再会4
作中におきまして過激な性行為描写を多々含みます。
20歳未満の方の閲覧はご遠慮してください。
再開4
私と敦子はなんとか楓凛の救出に成功して各自の部屋に戻ることにした。
敦子と別れた後に私は楓凛の部屋で彼女の身体を一応チェックしておいた。
やはり私に対して行われたと同様、彼女の膣内、そして子宮内には様々な薬物が混入した精液が大量に注入されていた。
私は彼女の生殖器周辺から膣内子宮、卵管、卵巣に至るまで念入りにチェックした。
そして注入された精液に関しても。
「特に異常はないよ」
私は楓凛に言った。
だがそれは嘘だった。
彼女の中のそれらは激しく損傷していた。
それよりも問題だったのは胎の中に大量に注入された様々な薬物が混入した精液の方かもしれない。
それは私の胎の中に注入されたそれとはかなり薬物の配合が異なっているようだ。
主にピルを無効化する成分や排卵を促進する薬物を含んでいた。
「ちょっとごめんね」
私はそういうと楓凛のワレメちゃんに口づけをして舌で入口を拡げると膣内に残っていた男性教師の精液を吸い取った。
楓凛は小さな喘ぎ声を出すと同時に徐々に呼吸を荒げていったがそれもやがて収まっていった。
「君は医療の知識でもあるのかい?」
と囁くように楓凛は訊いてきたが私に依存なスキルというか知識もないし学んだ記憶もない。
ただはっきりとしているのは私は自分の体の中に取り込んだ薬物を解析してそれに対抗しうる薬物を含んだ唾液や尿を出せるということだけだ。
「もう大丈夫、妊娠の心配もないし、性病とかの感染症、擦り切れた傷も明日の朝には完治しているわ」
そう言った私は自分自身の口調に違和感を持つべきだったかもしれない。
しかし私はその後その理由を知ることになるとは気づいていなかった。
私は自分の部屋に戻ると急に激しい脱力感と眠気に襲われ、自分のベッドの上に倒れるようにして眠りに入った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
気がつくと自分は真っ暗な部屋に閉じ込められていた。
『私だけ鍵が外からかけられる特別な独房に入れられた』
自分じゃない誰かの声が聴こえてきた。
その声の主はどこにも見当たらない、もしかしたら空耳だったかもしれない。
目が慣れてくると病室のようなつくりになっていて幅が1メートルほどもない白いシーツが被せられたベッドのようなものがうっすらと見えてきた。
そのほかには備品らしきものもなく白っぽい壁には何も貼り付けられていなくてどちらかというと無意味にだだっ広い真四角な部屋のような気がした。
ベッドらしきものの向こうを見るとドアノブに鍵穴の付いたドアがうっすらと見えた。
ドアクローザーがこちら側についていることからそのドアは手前に引いて開けるタイプだと容易に想像ができる。
手前?ベッドは壁際に押し付けられていてご丁寧にも全ての車輪にロックがかけられていた。
つまりドア側にも押し付けられている。
鍵がかかっていなかったとしてもそう簡単には部屋から抜け出せそうにもない。
最も今の所はこの部屋から抜け出す気力はない。
けれどトイレとかシャワーとか着替えはどうするんだろうか?
まさか天井からお湯の滝が降り注ぐわけじゃないだろうけど・・・
自分が床を見るとそこはシャワールームのような繋ぎ目のない白いタイル張りだった。
ベッドといえば白いシーツのみで他に何もない、掛け布団も枕もない、それどころか転落防止用の柵でさえ・・・それに幅が狭い気がした。
それに上面がかなり高い、登るのが大変そうだ。
だけど登ろうとしてベッドの寝台下端に手をかけて引っ張ると思いもかけず後ろに倒れそうになった。
斜めに幅40㎝、長さが80センチくらいの台のようなものが開くように飛び出していた。
『それは手術台だから興味本位で触らないように』
天井から野太い男性の声が聞こえた。
手術用の台というものがどんなものかは知らなかったが少なくとも睡眠を取ったり休息をするためのものではなさそうだった。
『ご飯は食べさせてくれるの?』
自分ではない誰かの声が天井に向かって話しかけた。
だが聞き覚えのある声だ。
もっともそれが誰の声でどこで聞いたことがあるのか思い出せなかったけれど。
『順番を追って説明をするから落ち着いて聞きなさい、窓側を向いて立ってくれないか?』
そんなものはどこに、と思ったが手術台の反対側からうっすらと光が差し込んでいることに気がついた。
今はまだ夜だから気がつかなかったのだろうか?しかし月明かり程度の明るさはありそうだった。
その窓枠にはしっかりと十字に鉄格子がはめられている、まず脱出は無理だろう。
もっとも今は脱獄する気もないけど・・・
脱獄?一体自分は何を考えているのだろうか?
そんな疑問が湧いた。
『右側、隅っこ、窓から二メートルくらい離れた位置に畳2畳分くらいの床の色が微妙に違うエリアがあるだろう』
しばらく目を凝らして探してみた。
確かにあった。
畳2畳分というのがどれくらいの広さかは思い出せないけどステンレスか何かでメッシュの指の太さよりは細かめの穴が円状にいっぱい空いたエリアがそこにあった。穴の空いていないステンレスの径が50㎝、そのさらに穴の空いていない外周も含めると150㎝くらいあるだろうか?天井にも直径がほぼ同じサイズの同様なメッシュの穴が空いた円状の蓋が仕込まれている。
『そこが君の使うシャワールームであり、トイレットルームでもあり、フィッティングルームだ』
『ちょ、ちょと待って、トイレとシャワーが一緒なのはともかくとしてなんでフィッティングルームまで一緒なの?』
またしても自分とは違う誰かの声。
もしかしたら私は何か悪い夢でもみているのかもしれない、そう思うことにした。
声の主は抗議したつもりだっただろうが声は相手には届かなかったのか、それとも華麗にスルーされたのか?
『まずトイレから説明する、君の排泄行為は基本的にはそこでしてもらう、大も小も排泄後にその円状の噴水面外周にあるリング状の蓋が開き吸引してくれることになっている、まあ上からのエアカーテンとの相乗効果もあって汚物や洗浄水が外には漏れないことになっているから安心したまえ』
と男の声。
『安心したまえって、それじゃ、私は排便するたびに服をびしょびしょにぬらされるわけ?』
一応抗議をする、というかここで抗議しなければ私はただの馬鹿だ。
『ちなみに衣服のことを心配しているのならそれはいらぬ心配だ、なぜなら君は今現在もこれからも素っ裸、つまり[ポン]だからだ』
改めて自分の身体を見てみると確かに布切れひとつ身に着ていない。
さして大きいとは言えないが二つの形がよく整った乳房の上から2/3あたりの位置上向きに可愛い乳首が『ぽん!』と勃っているのが見えた。
お腹もほどほどにへっこんでいて縦長の可愛いおへそがさりげなく自己主張をしている。
そしてそのさらに下は・・・
よそう、自誉は後で虚しくなるだけだ。
自分の言っている言葉は全く届いてはいない感じだったけど意図は組んでくれたようだ。一応感謝はする。
していいかどうかは判らなかったけど。
『シャワーだがやはり上からと下からの噴水で洗浄することになっているが超音波により垢などを落とす機能も付加している、まあごくわずかではあるけど紫外線による殺菌の実験も兼ねている』
実験というパワーワードが気になったがあえてここは聞き流すことにした。
『仕上げは温風による乾燥機能だがかつてのインフルエンザ禍による痛い経験をもとに温風の温度を下げつつエアの勢いをさらに強化して乾かす時間を短縮した』
『・・・・・』
本当にインフルエンザ禍の経験を教訓にしたのか疑問しかないが今はシャワーもトイレもなんとかなりそうなので安心している自分がいる。
あれ?フィッティングは?
『一応君はお国の重要参考人だから、総理とか文部省大臣とか法務省大臣が面会に訪れた時は顔を出さねばいけない決まりになっている、流石にその時は丸裸じゃまずいからな』
まあそうでしょうよ。
でもこの部屋にはタンスはおろか小物入れ一つないように見えるのだけど、何処からそれを出す気だろうか?
『窓の右側手前の一角を見たまえ』
声の主の言うとオチにそちらに目を向けるとやはり畳2畳分の四角い仕切りのエリアの中に天井から床まで伸びているアクリルのような筒が入っていた。
『これは?』
と聞くがもちろん返事はない。
『君の食事は時間になるとそこに提供されることになっている、そこに君の食事や水が出現した時のみ、その仕切りに立ち入って良い』
その時はチューブタイプのエレベーターぐらいにしか思っていなかった。
しかしそれからさほど期間を置くこともなく自分と彼女の考えの甘さを思い知ることとなった。
確かに最初のうちは知らない間に食べ物が送られてきて便利だとは思ってはいた。
出されるものは主にハンバーガーやサンドイッチ、またはおにぎりなど、要は手で掴んで食べられるものばかりだった。
この時点で気がつくべきだったかもしれないがフォークやナイフ、箸など凶器になり得るものは与えたくなかったということだろう。
さらに次の日からは色々なものが提供されるようになった。
『裸での生活が原則だ』と言っておきながらお願いすれば下着やワンピース、スカートなど一式を送ってくれることもあった。
最初のうちはうっかりと排便をして引くごとびしょ濡れになってしまうこともあったが、排泄前に服を脱ぐことを学習して、多少汚れてもシャワーのボディーソープで洗いすすぎをして乾燥機能で乾かすことも覚えた。
(信じられないことにシャンプーやコンディショナーを使わせる考えは全くないらしい、おかげで自分の髪はいつもゴワゴワだったが)
人肌恋しい夜に抱き枕を要求したらあっさりと送ってくれたのだがその形状が松茸によく似ていたのは謎と言ったら謎だった。
そんな生活に慣れて着替えの服も5、6着は貯まってきたのだけどその多くがハーレムエロゲのヒロイン風なのも全くもって謎だった。彼らの趣味だろうか?
そんなわけで自分にとっても便利な道具にしか思っていなかったのだけどある日、その時になってその機械本来の使用目的が一体なんであったのか気付かされることとなった。
ある日、晩御飯が終わり一服をするために手術台に這い上がろうとしていた時にそれは始まった仕切りの中のアクリルが青白く光りだしたかと思うとそれはだんだん縮み始めて人のような形を取り始めていた。
頭のてっぺんから青白い光ではなく人間の姿として見えるようになりやがてそれは完全な白衣を身につけた人間の姿になった。
『転送機?まさか』
信じられないような目で見ているであろう自分を見たその男はこちらを見て『ニヤリ』と笑った。
もう不気味を通り越えて恐怖でしかない。
まさかと悪い予感がしたがその予感は的中してしまった。
『その通りだ、君には我々のタネを受け取ってもらおう』
もともと逃げ場のない自分はたちどころに部屋の隅に追い込まれて押し倒されてしまった。
思うように体が動かない。
もしかしたら薬物をさっき食べた夕食に混入させられていたかもしれない。
抵抗する力も出せないまま自分は前髪をつかまれ男の股間に顔面を押し付けられた。
助けを求めようと叫ぶために開いた口に陰茎が押し込まれた。
男は腰を振りその熱い陰茎は何度も喉の奥に突き刺さる。
「チッ、マグロかよ」
男言い捨てると来ていたワンピースを一気に胸まで捲り上げた。
多少布が裂けたような音がする。
その胸元に手をねじ込まれて小さな膨らみを乱暴に揉み砕かれた。全身を快感とは程遠い激痛によく似た衝撃が走り意識を失いかける。
しかしそれでは終わらなかった。
スカートの中に手を入れられて太ももを弄られた時に背筋が凍るような寒気が走り再び意識を取り戻す。
パンティの股間に指を入れられたこと思うと大量に失禁したような開放感を感じた。
しかしそれもほんの一瞬の出来事に過ぎなかった。
その後に自分を襲う地獄に比べたらだったが。
両膝をがっしりと掴まれてヘソの付近まで押し付けられる。
痛いなんてものじゃない。そして膝を左右に開かされるとパンティの股間の隙間に熱い陰茎をまだ開いていない穴にねじ込まれた。
穴の周りの膜が裂けて激痛が走りそこから血が滲み出していた。
容赦なく熱くて太く、長い陰茎をねじ込まれた自分は激しくのたうちながら叫び声をあげる。
下腹部で何かがはじけたような衝撃が走ったかと思うと痛みは不思議と感じなくなり口からだらしなくヨダレがダラダラと流れ出して意識も朦朧としてきた。
気がつくと男はいなくなっていて自分は再び誰もいない部屋にただ一人取り残されていた。
さっきの男が自分の体の中に放出した液体と自分が分泌したおりもの、そして男の体臭が混ざり合った匂いに吐き気を催してきたのでとりあえずシャワーを浴びることにした。
下から噴水のように湧き出てくる噴水と上から降り注ぐシャワーのお湯がともに適温でいつもは心地よかったのだが今日はヒリヒリしてそれどころではなかった。
気がつくと太ももを伝って滴り流れるお湯の中に血の色が混じっていることに気がついた。
『そういえば初めてだったんだ』
これは私じゃない別の少女の声だ。
そもそも私は初めてではない、ではこの声の主、少女は一体誰なのだろうか?
その少女はそう呟いたが特に感情のようなものは湧いてこなかったようだ。
もはや自分自身どうでもよくなっていたのも確かそうだけどその傾向は昔からあったので今更変える気もないように感じた。
それから私(というか彼女)は服を着替える気力もなくして自分は1日をぼんやりと裸で過ごすようになった。
いやもうどこからどこまでが1日かさえわからなくなっているのだろう。
それからその男は毎晩のように現れて自分の体を抱いて、というより生殖行為をするとすぐにさっていった。そして時々白衣を着た男が現れて股間を覗き込むと妙な医療器具を使い何かブツブツ呟きながらさっていった。
『気分はどうだね』
数ヶ月は過ぎたある日、久々にスピーカー越しに聞く男の声が聴こえた。
自分はそれをすげなく無視をする。
別に返事をしたからといって優しくしてくれるわけでもなければ手荒に扱うのをやめてくれるわけでもない。
ただ確かだったのは自分はいつの間にか食欲を失い体調を崩し始めていることだった。
横になったきり手や足を動かすこともほとんどなくなった。いつの間にか手術台の上に乗せられて点滴をぶら下げるようになっている。
それでも奴らは律儀に毎日訪れてせっせと生殖行為を交代で済ませると帰ってゆく。
『もうダメだな、自分、死ぬ』
そう思った時に一人の少女がこっちを見つめてしゃがみこんでいるのが見えた。
歳の頃からしたら同じくらいの年頃だろうか、いやむしろ自分よりも幼く見える。
しばらく時が過ぎてまた男が生殖行為をしにきた。もちろんなすすべもなく犯され続けるしかない、でも・・・
『いやだな、こんなところを見られるのは』
今まで感じかことがなかった感情がほんの少しだけ自分に湧いてきた。少女も心なしか寂しげな表情になる。
初めて会った気がしない、自分にはそんな妙な確信のようなものがあった。
自分の眼球にはもはや上下左右に揺れる天井しか見えていない、『今日も激しいな』
そんな感じ。
それでも私の脳裏にはそのしゃがみこんだ少女のみが映ってる。
おそらく単に脳裏に焼き付いて離れないだけだろう。
『サービスエリアのカレーパンは食べられなかったけどここの食堂のカレーパンも美味しかったよ』
なんかそう言われているような気がした。
いや、それを言ったのはもしかしたら私自身かもしれない。
『上郷サービスエリアの温玉入りカレーパン食べたい!』
そんなことを叫んでいた愚民がいたような気がする。
しかし思い出せない、何か霧のようなものに包まれた、まるで夢の中での出来事。
『君たちって仲が悪かったんじゃなかったの?』
どこかで訊かれた質問だ、いやその質問をしたのは私自身か?
しかしそれに対する答えを自分自身は覚えてはいない。
その時になってようやく自分が何者かでさえ覚えていなかったことに気がついた。
『本当に覚えていないの?』
なぜか少し怒った顔で少女は自分、いや、わたしを責めているような気がして来た。
『まさか私だけじゃなくてあの子のことまで忘れちゃったの?』
そう言われても思い出せないものは思い出せなかった。
私にある記憶といえば護送車の中での何十時間も続いた孤独な時間とここについてからの真っ暗な部屋での悪夢のような日々。
『私見たよ、医務室の中で泣いていたメガネかけた可愛い女の子、ずっと君を探していた』
そういえばそうだっけ?
それは私自身の記憶、しかしこの少女の身体の脳はその記憶を持っていなかった。
だけどその瞬間だけ私の意識と少女の意識が偶然にリンクした。
その一言で私、いや、少女の記憶は決壊した河川のように脳の中で溢れ出した。
『わたしの親友は一緒にここに連れられてきた、うまく隠し通せていたはずなのにわたしの目の前で複数の男達に大型拳銃で銃殺された』
今になって自分がどうして生きる理由を失っていたのか思い出すことができた。
目の前で原型をとどめないほど数十発の弾丸で肉体を破壊され尽くされた親友の身体、少女はその現実を受け止めきれずに記憶を失っていた。
『もう遅いね』
諦めるしかなかった。
もう私の体も心もボロボロだ、それに今更彼女に会わせる顔がない。
きっと幽霊になった彼女も許してはくれないだろう。
『諦める気?』
しゃがんだまま見つめていただけの少女は立ち上がり歩み寄ってきて強い光を放つ目で私を見つめてきた。
『私を愚民呼ばわりした元気はどこに行った?』
その声は私、亜希自身の声でもあった。
そして見えない手で少女の鼓動を失った左手をつかんでくる。その手のひらから伝わってくる鼓動が熱い。
『チャンスは一度、ここの施設に君たちが乗った護送車が到着する一瞬のみ』
止まっていた少女の心臓が再び鼓動を力強く脈打ち始めていた。
脳細胞の隅々に新鮮な酸素を取り込んだ血液が送り込まれているのを実感し始めている。
『私が父を助けたように』
それは紛れもなく未来の私たち・・・
『わたしが親友を窮地から救う計画を立てた時のように』
そしてこれは過去のわたしたちと仲間たち・・・
『今度こそあの子を守ってみせる、それは今のわたしたちがなすべきこと』
二人が同時に叫んだ時、私と彼女の肉体ははその場から消失をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
親友はこの施設の医務室付近に前のイメージのまま浮遊していた。彼女はわたしを見つけると一目散に飛び込んできて同化した。
いや、私の方から進んで彼女の中に飛び込んでいった、といったほうが近いかも知れない。
『まずは自分の娘たちとケリをつけておかないとね』
そういうと眼鏡っ娘は少し悲しげな、心配そうな顔をした。
『別に争うわけじゃない、奴らを壊滅させたのちに今後のことを話し合うだけ』
時間の流れの沿って跳んでいる最中に様々な風景が流れていった。
関東をとてつもなく巨大な地震が襲い、東京をはじめ川崎、横浜、千葉、埼玉などの都市を壊滅させた。
その後、戦車の大群が我が物顔で道路とは言えないくらい荒れた国道を走り大砲を撃ちまくった。
上空を見たことのない色と形状の異なる戦闘機が何種類か編隊を組んで飛びかい空中戦を繰り広げたりしていた。
JKアイドルが軍服を着て愛国讃歌を歌ったり、それでもこの国の国民は政府に反旗を翻そうとはしなかった。
私達、いや、私が辿り着いたのは窓ひとつない白い壁の大きな建物の中だ。
娘たちはその中でも一番広い何もない部屋に閉じ込められていた。
彼女らは布一枚さえ纏う(まとう)ことも許されずに、やつれた表情で・・・
そこはあの忌まわしい実験室の発展形だった。
それを大規模にしただけかもしれない。
そして彼女らを監視する十数人の男達、その中で5人で雑談をしている見覚えのある風貌の中年男達に声をかけた。
『コンチワース、相変わらずゲスいことしているじゃない?』
はじめのうちはキョトンとしていた彼らだったけどそのうちの一人が私の存在に気がついたのか急に青ざめはじめた。
続いて他の男達も気が付き始める。
そしてその中の一人が私の名前を叫んだ。
『そうだよ、私だよ、あの時は散々キモいことを私にしてくれたね』
私は自分の名前を叫んだ男に急接近すると前髪を掴み手前に引き摺り下ろし前かがみにさせて、みぞおちに右膝蹴りをお見舞いした。素早く離れてそいつが吐く吐血が身体にかかるのを避ける。
彼らの目には私の動きが早過ぎて一種何が起きているのか理解出来なかっただろう。
一瞬消えたかと思ったら離れたところに立っていたそいつが前かがみになって血を吐いていたようにしか見えなかった筈。
しかも吐血の量が尋常じゃない、胃とか肝臓とか内蔵がほとんど破裂しているのかも。
『だが君は死んだと聞いている、どうしてここに』
見覚えのない顔がいう、多分あの後から途中参加させられたメンバーだろう。
右ストレートを顔面に炸裂させてダウンさせる。
まあこいつだけは手心を加えてやってもいいかもしれない、早く病院に連れて行かないとヤバイけどね!
『そういえば思い出した、君はあの時心肺停止状態になった直後その体ごと消失したと聞いた、生きていたのか?』
そこで信じられないようなものを目にしたって顔で見てもらわなくとも結構。
『散々お前らは私があんなことになるまで強姦してくれたよね、今度は私が言うばんだよ』
そういった直後私はその男に急接近をして顔と顔をくっつけた。
『キスでもしてもらえると思った?』
私はそう言うと両手でその男の頭を抑え込むと唇と唇を重ねて揮発性の強い液体をその口に大量に流し込んだ、そして唇どうしで発生した静電気で着火させる。突然突き放された男は倒れながら1メートルほどの火柱を口や鼻から吹き出しながら息果てた。
『そ、そうか、君が突然消えた理由はタイムリープ、実は生きていたんだな、おめでとう、実験は大成功だ、我が研究所は君を大歓迎するよ』
メガネをかけた白衣の男が言った、あの時私の体から散々検体を抜き取っていたゲス医師だ。
『そうですか?私はあなたたちには怨みしか感じませんよ?』
私がそう言った時にはすでにゲス医師の頭は横から飛んできたつま先で粉砕されていた。
『た、助けてくれ、お前を殺す気は無かったんだ』
私は両手を自分の腰に当てて背筋を伸ばした姿勢で言う。
『ふうーん、私を肉便器くらいにしか思っていなかった愚民が言うセリフかしら?』
素早く接近して両手で取り押さえるとまず左腕をひねり、ついでに右腕も上腕部を握りつぶした。
『さ~て、じゃああなたが最後の一人ですよ、お望み通りこの肉便器があなたを満足させてあげましょうか?』
私は奴を壁際に追い詰めるとそぉっと奴のズボンのチャックに手を伸ばして恐怖ですっかり萎縮した陰茎を引き出した。
『あららぁ、私を散々陵辱してくれた時の猛々しさが微塵も感じられませんねぇ、あの時のように元気なご立派様にしてあげましょうね』
私が左手の人差し指と中指で軽く触れただけでそれはみるみる膨れ上がり始めていた。
『肉体は正直ですねぇ、またあの時のようにヤリまくりたい、と言っていますよ?』
ゆっくりと丁寧にあらわになった亀頭部を舌の先で転がすように舐める、パンパンに腫れ上がった亀頭が耐えきれなくなって大量の精液を私の顔にぶっかけ始めた。
『大変、止まらなくなっちゃいました、でも今日の主導権はあたしにあるんですよ、ゲス男くん?』
私はそういうとその射精をし続けている陰茎を根元まで咥えて精液をごくごく呑んだ。
そしてある程度満足して口から出してもそれは脈打つように噴射を続けている。
私はそいつの唇に自分の唇を重ねて舌を入れてこじ開けると自分の体内で毒を混入させるなど加工したそいつの精液を大量に流し込んだ。
これで私、いや少女があの日、あの場所で逝ってからの彼らにとっての現実に起きた歴史を読み取ることができた。
もう別に下の口からDNAやRNAを取り込む必要も無くなったわけだけど時間も押してきたので放置することにした。
ほかっておくと本当に干からびて命を落とすかもしれない、でもそれは自業自得・・・だ。
(現実にはあり得ない現象です)
『さてと・・・』
周りを見回すとほかの職員らは暴れまくった私を見て逃げ出した後なのか誰もおらず、怯えた眼をしてこっちを見ている5人の娘たちがいるだけだった。
『待って、私が話しかけるから』
自分の中の誰かがいう。と同時にさすがの私でも5人相手は無理!と言い切る別の自分が、ここは彼女に任せることにした。
ゲスおくんの記憶によると彼女達は未成年犯罪少女や拉致された少女に成功した受精卵を着床させて借り腹として育てられたらしい。
産まれた彼女達は雇われた数人の家政婦らの手によって育てられることになる。
特に誰が誰へとあてがわれていたようだったけど他のあいている家政婦が泣いている彼女らの人口授乳やおむつの取り替え、そしてあやしたりしてご機嫌を取っていたようだ。
「あなたを見てくれた人たちは優しかった?」
ーうん、悲しい時はいつもそばにいてくれたし、優しかった、でもー
声を使った意思伝達ができないらしい、そのように育てられたせいもあるのかも知れないけど。
そこから先は思い出したくない悲しい出来事があったようだ、どう誘いかけてもそこで思考が停止してしまう。
その記憶を呼び出さないようにそれを聞き出すためには・・・
私は娘たちの中の一人に近づくと正面から抱きついた。
その娘は最初は驚き、あらぬ方向を見つめていたけど、多分それまでそういった言葉は言ってもらえなかったからかもしれない。
優しく微笑みながら娘を見つめたいるうちに硬直していた彼女の体も私にぴったりとくっつくように抱きついてきた。
しばらくそうしている間にその娘は眠りにつき、小さな寝息をたて始めた。明らかに不条理なまでの緊張の連続で慢性的な睡眠不足に陥っていたとしても何の不思議もない。
そういえば自分はいつまでこうやって抱っこされて母親の胸の中で眠りについたっけ?
思い出そうとしても思い出せなかった。とりあえずこうしているわけにもいかずベッドとまで言わなくてもどこか柔らかなクッションでもないか探した。そうやって探し回ったがそんなものどこにもなかった。
『この床が柔らかくなってフカフカのベッドみたいになれば良い』
そう思いながら強く望むとその娘の下の床はフカフカなベッドと変わらない状態になった。
私は彼女をそっとその上に横たえた。
一番近くにいた娘に微笑みながら近づく、我ながら自分の顔が引きつっている表情な気がしないでもなかったが今度はさっきよりは強張った表情が緩むのは早かったような気がする。
今度は私自身が正座をして彼女を向かい合わせに膝の上に股を開かせるようにして座らせた。
私の中の一人が彼女の頭のてっぺんからつま先までスキャンして健康状態をチェックしている。
『なんで今更そんなことをするの?さっきの娘はしないの?』とあたし。
『そんな事しているに決まっているじゃん』と私、幾分不満げだ。
こうしてみると娘たちは一様な成長の仕方をしているわけではなさそうだった。
『この子はビタミンBが全般的に不足気味、それとカリウム、カルシウムも不足しているな』
と別のあたいが呟いた。私は迷う事なくその娘の唇にキスをして彼女が驚いたチャンスを逃さずに唾液を流し込んだ。
『信じられんな、父親はどこにいる、俺みたいなネグレイトか?』
変な奴が絡んできたがスルーするー。
落ち着かせて眠らせた後、同様に柔らかくしたベッドに眠らせた後次の娘に取り掛かる。
全員を眠らせるのに二時間ほどかかってしまっただろうか?もう私はヘトヘトだった。
それから私も娘らの眠りに誘い込まれるように深い眠りについていた。
外が急に騒がしくなってきた。20メートルほど離れた巨大な白い壁の方から人の声が聞こえる。
「これ開けるのぉ、」
なんかやんちゃそうな娘の声、しかしどこか懐かしい気がする。
「こんなもん俺の鉄拳でブチ抜けばいいだけだろが」
聞き覚えのある低めのハスキーボイス、突然この何も無い部屋じゅうに『ゴーーン!』という音が鳴り響くと壁の一部が大きくボッキ、じゃなくて半球状に膨らんだ。
「ダメですね、楓凛、あなたよくそんな知能指数で新聞社のデスクが務まりますね」
「任期半ばで総理の座を追われて命からがら逃亡生活を送っている秋子には言われたくねえよ」
「秋子さん、楓凛に理論的な考えを求めるのは無駄です」
「あっちゃん!」
これも聞き覚えのあるやたらと元気な声。
「まっかせなさい、愛ちゃん!私はやるよ?」
一体何をする気だろうか?私はなぜか不安になってきた。
「召喚!ロケットランチャー」
『ストーーープ!』
私は大声で叫んでいた。
しかしその声は届いてはいないのか?
ロケット花火のでかいのが連射した音がしたかと思うと巨大な壁は数メートル平方に渡って吹っ飛んでいた。
あのね、中に何があるのか確認しないでそういうことをするのはやめて欲しいの、私が見えない壁を立てて爆風と鉄骨類が襲ってくるのを止めなかったらこの娘たちは即死だよ。
爆風が収まり粉塵も収まり始めた頃おぼろげながら三人のシルエットが見えてきた。
三人?そう思ったが最終的に見えてきたのは4人の女性だった。
「ここは何者かに襲撃されたんじゃねえか?」
お前らが襲撃したんでしょうが、と言いたかった。
白のタンクトップにジーンズを股下からカットしましたって感じのホットパンツを履いた『ボン!キュ!ボン!』の姉ちゃんが言った。
気のせいか大人っぽく見えるが多分楓凛だ。
「奥の方で男が5人ばかりくたばってますね、その反対方向には10代くらいの女の子が5人床に寝かされてます」
見覚えがあった。
確か女子高校生でありながら国会議員になったと噂になっていた。そう確か山崎秋子。
「どうです?私の物理演算能力、思い知りましたか?」
栗色の髪の毛に軽い天パーがかかった女性が言う、こちらも見覚えがある・・・ような無いような。記憶が曖昧だった。
「たまたまですよね?」
こっちの女性ははっきりと記憶にあった。
山崎秋子と同様女子高校生ながら第一保守党の衆議院議員になった倶名尚愛だ。
あの事件の後で別れてから時系列的に10年は経つからもう26歳くらいだろうか?
「久しぶり、愛」
私は本当に何の考えもなく声をかけてしまっていた。
私が大好きな親友は大きく目を見開いて言った。
「・・・誰?」、と
しばらくその場が凍りついたような気がした。
「私のこと覚えていない?ほら、愛知県小田井署で起きた風間志乃さんの殺害事件の後でテロリストと一緒に戦った葉類亜希、覚えているでしょ?」
そう言った私に愛は眉間にしわを寄せて考え込む表情をした。
「そんなことあった?ってあなただれ?」
「凛や秋子さんはいくら何でも私のこと覚えているでしょ?」
「何もめてんの?」と凛が割り込んできた。
そして続ける。
「愛よ、こいつお前の知り合いか何かか?」
とぼけていたわけではなさそうだ。
「知らない」と愛。
そして天然パーマに向かって言う。
「あっちゃん知っている?」
「いーや、全然思い出せないけど・・・」
となぜか語尾を濁らせる・・・何故?
「けど、って何?」
と愛。
「思い出せないけどあなたのビジュアルってどっかで見たことがあるような気がするのよね」
天然パーマはそう言ってからしばらく考え込んだ。
私が考え込んでいる間、彼女の栗色のくせ毛がなぜかぴょんぴょん跳ねた。
「確か25年くらい前に人殺して児童自立支援施設に送られた子がいたよね、その子の髪が胸まで伸びているって情報が漏れた時期があってその予想コラージュ画像に似ている気がする」
「それだけ?」
「うんそれだけ」
愛と天然パーマの反応が思いっきり薄かった。
「ひとつ聞いていいか?」
突然、凛が話に割り込んできた。
私は「うん」と即答する。
「君が言う通りだとしても風間刑事とか言う人も、葉類親娘もこの世にはもう存在しない、なぜなら2年前に日本が仕掛けた戦争が激化してつい最近、北九州市、大阪市、名古屋市に数十メガトン級の水爆が投下されて彼らの住んでいたであろう小田井市も蒸発して無くなったって話だ、これは逆に言うと君が10年前から来たというなら説明がつくかもしれないな、歴史の変革が生じたとするなら、君は10年前よりもさらに昔に飛んでいた可能性が高い」
なんか大人になったなぁ、凛。
でも・・・それより気になることが。
「ちょっと待ってよ、なんで日本が戦争仕掛けるの?軍隊を持たない日本がそんなことするなんてありえないでしょ」
私は思わず口を挟んだ、いくらなんでも突飛すぎるし、にわかには信じられなかった。
「仕方がないですね、ここは元総理の山崎秋子が責任をもって説明します」
この人が元総理だというのも信じられないけど少しでも情報が得られればということで取りあえず話を聞くことにした。
「10年くらい前にあたしとここにいる倶名尚愛は選挙法改正直後に行われた衆議院議員の選挙で立候補して当選した、その頃はもうすでに二人が所属していたそれぞれの政党は以前からヤバイ党だとは言われてはいた、けれどそれは『近隣の大国に侵入されるのを防ぐにはある程度の軍事力が必要だ』という程度のものだった」
秋子はそこで一息をついて私を見る。そしてなぜか小さく微笑むと続けた。
そんなある日、国民投票法が改正されて一気に改憲の機運が高まった、その時はマスコミをはじめ国民の多くが気がついていなかったけどこの改正案の大きな問題点は二つ」
頭上に挙げた右手をこぶしにしてみんなの目の前に差し出して人差し指を立てた。
「まずは有効投票者数がどんなに少なくても、その場合わずかな僅差だとしても『改憲賛成票』が上回れば改憲が可能になってしまうということ、敦子何か床に書けるものを出して」
そう言ったらすぐそばにいた敦子なる女は黒の油性極太マジックペンを取り出して秋子に手渡した。
「まずここに円グラフを描くとする、そして投票の結果、わずかに『改憲反対票』を『改憲賛成票』が上回りました、結果として憲法改正をこ会で審議することが可能になりました、この場合、亜希さん?どう思いますか?」
この問いかけは他の三人ではなくて明らかに私に向けてのものだった。答えはもちろん・・・
「国民が出した答えなんだからそれはそれで良いんじゃないかな?」
私がそう言うと秋子はやっぱり少し微笑んだ気がした。
少々子供扱いされているような気がした。
だが彼女はもう一つ円グラフと描いた。
そしてその円の分割比は1/3と2/3、そして面積の狭い方に『有効票』と書き、広い方に『無効票又は無投票』と書いた。
「この場合はどうかしら?わかりにくかったらもう一つ円グラフを書きますよ?」
私は小さく「あっ」っと叫んでしまった。
バカな私でもこれはよく分かる事だ。
仮に賛成票が60%あったとしても全体の中のわずかに20%に過ぎない。これを多数決と言い張るには少々乱暴すぎる。
「亜希さんが言いたいことはわかる、でもこれをもって投票結果を無効とする事は出来ないのよね、例えば『投票に参加しなかった人達が全員反対だった訳じゃない』とか、『むしろ賛成の方が多かったけど投票に行けなかっただけのことだ』とか、挙げ句の果てには『無効票を書くような奴はふざけた記入をする輩ばかりだからそんなのは無視するべき』だとか、最低有効投票率を設定してそれを満たさなければ投票自体を無効にするなどときっちりとした方の線引きがないとこうなりますという話です」
なんとなくわかった気がするでもそれだけじゃ。
「今、亜希さんはそれだけじゃって思っていたでしょ?でも二つ目が大問題なの」
心を見抜かれているような気がした、目の前の秋子さんはさらに中指も立てる。
2本目だ。
「広告に関する制約を決めなかったことと国民に対してその改憲に関する内容を事細かくはっきりと告示しなくても良いということ、はっきり言って後でこっそりちょちょいと書き換えることも可能ですからね、それがなされた場合の『国民投票結果を無効、つまり廃棄する』ことさえ出来ない」
まあ確かに・・・でも
「どうせネットとかで改憲案の詳細がバラされちゃうんじゃない?国民だってバカじゃないし」
一応反論してみた。
「簡単に説明するけどわざとそれらを難解な文章にしてわかりづらくすることも可能なんですよ、そしてその表(おもて)ではすごくわかり易いイメージ戦略を図ることも可能なの、例えば『一生懸命頑張っている自衛隊の人達が可哀想』だとか『隣国が攻めてくるのがわかっているのに攻撃されて多くの国民が殺されるまで手も足も出せないのか?』とか言いだすんだけど、それでもテレビやネットの広告では『自衛隊にどれほどの権限を与えても良いことになっているのか?』、とか『どんな状態での先制攻撃が許されるのか?、どれほどの対外攻撃兵器を所有しても良いか?』、さらに『緊急時にどれくらい国民の行動に制約をかけて良いか?』それらさえ説明しなくても良いの、わかるかな?このヤバさ」
正直今の私にはちょっとピンとこなかった。
「じゃあ例えば、亜希さん、あなたがテレビをつけたとして他のバラエティとかで見ているタレントさんや博識がありそうな学者さんがあちらこちらで先ほど例に挙げたわかり易いキャッチコピーで憲法改正の必要性を訴えるわけ、でものそれに対する反対派はというと『自衛隊は違憲じゃないけど武装してはいけない』とか『先に攻撃できるような兵器を持っちゃいけないとかどうしても歯切れの悪いものになりやすい、そしてそれらをきちんと説明しようとするとさっき言ったようなしちめんどくさい話になって国民の頭を混乱させるし、政権側にとっても『そんなことは言ってはいない』とが『デマを流すな』という反撃の材料にもされやすい」
そうかなぁ、でも・・・
「国民はそんなにバカじゃないと思いますよ?」
そう言った私に対して秋子さんは落ち着きなさいと言いたげなポーズを取った。
「そもそも資金力に圧倒的な差があるの、弱小野党や平和団体がテレビ局や新聞社に出せる広告の量なんてたかが知れている、けどね、賛成派にとってはほとんど無限と言っていいほどの資金源があるの、日本の政治に古くから大きな影響力を持ってきたと言われている大手広告代理店や人材派遣会社の経営者であり尚且つ政権顧問でもある大学の名誉教授とか、彼らが『改憲は絶対に必要だと言ったら?さっき言ったタレントや学者や運動家も雇い放題だよ?それに対して奴らは『反対派』をいくらでも締め出すことができる、それがたとえ『SNS上』であったとしてもね」
なんか悔しい気持ちがこみ上げてきた。
それでも。
「それでも、それでも私は諦めない!」
強く宣言してしまった、顔が真っ赤になって他の人たちに顔向けができない。
「ごめんね、ムキにさせる気はないの、それは私たちが若かった頃にも思っていたことだから、むしろ羨ましい」
なんか急に済まなそうに秋子さんは言う。
こっちも申し訳ない気分になってきた。
「まあそんなわけで正直言って当時与党の側にいた、あたしたちだったんだけど流石に『やばいな』と感じ始めていて、こっそり野党の人たちと内密に連絡を取り合っていて新党の結成を模索していたの」
そういうと彼女は大きさの違う円を描きその中に党の名前を記入した。
「でも野党に人たちって全てが全て護憲派とは限らないのよね、むしろ多様性があった、それに対して愛の党やあたしの党は党則が厳しくて反抗的な事もできなかったんだけど『さすがにこれはマズイ』と感じ始めていた同士が多くて割とトントンと話がまとまってある日、作戦を決行した」
秋子さんが熱心に話をしているすぐ隣で愛が退屈そうに大きなあくびをしている。
見かけは大人になった気はするが精神年齢は私の知っている愛よりもはるかに幼かった。
「突然、内閣不信任案を提出されて政権は驚いたでしょうけどそれはある程度は想定内だった筈、でもそれは圧倒的数の差で否決されると思っていたでしょうね、けどそれが通ってしまった、というか通した、私たちがね」
「そんなことしようものなら除名どころか契約違反で訴えられかねないもんな」
楓凛が口を挟んだ。
しかしそんなことなど御構い無しに秋子さんは続ける。
「もちろんそんなことは計算済み、会議に入る前に弁護士立会いのもと離党届を出しているからね、そして内閣はそれを拒否して衆議院を解散選挙をすることになった、その時もあたしたちと野党がグルになっていることなんて内閣の連中も気づいてはいなかったでしょうけど」
そう言ってから秋子さんは愛を見た。
なんか知らんけどヤバいことを始めている。
敦子に次々と娘たちのサイズに合いそうな下着や服を召喚させて着せ始めていたがその傾向が極端に偏っているような気がする。
ゴスロリ?ボクっ娘?ロリアイドル?もうわかりません。
「それで愛の願望達成能力もあって選挙は大勝した、それで私、秋子が総理で愛が副総理、愛理さんが官房長官というわけで新政権は順調にスタートしたんだけど」
愛が娘達に着せ替える手を動かしながら私達をみている。
「そんな布陣でよく野党の人たちは文句言わなかったね?」
と私。
「今だから言えるけどその当時クーデターとか暗殺の噂もあって普通の人間じゃダメだったの」
秋子さん、それに続けて何故か愛が続けた。
「あの日までは」
あの日までは、が気になった。
「国民の生活に直結しそうな法案をある程度通して一息ついた頃、あの忌まわしき巨大地震が関東平野を襲った」
そう言われれば来る途中で見た気がした。
最もここ、栃木にまでは大きな被害は及ばなかったみたいだけど。
「その地震で東京都が崩壊した、国の中枢機能も、そしてその騒ぎが収束した頃にはあたしたちの党の議員らのほとんどが命を落としていた」
その意味はすぐに自分の頭に入ってきた。
「そして下野していた元与党だった議員のほとんどが生存していた、まるであらかじめ巨大な地震が来ることを知っていたかのように安全な場所、つまりシェルターの中にいて助かっていた」
私が言うとみんなは一様に驚いた顔をした。
そして声を揃えて言う、「それはなぜ?」
聞かれるまでもないことだ。
いや他にはありえないこと。
地震をあらかじめ予知していたと言う事なら考えられなくもない。
しかしそれならいくつかの問題点が生じる、彼らとて国会議員である以上、議会に出る必要もある。
それにずっとシェルターに篭っているわけにはいかない。
そして地震予測はそれほど正確なものでもなければ、何月何日に来ます。
というところまでは特定できない。
良くて何月から何月までの数ヶ月、それが精一杯じゃないのか?
そうなれば答えはただ一つ。
「人工地震」
私がそういうと娘たちの着せ付けを終えた愛がこっちを見て満面の微笑みで言った。
「亜希、やっぱり亜希?本物?」
え?何故そのような事に?
疑問が湧いた。
「お前のニセモンがなんども俺たちの命を狙いやがってよ、まあ大抵のやつは撃退できるんだけど、そんなやつらに俺らの情報を漏らしたくなかったからな」
はい?そんなやついるんですか?
「あっちゃんのこと忘れられていると思っていたわ」
えーと、お笑いの人?
「本人確認が取れたところで話を進めますね」
何故?愛の正体を隠していた?
「実はほとんどの議員は震災でお亡くなりになったというわけではなく、何者かに殺害されていたと」
ここまでくれば言われなくとも先は読める気がする。
「はい、そして私と愛はテロリストとして指名手配されることになりました」
そして問題はここからだ。
当然国会は欠員が多すぎで補欠選挙をしなければならないはずだった。
しかしそうはならなかった。
「第一野党が、それに追従するいくつかの党の党員が集結して緊急事態宣言を発動してあなたたちの党に取って代わり政権を奪回した」
私は言いながら愛に視線を向けた。
なんとも愛くるしい笑顔だが彼女がこの中で一番辛い思いをしてきた事は理解できた。
私は愛と向かい合い彼女の両手をとった。
彼女の深層に眠る記憶が伝わってきた。
前田夫婦は私によく似た女性に呼び出されて二人とも惨殺され。そしてリナも・・・
「前田夫妻を襲ったのは良く統制の取れた暗殺工作部隊でした。100メートル以上離れた場所から拳銃やボーガンで心臓を打ち抜かれて死亡しました」
秋子は静かに言う。
「それからあたしたちの逃亡生活が始まりました、かつての旧政権はその時もまだ検察や警察、そしてマスコミに対する強い支配力を持ち続けていました、白を黒にすることなんて容易いことだったんです」
「旧政権は私たちの党に取って代わり政権を握ると同時に憲法改正の是非を問う国民投票をしました、補充選挙はしないのに国民投票するとは何事かとの声もありましたが、簡単に黙殺されました」
「そしてある日逃亡最中に夜襲を仕掛けられてリナも奴の餌食になり俺たちはリーダーである頭脳を失った」
「問題はリナを拳大の鉄球で殺したのがあなた、亜希によく似た少女だったということです」
苦虫を潰したように秋子は言った。
「国はもうあたしたちに逆襲を仕掛ける力はないとみなして放置するようになった、そして軍事政策をとるようになり日本は世界でも有数の極右政権を持つ国となりました」
それで彼女達は流浪の旅を続けていたのか。
ーーーーーーーーー
今度は私が彼らに今まで体験してきた事を説明していた。
記憶がかなり曖昧な部分もあったがだいたい説明がつくように話せたと思う。
「いや全然ついていねえよ」
いきなり凛がツッコミを入れてきた。
どこが説明がつかないと言うのだろうか?
「お前はあの事件があってから10年後に来ただけと思っているようだがそれは違うぞ、その褐色の美少女とやらは誰だ?だいいち俺は10年前どころか一度もその施設に入った記憶はないんだが」
あれ?私の記憶はどうなっている?
時系列をまとめてみるとしようか。
現時点から10年前、私は小中井田井署をクビになり栃木の施設送りとなった。
その護送車の中で髪の短い褐色色の美少女とふわっとした髪型の可愛いメガネっ娘と一緒になり楽しくおしゃべりをした記憶がある。しかし施設に到着をして目を覚ました時(というか叩き起こされたのだけど)すでに彼女らの姿はなく、私はそこで草薙敦子という少女に出会った。
「思い出した、あなた敦子ね」
私は今更のように言った、そして葉類警部の力と依頼を受けてお忍びで潜入取材をしていた凛と会う。
「やぱり会っているじゃない!」
私は思わず楓凛に対して叫んでしまった。
「いやだからそんなところ行っていない」
やっぱり全力否定する楓凛、しかも・・・
「私もそんなところに行ってませんよ?」
と敦子も絶賛大否定。
秋子が私を見て『やれやれ』と呟くと油性マジックを手に取り何やら床に書き始めていた。
はじめに横長の楕円を描きその中に『なごや』と記入した。
その少し離れた右に楕円を描きその中には『ふじかわ』と記入、それらを直線で繋げた。
もしかしたら漢字がかけないのか?
それは日本の総理大臣の伝統芸なのか?
「この左の楕円が亜希が署をクビになって護送車に乗せられたところ、そして右が富士川サービスエリアでの謎の少女二人とトイレ休憩、まずここで一つ、秋、あなたは本当に護送車の運転手に『新東名高速道路なんてまだない』みたいなことを言われましたか?」
『言われた』
と私は答えた。そして・・・
「でもそれは夢だったかもしれない、それに栃木の施設について叩き起こされたとき彼女らはいなかったしトイレ休憩もなかったと聞いた」
私がそう言うと秋子は右の『ふじかわ』と記入した楕円のななめ右下に楕円を描きその中に『さぬきがわ』と記入した。
そしてその下に同様な楕円を描き、その中に『学習ルーム』と記入して慌てて横線で隠してその下に『いむしつ』と記入した。
「ごめんなさい『医務室』でした、そこで亜希さんは自称凛とエッチをして教職員を刺激、拉致させて二人ともここで無理やり交尾をさせられる」
『医務室』の下に再び楕円を描きその中に『学習ルーム』と記入したが慌てて横線で隠して『なぞのへや』と記入した。
ワザとやっているのか?いや絶対にワザとだろう。
『ふじかわ』と記入した楕円の左斜め下にももう一つ楕円を描き『さぬきがわ?』と記入した。
なんで『?』マークがつくかは知らんけど。
そしてそのすぐ下にも楕円を描き『学習ルーム』と記入して慌てて横線で隠す。
そして『実験室』と記入。
「あの、もしかして『学習ルーム』というワードを『犯行現場』という意味で使おうとしていませんか?」
私は聞いてみた・・・、返事はなかった。
そして『謎の部屋』と『実験室』を線でつなぐ、そして実験室から下に線を伸ばして楕円を描きその中に『なう』って秋子さん、あなたどこの整形病院のご老人ですか?
「そこで亜希はこの実験室に移動、もしくはそこで起きた出来事の夢を見る、そして今に至る」
ここで秋子さんはさらに『実験室』の左斜め下に楕円を描き『実験室2』と記入した。
そこからも下の『なう』に下ろす。
あれ?これだと線が二本にならなくね?
「二本だけじゃないですよあたしたちの分も書いてないですからね、ちなみにこれは亜希が言うところの褐色肌美少女視線の時系列ですね、うえの『さぬきがわ?』、ここで施設に送られた二人のうち、一人、つまり眼鏡っ娘が射殺されたようですね、そして『実験室』へと繋がるわけですがここから先は別ルートになる可能性もあります」
そして『実験室2』の楕円に向かう矢印を描き『?』を記入した。
「ここで『褐色肌の美少女』としての亜希に聞きます、あなたを吸収したのは豪速球を投げられる亜希ですか?」
私はしばらく首を傾げて考えたがどうしてもわからない。
秋子さんは今度は『なごや』と記入してある楕円の左側にもう一つ楕円を描き『とうきょう』と記入した。
その下にも楕円を描き『あたしがそうり』と記入した。
その下にも楕円と描き『おおぢしん』と記入しする。
さらにその下にも楕円お描き、それを繰り返して
『くうでたあ』
『はめられる』
『けんぽうかいせい』
『ぐんじたいこくか』
『けんかうる』
『みずもとばくだん』
と立て続けに記入してそこからななめ右下に線を引こうとして「あれ?」と言って首を傾げた。
記入しすぎですよ?秋子さん。
あなたがつなぎたい『なう』の楕円は右側斜めの遥か上です。
「まあこういうこともあるわけで・・・」
彼女は言い訳をすることもなく『みずもとばくだん』から思いっきり斜め上の『なう』に線を繋いだ。
「秋子、それ多分すいそばくだん・・・」
と敦子、よかった突っ込んでくれる人がいて。
「ここで問題です、あたしたち左回りルートのメンバーが知っている亜希はどの亜希でしょうか?」
そう言って秋子さんはもう一本、『謎の部屋』の楕円から『なう』に線をひく。
「まず一番右の線、これはあり得ない、凛も敦子もこの施設には行っていない」
一番右の『なう』につながる線にやたらと大きな『×』をつけた。
「ところで目の前で眠っている女の子たちは何才くらいに見えますか?」
皆んな一様に考え込む、どう見ても10才前後にしか見えない。
あれ?
「俺の記憶が正しければこの娘たちは20代半ばじゃないと計算が合わないんじゃないかな?」
凛が突っ込んできた。確かに10+15=25だ、そこは間違ってはいない、ではどこが違う?
「疑うべきはこの『実験室』と『実験室2』の年代ですね、本当に今から25年前だったのか疑問です」
「その辺の記憶が定かじゃないんだ」
と私。
自分が主体で他人に見られている記憶がある。
しかし私自身を他人の目から見ているかのような記憶もある。
結局どれが本当の自分なのかわからない。
「自分自身が主体で膝を抱えた女の子から見られている私の記憶は十代半ばくらいの体格だった、私自身を他人の目で見つめていた私の記憶の中の褐色の美少女は10代前半だった」
娘の一人が目を覚ました。
そんな彼女を見て愛は喜び抱きしめる。
そして敦子にお人形さんを出してもらい二人で遊び始めた。
私はそんな彼女に強い違和感を感じ始めていた。
何故か彼女らしくないと思った。
「もう一つ、気になるワードですけど『手足がもげた遺体』、これが何を意味するのかわからないんですけど思い当たることはありませんか?」
それは多分『実験室2』ではなく『実験室』だろうとは思うのだけどその『手足がもげた遺体』というものを見てはいないのでなんとも言えなかった。
「多分『実験室2』ではそのようなことはなかったと思います」
秋子さんは言う。
愛は次に目が覚めた娘も加えて遊びだした。
三人揃ったおままごと遊びだ。
しかし彼女にはあるべき20代女性の知性は全く感じられなかった。
「今思い返せば『実験室2』ルートの自分はもっと大人だったかもしれません、二十歳をとうに過ぎた20代半ばくらいの、その場合でもそこまでが失われた十数年ということになってしまいますけどね」
私がそう言うと秋子さんは少し納得したような表情になった。
「それならば確かに話があう、というよりもあたしはそれよりも気になっていることがあるんだけど亜希の方こそもっと気になっている事があるんじゃないのですか?さっきから愛ばかりを見ているような気がするのですが」
見抜かれていたのかもしれない、確かに愛ばかりを見ていた。
「人格崩壊ですか?」
私は呟くように言った。
凛や敦子、そして相自信にも聞こえないほど小さな声で言ったつもりだったがそれは全員に聞こえていて、全員が私を見た。
だがその後の動作がただ一人、愛だけが異なっていた。
会った時からガキっぽい娘だとは思ってはいたけど私の目の前にいる愛はかなり異常なまでに別人だった。
「そうなるとこの図は最初から描き直さないといけませんね」
秋子さんは頭をポリポリ掻きむしりながら言った。
「リナが死ぬ間際に言っていたんです、その意味をようやく理解しました、『魂を回収して回っている迷惑な奴がいる』みたいなことを」
そして一呼吸を置いて続けた言葉はさらに衝撃的だった。
「リナを失ってから愛は魂を失った動く人形です」
そして秋子さんの瞳は言っていた。
『その迷惑なやつとははお前の事だ』と。
ーーーーーーーーーー
混乱した頭で一晩を過ごした。
わかってきたことをまとめるとこうだ。
1、『死にかけた人の魂を回収して回っている迷惑な奴』とはほぼ私のことだろう。
2、この世界では前田新作、前田愛理、前田リナ、そして葉類智恵や風間刑事、そして私、葉類亜希らはもうこの世界では生存していないらしい。
3、前田愛理、前田リナに続いて私を失ったことで倶名尚愛は能力を全て失い幼児レベルの知能しか持たなくなってしまった。
4、4人の持っている能力の中で戦闘能力と言えるのは草薙敦子の召喚能力と楓凛の『馬鹿力』のみ、秋子は触れた相手の神経を刺激してコントロールができなくすることくらい、全く戦いには向かない(ハニートラップとかならありかもだけど)
しかし愛と自分の娘たち(とは言っても連中、『ここは仮に侵略者と言っておくが』との間にできた子供達ばかりだったが)が遊んでいる光景を見るのはかなり複雑な気持ちだ。
どう見ても10才以上は歳の離れた女性と幼児的な遊びを楽しんでいる10歳前後の娘達を見るのはやはり精神的にキツイものがある。
「これからどうする?」
と後ろから楓凛さん。
10歳以上年が離れているのがわかってもなお最初のうちは『楓凛』と呼び捨てにしていたが流石に自分が知っている彼女とは違うことに気がつくとそれはできなくなった。
「このメンバーで、六人のコブ付きでこれから先、生き延びていけますか?」
流石に不安だった。
政権側が崩壊寸前でそれどころじゃないかもしれないが侵略者の動向が気になるところだ。
政権との繋がりがイマイチなとこも気になるところ。
「まあなんとかなるんじゃないですか」
敦子の声、フワッフワの髪の毛をポンポン弾ませながら言う。
「まずはご自身の問題を解決してから考えた方が良いのではないのでしょうか?」
と秋子さん。
それは確かにそうだけれど、流石にこの9人を置いて行くのは後ろ髪を引かれる。
「いや、お前を安心させるためにいうわけじゃないんだがああ見えて愛は俺たちの守り神なんだぜ、確かに戦闘能力は失せてしまったけど幸運だけは力強く引き寄せるようになった、これってある意味最強なんじゃないのか?」
「みんなでゴロゴロしよう」
愛がみんなに呼びかけると一斉に横になった、娘たちに至っては本当にゴロゴロしている、その上を数十発の弾丸が通過してゆく、
「あっちゃん、いつものやってみて」
とニコニコ笑いながら言うと左手で何もない筈の方向を指さした。
「召喚、いつもの!」
敦子が叫ぶと彼女の腕にはホーガンが握られていた。
「やっぱり無理!」
敦子はそう言うと凛にパスをした。
「ってお前もう打てる状態じゃねえか」
そう言うと凛はホーガンの引き金を引いた。数メートル先の何もない空間でホーガンの矢が止まりその直後矢に胸を貫かれた男の姿が浮かび上がってきた。
口から血を流してその場に倒れる。
その側には自動小銃が転がり落ちていた、全弾を撃ち尽くしたから捨てたのだろうか?
「えーと、これって愛は何を出して欲しいなんて指定していませんよね?」
この流れでホーガンが出てきたのか理解不能だった。
「なんとなくそうなのかな、ってのを出しただけですよ?」
「はい?」
というのが精一杯だった。
どうやら愛からの指示があってそれを出したわけではなさそうだ。
「こいつの腹回り見てみろ」
凛に言われてそいつのお腹周りを見たら・・・プラスチック爆弾?ってか羊羹巻きすぎでしょ?
「もしもこんな奴に銃弾や砲弾を撃ち込んだらどうなる?ここら一帯どころか建物自体が吹っ飛ぶかもな」
「まず愛が『ゴロゴロしよう』と言い出したのは単なるこいつらとの遊びの一部としてだ、決して自動小銃の弾丸が飛んでくるのを予想していたわけじゃない」
楓凛が言っていることはわかるけど実は白状させてもらうなら私の感知能力には全く引っかからなかった。
「そして敦子がホーガンを選んだのも単なる偶然だ」
旧再会4 改稿
闘いの再開5 に続く。
あとがき
if storyというより亜希や楓凛、そして敦子がさぬきがわ学園に送られていない時間線の話になります。
観萌「あいつらに感づかれたくはなかったのですが私は失敗してしまったようです」
『あいつら』と確かに彼女、観萌は言った。
私、亜希には一体何のことだかさっぱりわからない。
観萌「あいつらとは私たちの父親たちのことです」
亜希「えーと、一体何の話をしているのかな?」
私は観萌に訊いてみた。
観萌「まずひとつ、亜希さんに確認しておきたい事があります、本来、あなたは私、いや正確には一般少女でしたが男に襲わせて廃人にする算段でした」
亜希「それは一体何のために」
観萌「私の姉、愛さんから聞いていませんか?彼女達、私達姉の事ですが、彼女とほぼ同世代の女子中学生達が彼女達の先輩に誘惑されて次々と孕まされて行き、ほとんどの娘達が周囲の中絶の勧めを断ったばかりか行方不明になったり謎の不審死遺体で発見されていたと言う話を」
亜希「それは私も聞いた、あまりにもな規模の大きな犯罪の上にたった一回の交わりで100%妊娠なんてあり得ないだろうと言っていた、それどころか事件が表沙汰になった記録さえない」
観萌「その自称女性さんは『こじろう学園』の生徒でした」
バカな?あれはどうみても二十歳後半以上の青年、『こじろう学園』は18までの施設だったはず。
観萌「小田井能力を病院襲撃事件を覚えていませんか?」
亜希「確か、過去に遡る任務をこなせばこなすほど・・・」
観萌「あなたの義母、智恵さんもそこに疑問を感じたようです、彼ら、彼女達を育成する施設がどこかにあるのではないのかと」
亜希「それが『こじろう学園』と『さぬきがわ学園』と言う事だね、それで私をあなたに対する婦女暴行と自称女の殺害事件として、私を『さぬきがわ学園に送ることにしたと」
観萌「そうですね、でもそれにより、父達の計画が頓挫する可能性が出てきた、だから彼らはあなた達に『さぬきがわ学園』の調査をさせないと言う枝を作って与えた」
亜希「でも女子高生をふたりも廃人にしたらそれこそ、学園に私を派遣せざるを得なくなるんじゃ?」
そこで私の思考は停止した。
観萌「これはその当時、私の仲間、いいえ、姉妹でもある花奈ちゃんががみた予知夢ですが私たちのグランマでもある亜希さんにそれを転送しますね」
彼女はそういうと目を閉じた、わたしもつられて目を閉じる。
男は『時間操作能力』と過去方向にしか使えないタイムリープ能力を駆使してふたりの少女を彼女達の時間にして自分一人で入れ替わり立ち替わり何十時間も犯しまくった。
結果彼女達の精神は崩壊して男の操り人形となった、そこで誰も入っていない個室の扉に私が投げた特殊ボールが命中してその扉が破壊されて私は署長に厳重注意を受けるにとどまる。
観萌「もしかしたら自称女性さんが彼女達の胎内に解き放った精液の中に特殊な薬物が混入されていたかも知れませんね、いいえ、事実私の胎内に取り込まれていた彼の精液には粘膜などから浸透して吸収される特殊な薬物が混入されていました」
亜希「それなら私も行かなければ」
焦って取調室を飛び出そうとした私を観萌の手が引き止める。
観萌「もう無駄です、彼らは彼女達を駒に使いもう次のステージに進めています」
『え“!』と私は思わず叫んでしまっていた。
観萌「つまり速い話があなたが『さぬきがわ学園』に送られた時間線でもこの時間線の世界でも、私が介入出来なかった世界でも彼女達ふたりは凌辱されまくったあげく廃人となって一見普通の女子高生を演じながら彼らの手先となって働くか行方不明者になるかのいずれかと言うことです」
なんだか自分がやった行為が無駄だったと言われているみたいで虚しさが込み上げてきた。
観萌「まあまあ、亜希おばあちゃん、落ち込まないで、あっちの世界の彼女達はあなた自身がケアしてくれるはずですし、こっちの世界の彼女達も私が介入し損ねた世界でもそちらの世界の私がなんとかして見せますから」
観萌はそう言ったが今サラリと酷いこと言わなかったか?
観萌「それよりも問題はここの時間線の世界における未来です」
そこでは私が住む愛知県は数十メガトンの水爆によって人が住めない世界になっていた。
観萌「どうやらこれは逃れようがない事実みたい」
一体どういった事が起きたらそんな流れになるのかは理解できないがひとつだけ確かな事実がある。
亜希「ねえ、あなた、私のこと、おばあちゃんなんて失礼なこと堂々言っていたよね、それってどういういみ?」
続くかな?
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