男性・・・で、そこでかつて自分たちが通った小学校、廃校になった校舎に残されたピアノに、津軽塗を施したい・・・そんな美也子の情熱が、父の気持ちも動かしていく・・・

小林薫さんの職人としての佇まい、風格、まさにそこに津軽塗を長年やってきた人・・・がいる・・・と実感させてくれる。
そして、もう一人、近所に住む、美也子に何かと相談に乗ってくれるおばちゃん、この役を演じた木野花さんが見事でした。
板についた津軽弁・・・あまりに自然なので、後から調べてみたら、ご自身が弘前大学出身だった・・・そうか、そういうことか〜
でも、木野花さんは、九州の方言も、大阪弁も、京都言葉も名古屋言葉もごく自然に操れる女優さんだけど、この津軽弁、そして、佇まい、空気感、もう本物!って唸らせられました。
あまりに自然に溶け込んでるし、立居振る舞いもその場所になじみ切ってるけど、でも、演技なんですよね、これが・・・
もうため息もんです。素晴らしかった。

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