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新刊試し読み! 石黒圭・石黒愛著『言語学者も知らない謎な日本語』

こんばんは、教育評論社 編集部です。
今回は10月28日に発売になった『言語学者も知らない謎な日本語』(石黒圭・石黒愛著)の試し読み記事です。

この刊行に先駆けて行われたイベント(11月19日までアーカイブ販売中です)では、告知期間が短かったにもかかわらず、
大変盛況で70名の方にご参加・ご視聴いただきました!
ありがとうございます。

イベントのゲストである国語辞典編纂者の飯間浩明さんには
「日頃は日本語を教える側である石黒さんが、実の娘さんたちから教わる側となって若者言葉を学び、その言葉を総体的に記述している点。文法書として全体を記述している点が優れている」と評していただいた本書。
さっそく試し読みをどうぞ!



誌面はイラスト付きの対話形式になっています!



* * *

その後に、会話のなかにでてきた若者言葉について石黒さんの解説が入ります。

推し
終止形を連用形にすると名詞として使える。そのことに気づくと、途端に言葉のネットワークが広がります。「はさむ」ものだから「はさみ」、「流す」場所だから「流し」、「立って食べる」から「立ち食い」、「引き出す」から「引き出し」、「首に飾る」ものは「首飾り」、「物を置く」ところは「物置き」など、動詞から魔法のように名詞を作ることができます。
麻雀用語は、連用形による名詞の巣窟です。「あがり」「当たり」「流れ」「鳴き」「待ち」「決め打ち」「引っかけ」「振り込み」「ツモ切り」「対子落とし」「全突っ張り」など、こうした言葉がなければ麻雀はできないと思うほどです。
「引きが強い」の「引き」もまた麻雀用語ですが、「押しが強い」の「押し」は性格の形容です。しかし、「推し」となると意味が違います。応援したい対象○○のことを以前は「○○推し」と言っていたものが、単独で使用されるようになったものです。人に勧めるものを「お勧め」と言いますので、「推し」自体が単独使用されても、理屈としてはおかしくないのですが、「推し」にはサブカルの香りがします。そこには、「萌え」や「映え」と共通する感覚があるように感じられます
文化庁の2022年度の「国語に関する世論調査」によれば、全体の49.8%が使う言葉、49.2%が使わない言葉だとしており、拮抗していました。おそらく本書が出版される時点では、使う派が過半数を占めているのではないでしょうか。

(本書の13頁につづく)


「推し」以外にも、「誰得」「メタい」「控えめに言って」などよく耳にするけど、文法的にはどうなのかな? と知りたくなる言葉が目白押し。

ぜひ店頭などでお手にとってみてください!

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▼著者プロフィール

石黒圭(いしぐろ・けい)
国立国語研究所教授、総合研究大学院大学教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授。
1969年大阪府生まれ。神奈川県出身。一橋大学社会学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文章論。1999年に一橋大学留学生センター専任講師、2004年に同助(准)教授、2013年に一橋大学国際教育センター・言語社会研究科教授を経て現職。
主な著書に『コミュ力は「副詞」で決まる』『文章は接続詞で決まる』『語彙力を鍛える』(以上、光文社新書)、『この1冊できちんと書ける! 論文・レポートの基本』(日本実業出版社)、『よくわかる文章表現の技術I~V』(明治書院)、『文系研究者になる』(研究社)、『ていねいな文章大全―日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント』(ダイヤモンド社)、などがある。

石黒愛(いしぐろ・あい)
首都圏にある某大学文系学部に通う大学2年生。石黒家の三姉妹の長女。

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