カレンダーガール7 有希と由紀とリナ
カレンダーガール7 有希と由紀とりな
20才未満の方の閲覧はご遠慮してくださいね
ちなみに今回は時事ネタ、などを含むスピンオフとなっています。
御供えに手を出すな!
「たいくつう」
カレンダーの中で微笑んでいたはずの君が突然、手にしていた文字カレンダーをポトリ、と落として不満げに言う。
海辺で腰までのばした
サラサラな黒いロングストレートヘアで白いワンピースを着てまっすぐに前を見ていた彼女だったけど同じポーズばかりなのはさすがに飽きたのだろうか?
「そー言うわけじないけどさ、この部屋、しょっちゅうカーテンしまっているし、あんたの兄貴もお母さんも覗きに来るわけじゃないし」
そりゃあそうだろうたった一人娘がたくさんの男達に手篭めにされたとはいえ走って来る大型トレーラーの前に飛び出して自殺をはかったんだから。
「まるで人ごとみたいに言うのね、自分自身のことなのに」
さっきからずけずけとボクに対して愚痴をこぼしながらカレンダーの中で好き勝手に動き回っている少女の名前は『有希』、『有』に『希』と書いて『ゆうき』と読む。
「ちょっと、君がやたら動き回っていることがバレたらボクも疑われかねないんだから」
ボクは思わず愚痴をこぼしてしまう。
ボクだって彼女と同じ写真の中に閉じ込められた人間なのだから、いや正しくは人間と言ってよかったかどうか何んてわからない。
今のところ2人は写真の中から飛び出ることは出来ない。
というか葉類亜希とかいう怖いお姉さんの警察官に何度も命令されている。
動くななんて言われてもなあ、通っていた中学校の制服であるセーラー服を着てニコリともしないでお義理でピースサインをして暗い表情で校門の前に立つ超ショートカットのボクはどう見ても女装した男子生徒にしか見えない。
「いかにも遺影ていいじゃない、ゆきりんは」
「いつからそんな変なニックネームで呼ぶようになったんだ有希は」
ボクは抗議の目でカレンダーの彼女を睨み返した。
「あら怖い、まるで怨念の遺影ね、後で唇の端から流れるひとすじの真っ赤な血でも描いてあげようか?」
よしてくれ、それじゃぁマジもので『呪いの遺影』になってしまう。
『呪いのイエーィね、それもシャレがきいていて面白いんじゃない?」
さっきからボクと彼女は別人格のように喋っているけど本来元々僕達は同一人物、彼女はアイドルを目指して家出をしていた頃の自分であり長いサラサラのロングヘアはいわゆるウィッグ、付け毛というよりはほとんどかつらだった。
そして服の下のブラジャーとパンツの後ろにはプロポーションをよく見せるためのパッドが仕込まれていた。
「でも今のあたしは根暗だった頃のあんたみたい女装男子じゃないんだからね!」
生意気にも挑発してきたのでボクもついつい大声で怒鳴り返してしまう。
「だからボクは女子だって何度も何度も」
その怒りに任せたままついつい右手にぶら下げていた通学カバンを校門の少し閉じかけていた門開きに叩きつけてしまう。
「あれ、いま有希の部屋から変な物音がしなかったか」
兄貴の声が聞こえた。
ヤバい、少し自重しないと。
「やめてよ、悪い冗談は、それでなくても我が家は近所の人たちからの変な噂が絶えないんだから」
突然に怯えた声になる母親の声。
「ああ真っ暗な部屋の中で何か棒状の鈍器を持った白い幽霊が徘徊していたとか?」
兄貴は突然にその近所での噂の一例を語り始めた。
何のことはない空腹に耐えきれなくなった有希がカレンダーから飛び出してボクの遺影の前に備えてあったフランクフルトを歩きながら食べていただけなのだが。
「普通は肉とかその類は供えないよな」
ボソリとボク。
「何言ってるの?犯人は由紀、あんただよ」
突然ズバリ有希は指摘してきた。いやそんなことはした覚えはない、はず?
「下で寝ている母親の枕元に立って『フランクフルトが食べたい、私を酷い目に合わせたあのにっくきフランクフルトを喰らい尽くさないと私は成仏できない』なんて言っていたぞ、そのあと彼女は恐怖に怯えた目をして飛び起きるとガウンを羽織って近所のコンビニに買いに飛び出していったけどね」
ボクってそんなにあの輪姦がショックだったんだと改めて再認識させられて自分でも納得し始めていた。
あれ?私?ボクは母親に対してもそんな一人称は用いたことがないぞ、ということはつまり。
「有希くん、今のは絶対に嘘だよね?何しれっとボクのふりしてママの枕元に立ってとんでもないこと吹き込んだのかなぁ」
ボクは思わず手にしていた学生カバンを彼女めがけて投げつけそうになったが何とか思いとどまった。
ところでボクというのはこの楓山家の一人娘でフルネームは楓山有希というらしい、らしいというのは生前に色々あり過ぎて記憶の大半を失ったせいであったのだがたった一つだけ嫌な思い出がある。
ボクのこの一風変わった姓名のおかげで『プンサンユッケ』などと呼ばれて半島人(韓国人のことらしい)とか言われたり在日とか言われていたことがあった。
成績は運動や音楽は苦手だったけど他はまあ中の上くらい特に酷いいじめがあった記憶は無いが仲良くしてもらった記憶もない。
「あの連中は何者だったと思う?」
不意に有希は問いかけてきた。
「あの連中って、大手芸能事務所の社長達のこと?」
ボクは一瞬社長の局部に寄生していたアレを思い出して思わず吐き気を催しそうになった。
今この地球上に億単位で存在すると言っていた僕達と同じミニチュアサイズ、とは言っても25センチ以下の生命体のことなんだけど。
まあ受精、妊娠したお腹の中の女子に寄生した時はその子の子宮内でその子供と同様に育つって亜希とかいう刑事さんは言っていたけど。
そこから先は想像するのは流石に気持ちが悪かった。
「妊娠したお腹の子が男の子だった場合は子宮がないからってまさかの陰茎の中に寄生して成長するなんてねよもやよもやだわ」
そういうとさしもの有希も吐き気をもよおしたのか両手で口を塞ぎ一瞬頬を膨らませて吐くようなそぶりを見せたが何とか飲み込んだようだった。
「まさか陰茎の中でも尿道の中だったとはね」
うん、流石にそれはボクも想定外だった。
「しかも全てが形態としては女性という」
ボクはあの時社長の陰茎を自ら破り裂いて姿を現した寄生物の姿を思い出して戦慄した。全長が20センチ程度のミニチュアサイズではあるがどこからどう見てもグラマスなプロポーションの女性、しかも美人だった。
「あんなのにコントロールされる男子ってある意味幸せなのかなあ?」
ボクはつい口にしてしまったがすぐに周囲の気配を感じて元のポーズに戻った。
有希の奴はもうとっくの昔に兄貴がこの部屋の入り口に立っていた気配に気がついたようだった。
「まさかな、そんなんだったら俺なんか毎日自慰しているよ」
ぼっそりと彼がつぶやいたように聞こえたのは気のせいだろうか?
巨大女児との遭遇
「暇だー」
有希が叫ぶ。
「おい、彼女、カレンダーの中の人物が勝手に海辺の砂浜でしゃがみ込んでジタバタしているんじゃないよ」
ボクはついつい小言を言いたくなる。
今月の文字カレンダーを持って海辺の砂浜に立ってにっこりと微笑むだけの楽なお仕事じゃないか?t
「そーいうゆきりんだって校門の前にセーラー服着て突っ立って愛想笑いしながららピースサインしているだけじゃん」
すかさず有希に反撃をされてしまう。
有希というのは駆け出しのアイドルとしてのボクで一人称は常に『あたし』で押し通している。
それでボクはというと普段の女子中学生としての自分で、実際には数ヶ月前に大型トレーラーの下敷きとなって既にこの世にはいない。
いや、いないことになっている。同一人物であるアイドルの有希、彼女も同じくこの世にはいない、いるはずがないのだが部屋に誰もいなくて外からの人目がない時はこうして2人とも写真の中で勝手に動き回って、時として写真から勝手に飛び出して好き勝手している。
「ところでゆきりんのスマホって充電しっぱなしだけど問題ないの?」
有希が今日もまた勝手にカレンダーから飛び出して好き勝手にボクのスマホをいじりながら喋っている。
「ボクのことをゆきりんなんて変なニックネームで呼ぶのやめてくれないかな?」
ボクは思わず有希に抗議をした。
ボクにはれっきとした楓山由紀という名前がある、と覚えていたはずなんだけど最近はどうも生前の記憶が薄れてきてどうも曖昧だ。
「あたしと区別するためだもん、仕方がないじゃん」
口を尖らせて勇気は言うがどうも納得がいかない。どうして自分自身にこんな扱いを受けなけりゃいけないんだ。
「それよりさ、あたしゆきりんのスマホの使い方わかんないんだけど教えてくれない?」
あたりまえのように有希はボクをこき使うけどボクは有希の小間使いじゃない。
ボクのスマホは充電状態のまま家を飛び出していたのでいつでも使える。
ただ、今2人とも身長がわずか25センチ程度なので正直言って大きすぎて扱いにくい。
「見てくれ女としての魅力ゼロのゆきりんはパソコン系の知識しかないんだからあたしに黙って従いなさい」
「たかが男に孕まされた程度でトレーラーの前に飛び込んで自殺するような軟弱な女にそんなこと言われたくないね」
ボクは思わず抗議したがすぐに事実を思い出した。
そのあとしばらく部屋に引きこもって、絶望した挙句、家を飛び出して待ち構えていた大型ワゴン車の中で複数の男達に拉致された挙句輪姦されてあらかじめ用意されていた大型トレーラーに轢き潰されてしまったのは彼女と同一人物でもあるボクも同じはずだ。
ボク達は浮遊霊となって漂っているところを葉類亜希という名の女刑事に拾ってもらい不完全ではあるけど再生してもらい、彼女の胎の中の仮想空間での疑似体験ですべての凶元が大手芸能事務所の社長であることを突き止めそれなりの復讐を果たしてこの世から始末したんだけど。
「まさかあの連中、社長やあたし達と似たような存在が他にも数億体存在しているとはね」
勇気はボクのスマホを使って何やら調べ物をしているように見えた。
「音声認識使えば楽なんじゃないか?」
ボクはとりあえず提案してみた。
だけど声量が足りないのかスマホに認識してもらえず、大きな声でマイクに向かって怒鳴るしかなくて体力的に結構厳しい。
「最近おかしな言動や行動をしている芸能人とか政治家なんて特にアイツらに憑依されている可能性が高いね」
ボクは自分の遺影から飛び出すと勇気のすぐそばに駆け寄り彼女の耳元で囁いた。
とはいえボクと彼女は元々同一人物のはずなんだけどこうして身体同士を接近させるとドキドキしてしまうのは何故なんだろう?
「憑依っていっても連中の憑依はあたし達が考えるそれとは少しと言うか大きく違っていたのよね」
有希はボソリといった。
確かに彼らはエクソシストか何かのように精神的と言うか霊的な憑依ではなく、かといって最近のホラーテイストSFのように脳髄に住み着くわけじゃない。
女性には子宮内に、男性には陰茎の中に寄生すると言うとっても変な侵略者だった。
ボク達に関しても同様になり芸能界を支配させる要因の1人になるはずだったらしいのだけどどうやらボクと有希は何らかのトラブルで分裂してしまい、彼らが期待するような手駒にはならなかったようだ。
「それで、結局有希は何を知りたいの?」
もう一度ボクは有希に問いかけた。
「うん、最近芸能界や政界で怪しい動きはなかったのかな?って」
意外と真面目なことを調べていた。
どうせ美味しいパスタ屋とか自分が着るための梨花ちゃん着せ替え服製作販売サイトだとばかり思っていたのだが、ってしっかりそれっぽいのをみているじゃねぇか?
「あのね、有希、『その着せ替え人形は恋をする』ってどんなエロサイト?」
「あああ、これね、レキッとしたごく普通の恋愛アニメ番組サイト、あたしが求めていたものとは違うわね」
一体どんなのを期待していたんだよ、と突っ込みそうになった。
しかもしっかりブックマークしているし。
「あたしのサイズのコスプレ服誰かつくってくれないかなーって」
なんか歯切れが悪いことを言い出した。
「そんなミニチュアサイズ作成出来るの五条くんしかいないよ」
とついうっかりボク。
「しっかり観ているんじゃん」
速攻で有希に指摘されてしまった。
「でもセーラー服も捨てがたいなぁ」
もう別のアニメサイトを見ていた。
ボクは驚きを禁じ得なかった。
「ボクの学校だってセーラー服だよ?見てわからない?」
「な、なんだって〜!」
今更のように驚く有希
「でもデザインダサいし、母親と布地選びからのお手製じゃないから却下!」
こっちも視聴していたんだとさらに驚くボク。
だけどさらに僕らを驚かせたのは窓の外から2人を覗き込んでいる巨大な女児の姿だった。
「えーとここって確か2階だったよね?」
唖然としているように顔を上げて巨大な女児の正体を確認しようとする有希。
「お姉ちゃん達って地球外生物だよね」
突然失礼な言い方をしてきた。
どこからどうみても4〜5歳くらいにしか見えないのに屋根を登ってきて二階のこの部屋を覗き込んでいる異常な大きさの女児に言われたくはない。
「あ、あたし達は普通に地球の人形だよ」
軽くパニクっているのか妙な事を口走り出した有希。
「そ、そうだぞ、君こそなぜそんなに巨大なんだ」
ボクもかなりおかしなことを言ってしまう。
「ま、いいか、そう言うことにしてあげるけど何か探し物でもしているのかな?」
興味深げに聞いてきた巨大な女児。
でもいいか?なんとか些細なことは見逃してくれそうだ。
「こんな僕たちでも働いてお給料がもらえるとこないかなって」
言ってから後悔する。
「あるよ!」
と元気良く巨大幼女の返事。
「パワハラした挙句いらない指なら切り落とすぞと脅すミシュラン掲載の有名ラーメン屋とか?」
ちょうどそこの求人ページを有希が見ていた最中だった。
「テレビに出てニッポンスゴイと連呼したり政権の経済対策をベタ褒めしたりそれを批判する人たちに向かってSNSで絡んでみたり」
右手人差し指を立てて次々と実例を挙げる巨大な女児をボク達は唖然としてみていた。
「君って一体何者?」
「ただの幼稚園児ですよぉ〜」と彼女は言う。
どうやらただのモブキャラではなさそうなのでせめて名前くらいは訊いておくべきか?
「え〜!私のこと知らないんですかぁ?」
と巨大な幼女。
知ってたまるか!と心の中で僕たち2人。
「私、かつてはこの国の第一与党の衆議院議員であった前田愛理の一人娘、前田リナと申します」
ご丁寧に窓の外でお辞儀をして彼女前田リナは言った。
「あんなところで立ち話なんかさせたらかえって目立っちゃうから中に入ってもらったら?」
とボクは勇気に言った。
「うーん、あんまりやりたくはないけど仕方がないなあ」
と有希、立ち上がると本棚めがけて走り出してその本棚の本をよじのぼるとそこから一気に30センチほどジャンプして器用に窓の留め金具に飛びかかると左手でロック解除のボタンを押して右手で留め具を回して外した。
そしてそのまま、ほんと本の間に落下して、抜け出せなくなる。
有希は本当に馬鹿なのか?
「もう自分で開けれるでしょ、勝手に入ってきて」
そう言うと彼女、前田リナはヅカヅカと土足のまま僕たちの部屋に入り込んできた。
やはり国会議員、特に与党の議員はもちろんその家族にさえ世間の常識というものは通用しないものなんだろうか?
「私、前田リナは葉類亜希、山崎秋子、倶名尚愛、そして楓凛の要請を受けましてここの家の養女となるべく派遣されてきました、今後夜露死苦」
なんか『よろしく』の言い方に棘があるように感じたけど。
でもね、見ず知らずの人間ってそんなに簡単に他人の家の養女になれるものなの?
それから数時間たち日が沈んだ頃に部屋の扉が急に開きママとパパとアニキが顔を見せた。
「やばい、ボクたち写真の中に戻らなくちゃ!」
そう思った瞬間頭の中で声が響いた。
『大丈夫、彼らの目には写真の中にあなたたちがいるようにしか見えていないから!』
「君が私の上司である葉類知恵警部が言っていた身寄りのない子だってね、話は聞いたからこの部屋を自分のものとしてお使い」
パパがそういうとママがそれに続けた。
「私たちも家族だから家中のものを好きに使っていいのよ、有希のものも好きに使っていいから服とか欲しいものはこのカードで好きなように取り寄せてね」
優しく微笑みながらいうママ、一体なんなんだこのボクとの待遇の違いは?ボクなんか生理用品ひとつ買うにも領収書が必要だったんだぞ。
「君は今日から俺の妹だ、寂しい時は添い寝してあげるよ、ハニー」
股間にあるものを目一杯に膨らませながらアニキは言った。
なんなんだこいつは幼女にも手を出す気満々なのかよ。
怒りで両手の拳を震わせているボクと有希にリナはそっと耳打ちをした。
「あなたたちのお兄さんはもうかなり前からあいつらにやられているわね」
確かにそうかもしれない、マジでアイツは実の妹とやろうとしたことがあったからだ。
「というわけで私はこれからあなたたちのお守り兼見張り役ね、これから夜・露・死・苦」
そういうとリナは自分の服のポケットから家の鍵と思われろモノを取り出してボクたちに見せつけた。
どこからどう見ても我が家の鍵だった。
「だったら最初から玄関から入れよー!」
思わず叫んでしまった。気がつかれたのかドタドタと階段を駆け上ってくる3人の家族の足音、そしてドアを開けるなりこう言う。
「言い忘れていたがここは死んだ娘の亡霊が突然暴れ出したりラップ音鳴らしたりするけどあまり気にしないでおくれ。
それに対してリナはニッコリと笑って言う。
「慣れていますからご心配なさらないで」
って、おーいそこはそんなものはここにはいないって否定するところだろ。
あかちゃんより迷惑な人達
「ちょっとさっき呟き覗いてたんだけどさ」
カレンダーから抜け出して机の上に充電状態で放置してあるスマホを操作しながら有希が言い出した。
「そんなつまらないもの覗き込んでいる暇があったら奴ら、侵略者を何とかする方法を考えてよ」
遺影の写真を抜け出してスマホに駆け寄ったボクは答えた。
「それが案外そうとも言い切れないんだよね」
有希はスマホに表示された画面を指差しながらボクに言った。
「泣き止まない赤子に周囲の者たちが迷惑しているから配慮させろ?」
はあ?何言っているんだこいつ。
ボクは自分の目を疑った。
「わきまえない赤ん坊、いらない、そんな子を外に出す親はもっと害悪?」
はい?何を言ってらっしゃるのですか?
どっかのハシゲさんですか?
何度見直してもそう書き込まれていることを確認したボクは軽いめまいを覚えた。
「えーとこの人達は自分もそんな頃は公衆の面前では周囲の人たちに気をつかってわきまえて静かにしていた自信でもおありなのかな?」
ボクは多少の皮肉を込めて言った。
「まあ大抵の大人って生き物は自分が小さかった頃周りの人にどんだけ迷惑をかけて育ってきたかなんて忘れちゃう人が多いね」
部屋の隅で本を読んでいた前田リナ、つい昨日からここの楓山家の養女となり楓山リナとなった5歳の幼女が突然に話に割り込んできた。
「それにしても酷いよね、そういえばその前の日には空港のロビーで泣き止まない2人の小さい子を前にして『いっそみんなで死のうか』って暗い顔をしてつぶやいている若い女性がいていたまれなくて、でも何もしてやれなくて辛かったという投稿もあったよね」
とボクもつぶやく。
「そんな子育てが終わって、なおかつ自分達の子供が産み育てている赤ん坊、つまり孫がいない中途半端な年代は若かった頃どんなに子育てで苦労してきたか忘れてしまっているし、ましてや自分達が私みたいな年頃のことなんて忘れてしまっているからね」
本当にリナと名乗る幼女は本当にまだ5歳か?と思うような長いセリフや理屈を延々と述べることがある。
今日の彼女のセリフなんてまだ短い方だろうなぁ。
「本当は300歳以上は歳とってているんじゃないのか?」
有希は疑い深げに訊いた。
リナはそれには答えずに開いた本のページを指差した。
「何故この国の国民はこうもこの災害のリスクが多いくせに平野も農作物の作成に向かない土地にこだわるのか?いえ固執するのか?」
まあそれははっきりと区別できる四季が織りなす美しい自然なんじゃないのかな」
ボクは自信を持って答えた。
春夏秋冬はこの国ほど明確に分かれている土地を他には知らない。
年がら年中夏みたいな国だったり、いつも冬景色だったり一年の半分が日が沈まず残りの半年近くは夜のように暗い国だったり。
こんなに恵まれている国はないと思う。
「じゃあ聞くけどこの国で事業を起こす起業家や政策を決める政治家たちはどうしてここまでその美しい自然とやらを大事にしないの?」
リナが開いていたページは水俣病に関する記載や光化学スモッグ、硫酸ガスなどの公害訴訟に関するページだった。
彼女は自分のポケットから細めのタッチペンを取り出すと、(とは言ってもボク達にとってはかなり大きな物だったけど)上から一つずつスマホの画面に問題点を書き出した。
「まずは『工場から河川を通して排出された有害な汚染水』ね、これはいくつかあるけど主に住民の生活用水であったわけだから原因のわからない奇病となって初めて露呈したんだけど工場はもちろん国や自治体も当初は因果関係を認めなかった」
「でもそんなのは水質検査をすればすぐにわかあることじゃ?」
すかさず有希が疑問を挟んだ。
珍しく今日の彼女は冴えているのかもしれない。
「それがどうしたわけか自治体や国が抜き打ちで行ったはずの水質検査の結果は『オールグリーン』、つまりなんの問題もない基準値に楽々合格した綺麗な工場排水だったってわけ」
「じゃあなんの問題もなかったんじゃ?」
とボク。
「ところがねその川の工場から川下に当たる場所での大量の川魚の死体が大量に浮き上がる案件がなん度も続いてね住民は何度も国などに水質検査を依頼したんだけど結果は毎度オールグリーン」
「まさか検査の日が工場側に漏れていてその日だけ営業内容を変えていたとか」
少し考え込んでから有希が疑問を投げかけた。
「うん、その可能性もあったかもね、ただ自治体の検査はともかく国の検査はその中の解析過程がほぼブラックボックス状態だったから『データの改竄』という線も考えられなくはないのよね」
そう言ってリナは自分の頭をぽりぽりとかきむしった。
「そんで持って八方塞がりとなった時に例の左翼と言われていた国会議員の連中が地元の人たちと協力して独自に水質検査をしたところやっと基準値どころかとんでもない量の有害物質が混入していたことが発覚したんだよね」
「その動きよく怪しまれませんでしたね?」
とボク。
「うん、バリバリに妨害が入ろうとしていたね、だから私が慌てて『この地方を支える将来的に可能性のある魅力的な産業を視察したい』とか言って工場の見学を申し出たんだけどね、工場も水質検査の妨害をしようとしていた連中も大喜びで私の話に乗ってきてくれたってこと、当時も、彼女がリナを産んで私の意識がほぼこの体に移行してからも前田愛理はかなり頭の弱いバカ政治家キャラで押し通していたからね、むしろ私の本当の姿を知っていたのは一部野党議員くらいじゃなかったのかな?」
とリナは言ったが妙に違和感を感じた。
「それはもう会社の連中やその工場を誘致した地主さん達は大喜びで私を接待してくれたよ、この町でも結構有名なレストランに招待してくれたしね、お目付役として当のお偉さん方が2、3人付いて回ってきたのは正直うざかったけどさ、それでも水質検査に必要な時間と工場関係者の人払いには役立ったと自負している」
「ちょ、ちょっと待ってください、それって数十年前の話ですよねあなた幾つだったんですか?」
ボクはすかさず疑問を挟んだ、どう考えても目の前の幼女、リナちゃんが生まれる前の話だ。
その母親の前田愛理さんだって幾つだったかどうも怪しい、いくつで国会議員になったんだよ?
「うーん、確か26、7歳だったかなよく覚えていないけど母親が引退するってんで、同じ党の国会議員をしていた男と結婚することを条件に立候補した気がする、表向きには隠していたけどね」
リナはそういうと画面を切り替えて1人の男のプロフィールを検索した。
ボクにも見覚えがある、前田愛理さんが所属する党のかなり上にいるベテラン国会議員の姿だ、しかし名前は思い出せない。
「まあ彼とは十年ほど結婚したけど結局は子宝に恵まれなかったしね」
さらりとリナは言った。
「政治的信念とか以前に私自身結婚というものには興味なかったしね、ただ議員を続けていく上には必要だったかなってだけで」
「で、分かれた理由は」
ボクは直球の質問をぶつけてみた。
「そりゃあもう彼が単純な男尊女卑野郎で国粋主義で、嫌韓嫌中で軍備拡大派で憲法第九条を撤廃したがっていたから」
そう言ってリナは悔しそうに唇を噛み締めた。
「じゃあなんですぐに別れなかったんですか」
素朴な有希の問いかけ。
「あいつに、私の、愛理の体、胎内にタネを植え付けられたからね」
はい?
ボクの顔はそんな顔をしていただろう。
「あなた達がいうその大手芸能事務所の社長さんと同じだったのよ、彼とは何回かやったけどすぐにお腹の中に変化が生じた、妊娠したわけじゃないけど私の中に別の生き物が生じていると」
「なんでそんなことがわかるんですか?」
と有希。
「まあ私も連中とは種族こそ違っても同じくこの星の元々住んでいた生命体だったからね」
「いや、ボクには話がパルコなんですけど」
「あなた、いつの年代の娘っ子ですか?」
すかさずリナにツッコミを入れられた。
「あいつらが体の一部、お年頃のあなた達にいうのも気がひけるけどあれやな、私がリナとして生まれる以前は私の意識はこの国の与党である政党の駆け出しの国会衆議員議員である前田愛理の中にいた」
「はい?」
あまりの突飛な話の飛躍についてゆけなくなったのかスマホを操作する手を止めて有希はリナの方を見てあぜんとしていた。
「ああ、そうだったわね、まずはあなた達に私の正体を説明しなければ話が進まないわね」
そういうとリナは本を閉じて立ち上がると僕達がいる机のほうに歩み寄ってきて木製の椅子を後ろに引くと腰掛けた。
とはいえ椅子の高さは中学生女子でも割と高めな部類に入るボクの体に合わせてあるので平均的な5歳児の体つきであるリナにはやはり大きすぎるのか足をぶらんぶらんとさせている。
おまけに背もたれにまで腰をひくと膝も座面の上に乗ってしまい足を下ろすこともできないのでいかにもちょこんとただ椅子の上に乗っているだけのような感じにしか見えない。
それでもなんとかスマホの画面を見ることは出来るらしくてホームボタンを押すと指でタッチパネル画面を操作して落書きアプリを立ち上げた。
すごい雑ではあるが妊婦さんを横から描いた絵。
「説明するのは少々面倒ではあるけど私自身はこの時点では妊婦さんの頭、の中意識下に住んでいる」
「ちょっと待ってもう既に」
有希が話についてゆけずに根を上げている。
「まあ人間ってのは基本多重人格でコンピューターで言うなら一つのハードの中で無数、と言うか数えきれないほどのOSが同時に稼働しているところを想像してもらえればいいのかな?」
何故に疑問形なのかが気になったけど多分言っている本人さえよくわかってはいないんだろう。
「まあそんなかでも一番賢いやつ、ではなく面倒見のいい奴がリーダーになって人格を形成するわけなんだけど」
そこまで言うとリナは妊婦のイラストのお腹の中に小さな赤子を描いた。
「でもそれらは全て胎児の中から存在するわけじゃない、成長段階において一つ、二つ、と増えてゆきやがて巨大なネットワーク、自我を形成することになるんだよ」
リナはその画面を少し右にスクロールさせて白い空間を作るとまたさっきと同じような絵を描いた。
「私はこの脳の片隅のシノプシスをいくつか間借りして存続しているのだけど、この女性の意識を乗っ取ってまで存在しているわけじゃない」
リナは女性の雑な絵の頭の中に大きな円とその隣に小さな円を描いた。
「それでこの大きい方がこの女性本来の意識で小さい方が私なんだけど大人の女性である本人の意識がしっかりしている以上は私はこの女性の意識に対してほとんど干渉はしないししてはいけないのが私たち一族のルールになっているの」
「え、でも例外とか言って支配しちゃうこともあるんでしょ?」
意地悪く有希が口を挟んだ。
「この女性の、つまり家主に生命に関わるほどの危機が訪れない限りそれはない、たまに悩んでいる時にヒントとしてシノプシスの一部を介して助言はするけどね」
「でもそれじゃ、世代を超えて記憶を継承できる理由にはならないよね」
またしても有希、こいつこんなに頭がキレるキャラだったっけ?
「まあ彼女も人間の女性である以上、いつかは理想の男性と結婚してお腹の中に子供を宿すことになるんだけどこの子は生まれる頃にはほとんど大人と変わらない量の脳細胞を頭の中に持っているのよ」
「ただそれが大人のそれとは違うのがその脳細胞同士を結ぶシノプシスがほとんど形成されていないと言うことですね」
またしても有希の発言、アイドルやっていた頃のボクってそんなにも賢かったっけ?いつも漫画ばかり見ていた気がする。
「エロ漫画の皮を被ったハードコアSF、それもサイバー系のものを読んでいたみたいね」
興味深げにリナはそう言うと話を再び続け始めた。
「お腹の中で育つ赤子に対して私たちが何をするのかと言うとその子の脳の中に自分自身と家主の脳機能の中で必要な部分をバックアップするんだけどこの時点で既にこの子は人間で云う14、5歳くらいの知能を持っていることになるわね、もちろんいきなり喋ったりはしないけど」
「でもそれじゃ結局その子のすべてを乗っ取ってしまうのと変わりはないんじゃないですか?」
再び有希がツッコミを入れたなんか今日の有希は凄く冴えているみたい。
「なんか冴子と喋っているみたいで調子狂うんだけど」
リナは妙な感想を挟むと再び喋り始めた。
「一応はバックアップは取るけどそれでも赤ちゃんの脳細胞を使い尽くすわけじゃないからその子が成長して発達して自我を形成するだけの余地は十分にとってあるから、というか人間の脳細胞ってその程度のシノプシス形成で足りなくなるなんてことはないからね、ただシノプシスで繋がれなかった脳細胞は次々と死滅していくらしいんだけど」
「とてもいい加減ですね」
またまた有希のツッコミ。
「まあその子の自我が育つのを阻害しちゃうのもなんだから私たちは二世代以上前の記憶に関する部分は常にこの星の衛星軌道上にある宇宙船内の生体記憶装置に転送してシノプシスをなるべく解放してあげることにしているんだけど」
「それでリナさんは今どういった対比でその幼女の中に住んでいるの?」
今回はリナと有希の会話だけで話が成立しているなと思う。
「まあ、リナが30%、残りの70%くらいが私かしら?、ちなみに彼女が30歳くらいになった頃には逆転して彼女が70%くらいにはなっているかなあ」
「それはわかったとして今回の前田愛理さんの場合はどうなったのか説明して欲しいんだけど」
有希はさらに深い解説を求めているように感じた。
「そうね、彼とのエッチはごく普通だったわね、少し違和感はあったけど」
「そこんとこ詳しく!」
息を荒げてリナに話の続きを迫っていたのは有希ではなくてボクの方だった。
「エッチな子」
リナはそう言うとボクの額に軽くデコピンをした。
「そんなに大したことじゃないの、アレの形状が今まで付き合ってきた男の人とは少し違う程度で」
その一言でボクと有希の2人は先回の戦いの最中に社長の陰茎を破り出てきたミニチュアサイズの美女を思い出して軽い吐き気を感じた。
「あなた達もあれを見たのね」
と言うリナに向かって涙目で『うんうん』と首を縦に振る2人。
「大丈夫、そつは適切に処置して生ゴミにしたから」
うっとりとしたように彼女は言う。
「まああその後も偏った愛国心や男尊女卑は治らなかったけどね、エッチはできなくなったけれどなんとか社会復帰はできたし」
そう言ってにっこり微笑むリナを見てボク達2人はこの幼女を心底恐ろしいと感じた。
「絶対外科手術を施してチョヨン切ったよね」
ボクはそっと有希に耳打ちをした、彼女も同じ考えらしくうなづいている。
「それで彼女、いや自分自身の変化にどうして気がついたんですか?」
有希が尋ねた、そこからが重要だからだ。
「まず奇行が増えたね、やたらと不特定多数の男性と関係を持とうとし始めていたね、そう相手は与党、野党を問わず国会議員をはじめ、色々な県の知事や市長さん、有名な芸能人など男とあれば誰とでも抱かれるようになったかな?その中にもあなた達も知ってる大手芸能事務所の社長さんもいた気がする」
「なんでその時に止めてくれなかったのですか?」
とボク、あのプロジェクトの数年以上は前の話だ。
「うん、実は私もその時は単なる色情狂に成り下がったのかな?色々なタネを集めていたのかな?程度に思っていたんだけどある日ふと違和感に気がついたのよ」
「それだけエッチしまくっても何故妊娠しないのか?」
有希が口を挟んだ。
「そう、その頃既に百人以上と性行為をしておきながら妊娠しないのか?それが最大の疑問だった」
まあそれは当然だろう、彼ら、いや彼女らの目的が子孫繁栄なら妊娠させない手はない。では一体?
「私は自分の体内に幾つかの追跡細胞を、特に生殖器付近に配置して調べてみることにした」
「なんだそんな便利なものあるなら最初から・・・」
言いかけた有希の身体がリナの右手人差し指で弾かれ吹っ飛んだ。
「痛いなぁ、そこまでしなくても」
抗議する有希を無視してリナは続けた。
「まずは前田愛理の排卵日、ゆっくりっと降りてきた彼女の卵子は木っ端微塵に破壊された」
はい?なんですかそれ?突っ込みたかったけど声が出なかった。
「その卵子を両手で潰したのは体調僅か20〜25センチ程度の大きさの美少女だった、でもその頃はまだ実害はないと思っていた、まあ子孫を残せないのは残念だけど世代を越えて生きるのも飽きてきたしそれでも良いかなあって」
「でも実際はそんなにも甘くはなかったと」
ボクが言ってみた。
なんとなくその先が予想出来てしまったから。
「そうね、そのマイクロサイズの美少女は性行為の際には子宮口から外に出てあろうことか相手の男性の陰茎の管の中に自分の卵を植え付けていたのよね、さすがにそこまでは想定外だったわ」
アレを思い出してしまったのか有希はボクのスマホのガラス面に嘔吐した。
慌ててボクは近くにあったティッシュの箱から数枚取り出すと慌てて拭き出した。
「つまり男の人の大事な場所でそいつは育つと」
そしてそいつに支配された男性は別の女性を狙って、アレ?ふと疑問が湧いたがそれは後回しにしようと思った。
「まあ私とその謎ぞのエイリアンの事は一旦終わりにして公害問題に話を戻すね」
もうすっかりボク達は元の公害問題の話などすっかり忘れていた。
痛いけど気持ちいい?
「そっからがまた往生際が悪くってさぁ」
いきなりリナが愚痴り出した。
さっきまで自分らと奴ら人外の生態を説明していた間は割と機嫌が良いと思っていたんだけど。
「住民達が開示したデーターを御用学者達や大御所評論家達が科学的根拠がないとか、関連性は認められないとか言い出しちゃってさあ、おい、こらぁ、聞いとんのか?」
急に酔っ払いのおっさんみたいにボクたちに絡みはじめた。
なるほど、確かに住民達や最左翼と思われていた弱小政党の若手議員が必死になって調べ上げたデーターを彼ら、前田愛理の上司達が先ほどの御用学者達や大物評論家を駆使して否定しまくった上にバラエティなどでも売れっ子タレントにその調査自体の意味を嘲笑するかのような発言をさせたり、それが原因とは言い切れなかったけれどとにかく裁判は難航した。
まず最初に起訴にさえたどり着けるかどうかわからなかったよようだ。
「例の原住民達の仕業ですか?」
僕は気になってきいてみた。
あの生殖器に寄生する、まあボクたちからみたら妖怪なんだけど、そいつらが人類の滅亡を企んでワザと環境破壊が進むように仕向けたんじゃないのかと思い始めていた。
「それはどうかしらね」
むしろリナはその考え方には疑問を持っているように感じた。
「あなた達外来種にとって地球なんて所詮は永住するためのものじゃないと思う」
リナはキッパリと断言した。
「でも彼らはその、生殖器の中に寄生して宿主である人間の思考や行動を操っていたんでしょ?人類を滅亡させるためならそれくらいはするんじゃないのかな?」
僕はそう言って彼らが、いや彼女達が人類の滅亡を図って環境を破壊したり、軍備拡張路線を各国の首脳陣に入り込んで戦争や侵略の危機を煽っていると思っていた。
「それはどうかしらね?」
リナはすかさず疑問を挟んだ。
「私が宇宙船内にあるデータバンク、つまり私自身が忘れてしまっている数百代前の記憶によると少なくとも彼女達は人間に対してはそんな介入はしてきてはいなかった事がわかった」
リナはそう言ったがボクには引っかかるものがあった。
「でもそれはリナちゃん達が気が付いていなかっただけで実際には今と同じく生殖器に寄生していたんじゃ」
ボクがそう言うとリナは鋭い目で睨み返してきた。
「彼女達は別の形で生息していたのよ、大自然の中で鳥や魚、そして地上の獣たちなどの動物や草木、水草や海藻を始めとする植物の中で彼女達は生息していた」
リナはそう言いながらも悲しげな表情をしていた。
「なぜそんなことがわかるんですか?」
ボクは問いかけた。
「私達も、私たちの種族も同じく人には住み着いたことがなかったからよ、大体そんな頃には知能を持った人類なんてほとんど存在していなかったし」
「それは興味深い話だね」
突然スマホから楓凛の声が聞こえてきた。
ボクが操作を間違えて知らない間に彼女に通話をかけていたようだ。
「ああ、凛ね、暇ならそのまま聴いてもらっていても良いけどこれから話す内容はあなた達人類にとっては少し残酷でショックな話になると思うの」
リナがつげるとスマホの向こう側から『ああ』と言う楓凛の声が聞こえたような気がした。
「当時の人類はほとんど猿と同じで一応は猿類の中では一番進化してはいたけど今みたいに物を武器として戦ったり言葉を使って相手を騙したりはしなかった」
リナは言うがボクにはそれをさせたのがあの小さな女性の形をした小動物にしか思えなかった。
「だいたいボク達、アイドルプロジェクトの娘達がおかしくなったのもあの大手芸能事務所の社長にやられてからだよ?」
そう、あの頃ボク達はこれからの契約の話と言われ一人一人個別に商談に呼び出されて食前のワインに口をつけた途端意識をもうろうとさせられてあの男と性的関係を持ってしまった。
あのあとボク達は知らず知らずのうちに自分が自分でなくなりあらゆる欲望や怒り、憎しみなどの感情に抑制が効かなくなっていた。
「それが相手構わず行なった枕営業であり、仲間であり、友人であったはずの同じプロジェクトメンバーの娘達を罠に嵌めて男達に輪姦させたり自殺に見せかけて殺したりしてしまったことね」
幼女はボク達まだ少女が言えないようなストレートな表現で真実を言い当てた。
まあそれはボクと有希の間では常に当たり前のように交わしていた会話だったが元々は同一人物だったのだからあり得ない話ではない。
「社長自身あいつに操られてボク達や事務所の他の女性達にもタネ付けをしていたみたいだからもうほとんどウイルスに近い存在だよ」
ボクはそう言うとその社長と寝たあと自分が枕を共にした男性の名前をリストアップしたテキストファイルをスマホに表示させた。
その中には結構なの知れた作詞家や作曲家もいれば美少年アイドルもいた。
「それだけじゃないよ、ほらごらん、どこぞの県会議員や国会議員だっている、なんと言いっても元総理大臣だっていたの」
ボクはその時半ば半狂乱な状態に陥っていたかもしれない。
自分ではどうにも消せない記憶が次々とフラッシュバックしてボクを襲ってくる。
生々しい性行為の記憶がボク自身の身体を制御不能に落ち入れさせてボクは無意識のまま自分の性器に指を入れて自慰行為を始めていた。
しかし本来ならボクは彼らを責める失格はない。
なぜならその時自分のコントロールを失っていたとはいえ彼らを誘惑したのはボク自身であり、彼らに奴等の種を植え付けた犯人でもあるからだ。
「まあ深く考えちゃダメよ、それは元々人間の本能だし、それに便乗したのはあいつらなんだからゆうきに罪はない」
5歳の幼女に説教をされたボクは軽く首をうなだれた。
とはいえあの数十人とやった記憶は消せない、なぜかあいつ達に拉致されてワゴン車の中で輪姦されまくるまで記憶の片隅にさえなかったんだけどそれまではもう1人の人格、有希が背負っていたことを考えると申し訳がない。
厄介なことに動作の一つ一つどころかやっている最中の感覚まで覚えているから。
本題から逸れたけどあいつらはそこまでして仲間を増やして何をしたかったんだろうか?
「痛いけど気持ちがいい」
ふとそんなセリフをリナが口にした。
「なんですか?それ」
ボクの問いかけリナはしばらく考え込んでから答えた。
「一見矛盾しているかもしれない、けれどあるアニメで『カオス』という幼女キャラが言っていた『愛って痛いことなの?』
というのと同じ気がする」
それはどういう意味なのだろうか?
確かあれは少なくともエッチの話ではなかったはず。
「うんまあ公害問題にしても戦争問題にしても『矛盾』があるからこそ成り立っている面もあるのかなって」
そんなわけないっしょ、とボクは言いかけたところで有希が何かを言いたげにこっちをみていることに気がついた。
「何か?」
とボク。
「公害問題にしても戦争問題にしても基本、すごく痛いじゃん」
まあ確かに公害では自然に生きている動植物が真っ先にその毒にやられて苦しんだり命を落としたりする、戦争だって同じだ多くの兵士が深傷を負って死ぬ、だけでそのどこが気持ちがいいというのか?
「イタイだけじゃん」
「そうかな?」
と有希。
「なるほどね、有希もそういう結論を出したか」
リナが口を挟んだ。
「公害では排水処理や排煙処理の手間を惜しんで儲けている企業がある、戦争でも同様多大な犠牲を払うがそれに値する見返り、収益がある、ということね」
リナが解説を入れてくれたけどボクには理解できなかった。
「あたしがリナちゃんの言葉からヒントをもらったのはエッチにおいて『痛い』と感じる脳の部分と『気持ち良い』と感じる脳の部分が全く別のところにあるってことだよ」
僕にはさらにハテナの数が増えただけだった。
「つまり公害や戦争において『痛い』と感じるのは動植物やそれに関わった人であり『気持ちが良い』と感じる部分は本来必要だった処理のコストをカットして潤った企業であったり兵器製造などで潤った企業やそれに関与した政治家だったりするわけよ」
リナはさらに付け加えた
「それに加えてだけど例えば味覚だと舌の上でも苦味を感じる部分と辛みを感じる部分などいろいろあるわけよ、例えば苦味を感じる部分は誤って腐った食べ物や毒を体内に入れないための警告なんだけどその逆が甘みというわけ、OK?」
まあそういう話なら。
「苦いだけなら当然体、というか頭が受け付けないんだけど適度な甘さと僅かな酸味が加わるとどうなると思う?」
それに該当する飲み物をボクは知っていた。
「コーヒーとか緑茶」
「つまりエッチにおいても痛いと感じる神経と気持ち良いと感じる神経は別の場所にあってその2つを同時に刺激すると『痛いけどすごく気持ち良い』に化けるわけ」
「なんとなく理屈はわかる気もするけどそれだと住民や生き物、兵隊さんや戦場に住む人の痛いは解消されないんじゃ」
ボクは普通に疑問を投げかけたつもりだったけどリナのリアクションは予想を遥か斜め上を行くものだった。
「イイヨ!イイネ!じゃ詳しく痛いポイントと気持ち良い麻酔ポイントの場所を図解付きで詳しく教えてあげるよ!」
はぁはぁと息を荒げながらおかしな目つきでボク達をみている彼女はどうみても幼女でありながら痴女にしか見えなかった。
まあ多分ボクの予想では公害に関しては住民に仕事や寄付金、戦場では兵士に性産業などという甘い砂糖を与えるってことなんだろうとは思う。
ちゅぢゅく‼️
手を出すうなあ
じゃじゃじゃじゃんじゃんじゃじゃじゃじゃんじゃん、じゃじゃじゃじゃじゃん
有希のパンツはいつ変えているのお〜
亜希「えーとひょっとして由紀はハーレムギャルゲーの女の子達は毎日下着を変えると思っているの?あっはんうっふんするたびにおりものとか愛液で下着を濡らしてパンツを変えていると思うわけ?」
由紀「普通にそう思うでしょ、パンツをずらしてバッコンバッコンとか電マを押しつけて喘ぎまくらせたり、乳房を激しく揉みしだいてアヘアヘさせたり、着ているものが汚れないと思う方がおかしいでしょ」
有希「あのね、由紀、男って生き物はね事が終わったら自分の竿さえ拭けば元々履いていたパンツを履いても何の問題もない生き物なの」
由紀「でもボク達はやった後に男が中に出した液体が棒を抜いた途端に外に流れ出すことくらい知っているよね?たとえ未経験者でも」
有希「だからね、男って生き物がすごい馬鹿なのはエロゲームとかでセックスした後下着を厚地のものに替えたりナプキンを中につけたりするヒロインいる?女の子の穴から白い液が出てくる描写とかあるけどその後は普通に腕組んで歩いていたりするよね?匂いを気にしたりする子いる?せいぜいが擦れて痛いとかまだ入っているみたい的な描写だよね?はっきり言ってそこまで考えるのは面倒な生き物なのよ、この国の男って、だから生理中の女は鳥居をくぐっちゃいけないとか馬鹿なことを言い出す宗教もあるわけ」
由紀「確かにそれを言い出したらおりものとかでも鳥居の下潜るの禁止になるよね、あれ?でもセックスをしたばかりの女性は?鳥居をくぐっても良いの?」
有希「でもこの国の偉いさん達はマヂで「男の出す〇液は聖なる液とかいい出しそうでドン引きなんだよね、とか考えながら検索していたら『処女には生理がない』と信じ込んでいる馬鹿もいるみたいで流石にドン引きだわ」
女性は快適な期間が10日ほどしかない? 性教育の怠慢が生んだ生きづらさ|キクエスト - 知らない世界を知るメディア より
亜希「てか私が『再会2』の終盤で言っていた事そのものだよね?だから気が向いた人は自分で検索して読んでね、としか言えないけど」
由紀「ってかボクも家族みんなで温泉旅行にいこうって、話になった時にボク1人だけ生理でいけないって言ったら思いっきり空気が悪くなるんだよね、生理が来たのはボクのせいじゃないのにさ」
有希「あるある、てかよく考えたらこの仮想空間ってめちゃ快適じゃないそんなのないしさ」
ちゅぢゅかない
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