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遺言四十

死ぬ前に40個もの遺言があるだろうか。
それでも私は生きている。

脳により行動言動があることはわかっている。
抗がん剤のような薬を投与すれば余計に制御できなくなることも知った。

わかっていた。
どんなに親しくてもあの言葉は決して口に出してはならないことも。
それでも許してくれたパパ。

その言葉が最後だったわけではないが自身の脳と心とは真逆のことを発していた。

その言葉を発した後も普通に長電話をしていた。
それでも…

病で倒れたとて、何も死ぬことはないだろうよ。
その苦しみから解放された死であればいい。

そちらの世界では苦しみがないだろうか。
今、どこでどんなふうに過ごしているだろうか。

忘れたことはない。
忘れる、忘れられないではないが。

ただただ楽しかった。
笑いしかなかった。

ありがとうパパ。
綺麗事の生きてる人間の「ありがとう」の申し訳なさ。

ただただあの頃の笑いがまた欲しい。
あの頃に戻りたいのではない。

あのばかばかしい空気と会話。
最初で最後の心の友パパ。

命日以外にこうして想い出すことにするよ。

やはり月並みに。
なんで死んだんだよ。
その病を恨むこともしない。

パパ。
なんでも受け入れてくれ笑うこと
事を慈しむ美しい心を運んでくれたパパへ。
月並みにありがとう。

いのち短し
明日は我が身はなく

いのち短し
明日はなく

いのち短し
後悔も慈しみ

いのち短し
いのち短し

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