カレンダーガール12 謎のMOO
カレンダーガール12 謎のMOO
前もって言っておきます、自分で言うのもあれなんスガ真偽不明な記述しかありません、なんせ国名どころか『天界』扱ったおまけもつけました。
ご自分の頭で考えましょう。
毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と乖離した描写が多数ありますことをお断りしておきます。
謎の美少女
「はぁ、私を産んでくれたクソババァ(葉類智恵警部)、じゃないお母さんの気持ちがよくわかるわ」
私はサニークーペ後部席右側に座ってに座って反対側、つまり左には私の前世、と言っていいのかよくわからないが風間志乃の父親の風間達也が座っていた。
まあ話すと面倒なことになるけれど風間達也の実の娘である風間志乃は凶悪犯に射殺されて既に死んでいる。
実は父親である風間達也もその直後に凶悪犯に両肩を撃ち抜かれて射殺されてもおかしくない状況だった。
その時にたまたま居合わせた(というか突然その現場に出現したらしい)私がその凶悪犯を撃退したのが縁で、今では彼の部下として働いている。
(実は小石を2個ほど犯人めがけて投げつけたのだが最初に右手で投げた一投が凶悪犯の方目を潰して、続いて左手で全力で投げた拳大の石が凶悪犯の頭蓋骨をカチ割って中の脳髄を破壊したためあっさりとあの世に撃退してしまったのだがこっちも右肩を弾丸で撃ち抜かれているのでその辺はおあいことしておこう)
しばらく一緒に働いているうちに何故か突然、風間志乃としての記憶が蘇ったわけだがどうやら血の繋がりはないようだ。
肉体的には赤の他人である。
ちなみに風間達也を一言で言うと某メンバー達也をかなり不細工にして太らせたようなアラフォーのおっさんである。
もちろん奴とエッチをして子供ができたとしても奇形児が生まれる心配はない。
しかし私は今、彼の妻であった葉類智恵(もちろん風間志乃の実母)の養女として迎え入れられた手前淫らなことは出来ないし今はもうする気はない。
そして運転席にいる楓凛という10代半ばの少女だが見た目はどう見ても『ボンッ、キュッ、ボンッ』のグラマスな大人の女性にしか見えない。
見た目を裏切る筋力と男勝りの性格でむしろ風間達也よりは頼りになる。
二日前の早朝に私たち3人は母であり上司である葉類知恵警部の命令でおおい川の上流付近まで魚を釣りに行って名を釣りに行っていたのだが本当の目的はおおい川の水流の調査だったようだ。
まあサンプルは2本ばかり試験管に入れてのんびりと2人で釣りをしているフリをしていたのだが、ど素人に釣れるはずもなく、サニークーペの運転席のシートを倒してくつろいでいる楓凛に笑われる始末だった。
しかもそろそろ帰ろうとした矢先についうっかり高齢者の霊を呼び込んでしまい胎の中に収めてしまうという失態まで犯してしまった。
もう既におおい川に来る前に地元の小田井のアパート玄関で2人の美少女の霊を取り込んでしまっているので実は3人目だったのだけどそこは追求しないで欲しい。
その直後私たちは激しい揺れの地震に遭遇して命からがらサニークーペに戻り楓凛の卓越したドライブテクニックによりなんとか逃げ延びたのだがこのあたりから私の胎の中の人口が増え始めた気がする。
まあそれは後に南アルプストンネル内で大事故に巻き込まれて命を落とした中央新幹線の品川発名古屋行き始発タキオンの乗客であったことがわかってくるのだがその時は私の胎の中に親友の倶名尚愛がいなかったのは幸いだった。
それから私達は川辺を下って行く最中に土石流に押し潰された大型のアメ車を発見して中に乗っていた筋肉モリモリの大柄なオッサンと小学生高学年くらいの少女を救出した。
うん、これがケチの付き初めだったね。
それまで私は助手席に優々に座っていたのだが後ろの狭い席にクソオヤジ、もとい風間先輩とそのでかいムキムキマッチョといたいけな少女を押し込めるのはさすがにその、少女が押しつぶされそうな気がしたので泣く泣く私はその貴重な助手席を大柄なムキムキマッチョに譲ってやったと言うわけだ。
その後色々あって魔改造のロングパジェロに乗ったリナと愛、そして彼女のマネージャーアンドロイドである椎奈と遭遇してその前に焼け落ちかけていた豪邸から救出した裕福そうなおじいさんとその孫らしき小学生の女児2人をリナのロングパジェロに押し付けて別行動をすることにしたんだ。
けど川の両側の町は火の海になっていた。
川の水もなく水道も水道管が破損し井戸水も枯渇しているとあれば消防隊がどんなに頑張っても延焼を止めることは難しい。
その上、川の下流近くが急に大きく膨れ上がったかと思えば大噴火して噴煙と共に火砕流と火山弾を撒き散らすわで、町はさらに悲惨な状態になっていた。
火砕流が自分達の乗っているサニークーペに迫ってくると感じた時、気がついていたら私達が乗っていたサニークーペは空を飛んでいた。
飛んでくる火山弾や岩石を避けながら更に高度を上げていた。
どうやら私の精神の一部である『A』さんから『L』さんまでの並行世界にいた能力戦隊達の能力によるものらしかったけれど小田原に向かった『B』さん、『G』さん、『L』さんを除いた9人でこのサニークーペを飛ばしているらしい。
そして眼下に見えた屋根とかが吹っ飛んだ五つの原子炉の建屋、その周辺の非常な高温で熱せられた屋根に穴の空いた倉庫風の建物を見た時絶望的な気分になってしまった。
非常停止もかかるのが間に合わなかったほど前触れのない激しい揺れ、それにより一次冷却水を流す配管が破断して急激に減ってゆく一次冷却水、だけど補充するための冷却水となる真水は南アルプストンネルの影響で地下水も川の水も枯渇していて頼るは海水の導入による冷却水の補充のみとなっていた。
もはや他に冷却する方法はどこにもなく福島で使用したヘリコプターによる散水もおおい川に突然出来た火山からの火山弾などに命中したり、それでなくとも噴煙で飛行さえ危険なため断念せざるをえない、と言うか普通に考えて無理でしょう?
更に加熱するばかりの燃料棒、そして原子炉や燃料棒を囲った建屋は膨らんだ水蒸気を含む空気の圧力に耐えきれず次々と爆発したってっとこかもしれない。
もう燃料棒は完全に溶け落ちて一つの大きな非常に高温を出す塊となり原子炉の底、コアキャッチャーさえない原子炉の底を溶かして大地に落ちてその土台の岩石さえ溶かし出しているのだろう。
もちろん放射線は致死量といいうのもおこがましいほど大量に拡散されてもはや静岡全体が熱地獄になっていた。
もちろんこの時点での死者の数の多さは語るまでもないでしょう。
もしもあの時、国や鉄道会社が静岡県の知事や住民たちの反対する声に耳を傾けて中央新幹線の計画を断念していたら?
浜岡原子力発電所なんて再稼働する必要はなかったし、水不足で町全体に広がる火災を消し止める手段がなくなるような事もなかったかもしれない。
火山だって地下水によって冷やされて、マグマ溜まりが膨らまずに、さほど大規模な噴火になる事もなかったかもしれない。
そうなれば原子炉や使用済み燃料棒置き場を冷却する方法はいくらでもあっただろう。
「世界一はやくあの世に行ける乗り物になっちまったな」
楓凛がボソリと呟いた頃には私のお腹は臨月寸前の妊婦さんのようになっていた。
この中には何百万人の命が入っているのか私にはもうわからない、ただ一つ確かなのはこの中の誰一人として元の生活に戻れないと言う事だ。
私が彼らに与えたれることがあるとすればバーチャルな世界、すなわち夢の世界だけだった。
それも私自身が命を落とせばその世界は泡のように消え去ってしまう。
「これからどうする?」
風間先輩が訊く。
「うん、とりあえず、シールド能力が無くても、放射線から身を守らなくても生きて行ける安全な場所がいいかな」
私は思いつきで答えた。
もはやそんな場所はこの国のどこにもなくなる、そんな予感はしていた。
何時間そらをとんでいただろうか?助手席のムキムキマッチョな大男が大きく背伸びをしてあくびをした。
室内高がめっちゃ低いサニークーペだ、そんなことをすれば両拳が天井にぶつかるのは目に見えている。
『ゴーン!』という大きな音と共に多分助手席側のルーフには大きなコブが二つできてしまっているだろう。
「な、なんだ俺は、なんでこんなにも狭い車に乗っている、窮屈でたまらん」
はいはい、それが命を助けてもらった人間が言うセリフですか?
私は心の中でだけで呟いた。
それにしても最初は欧米人かと思っていたがどうやらそうではなさそうだ。
「なになに、その大男はいたいけな小学生女児を誘拐拉致した危険人物である」
いま関東地方東部にいるリアル幼女リナから私の胎の中にいる異世界リナに直接送られて来るムキムキマッチョの大男と小学生女児に関する情報を読み上げている。
まあ私も人の事は言えないが見た目だけで本当は14〜5才くらいかもしれない。
「とんでもねぇ奴だったな、誘拐犯か、助けなければよかった」
楓凛はそう言って大男を睨みつけた。
ちなみに人食い大女に喰われた元愛人であるところの愛人2号と愛人3号は2人とも物騒なので異世界からの殺戮部隊の『L』の胎の中に隔離している。
「えーとなんか2号さんと3号さんとでは見解が違うような気がするけどここにいる大男さんはとんでもないロリコンさんで、小中学生の美少女を見ると見境なく襲い性行為に及ぶ危険があると」
「違う、オレはあいつ以外とはやっていない」
必死になって否定する大男、ますます怪しい。
「愛人二号さんの実妹である女子中学生の彼女を暴力で拉致して数人の男達に輪姦行為を強要して仕上げに自ら自失呆然としている彼女を強姦してその幼い胎内に約20リットル以上の精液を注入って、マジですか?」
よくそんなことされて気が狂わずに、いやそれ以前に体が破裂しなかったものだと感心する。
「というわけで身柄確保‼️」
私が叫ぶとサニークーペ助手席のシートバックから鋼鉄製のベルト3本とシート座面からも一本の鋼鉄製ベルトが伸び出て大男の体を腕ごと拘束した。
500kgの力で引きちぎろうとしてもちぎれない、ドS体質の葉類智恵警部が考案した代物。
簡単にはちぎれない。
何と言ってもこの車の中にはまだ幼い、どう見ても小学生くらいにしか見えない女児とか弱い女子中学生にしか見えない私、そして奴のすぐ隣には男の性欲を掻き立てる楓凛が乗っている、いつ暴れ出して3人とも孕まされてはかなわないからね。(いや、私はもう既に孕んでいるような状態で臨月寸前のお腹なのだが、腹のでかい妊婦を強姦する性癖のある男が主人公のエロ漫画があるくらいだから用心に越した事はない。
「それであなたたち3人は異星からやってきた調査隊隊員だって2号さんは言っているけど本当かしらね」
私はすぐ隣で怯えるようにして泣いている少女に時々目を向けながら思わず彼女を抱きしめてしまう。
私の腕の中で怯える感情と一緒にさまざまな情景が流れ込んできた、多分それが事実なんだろう。
「3人と1匹が異性から来たというのは本当だがみんな目的はバラバラだ、あの女に興味を持ったのは偶然だ」
そういうと大男、いや、愛人1号さんというべきか?彼の主張は果たして正しいかどうか迷った。
「本当は湿国か竹国のスパイで超伝導リニアの技術を盗みに来たんじゃないのか?」
空気が全く読めない後部席左の風間先輩が口を挟んだ。
「だからさっきから何度も異星から来たスパイだって、話全然聞いていないんですか?」
と私、冷たく震えていた少女の体が落ち着いてきたのかだんだん暖かくなってきているのを感じている。
このまま顔を引き寄せてくちびる同士を重ね合わせたい衝動に駆られていた。
「それにあんなポンコツなガラクタから学びたい技術なんてない」
そう愛人1号さんに言われた風間先輩の左眼が鋭く光った。
「宇宙人も羨む日本の超伝導リニア、さすがだ」
いや、彼、そんなこと一言も言っていないですから!
「あの、彼も同じだとは思うんですけどこの国のリニアモーターカーから他の星の人が学ぶものなんてほとんどないですよ?」
意外と反論し始めたのはついさっきまで私の腕の中で怯えていた少女だった。
「私も命令されて色々調べていたんですが乗り物として全然ダメダメです」
それには流石に楓凛も驚いたのか後ろを振り返り彼女を見た。
「まず燃費が最悪です、それなら竹国の採用しているアイツ式の常温伝導の方がはるかにマシです」
「なに言っているんだ?安全性を考えたらアイツ式リニアの隙間がが1センチほどしかないのに比べて20センチ以上浮上して左右にも余裕のある日本式の方が地震とか災害に対して安全に決まっているだろう、日本式の方が技術力が高いんだよ」
風間先輩がそういうと愛人一号はやれやれと言いたげな表情をした。
「その僅かで微細な精度に全技術を集中させるのが日本本来の姿だったんじゃないかね?」
そう言われればそうかもしれない、言っちゃ悪いが今の超伝導リニアは日本的というよりは何事においても大雑把な麦国のやり方に近く感じる。
力づくでなんでも解決しようとするやり方だ。
極め細かな精度を追求する日本の発想とは思えない部分がある。
「もしかして技術の原案は麦国が出したんじゃないですかね?」
「もう一つこの国にはこんな言葉がありますよね?『50歩100歩』、マグニチュード8以上の地震が襲ってきた時に1センチも20センチも変わらないんですよ」
少女はそういうと悲しげに笑った。
もしかしたら彼女は今回のような事態になる事をあらかじめ予想していたのかもしれない。
「むしろ隙間が大きいほどブレる範囲が大きくて側壁に激しい速度で激突したり縦揺れの際に床に突き上げられて斜めに軌道より外に飛び出してしまう可能性だってあるんです」
少女がそういうと風間先輩はすぐに反応した。
「だから20センチ以上の隙間があるから」
「バカですか?亜希さんの先輩は?」
それを言われちゃうと流石に私もムッときちゃうけどね。
「浮上のための磁力はあくまでも浮上させるため、軌道から高さ20センチに固定するためのものじゃない、という事は大地の上下の突き上げ量が20センチを超えれば当然その隙間は40センチ以上になったり0センチ以下、つまり軌道に激突することだってありえます」
そこで少女は私の顔をチラリと見た、それは実際に私の親友である愛が乗っていたタキオンで起きた事だと言いたげだった。
「そしてさらに言うなら地震などでケーブルや変電所がやられて電源が落ちた時こそ恐怖ですよ、鉄道会社は両側のコイルをショートさせて閉じた回路を発生させる事で制御可能と言っていますがどうしてもタイムラグが生じてしまいます、それよりも工事会社が設計図通りのコストのかかる結線をしてくれているかのほうが問題ですが、もしもそうでなかった場合、列車の左右のブレはだんだん激しくなってやがては高速で走っているまま側壁に激突することになります、それはパンタグラフとレールに挟まれた旧式の鉄道よりも悲惨な事態を招くでしょう」
少女はあきらかに風間先輩の目を睨み返しながら喋っていた。
「それはアイツ製だって同じだろ?隙間が狭い分だけ余計にぶつかりやすくなる」
頑張れ!先輩、年上の意地を見せるんだ。
「だからバカだって言われちゃうんですよ、アイツ式はモノレール状でしょ、だからコイルを軌道の上下に挟むようにして配置してガッチリと位置を固定する事だって出来るんですよ、それに軌道が歪んだとしてもそこで引っかかってブレーキになるだけでむしろ安全だと言えるんですそれは左右に対しても同じなんです」
「それでお嬢ちゃん、燃費に関してはどうなんだい?」
運転席の楓凛が振り返りながらきいてきた。
「簡単なことです、磁石は固定、電磁式に関わらず磁極から距離が離れれば離れるほど磁束の密度が低くなってゆく、つまり効率が悪くなる、ただそれだけのことなんです」
これには一同黙るしかなかった。1センチと20センチじゃどう考えても同じ車体を浮かせるには10倍、いや、20倍以上磁気エネルギーを必要とするんじゃないのかな?
「それに私は地上で高速な乗り物を開発する考え自体間違いだと思いますけどね」
「それはなぜだい?」
楓凛が訊く、どうやら少女は楓凛に対しては塩対応を返さないようだ。
「もちろん空気抵抗よ」
「それは飛行機だって同じだろ?どこが違うんだい?」
「簡単よ、リニアが気圧の高い、つまり空気の濃い地上を走るのに対して、飛行機は気圧の低い高い高度、つまり空気の薄い場所を飛ぶから受ける空気抵抗が全然違うのよ」
楓凛はふっと笑みを浮かべた大筋では合意なようだ。
「コンコンドで失敗してもまだ懲りずに超音速旅客機の開発をしている航空機会社があるみたいね、でもそれだって今の旅客機よりもさらに高い宇宙に近い場所を飛ばすみたいね、それくらい空気抵抗は重要なの」
そう言ってから少女は私の目を見て続けた。
「亜希おねえさん、あなたがまだ風間志乃という幼稚園児だった頃にあなたの部屋で一つの絵本を見たわ」
えっ?と私は驚き少女の顔を見返した。
いくら記憶の隅を突っついてもそんな顔は思い出せなかった。
彼女は生きていれば30近い歳、そんな頃にこの少女が産まれているはずがない。
「真空のガラスチューブの中を走る高速列車よ、それなら空気抵抗も関係ないわね、って感心しちたけど、あなたたち地球人は年々退化してゆく人種なのかしら?」
不思議そうな顔をして少女は言うと私の胸にいきなり抱きついてきた。
風間志乃と彼女の間にどんな関係があったのだろうか?
それだけが少し気になった。
幼い頃の記憶?
あたしの記憶は時々かなりあやふやになる。
直近の記憶は大勢の男たちに力づくで辱めを受けているところだった。何回も何回も痛いくらいに奥まで入れられて、大量に白いドロッとした液を下腹の中に出されて自分の涙が止められないのに声ひとつ出せないのが悔しかった。
「もうそろそろ俺にもやらせろや」
大柄な筋肉質の男があたしに馬乗りになっていた男を押し退けると自分のズボンを降ろしてそれまであたしを辱めていた男たちのものとは比較にならないくらい大きな肉棒をねじ込んできた。
もう既に痛いとか恥ずかしとかいろいろな感覚を失っていたあたしだったけどその時さらに恐ろしい恐怖を感じていた。
股が引き裂かれそうに激痛が走ったかと思った途端急にお腹が張り始めてみるみる風船のように膨らんでゆくのが見えた。
そして男の体が見えなくなるほど膨らんだ時、『ボンッ』と大きな音がしてあたしの身体は骨を剥き出しにして大量のピンク色の液体と共に贓物を宙高くぶちまけていた。肋骨はすべて外方向に向かってへし折れて、あたしは口から大量に噴き出している濁った赤い血を見ながら、気を失い、いや多分息を引き取っていた。
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『トントントン』という包丁で大根を刻む音、いつものように兄が朝食のお味噌汁を作ってくれている。
ご飯が炊けたことを知らせる炊飯器のアラームの音。
いつもなら空腹感を誘うはずのその匂いが今日は吐き気を催すほど気分が悪くなっていた。
「もうそろそろ起きて着替えたらご飯食べて、急がないと遅刻するぞ」
優しい兄の声、しかし今日はそんな気分じゃない。
食欲はないし股の間がすごく熱をもっていてヒリヒリして痛い。
そして下腹部の中も焼けるように熱くて痛い。
横になったまま鏡に映った自分の顔は信じられないくらい青ざめて引き攣っている。
それを見ただけでも今にも吐き戻しそうだ。
「今日休んでいい?」
多分多少のことくらい我慢していきなさい」と返事が返ってくる気がした。
しかし、
「昨日の今日だし、しばらくは休んだ方がいいか」
とあっさり学校休む許可が降りた。
ほっと自分でも驚くほど大きなため息が出てしまう。
今日から三学期の中間試験が始まる。
だから本当は休んでなんかはいられない。
正直言って学業の成績は下から数えた方が早い順位だ。
「やっぱり休めない」
そう言って痛いのを堪えながら両手をついて上半身を起こすと自分の股間から生暖かいおりものとはまた別の液体が流れ出してパンツはおろかパジャマも貫通してシーツさえ濡らすほどだった。
強烈な鼻を突く臭いの量、多分昨夜の男たちがあたしの穴の中に放出した体液だって確信していた。
思わずベッドの上に胃の中にあったもの全部吐きだしてしまった。
その酸っぱい匂いがさらに鼻を刺激して再び吐き戻してしまう、胃の中がカラになってしまったのかもう胃酸しか出てこない。
あれはやはり夢なんかじゃなかったのだろうか?
でもあれが事実だとしたらあたしの身体はお腹を中心に弾けて中のものを全て吹き飛ばして命を落としているはず。
それはともかく着替える前に兄に報告しないと。
枕元の嘔吐物でベトベトに濡れたスマホをティッシュペーパーで拭き取ってホームボタンを押した。パスの認証画面が表示されて画面の中の顔の輪郭線に自分の映った顔を重ねる。
良かった、ちゃんと機能しているようだ、これで兄と連絡が取れると安心をした。
電話帳画面から兄のアイコンを選んで通話ボタンを押すとすぐに兄は通話に対応してくれて、あたしはこれまでの経過を報告した。
まだ兄は家の中に居たようだ。
ほっと一安心をする、正直言ってこの惨状を1人ではなんともならないと絶望しかけてていたから。
「お兄ちゃん・・・・・」
後の言葉が続かない。
泣くもんか、負けるもんかとは思ってはいても両目から大量の涙が溢れて止まられない。
それどころか嗚咽があたしの呼吸を止める。
『苦しいよ、お兄ちゃん』
そう言いたかったけれど言葉が出るどころか息ができなくなったあたしは目の前が真っ暗になって床の上に倒れ込んでしまった。
気がつくとあたしは客間のベッドの上に掛け布団なしで寝かされていた。
スマホの時間はもう既に夜の12時を回っていた。
一体何時間寝ていたかはわからなかったけれど昨夜の集団性暴行事件からほとんど丸一日が過ぎてしまっていたのは疑いようもなかった。
『もう今更医者や警察に行っても手遅れだよね』
そんな絶望感しかわいてこない。
外出用の服に上下共に着替えさせられて、くわえて下着まで着替えさせられていてご丁寧に股間のデリケートゾーンにはベビーパウダーがこれでもかと言わんばかりに塗り込まれていた。
もしかして兄は自分の妹が大勢の男たちにどんな行為をされたか知っている気がし始めていた。
そのことから兄はあたしの昨夜の一件を警察沙汰にする気が全くないようだ。
面倒なことは億劫だし警察に行けば自分の行為が原因だと責められそうでむしろ罪悪感さえ感じていた。
人通りのない暗い夜道を1人で歩いていた自分が悪いのだろうか?
それよりも兄がこの件を表沙汰にする気がないことを知って投げやりな気分になっていたのは確かだ。
所詮あたしは兄にとって見せびらかしたいだけの存在なんだろうか?
もしも赤ちゃんが出来てしまったらどうしようか?
変な病気を感染されていたり、中にできた深い傷が原因でそこが膿んだり感染症になったりしたら?
いやそれよりもあたし自身が犯罪者にされたような気分になり始めてた。
「ボクの友人にお前を合わせるために出かけるぞ」
いつもなら優しく聞こえる兄の声が今は冷たく言い放されてしまったように聞こえる。
「行かなきゃだめ?」
出来たら、いやどうしてもその人に会うのは嫌だと思った。
あたしが悪いと責められるためにどうしてその人に合わなければならないのだろう。
「ほら、行くぞ」
兄はあたしの右手を強く引っ張り上げて起こそうとした。
あたしの上体は勢い余って兄の股間にもたれかかってしまった。
その時に気がついてしまっていた。
昨夜の男たちの中に居た最後にあたしのお腹を破裂させた男の体臭に似ていた事に。
そりゃ警察沙汰ににするわけないよね?
だって、あたしをヤッタ本人たちなんだから。
だからあたしは必死になって抵抗した。
兄の右手を払い、左頬に平手打ちをした。
その次の瞬間に首筋にチクッとした痛みを感じて後ろを振り返ると昨夜のあたしの身体を破裂させた筋肉質の大男。
あたしの意識は無くならなかった。
だけどその瞬間からあたしは自分の意思で自分の身体を動かせなくなっていた。
兄とその大男はグルだったようだ。
その後、あたしは兄の車に乗せられて郊外のファミレスに連れて行かれた。
大男はあたしたちの乗る兄の車とは別の方向うに走って行った。
別れ際に兄に耳打ちをしていたようだったけれどあたしの耳には話している声どころか音も聞こえにくくなっていて、正直視界に入っている人物の顔も判別がつきにくくなっている。
ファミレスに着くとあたしたちは一番奥の席に通されて席についたが兄らしき人物は時計ばかり気にしてあたしを見ようとしなかった。
しばらくしてウエイトレスらしき女性がオーダーを取りに来た様子だったが兄らしき男は自分のステーキ定食のみを注文して、それが来ると一目散にに平らげてしまった。
あたしの姿なんてこれっぽちも視界に入っていない様子だ。
それからしばらくして兄らしき男は一旦店を飛び出してすぐに1人の女性を同伴させて入ってきた。
顔がよく見えないのではっきりとは断定が出来ないけれど、どこかで見た記憶があった。
そして最初に驚かされたのはいきなり2人があたしの目の前で口喧嘩を始めた事だった。
そしてやはり彼女も何か注文したがこれもどうでも良い事だった。
それどころかあたしを晒者にしているような気がしてならなかった。
例え顔の判別はつかなくっても店員や他の客たちの視線が痛い。
しかしそれもよりも驚かされたのは彼女がいきなりあたしの唇を奪いにきたのには腰を抜かした。
最初は自分の体に何が起きたかわからなかった。
私と彼女のおでこ同士が擦れ合ったかと思った次の瞬間あたしの唇に柔らかくて温かなものが触れた。
とろけるような感触の唇の奥から熱いとろりとしたものが飛び出してきてあたしの口の中の舌に絡みついた。
しばらく何も考えられなくなったあたしの目の前にパンケーキを5枚重ねて乗せられたお皿がふた皿置かれ、それを見た途端、あたしはそれを無性に食べ尽くしたい衝動に駆られていた。
いつものあたしならとてもじゃないけれど食べ切れる量じゃない、しかしあたしは昨晩から何も食べていなかったせいか気がついた時にはふた皿共に平らげていた。
それからあたしと兄、そして素性の知れないおかしな女性、さらにもっとイカれたおとこの車に乗せられて一見ラブホ風の建物に連れ込まれたのだが各部屋を割り当てられ一休みした途端また首筋に『チクッ』とした痛みが走りあたしは意識を失っていた。
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それからしばらくあたしは時々意識を取り戻してはまた失ってを何度も繰り返していた。
あたしを拉致したのは誰だったのかよくわからなかったが臭いからあの晩、私の身体を破裂させた大男だというのはわかっていた。
ファミレスと思しき場所であたしのおでこと唇に触れた見ず知らずの女性がかけてくれた呪いのおかげで身体の自由はまだ取り戻せなかったものの音と匂いだけはなんとか判別がつくようにはなってきた。
首筋に打たれた薬品に対する耐性もついてきたおかげかも知れない。低く響くエンジン音と粘りのないふにゃふにゃな乗り心地、多分麦国の大型高級乗用車だろう。何かから逃げるようにエンジンは息継ぐ余裕もないほど回転数の変化を繰り返していた。
カーブが連続しているのか三半規管がやたらと刺激され続け、あたしは乗り物酔いを起こし始めていた。
周りの風景も見えないのに乗り物酔いというのも変かも知れないが足の両膝を曲げた状態で太ももと足首を左右別々に縛られて、両手首は背中に回された状態でで縛り付けられてやたらと広いシートの上で横に寝かされていたいた。
強烈な鋭い鼻をつく臭いがあたしの股間あたりから匂ってきてスカートもスカートの中のパンツもぐしょぐしょに濡れていて気持ちが悪かった。
どうやらあたしの意識がない時に何回もあたしの股間から胎の中に大量にあの気持ち悪い液体をたんまりと注入したに違いない。
男なんて所詮はそんな生き物だ。
諦めの気持ちと共に生臭い涙が目から溢れ出していた。
その時あたしは自分の体がどんな状態だったか知る由もなかったのだから仕方がない。
また激しくあたしの全身が揺さぶられた、大男の叫び声が聞こえたかと思った途端上からものすごく激しい重圧と共にあたしの身体がドロドロとした何かにグシャグシャに潰されてゆくのを感じていた。
映画に出てくるクリーチャーに陵辱されるってこんな感じだろうか?身体中が服の上からベトベトに侵食されていくような気がした。
そして鋭い痛みと共に右胸と左脇腹に何かが突き刺さっているような感覚があった。
あたしは大きな悲鳴をあげた、いやあげることはできたのだろうか?
そのあまりにもな衝撃にあたしはまた気を失い、狭く暗い場所で誰かに優しく抱き抱えられている自分を感じていた。
右胸と左脇腹に突き刺さった痛みは相変わらず続いていたがぐしょぐしょに濡れた衣服は脱がされふわふわな毛布で包まれているような気がした。
「亜希、一刻も早く医者に見せた方がいいんじゃないのか?」
近くで野太い、しかし女性の声がはっきりと聞こえてきた。
「やっちぃなよ、生き返るかも知れないぜ?」
こっちは明らかに男の声。
『また、股を開かさて臭くてドロドロとした液体を注入させられるのか?』
と嫌な気分になってくる。
「だめだよ先輩、この子はまだ生と死の狭間を漂っているんだから」
優しい声の主はそう言うと背後から右胸と左脇腹に手を当てて抱き寄せてきた。
「言っちゃ悪いがもうこの娘は死んでいるんじゃないのか?」
さっきの男の声
「先輩、私はなんとしてもこの娘は助けるんだから」
その声を聞きながらあたしは全身が何かに焼かれてゆくような錯覚に陥っていた。
「そうだったな、そう言う俺も・・・」
そう言いかけた男の体を跳ね除けると彼女はさらに強くあたしの体を抱き寄せた。
その時に感じたあまくやわらかあまく柔らかなエロス。
あたしを覗き込むようにして逆さに触れ合う顔と顔、あたしのくちびるは意図も容易く彼女に陥落されてしまった。
「痛かったね、苦しかったね」
柔らかな感触があたしを包んでくれた。
そして彼女があたしの体の中を彷徨って観察しているような感覚が頭の中にイメージとして流れ込んできている。
何かに射抜かれて穴が開きかけられた圧力で死滅した右胸と左脇腹にの細胞が再び息を吹き返して活動を始めた。
そこから細胞がどんどん分裂を繰り返しててゆき傷口はゆっくりではあったが塞がって行くのを感じた。
切断された血管同士が伸びてつながってゆき、血流が少しずつ戻り始めた。
筋肉も一本一本筋が再び繋がってゆくのか骨と骨を繋ぐ関節にかかる圧縮される感覚が心地よい。
穴の空いた右肺の破れた胸膜が塞がってゆきその胸膜の中では切断された細気管支から、その先の肺胞道、そして肺胞が一旦消滅してそれから切断され潰れた細気管支が再び伸び始めてその先の肺胞道、そして肺胞が再生するのに1、2分もかからなかった気がする、その間左の肺はフルに呼吸活動をしたけれど激しい息苦しさと虚血感を感じた。
それもやがてすぐに元通り楽になってきた。
問題は左脇腹に空いた大きな穴だった。
大腸と小腸の損傷は覚悟してはいたが脇腹から刺さった木の枝はかなり下向きの角度で奥まで突き刺さり最悪左側の卵巣や卵管を傷つけて、そして子宮自体も貫いていた可能性もある。
まず外皮を再生、続いて寸断された大腸と小腸のの修復にかかっていた。
『彼女は消化器外科の経験でもあるのだろうか?』
あたしは彼女から流れ込んでくるイメージをみながら自分の内臓が復元されてゆくイメージを彼女と共に安心して見つめていた。
卵管は無事だったようだったが卵巣はほとんど潰されて子宮にも大きな穴が開いていた。
『あなた、もうすでに女性性器全体が乱暴に扱われたせいですでにボロボロだね』
絶望的な彼女の感想、あたしは思わずあの晩の筋肉質な大男にレイプされたことを思い出していた。
圧倒的に大きな肉棒で股をねじ裂けられて消火ホースから大量に吹き込まれた精液により子宮のみならず腹部から胸部まで風船のように膨らまされて破裂された悪夢を。
『それが事実なら冴子ちゃんは膨らみ過ぎた子宮を除くほとんどの内臓を押し潰されて肋骨ごと吹き飛んだ事になるね』
初めて彼女は私の名前を呼んだ。
あたしは未だに自分の名を名乗った覚えはない。
どうしてそれを知ったのだろうか?
『簡単な事だよ?あんたの脳の中の記憶バンクを探ってみただけだよ』
私の命を奪いかけていた二つの大きな傷は表面的には完治とまではいかなくともこのまま自然治癒に頼っても良いほどにまで回復はしていた。
『問題は生殖器関係だよね』
一瞬、彼女は困惑した表情を浮かべたけど決意したかのように問い返してきた。
『私も他人のことを言えた立場じゃないけどあなたの中にふた通りの記憶がある』
そう、一つは普通に大勢の男たちに乱暴されて、そのまま放置されて、自力で這って家に帰りベッドに横になるまでの記憶。
これは筋が通っているように感じる。
しかしながら私の中にはそれをぶっ飛ばすほど強烈なイメージの記憶が焼き付いている。
肋骨ごと吹っ飛び内臓物を飛び散らせて口からも大量の内臓を嘔吐して命果てた自分、ただそこからは自分の部屋のベッドの上で横になるまでの記憶が存在しない。
普通に考えればそちらの方が大勢の男たちにあり得ないほど連続して繰り返されレイプされた事によるショックが生み出した幻覚と考えるべきかも知れない。
あたしはまたしても激しい吐き気を感じ彼女の唇から顔を逸らそうとした、もちろん彼女の顔に自分の吐いた嘔吐物を引っ掛けてしまう最悪な事態を避けるためだ。
しかし彼女はそれに気づいてか両手であたしの頭部を押さえつけてさらに強く唇を押し付けてくると熱い舌の先を口の中に押し込んできてわざと嘔吐を招き込んだ。
あたしは堪えられなくなり刺激臭を伴う嘔吐物を口から大量に吐き出したが彼女はそれを一気に飲み干した。
そしてしばらくして彼女はあたしの口の中に甘いフルーティな香りと味のする液体を流し込んできた。
あたしは高揚した気分になり、彼女が次々と流し込んでくるその甘い液体を貪るように飲み込んでいた。
そしてあたしは満足したのか急に激しい眠気に襲われ彼女にもたれかかるようにして、ここ数年味わったことのない深い眠りに堕ちていた。
『それは確かな記憶ですか?』
夢の中で彼女に問いかけられていた。
『わからない、でもどちらもあたしにとってはリアルな記憶』
私がそう言うと自分と彼女は何もない空間の中で2人、共に裸の状態で抱き合っている状況に気がついた。
『いつまでも彼女とか他人行儀なことはやめましょう』
そう言うと彼女はあたしの長い髪の毛の一部を細い5本の指で掬いあげると小さな声で囁いた。
『私の名前は葉類亜希、よろしくね』
彼女、いや亜希さんはそう言うとあたしの腰に回した右手をさするようにしてお尻にずらしながら股間の小高くて柔らかな丘をあたしの太ももに押し付けてきた。
熱いサラサラとした液体があたしの太ももをつたって膝まで流れた。
あたしの小高い丘も彼女の、亜希の熱い太ももに刺激されて大量のサラサラとした液体を沸き流していた。
『ところで冴子さん、あなたのフルネームはなんて言うのかしら?』
ごく自然に亜希は私のことを聞いてきたのだろう、しかしあたしの記憶の中には『冴子』と言う漢字にしてたったの2文字、ひらがなにしても『さえこ』という3文字の名前しか思い出せなかった。
そう言われればあたしは本当に社会に関わって生きてきたと言えるのだろうか?
あたしは本当に学校に行って普通に生活をしていたのだろうか?
疑問がひとつ湧いたら次から次へと新たな疑問が湧いてきた。
あたしは本当にあの男の妹だったのだろうか?
あの部屋から毎日学校に通い友達とおしゃべりをして共に勉学に励み、運動部でグラウンドを駆け抜けた毎日は、学校の帰り道、みんなと一緒に寄り道をして甘いスイーツを絶え歩きした日々は?
そしてなぜ?どこで?いつ、何時にあたしはあの男たちに襲われて、
突然あたしの身体は強く亜希に抱きしめられていた。
『もう考えなくっていいよ、私とあんたは再びまた出会えたんだから』
そう言った亜希はあたしを抱きしめている、というよりはあたしに抱きついていた。
顔つきも少し変わったような気がする、どう見ても彼女は亜希ではなくて別の幼女の姿をしていた。
「ねえ、さえこおねえちゃん、どうしていつもおみみがながいの?」
冴子?あたしはそんななまえだったっけ?
あたしは目の前の幼女を見つめながら軽く混乱をしていた。
確かあたしはそんな名前じゃなかったはずだ。
「SAE-Co1024」、そんな名前だった気がする。
「ごめん、ごめん、なんておなまえだっけ?」
あたしは聞き直した。
「かざましの、もう〜、なんべんいったらおぼえてくれるの」
少しずつ記憶は蘇ってきた。この子の名前は風間志乃、この国の刑事の愛娘でまだ4歳になったばかりだ。
「この本ををよんでくれるおやくそくでしょ?」
口を尖られせながら彼女はあたしの前に3冊の本を置いた。
「地震と火山の仕組み?未来の高速列車?星の誕生?」
何故か小難しそうな本ばかりだ、しかも漢字が多いし、開いてみたら3冊とも字が小さ!
「えーと呼んであげてもいいけど、これ何の本か判っているのかしら?」
「もちろんわからないわ!」
ドヤ顔で彼女は言う、その癖なんの本かわからないと言う、マジで意味がわからない、なぜあたしの上司はこんなこんな子を監視しろって言うのだろうか?
「じゃあ今日はこの本にしましょうか?」
あたしは真ん中に置かれた『未来の高速列車』なる本を取り上げて開いた。
何度も確認して言うようだがこれは決して就学前の幼児が読むような絵本じゃないのだ。
ちゃんと中には専門学的な記事がぎっしりと書き込まれている。
「構造的にはいわゆるモノレールとよく似ているがいくつかの違いがある、まずは駆動するにあたり、ゴムタイヤや鋼輪をしようしないてんにある」
電車とか自動車とかと違うと言いたいのだろうか?モノレールに関しては乗ったことがなくて絵や写真でしか見たことがなくてうまく想像がつかないのだけどこの子がうんうんと首を縦に振っているところを見るとある程度は理解できているようだ。
「その軌道、モノレールを含めた周囲を透明なチューブで包み中を真空状態にするって書いてあるけど、志乃ちゃんわかる?」
とあたしは一応訊いてみた。
答えは即答で『うん!』と頼もしい答えが返ってきた。
もちろんあたしにはさっぱり理解不能ではあったけれど。
「じゃ、こっちにしようか」
あたしは『地震と火山の仕組み』と言う本を手に取って目次から読み始めた。
それにしても難しい文字が続く。何でこの子は年相応の本を読みたがらないのだろう、と思った。
中学生のあたしでも読むのに躊躇してしまうと言うのに。
マグマ溜まり?大陸プレート?フォッサマグナ?マントル、嬢?
もしかしてこれは殿方向けのエッチな本なのか?
そんなことを悩みながらあたしは本に書いてある通りの文字を読み続けていた。
実はあたしはそんな時の志乃ちゃんの笑顔を見るのがとても大好きだったのを思い出していた。
「暗い間に人通り、じゃない車の通りのない田舎道に降りたらどうだ?」
すぐ隣のいかにもすけべそうなオヤジが言いながらあたしの体を包んでいる毛布をめくろうとしながら言った。
「パーン!」という乾いた音と共に目の前のオヤジの左頬が真っ赤に腫れた。
「もういい加減にしなよ!」
葉類亜希、いや、あたしにとっては風間志乃との優しい時間を刻む時計が再び動き出した瞬間だった。
食事の問題
「亜希、何をみているんだ?」
私は冴子と名乗る小学生の女の子を左脇に抱き抱えながら眼下に広がる相模湾を少ししか開かないサイドウインドウ越しに眺めていた。
「三方五湖の周辺のレインボーラインのひと気がないあたりに降りればいいんじゃないのか?」
親父、もとい風間達也が私の胸を借りてすやすやと眠っている冴子のまとっている毛布をめくろうとしながら言った。
そろそろ私の本体もこの車を飛ばすのには疲れてきたのでどこかに着地したいとは思っている。
「確かにこの辺りのレインボーラインなら通っている車もなく着地には向いていそうです」
私の頭の中の『A』が囁いた。
確かにこの時間帯なら人に見つかることもなく降りられそうだ。
「何か美味いもの食いてえ」
私の胎の中の『由紀』が突然にわがままを言い出した。
それにつられてか有希まで騒ぎ出した。
「わたしは『まあくんの朝セットがたべたい、朝特限定の牛タンマフィン』を3個ほど」
そんなプレミアム商品初めて知りましたよ。
ってかっジャンクフードチェーン店でそんなもの売って良いのか?
それより何でだ?私の胎の中の全員、数百万人のうちほとんどがこの辺り周辺のグルメガイド本を手にして『あれが食いたい』『これが食べたい』などと騒いでいる。
だ、誰だ、私の胎の中の連中にロクでもないものを渡してくれたのは?
「あ、ごめん、私もおおいに腹が減ってきたんでみんなも食べたいかなって思ったらつい」
私の頭の中に一緒にいる『H』が両手を合わせて謝っていた。
「とは言ってもこんな時間に空いている店なんてコンビニくらいしかないよ」
と運転席の『楓凛』が言った。
私の胎の中全体に落胆の声が広がる。
「もう、『H』さんが余計な期待をさせるから、こっちだってお腹が減ってきちゃったじゃないですか?」
私もついつい愚痴をこぼしてしまう。
そう言えば
東北方面に向かった愛や秋子、『G』『B』『L』を始めみんなは無事だろか?あっちもあっちで道中に大勢の死者の魂を拾いまくって
特に『B』のお腹が大変なことになっているらしいんだけれど。
実は愛も秋子も帰るべき場所(肉体)を失って今は『Gの胎の中にいると言う。
おまけについ最近はこっちの世界のリアルリナちゃんのお母さんと彼女と一緒にいた都庁の職員数十人も一緒にいると言う。
まあその職員の中には男はいないらしいから一安心なのだが、中には二十代前半の美人もいるとのことで内心不安になりつつある。
「コンビニ弁当買ってきたぞ」
サニークーペの運転席ドアが開きパック10個が入った大きなビニール袋を手にして運転席に滑り込んで聴いてドアを閉めた。
私はその袋の中のお弁当とやらをみて愕然としたね。
「2万円も渡して全部ハムカツカレーってあなたは何処ぞの市長さんですか?」
私は思わず叫んでしまったがその後に続く胎の中の人々の叫びももっと酷かった。
「わたしゃ鰻重を期待しとったんじゃっがのお」
「海鮮丼が食いたかったなあ」
「やっぱりここまで来たんだから刺身の舟盛りを食べたかったわ」
などなど各自めいめいが数百万人も勝手に私の口を通して主張し出したものだから周りからはただわめいているようにしか聞こえず。
「わかった、わかった、お前にはハムカツカレー3食食わせてやるから我慢してくれ」
と風間先輩にまで言われてしまう始末だ。
「しかも全部激辛って何の拷問ですか?この中には見た目が小学生の女の子だっているんですよ?」
「私なら大丈夫です、むしろこのメーカーなら辛さが物足りないかと」
私の隣で冴子ちゃんがボソリと呟いた。
それで私の胎の中の数百万人の住民たちが一斉に暴れ出したからもう大変だ。
「う、そんなにみんなで暴れないでくれ」
私は思わずそう漏らしてしまった。
が周りの人間たちは妙に気を遣ってくれたらしいのかいつのまにか私の膝の上には激辛ハムカツカレーが5パックも乗っていた。
その後、私の胎の中のマイクロサイズの住民たちには各々要求していた料理が『I』さんと『J』さんらによって支給されて直ぐに静かになった。
しかも、要求された料理に加えてボイルたらば蟹一杯ずつのおまけという大盤振る舞いだ、そりゃみんな静かになるわな。
「人はカニをバラしながら食べるときは無口になると聞きましたから」
と『J』さん、本当に気がきく良い子だ。
良い子なんだけどその言葉が私の口を通して車内のみんなに伝わってしまったからもう収拾がつかなくなってしまった。
「おい、亜希!てめえ1人だけずるいぞ」
いや、風間先輩それは誤解です。
「悲しいなぁ僕と君はいつも同じものを食べようなって約束してきた仲なのに」
悲しげに言う楓凛、だから誤解ですってば。
「俺なんてこんなにお腹が空いているのに全身縛り上げられて何も食べられない、かわいそうな俺」
「助手席に拘束されている愛人1号まで騒ぎ出した。
「そもそもお前みたいな未成年連続強姦殺人犯が言えたセリフか!」
私は大声で叫んでしまった。
「まあまあ、お兄様方、この近くに蟹と鰻の欲張り10食限定弁当を作って販売しているお店があります、既に7食ほど完成しているようですので」
言っておくが声に出して言っているのは私だが本当の言葉の主は中の『I』だからね。
千里眼で調べたのだろうか?まあ私自身の能力だけど。
「そうか、ならばそこにいって買えばいいんだな、場所を教えて」
イングニションキーを回しエンジンを掛けながら楓凛が言った。
「いえ、その店の開店まではまだ1時間以上ありますから」
と『I』、と言うか私?
「じゃあどうするんだ、それまで待てと?なぶり殺しだな?」
風間先輩が機嫌を損ねて言う。
「ですからそのうちの4食ほどその店内からこのお車の中に直接転送いたします」
私の口からその言葉が出たとき楓凛も風間先輩も私を犯罪者を見るような目つきで見ていた。
私もしばらくは自分が口にした言葉の意味がわかっていなかったのだ。
しかしよく考えると・・・
「おーい!それって万引きじゃないか!」
「大丈夫ですわ、もう既に風間達也さんのお財布から1万円札を4枚ほど抜き取って転送してありますから」
「そうかならば安心だ」と私、「しかしその弁当一体いくらなんだ?」
「8000円です」と『I』
「ちょ、釣りはないのか?、その4万円は俺の今月の生活費なんだぞ」
そう騒いだ風間先輩の膝の上にはもう既に欲張り限定弁当が乗っていた。
「まあ迷惑料ですから、それくらい我慢しましょう」
『I』としてではなく私自身の言葉として言った。
少なくとも私たちのせいで食べられなくなったお客さんが4人はいるのだから。
「それにしても冴子ちゃん1人分足りないけど分けっこしよか?」
私は彼女に提案をした。
「大丈夫、私はこの助手席の人に食べさせてあげているから」
そう言って彼女はパックを解体すると愛人1号に対して「アーン」とか言いながら食べさせてやっていた。
「でもいいの?相手は何度もあなたを酷い目に合わせて殺したやつだよ?恐ろしくないの?憎くもないの?」
「そうね、正直・・・、でも今は志乃がいるから」
彼女は私に対して微笑むと再び愛人1号に食べさせ始めた。
彼の右目から涙のようなものがつたったように見えたがそれはきっと気のせいだろう、なにしろ奴は冴子を4度も残虐な方法で殺害した凶悪犯なのだから
「冷めちゃうから志乃も早く食べなよ」と冴子ちゃん。
「でも冴子ちゃん、カレーしか残らないし、冷めちゃうし」と私。
「魚介類ならいつも食べ飽きているし、カレーは冷めても自分の能力で温められるから大丈夫、時々やりすぎて炎上させてしまうけどね」
彼女は苦笑いを浮かべながら言った。
あなたっていつもそんな激辛料理食べているのか?って訊きたかった。
「そう言えば昔、志乃がまだ幼稚園に通っていた頃だったか、うちに遊びに来るときいつも激辛料理の材料を持ち込んできて、料理までしてくれて俺たちに食べさせてくれた女の子がいたっけ」
突然に思い出したように風間先輩、それを聞いて冴子ちゃんのほおが少しだけど紅く染まった。
「私、本当に海産物だけは嫌と言うほどたくさん自分で取ってきて食べてますから」
と彼女、え?どうやて?
「そりゃ海に潜ってに決まっているでしょ?ハマダイでもアンコウでもメカジキでも取り放題ですよ?」
それには全員が「え“ー!」と驚くしかなかった。
冴子ちゃんには水圧と酸欠いう言葉は存在しないのだろうか?
『G』が変わった理由
「やっと静かになったね」
有希が背伸びをしながらいう。
ピンクの室内着が彼女の要求を『I』さんが受け入れてくれてあのカレンダーと同じ真っ白なロングスカート半袖ワンピース姿になった自分の姿がうつる等身大の鏡を見てニマニマと微笑んでいる。
等身大とは言っても今のボク達の身長サイズの単位はmではなくμmだったりする。
例えば今のボクと有希のサイズは0.00147mmくらいだったりする。
だからといって身体を構成する分子とか細胞的に粗くなっているわけじゃなくてボク達が今住んでいる亜希というお姉さんの胎の中が異次元、というか仮想空間のようなものらしい。
そんな中に今のところ何百万人入っているかなんてもうカウントできない。
というか浜岡原発が吹っ飛んで富士山と箱根山がカルデラ噴火を『ドッカーン!』と決めた時点で1000万人を突破しても不思議はないかもしれない
しかも人間じゃない動物もかなりいるような気がする。
芋虫や正真正銘のゴキちゃんもいたりするからそこら中で大きな悲鳴が上がっている気がしないでもない。
『もう少し落ち着いたらバーチャルな日本列島を構築できるかも』
って『J』さんは冗談めかして言っていたけれど『H』さん、『I』さん、『J』さんのこの仮想空間内での構築力は驚愕的でもある。
『K』さんの能力は未知数ではあるけれど『L』さんと同様に攻撃力に特化しているのかもしれない。
「そういえば、ここって強く願った事が形になるのね」
と有希が囁いた。
確かにそう思える節がある。
個別の身体で行動していたときはそれほど大した能力ではなかったけれどあの日以来、彼女達の運命と共に各自の能力が桁違いに向上したと聞いた。
それはそれ以前にこの世界とは別の並行世界の日本という国の存在さえも超越した組織『大和会議』が組織したいくつかある特殊警備工作部隊の中の1グループの中の1人『G』さんがそこの世界のリナ、こと、前田リナを殺害した時から始まったそうだ。
彼女と彼女の母であり国会議員である前田愛理、そして彼女のマネージャーでありリナの父親である前田進、この3人は国家反逆罪で追われている身だった。
国家反逆罪とは言っても国家を潰そうとかテロを計画しようとしていたわけじゃなかった。
むしろ特殊警備工作部隊という組織に過剰な権限を持たせて国民を制圧しようとしていたのはそれまで政権を握っていた大手保守派政党だった。
しかし度重なる政策の失敗と身内であった筈の若手議員の謀反により内閣不信任案が成立、総選挙によりまさかの下野落ちとなった。
「そこであいつら人工地震を利用したのよ、他国に対する兵器としてではなく、クーデターの道具としてね」
突然に話に割って入って来たのはさっきからそこにしゃがんでいたあちらの世界のリナだった。
計画された人工地震、それは何を意味するのだろうか?
これは起こせる規模と時間をある程度設定できるなら仕掛ける側にとっては強力な武器となる。
自分達と自分達にとって味方になりそうな人間達を安全なシェルターに逃しておけば彼らの命の安全は保障される。
逆に敵対する勢力を始末するのには絶好のチャンスとなる。
もちろん安全な場所にはいない反対勢力の多くは命をお落としたり、重傷を負い入院することとなる。
そこで混乱に乗じて特殊警備工作部隊を送れば良いのだ。
表向きは災害による被害者に対する救助が名目だったがその実態は、
「自分達に反抗する人達の排除、つまり殺害が目的だったのよ」
冷ややかにリナは言った。
そしてその大和会議にとって都合が悪い人達は次々と殺されてゆき、その混乱に乗じて非常特別選挙が強行され、大和会議が推す保守の名を騙る政党が大勝した。
「その後も自分達に対する反抗勢力に対する制圧は進み、私達家族3人も特殊警備工作部隊に追われて命を狙われていた」
どうやら人工地震は他国に対する兵器としてではなく「自国に意図的な混乱をもたらすために開発されたものらしい。
確かにそれは他国に対して使用するのはかなりの無理ゲーだが自国に対して使用するのはとても容易く実行が可能なことから容易に想定できた。
「そして3人は散り散りに分散させられて最初に愛莉ママが、続いて進パパが惨殺された、そして最後に残された私は3人の特殊警備工作部隊に取り囲まれていた」
それからリナの説明を聞いた限りでは秋子や冴子と世代の引き継ぎが非常に似ていると感じた。
冴子は肉体を失ってもまた別の空間に自分の体と心を再生出来るタイプ。
秋子はお腹、胎の中に自分のコピーを作り、自分の肉を食べることにより急速成長、ってか脱皮に近いタイプ、だが今回はある事情によりそのコピーが暴走を始めてしまったようだ。
「最後に、私は普通に男女の営みで子供を産み、そのうちの最初の女児に憑依できるタイプなのよ、だから私が生まれる前の宿主は前田愛理ってことになるわね」
ちょっとよくわからない説明をされたがボクはあえて問いかけた。
「じゃあ、あなたが子供を産む前、まだ子供の頃に殺害されたらどうなっちゃうの?」
「由紀さん、その時の私にはそれがどういった結果を招くかまだわからなかったの」
そんなはずはない、何百年もの長い間に世代交代をしていれば事故や病気で命を落とすことだってあったはずだ。
「そんなときはまた母親の身体に戻るだけですね」
何事もないようにリナは言ったが割とよくあるのだろうか?
しかし今回は母親を先に殺されている。
かと言って祖母というと
「子供を産む確率がほぼゼロ、たぶん色々と調べ上げられていますね」
と有希。
というわけで本人でさえどうなるかわからなかったということらしい。
「まあ正直言っておわったと思いましたけどね」
リナはそう言ったが実はその時、特殊警備工作部隊の中の1人『G』の胎の中にうっすらと影が見えたという。
「それに一縷の望みをかけたわけですね」
有希が何故かダンスを踊りながら言った。
「それが『G』様も覚醒に繋がったと」
「今考えるとこの説が妥当かな?」
楓凛が缶コーヒーを飲みながらいった。
「この説ってなんの説明にもなってないんじゃねえか?」
後部席左側の風間刑事が言った。
蔑称「なか〇〇刑事」って奴だ。
女とあらば人妻から〇〇生まで〇〇出ししてしまうというはっきり言って悪名高い風間達也刑事とは彼のことなのだが、ボク達の宿主である亜希も何度もやられているらしい。
「もうやっていないから」
しかめっ面をして明らかに不快そうな亜希の声、何故亜希の表情が見えるかというとルームミラーに写っているのが見えたから。
ややこやしい話だが彼女は処女懐妊という独特な性癖があるらしい。
まあ『G』はエッチをやらなくても妊娠するということ。
逆に言えばどんなにエッチをしても(または強要されても)本人が妊娠を望まなければできないらしい
妊娠というとかなり語弊があるけど要は『G』という特殊警備工作部隊としての戦闘力に関しては並の下といったところらしかったのだが、自分の中に異世界を創造できる能力があり、なおかつ死者の魂を招き寄せることができるんじゃないのか?というのが影のリーダー『B』の見識らしい。
ところでこんなオナニー能力程度だったものが何故これほどまでにモンスター化したかということだがやはり夢の中で遭遇した由紀という名の少女が嵌められた連続レイプ事件を外すわけにはいかないらしい。
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夢の中で私は一人の少年だった。
顔立ちはどちらかというと丸っぽくって『くりっ』とした丸くて大きな二つの二重瞼(まぶた)を持った瞳は互いに近すぎず、かといって離れすぎず、小高くこじんまり整った鼻やや少し薄めの唇はいわゆる大手美少年アイドル事務所のタレントみたいで『僕』自身はあまり好きじゃなかった。
この顔立ちは親から頂いた遺伝子だから仕方がないとしてこの華奢な細い腕だけはなんとかならないものかと常日頃思っている。
自分のベッドの上で目が覚めるとアラーム設定時間からもう既に30分ほど過ぎていた。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ」
『僕』はお勝手で忙しそうに親父や『僕』のお弁当作りに励んでいる『おふくろ』に対してついつい愚痴をこぼしてしまう。寝坊したのは夕べ夜更かしをして朝起きれなかった『僕』のせいだから逆恨みもいいところなんだけど・・・
リビング兼ダイニングには親父と可愛い妹がいて先に朝食を食べ始めていた。
傘のメニューは白いご飯に生卵、スクランブルエッグに目玉焼き、厚焼き玉子ってどんだけ卵づくしなんだよ!
流石に今日は食欲がなかった、のでご飯はパスしてスクランブルエッグと目玉焼きだけは腹のなかに流し込んで、ゆで卵は学ラン上着の右ポケットに放り込んだ。
お袋が投げ飛ばした弁当箱を受け取ると『僕』は一目散に玄関を飛び出して自転車にまたがると自分が通っている『中学校』目指して全力で漕ぎ始めていた。
「遅かったじゃん『ユーキ』はよぉ」
親友の『サトシ』が気軽に声をかけて来た。
「踏切が詰まっててよぉ」と僕。
「なんだよぉ、踏切前に可愛い美少女がいっぱいつまっていたか?」
『サトシ』は『僕』を指差してケタケタと笑い出した。
まあ失礼ではあるけどいいやつだ。
「お前美形だしモテモテだもんな」
冷やかすように言うが悪い気はしない、ただそれを時々重荷に感じてしまうことはあったが・・・
隣のクラスの『さとみ』ちゃんが窓の向こうの廊下から必死にアイコンタクトを取ろうとしている。『僕』が席を立ち歩いて廊下に行くと彼女は待ちきれなかったかのように一気に喋り出し始めていた。
「今日の帰りお買い物に付き合ってくれませんか?」
やっぱり?予感は的中した。その買い物というものも自分に対して買うものではなく、恐らくは『僕』に送りたいモノの買い物なんだろう。
「じゃあ放課後、自転車置き場で」
そう約束してその場は別れてあっという間に放課後がやってきた。
どちらかというと体温が低めで寒がりなので今だに冬服を来ている僕から見たら夏服を着て半袖の『さとみ』ちゃんのむき出しになってあらわな細くて白いしなやかな両腕は『僕』の眼にはとても眩しく映った。
『僕』は自転車にまたがり漕ぎ始めようとしたんだけど跨ごうともしないで押して歩き始めた彼女を見た僕も同じように自転車を降りて押して歩き始めていた。
『ごめんね』
彼女はいきなり謝り出した。
何を唐突に、と思ったが昨日までは生理痛がひどくて休んでいたらしい。
脳裏に一瞬血の塊が浮かび上がり吐き気を催したがなんとか彼女には悟られないようには出来ていたと思う。
「別に『僕』は急がないから明日でもよかったのに」
そういうと『僕』はすぐ目の前の大きな建物を見た。
この辺界隈ではすごく名の知れた大型商業施設だ。
『さとみ』と一緒の買い物は楽しかった。
彼女は自分が興味のある可愛いぬいぐるみや置物などを目にすると一目散に走り出し手に取り両手で高々と掲げて『可愛い!』と大絶賛をした。
そして美味しそうな甘味飲み手を見つけると容赦なく僕の学ランの袖を引っ張って走り出した。
僕は彼女の甘くてとろけそうな笑顔を見るのが大好きだった。
そして日がすっかり暮れて『僕』たちが店を出る頃、『僕』が両腕に抱えていたのは全長が1メートル以上ありそうな『緑のワニ』のぬいぐるみだった。
彼女と別れた一人での帰り道『僕』はいつもとは違う嫌な予感を感じ始めていた。
誰かに尾行されている、そんな感じだ。
生い茂った雑木が視界を遮る一角を右に曲がると『僕』はうっかり後ろを振り返ってしまった。自転車の前輪が何者かに右に強く蹴られると『僕』の体は自転車ごと雑木の群れの中に叩き込まれていた、折れた小枝が手や足、そして背中などに突き刺さり痛い。
妙な具合に雑木の罠に捕らえられて身動きが取れない『僕』を見下ろしていたのは『僕』のよく知った顔、学校の保健体育の先生だった。
「オメーは女なんだよ」
突然、先生は『僕』に対してそう決めつけた。
学ランのボタンとボタンの間にゴツい左手を入れられたと思ったら一気に引きちぎられた。そのスピードがあまりにも早くて見抜けなかったが、その左手には肉厚の黒光りをしたサバイバルナイフが握られている。
『僕』の上着もカッターシャツも、『僕』の胸を隠し通せなくなってしまった。
まだ下着に隠されているとはいえ小高く上むきに膨らんだ二つのそれ、それは僕が見たくなかったものの一つだ。
しかしそれだけでは終わらなかった。
先生はスーツのポケットからもう一つ折りたたみ式のナイフを取り出して伸ばし『僕』のズボンのベルトに引っ掛けると一気に切断した。
「やめろー!」僕は叫ぼうとするが恐怖で声が出ない。
ナイフの刃先はあらわになった『僕』の下着に突き立てられていて、ズボンのホックを破壊した。
「どんなにあがいても女なんだよ」
『狂っている』
そう思ったが手足のあちらこちらに枝が突き刺さり宙ぶらりんな状態で身動き一つ取れなかった。先生はこうなることを計算の上で『僕』をここに誘い込んだのかもしれない。
「やめろー」
再び叫ぶ、運が良ければ誰かが聞きつけて。助けに来てくれることを期待して。
「叫んでも誰もこないさ」
先生は断言した。
『僕』のズボンを引き摺り下ろすと、『僕』の血色の良いのツルツルした太股があらわになる。
すね毛一つ生えていない、『僕』が嫌いなところだ。
その際に二つのナイフの刃先が両太ももに触れて二本の線を刻み込んだかと思ったら真っ赤な鮮血が吹き出した。
「生意気にブリーフなんて履きやがってお前ら女はおとなしくパンティでも履いていりゃいいんだよ、ヤリやすいしな」
うっすらと笑みを浮かべながら先生は良いそのブリーフの内側にナイフを侵入させると一気に切り裂いた。『僕』の大嫌いな『私自身』が少し露(あら)わになる。
色の薄い縮れた細かい毛を牽制は折り畳みナイフで剃り始める、下手に動けばどうなるか想像がついたので恐怖で硬直して動けない。そうしてそれは確実に私の目にも、そしておそらくは先生の目にもその姿を晒し初めていた。ピンク色の盾に前からお尻の方にかけて伸びる割れ目を持つ柔らかな小高い丘。
ほぼ月に一回律儀に血を流して腹痛や頭痛、悪寒と共に、『僕』から冷静な思考力を奪う忌まわしき『私自身』、先生はサバイバルナイフを持ったままの左手でカッターシャツの下に着ている下着を切り裂きながら裂け目から忍首筋で引くとそのナイフを投げ捨てて決して小さいとは言えない二つの膨らみの一つを乱暴に揉み始めた。全身を電流が駆け抜けたかのように。
『僕は体を痙攣させて息を荒げる。
「やめてー」
出せる声もだんだん小さくなってきた。先生は右手の人差し指と中指で『私自身』を摩り始めてその谷間に指を潜り込ませた。
声にならない絶叫を雑樹林が吸収する。先生は私に私の手首よりも太いモノ、先端が亀の頭のような形状のそれを下ろしたズボンのチャックから引き出していた。
私、いや『僕』がそれから家にたどり着き自分の部屋で膝を抱えて泣いているところまで『僕』自身の記憶は存在しない。
きっと乱れた服を隠しながら股間を伝う異臭を放つ液体でズボンの裾まで濡らしながら両親や妹に悟られないように部屋の中に入ったのだろう。
特に好きだったわけじゃないが同じ男として尊敬していた、保健体育の先生にあんなことをされてショックだったというせいもあった。
しかしそれよりも自分自身の体が自分が一番忌み嫌う『メス』だったことを嫌という程思い知らせれたのが一番キツかった。
数週間体調不良で休んでからの自分は人とはほとんど話さなくなった、
今まで楽しかった女子との会話も嫌悪感を感じるようになり、男子とも一線を引くようになった。
それでも『僕』は一応男子の制服を着て学校に通っていたし普通に勉強もしていた。
ある日再び保健体育の先生に運道具置き場にしている倉庫におびき出されて拉致され、前回の暴行動画をネタにして脅され乱暴れるまで。どうしてそんなものが存在したのかすぐには理解できなかったがあの現場にいたのは保健体育の先生だけではなかったことをその時になって知ることになる。保健体育の先生の背後からニヤニヤ笑いながら出てきたのは世界歴史の先生だった。
確か歴史修正主義者と男子の間でも(悪い意味で)評判だった・・・多分それは今回の件とは関係ないだろうけど。
気がつくと私は体操着のまま高飛び用のマットの上に転がされていて乱雑に引き摺り下ろされていた自分のズボンとトランクスをぼんやりと眺めていた。
『もしもまた同じ事になっても相手にドン引きされて無事に住むかも』
そんな甘い考えでブリーフから履き替えたがなんのご利益もなかった。
『僕』が両目から大粒の涙を流して泣いている、私はそんな彼を後ろからそっと抱きしめようとしたがすり抜けてしまい触れることさえ叶わなかった。
『僕』はそのまま教室に戻ることもなくまっすぐに家に帰り、そして部屋に閉じこもってしまった。
両親も妹も心配をして何度も部屋のドアをノックしてくれるがドアに鍵をかけた私が畳半畳分のスペースから動くことはほとんどなかった。
「このまま君はここで死ぬ気?」
背後から誰かの声が聞こえた。
気のせいだろう、この部屋には僕一人しかいない。
「ご飯食べなきゃ飢え死にしちゃうよ?」
再び声が聞こえた。しかし振り返っても誰もいない。『僕』は思い切って小声で返事をしてみた。
実際は声にならなかったかもしれない、それほど『僕』は落胆していた。
「食欲ないしもうどうでもいいって感じ」と
「うーん、それもいいかもしれないけど君は私のように横っ腹に大きな穴が空いているわけじゃないし甘いデザートなんか食べるべきだと思うけど」
なんで私なの?と疑問を持ちがらも『僕』は少し苦笑いをして言った。
「君は『僕』が甘いものが苦手なのを知っていてわざとそう言っているのかな?」
「ごめん君はまるで『L』みたいだね」
自称私に返されてしまう。
「それで君はこれからどうするつもり?」
「・・・『僕』?自殺して親を悲しませたくないしなぁ」
「そのままここで膝を抱えたまま我慢していてもおしっこやウンコを漏らしちゃって大変だよ、最も首吊り死体はもっと汚いらしいんだけど」
「君は面白い子だなあ、どこから『僕』を見ているのかな?」
どっちが自分なのか、自分の視線で見ているのか、曖昧になってきた。
目の前の『僕』は周りをキョロキョロとみまわ・・・さなかった。
さっきからほとんど膝を抱えて自分の足のつま先だけを見つめている・・・いや、目を閉じて眠っていた。
私は急に不安になり始めていた、私は単に夢の中の傍観者だったはずだ。目の前の光景を突然にリアルに感じられるようになり始めていた。
そして目の前の『僕』は何の反応も示さなくなっていた。
近づいて触れようとしてもすり抜けるだけ、声をかけても応答もなし。
さっきまで彼は何をしていた。最近の彼はどうだったのか?
私は足りない脳を全開にして思い出し考えた。
最初のレイプ事件から『僕』の体には彼の言っていたいわゆる『月もの』は下りてきていないという。
つまり妊娠の可能性で悩んでいた。
そして今日の暴行事件、『僕』の心にとどめを刺したとしていても何の不思議もない。
そして『僕』の足も他に大量に落ちている空になった錠剤シート、それはおそらくは『睡眠導入剤』。
『僕』はあの時から不眠が続いて常に病院で『睡眠導入剤』を多めに処方してもらっていたんだろう。
このまま放置しておけば彼はほぼ間違いなく命を失う、しかし今の私に出来ることといえば・・・
ーーーーーーーーー
私と『僕』は病院のベッドが一つしかない病室の開かれた窓に仲良く腰掛けていた。
『僕はなんでこんなところで君と座っているんだ?』
不思議そうに彼は言う、目の前ではベッドから起き上がった元『僕』、由紀がぼんやりと自分に抱きついて泣いている両親と妹を見つめていた。
『なんで?僕は人生に絶望して大量の睡眠導入剤を飲んで死んでいたはずなのに』
そんな彼を見て私はクスッと笑った。
そしてそっと抱き寄せて言う。
「君の体の中にもう一人の人格があってね、いつも彼女はヒヤヒヤしながら君を見つめていただけだったの」
「由紀、あんな目に遭わされて辛かっただろうな、俺が奴を弾糾するから・・・」
父親は由紀に抱きつきながら涙を流していう。
「私は君の中にいる彼女の存在に気がついて手伝ってもらっただけ、『一瞬でもいいから意識を集中させて立ち上がって』、本当にそれだけ、また意識を失えばぶっ倒れて大きな音ががして家族の人達に気付いてもらえるからね」
目の前で由紀は泣いている父親の頭を撫でながら力強く言った。
「大丈夫よ、お父さん、彼とは自分でちゃんと決着をつけるから」
それを見ながら元の僕は呟いた。
「なんであの子、彼女は僕よりも強いのかな、女の子なのに」
その疑問に対して私はためらうことなく「女の子だからよ」と答えた。
私は『僕』が今後の『由紀』を心配していたから数日後の彼女を見せてやることにした。
彼女は中身(心)が女性になっても相変わらず学ランを着て登校して周囲を驚かせていた。
保健体育と世界歴史の教師にされていたことは全てクラスの全員はもとより学校中に知れ渡っていたけど本人が包み隠さずあっけらかんと公表してしまった。
その上にその先生達に対しても強気で話しかけていたので逆に彼らのほうが居づらくなって登校しなくなり自ら退職する羽目となった。近々証拠さえ揃えば書類送検されて逮捕も視野に入ってくるだろう。
そのはずだった。
教室の中での由紀は男子に対しても女子に対しても普通に女言葉で喋っていた。
男子の中の一人が由紀に聞いた、『なんでセーラー服じゃなくて学ランなんだ?』と。
それに対する由紀の答えは明快だった。
笑いながら「だって足元がスースーするから」
それを聞いた途端に女子を含めた全員が一斉に笑い転げた。
だけどまだ彼女には大きな問題が残されていた。
やはり最初のレイプの際に保健体育の教師が彼女の胎内に解き放った大量の精子がたまたま排卵されたばかりの卵子を受精させていて『由紀(ユーキ)』は妊娠させられていた。
着床してから月日が経ち過ぎていたせいでもう(この世界の)法律的に堕胎出来なくなっていた。
やがてお腹の張りが目立つようになり由紀は退学をせざるを得ない状況に追いこまれていた。
もちろん彼女は純然たる被害者であり問われるような非があるわけではない。
だが学園側は世間体のみを気にして由紀を「一身上の都合」というもっともらしい理由で退学させる事にしてしまったようだ。
しかも警察も保健所も検察もどこも動いてはくれなかった。
世界歴史の先生のバックにはこの国を自由に操れる程の大物政治家がついていてあらゆる方向に手を回したらしい。
かくして由紀は全校生徒の支援も虚しく学校を去る事になった。
1人校門を出た彼女を待っていたのは両親でもなく妹でもない、
他ならぬ『さとみ』だった。
もとより『由紀』は家を出て1人で生活を始めるつもりでいた。
家族に対する近所の人たちの嫌がらせも度を越していたから。
「どうして?」
戸惑う『由紀』を前に『さとみ』は涙ぐみながら言った。
「どうして1人で行っちゃうの?」
そう言ってから続ける。
「あたしも退学届出してきたんだよ?」
そう言いながら『さとみ』は『由紀』に抱きついた。
「私はもう君が好きだったユーキじゃないんだよ?それに私のお腹にはあいつに植えつえられた子種がいる」
『由紀』がそういうと『さとみ』は急にしゃがみ込み膨らんだお腹に耳を当てた。
「あたしが好きなのは『ユーキ』じゃなくて『由紀』なんだよ?そして今、このお腹の中にはあなたの子供が生きている、父親が誰だろうがあたしにとっては大事な命だよ?」
『さとみ』はそう言ったが『由紀』は戸惑いを隠せないようだった。
「あなたは女の子だよ?こらから、私なんかよりも好きな男の人ができるかもしれないじゃないその人と幸せな家庭を築いて欲しいの」
その一言でボク、『ユーキ』は理解したようだった。
『さとみ』を好きだったのは『由紀』も同じ、いやそれ以上に好きだったのだと。
「あたしの好きな人は男の人とか、女の人とか関係ない、あたしには『由紀』以外考えられない」
「だけど私の家は貧乏だし共働きで妹も変な噂をながされて学校でいじめられているってきいたか・・・」
『由紀』の言葉を『さとみ』を急に背伸びをした『さとみ』の唇が塞いだ。
「だから2人で家を出て遠くで暮らそう?」
突拍子もないことを言い出した、と『ユーキ』も、そして私、『G』も思った。
『由紀』に至ってはもっと驚いただろう。
「あら?あたしはこう見えてもC言語からアセンブラまでなんでもこなせちゃうプログラマーだって知っていた?」
自信たっぷりに『さとみ』は言った。
そして付け加えた。
「パソコンの自作だって夜食後だよ」
朝飯よりも早い時間帯だと言いたいらしい。
「あなただって特技があるでしょ?イラスト描いたり、物語を書いたり」
少し驚いた表情をして『うん』とうなづいた『由紀』に『さとみ』は極上の笑顔でトドメの一撃を与えた。
「これからはシングルマザーの時代じゃなくてダブルマザーの時代でしょ!」
自信たっぷりに言った『さとみ』の瞳も潤んでいたが『由紀』の二つの瞳から大量の涙が溢れ出していた。
そしてつぶやく。
「ありがとう」
『もう僕って要らない感じだな』
ユーキは悲しげに、寂しげに言う、そんな彼を私は両腕でぎゅっと抱きしめた。
『私は君が大好きだよ、行くところがなければの話だけど、一緒に行こう』
誘ってみた。
目がさめると私はボサボサの髪の毛のままベッドの上で起き上がりぼんやりとしていた。
ベッドの隣のトレイ台車に散髪用のハサミと手ごろな大きさの手鏡が乗っていることに気がつくと私はそれらを手にとり胸まで伸びていた自分の長い髪をバッサリと肩の上まで切った。
見舞いに訪れた『B』さんと『L』にびっくりした顔で『なんで?』と聞かれたけど私は微笑んで『気分転換』とだけ答えた。
ーーーーーーーーーーーーー
「そのエピソード、ボクと有希の関係に少し似ている」
ボクはそう呟くと目の前の有希を見つめた。
ただその話には少々違和感を感じざるを得なかった。
その世界ではどうか知らないがこっちの世界では中学校は義務教育の筈、転校するにしても『由紀』の妊娠が妨げとなる筈。
しかしボクは敢えて口を挟まないことにした。
気になる事がひとつあったからだ。
その有希がその世界の由紀であり、ボク自身、由紀がその世界の『ユーキ』出会ったような気がして来た。
「それからだよね、『G』は積極的に人を殺すようになったのは」
『I」がボソリと言った。
「本人、『G』がいないからいうわけじゃないけど、それまでのあいつは虫1匹殺せないほどの臆病者だった」
『H』が思い出したかのように言った。
「あの時は大変だったよね、訓練で2箇所も対戦相手に身体に大きな穴を開けられて意識不明の状態が続いた間にみた夢らしいんだけどそれ以降『G』は相手を殺すのに躊躇しなくなりましたね、特に『リナ』とかいう幼女を始末したのが始まりだったかと」
他所から別の声が聞こえて来た。
「そのリナって幼女の時も別に『G』がやる必要はなかったんだよね、一番遠いポジションにいたし」
彼女ら特殊警備工作部隊の誰が喋っているかなんてはわからない、何故なら彼女らはこの胎の中にいないから、たまに『H』や『I』や『J』みたいにイメージを投影してくれる人ならわかるけど。
「そうそう、どっから持ち出したか知らないけどさ、直径が拳大くらいの鉄球をいきなり幼女の胸をめがけて投げるけた時はマジでビビったわ」
「まさか心臓を肋骨ごとぶち抜いて背中から飛び出させるなんて戦闘力いつ身に付けたんだって思ったわ」
「そんなスキルも破壊力もなかったはずなのにいつの間に身につけたんだろうって、後から聞いた話じゃその『ユーキ』って奴しか思い当たる節がなかったもんね」
「実は母の襲撃を受けて皆殺しになる可能性があった時に『私たちが身体破壊をされて絶命する前の自分らを回収させたらどうか?』ってどっからか声が聞こえて来たんだよね、それがまさに例にリナだったということ」
ボクはそれを聞いて妙に納得をした。
「12人の能力が1人の身体に入ったらもう最強じゃね?」
ボクの顔を覗き込んで有希が言った。
確かにそうやって他人をスキルごと飲み込んでいけば最強になれるかもしれないとは思った。
でも今回の数百人は凡人ばかりだもんな、かえって弱体化する不安があるような気がして来た。
「まあ今回はそれが目的じゃないからね」
と亜希が語りかけて来た
「言っとくけどこの世界に凡人なんて1人もいないからね!」
彼女は別の目的でそうしているのであって決して自分が強くなるのが目的ではないと言いたげだった。
MOOの襲来?
「お腹がいっぱいって幸せだよな」
運転席の楓凛がボソリと言った。
そりゃあそうだろう、あのボリュームたっぷりの蟹づくし&鰻の欲張り弁当とハムカツカレー弁当2パック平らげてまだ足りないなどと言おうものならそれは極度な過食症だと言える。
「何を言っている、俺なんかずっとこのシートにがんじがらめだ、これ以上の不幸があるか」
助手席に拘束されている愛人1号君が不満を垂れ始めた。
「なに言っていやがる、美少女に『あーん』して食べさせてもらって至福もいいところだろ」
仏頂面で風間先輩が言った。
「おまけにその相手はテメーが何度も何度も強姦して大量のザーメンを中出しして身体ごと破裂させて惨殺した相手じゃねーか、何回逝かせたか(殺したという意味)覚えているか?」
風間先輩は愛人1号の右耳を強く引っ張って言った。
まあその美少女の冴子は私の一部である風間志乃に会いたいがために何度も蘇生して蘇っているらしいのだが。
その風間志乃というのは風間先輩、こと風間達也の実娘である。
ちなみにさっきから愛人1号とか言っているが私、葉類亜希の愛人ではない。
ここにはいないがこの国の女子高校生衆議院議員である山崎秋子の愛人だ、ちなみに3号までいる。
しかし彼女の本体はモンスター化して関東地方で暴れ回っているらしい。
「てめえだって蔑称なか〇〇刑事なんて言われているじゃねえか、調べはついているんだ」
愛人1号はさげずむように言った。
さすが内閣調査室のエリートだと言いたいところだがこれ以上は風間先輩を追及しないでやってほしい何故なら・・・
「しかも貴様、実の娘に対しても何百回も中に出したってなどれだけ鬼畜なんだ」
せっかく伏字にしておいたのにそこで大声で言うのはやめてほしい。
「はん、その情報は大間違いだな、いつも誘惑してきたのはこいつの方からだ、淫売女はこいつだぜ」
風間先輩のその一言が私の中の何かを『ブチッ!』とキレさせた。
「それは誰のせいかなぁ?最初の一回は両肩を大型拳銃で撃ち抜かれて死にかけていたその身体を蘇生させるためにやってあげただけなのに、それだって奴の実娘である志乃さんのたっての願いだったからこそ。
まあその時は志乃としての自覚はなかったから私自身の責任でもあったが。
だけど一回で十分なはずだったのにその後で何度も、何度も、何度も、何度も私の〇〇の中に〇〇てくれたのは誰だったかしら?」
「いあや、男ってのはだなぁ一度始めたら止まらなくなるもんでだな、なあ愛人1号君」
何故か風間先輩は愛人1号の同意を求め出した。
「お仕置き!」
私はそういうとこっちを向いていた2人の額にデコピン制裁を与えた。
「いてー」
2人とも叫んだがどうもおかしい。
私は激しい脳震盪を与えて気絶するほどの力でやったつもりだったのだが、どこか体調がおかしいのかもしれない。
すぐ隣の冴子ちゃんが心配そうに私の顔を見上げている。
「大丈夫、大丈夫」
そうは言ってみたものの私はもっと大きな不安を抱えていた。
「どうした?気になることでもあるのか?」
私を振り返り楓凛が訊いてきた。
「なんて言って説明したらいいのかわからないけど、地下深くから妙な何かが軋んでいるような音がするんですよね?」
私は地面をよくみながら言った。
「そりゃあなんらかの音がするだろうよ、マントルが対流してプレートが移動しているんだから」
楓凛は呆れたように続けた。
「そういう音じゃないんだ、巨大なミミズがうにょうにょ動いているような」
と私。
「それこそマントル嬢がうにょうにょ営業している音じゃないのか?」
と風間先輩
いやいや見当違いもいいとこでしょ?あんな地下深くで風俗営業するような馬鹿はいないでしょ。
「ナマズならぬミミズか?そんなものでプレートや活断層をどうしようというんだ?」
楓凛は言いながら左足でクラッチを踏み込むと軽く踏み込みシフトレバーを操作してギアダウンさせるとブレーキを右足つま先で強く踏み込みながらかかとを左側に捻りアクセルペダルを軽く踏み込みエンジンの回転を上げるとステアリングを右に切り左足はクラッチを繋ぐと猛然と加速を始めた。
「それよりも楓凛はそんなにも急いで何処に向かおうとしているの?」
私は今しがたから急にもう加速を始めて何処かに向かおうとする楓凛を問い詰めた。
「大飯方面で嫌な気配を感じるんだ」
楓凛はそう言いながらサニークーペをさらに加速させた。
「大飯って言っても広いぞ」
風間先輩が口を挟んだ。
「よくわからないが俺は多分そっちの方向に車を走らせている」
楓凛がそう言っている間にも愛人1号は大きな口を開けて驚愕の表情で目の前の前方やや右一点を指差していた。
その指の先には岬の山の向こう側に地中から空高く向かって飛び出している巨大な、本当に巨大なミミズの姿があった。
「おい、あいつが飛び出した場所ってまさか」
信じられないと言いたげに愛人1号。
「ああ、あいつが巻き込むように空高く飛び散らした建物の破片は、間違いない」
と楓凛
それ自体にさほど詳しくはない私にもそれがなんであるか簡単に想像がついた。
「大飯原子力発電所」
粉砕された原子炉建屋などが真っ赤に燃えている が目視できないほどの光を放っていた。
「見ちゃダメ!」
意外にも叫んだのは冴子ちゃんだった。
『シールド展開、今から飛行モードに入ります』
『衝撃と熱に用心して』
『数キロメートルほど飛ばされる可能性があります』
『I』『J』『H』がそれぞれに叫んだ。
メルトダウンなんて可愛いものじゃない、むしろ小規模な核爆発と言ってもいいくらいかも知らない。
「奴はどこに向かっている」
焼けただれた顔を両手で覆いながら叫ぶ楓凛。
その他の誰も、いや、私と冴子ちゃんを除いたほとんど全員が視力どころか皮膚の大半を焼き尽くされていた。
「多分だけどあのミミズは再び地面に潜り込んで行った」
私は取り敢えずそういうと楓凛のヒーリングから通りかかり始めた。
横目でチラッと見ただけだが自称先住人と言って、「お前ら人類とは出来が違う」と言いたげだった愛人1号もかなりのダメージを受けていたようだ。
風間先輩もかなりの重症なようだ。
無事なのは私と冴子ちゃんくらいなものか?
私たちが乗っているサニークーペに至ってはほぼ全焼に近いスクラップもいいところだろう。
「冴子ちゃん、へいき?」
私はまだあまり視力が回復しないまま隣の冴子に訊いた。
「うん、間違いなくアレは兵器」
うん、それは多分間違いないだろう。
私は冴子と意識をリンクさせてあの怪物ミミズのスペックを解析し始めていた。
『全長600メートル、直径30メートル以上、今見た限りじゃ速度は毎分150メートル以上、原発下の岩盤さえ容易に砕く破壊力あり、最初からそういった地下からの攻撃を目標に開発されたと考えた方が正解ね』
遠く離れた東北地方の方から『B』のメッセージが入った。
『とても言いにくいことなんだけどそのミミズの正体は改造された人間が搭乗しているそうよ、たった今愛人2号が白状したわ』
まっ、まさかな展開になって一同びっくりする。
こっちも愛人1号を追求したいところだけどとてもじゃないけど奴も重症で話せる状況にない。
下の山の木々も強烈な放射線で熱せられて枯れている、というか所々燃え始めている。
山火事になるのは時間の問題かも。
この辺は人口が少なげなんだけど国はどうやってこの惨事を公開する気なんだろうか?とは思う。
『今、日本政府から公式発表がありました』
まだあったのか?と言う疑問が湧いたがどこかに避難していた可能性が高い。
『B』からの続報があったがその内容は信じがたいものだった。
『まず大飯原子力発電所が何者かのテロ工作により爆破された』
というものだった。
いや、ちょっと待って、アレをテロ工作というにはかなり無理があると思うわ。
「恐らくは数時間後には報道の訂正が入るんじゃないのか?」
爛れた顔の皮膚に呻きながら楓凛が口を開いた。
「確かに、『隣国からのミサイル攻撃』に切り替えられるだろうね」
愛人1号が呟いた。
『それで、その巨大ミミズは今どこに向かっているか判るかしら?』
『B』が問いかけて来たと同時に北西方向が強い光を放った、そしてわずかに時間を置いて北北西の方向でもやや強い光が放たれたと同時に大地が激しく揺れ始めた。
「アレは1匹だけではない、日本中に我が軍の兵は無数にいる、これはその第一歩だ」
愛人1号が勝ち誇ったかのように叫んだ。
何が言いたいんだこいつは?
正直そう思った。
「アレさえあれば日本は如何なる大国とも戦える、いや、圧倒的攻撃力で叩き潰せる!大和帝国バンザーイ!」
マジで意味不明なことを叫び出した。
何度も言うがそれが正直な感想だ。
「ばっかじゃないの?」
私は思わず呟いた。
『これから言う日本の現状を知っても、なおあなたはそう言えるの?』
これは『G』さんが私の口を介して言ったセリフ。
「ははは、何を言っているかわからないね、アレらは迎撃のやりようがない地下深くから敵基地の軍事基地を次々と襲い、壊滅させるだろう」
『おっさん、それ以前にもう十分日本は終わってしまったんだよ』
珍しく絶望的な『L』の言葉。
『日本中の火山が次々とカルデラ噴火、ユーラシアプレートと北米プレートはミミズの化け物にボロボロに食い荒らされて日本列島は太平洋プレートとフィリピン海プレートの移動圧力により押し潰されてしまう運命にありそうね』
淡々と『B』さんは私の口を借りて語り続けた。
つまりどんなに優れた防衛システムがあろうが、先制攻撃手段があろうが既に地震の大地によって破壊され尽くされてしまうから無意味だと言うことだ。
それを聞いてもなお、愛人1号は日本の勝利を信じてやまないように見える。
「あなた達は操られていたんですよ、男は陰茎の中に潜む、女は子宮内に潜む前住民の彼女達に」
そう言っても理解していそうもない愛人1号に対して私は続けた。
「世界最速鉄道開発という名目のもと隠されて開発されたレールガン兵器とその移動格納のための中央新幹線という路線と地下に数多く設置された砲台の格納基地」
それらはもちろん迎撃用でもなければ国防のためのものでもない。
『攻撃は最大の防御』と言う言葉が当てはまるならそれも正しいかもしれないのだけど。
打ち出した後は軌道の変更を指定できない、自動追尾もできないから迎撃には不向きではなのだけど、動かない都市や軍事基地に対する攻撃には有利かもしれない。
なにしろ南アルプストンネル内で事故った中央新幹線車両乗客達の口封じに使用されたそれは推定でしかないものの射程は1,000Kmを軽く超えて音速の5倍以上で目的の建造物を貫く、それがたとえ原子炉だろうが核弾頭格納庫だろうが、そして容易に貫き、シェルターであろうが粉砕することも可能。
そしてあのワーム兵器、ならぬミミズ兵器、アレはどう見ても新たな生物兵器にしか思えない。
「あんた達、あの娘たちになにをしたの?」
私は愛人1号を問い詰めた。
とはいえそれは聞くまでもないことだろう、陰茎の中に潜んだ自称先住民に操られるままメッセンジャーRNAを囚人女性や少年犯罪少女らの膣内に直接射精して異形の寄生体を孕ませた。
それらは成長と共に宿主の脳の意識や思考を操りアレを隣国で暴れさせる。
「プログラムでは隣国の首都など大都会を襲撃するようになっていた、特にそこに住む住民達を襲いエネルギーとして喰らい尽くすように」「ああ、そうだ、それはうまくいったよ、隣国では謎の失踪事件が頻発するようになった」
自慢気に愛人1号は言うが問題はそこからだ。
そのミミズはより効率の良いエネルギー源を求めるようになった。
人体を一瞬にして噛み砕く強度の牙を持つようになったそいつはガソリンや軽油で動く自動車の燃料ごと人々を喰らい尽くすようになった。
そんな彼らが目をつけたのは言うまでもなく原発や軍事基地にあるウランやプルトニウムだったのはもはや必然とも言える。
「それがなぜ?わが国の」
と愛人1号。
「それはこの国の神様達に聞いたらどうかしら?」
冷ややかな目をして冴子が口を挟んだ。
『もっともそんなものは最初からいやしないわ、あなた達の陰茎や子宮内に住み着いてこの国の政界や経済界を動かして来た自称先住民ならわかるでしょうけど』
私の口を借りて『B』さんが言った。
『あの人達は数千万体で意識と能力を共有しているそう言った意味では神と言っても過言じゃないかも』
これも私の口を借りて『G』さん。
当然あのミミズの中にはその自称先住民も一体潜り込んでいる筈。
「それが何故、隣国ではなく我が国を?」
疑問を持つようなことか?
私は言いたかった。
「強姦までしてあのメッセンジャーRNAを含む精子を無数に含んだ精液を大量に子宮内に注入したのは誰?あなた達自称愛國者でしょ?」
そこまで言っても理解できていないようだった。
「あなた達、愛国者に腹まされた娘さん達はあなた達愛国者を恨みながら自分のお腹の中の異形の子供に食い尽くされたわけ、その苦痛を理解できている?」
「いや、そいつは非国民だ、少なくともわが国のために働けることに感謝すべきだ」
いつまでもウダウダと意味不明な事を言っている愛人1号、いや自称愛国者の頭に上から思いっきり強く拳を叩きつけてしまった。
「愛国だの非国民だのなんて関係ない!あの娘さん達はあなた達愛国者を恨みながらあの化け物に喰われて命を落としたの、それでもあの娘さん達がこの国を愛せると思えるなら、あんた本当にめでたいわ」
と私は言ったが最後の『あんた』は愛人1号の陰茎内に寄生している自称先住民に対するものだ。
「つまりあのミミズの化け物には被害者女性の日本に対する怨念がこもっていると言うことね、志乃さん?」
と冴子。
まあ今の私は志乃ではないがそこはあえてスルーした。
「問題は日本が亡くなった後に彼女達はどうするのか?ってことね」
私はそう言いながらほぼ全域が燃え盛る日本列島を高度200万メートルの高さから眺めていた。
『残念だけど私たちの戦略部隊が出番のようね』
『B』さんが私の口を借りて宣言した、残酷だが彼女達を始末するより他に方法がないようだ。
『A,C,D,E,F,K、私と一緒に出撃よ』
『B』は既に帰って来ていてサニークーペのボンネットの上に立っていた。
『あんな化け物が相手ならボク達も行かないわけにはいかないな』
そう言ったのは意外にも有希と由紀だった。
「やれやれ、俺たち日本人に憲法第9条を放棄させた結果がこれかよ」
嘆くような楓凛の声。
2度目の世界大戦、日本とやらの愛国者達にとっては日米太平洋戦争か?
その敗戦は結局日本人をほとんど変えることが出来なかった。
平和主義者を「負け犬根性」と罵り。
隣国から来る人々やその国の住民を「反日」とさげずみ、自分達は悪くないと開き直る。
「もしも日本に対する怨念を晴らした後で、あの子達が日本という国を消し去ってしまった後、あの子達はどうするのかしら?」
攻撃は最大の防御??
有希はボクと向かい合わせになって亜希の胎の海の中を泳いでいた。
実際問題、ここ人口多すぎない?って感じでとうの昔ににこの中の人口はめでたくも東京都越えをしてる。
それでもボク達2人はちょっと相手を求めるだけですぐ目の前に現れて迷子になったりはしない。
他の数千万人の姿は見えなくなる。
これは本当に良いことなのかはわからないけれど今の僕達にとってはとても都合のいいことだと思う。
「なんか今年に入ってからエグいことばかり続いたね」
有希はボクの短く切り揃えた髪を弄りながら囁いた。
ちょっとした気分転換で耳と首筋の襟にかからない程度に切り揃ええたつもりだったんだけどどう見ても男の子にしか見えない。
そんな自分がしょうもない妄想をしている。
ち〇ち〇の中に寄生する超ミニサイズの美少女とか笑えねぇなんて思いながら妙な妄想に耽っている自分がいる。
「子宮の中に生息して宿主の少女を淫乱にさせる美少女寄生体というのもやばいと思うけどさ」
自分で言っておきながら思わず吹き出してしまう自分がいる。
「やめてよね、そいつらのせいでえらい目に遭わされたの忘れちゃった?」
ほっぺたをパンパンに膨らませて抗議をしてきた有希を見るのも悪くはないと思っている。
だってボクこと由紀有希のふたりは同じ身体の中に住んでいて
ひとり、ボク、こと有希は普通の中学生生活をエンジョイしていた。
ただ決して貧乏をエンジョイしていなかったのは確かだ。
生理用ナプキンを買うだけでお小遣いが消えてしまうような生活なんてエンジョイしているといえるだろうか?
そしてボクにはもう一つの顔があった。
地方アイドルと言って良いかどうかは知らないが夕方ボクが学校から帰ってからスイッチが切り替わるようにボクと彼女、有希は入れ替わっていた。
「おやすみ、由紀ちゃん」
あたしはそう言って覗いた鏡には黒いストレートの髪を腰よりも少し上まで伸ばしている自分が写っていた。
最初は自分でもウィッグかカツラか何かだと思っていたが違っていたようだ。
地毛だし引っ張れば当然ながらむちゃくちゃ痛っかった。
由紀が少々赤みがかった黒髪なのに対してあたしの黒髪は時間や周囲の光によって様々な色に変化をした。
しかし地方アイドルとは言っても実際には未成年の少女を食い物にする枕営業やAVなどの出演を強要されるケースも多いと聞いてはいたがまさに自分が所属していた事務所も例外ではなかったらしい。
しかも奴ら、というかあの大手芸能事務所の社長はあろうことかあたしの昼の顔でもある由紀にまで魔の手を伸ばしてきた。
そしてその挙句に自殺に見せがけて大型トレーラーで身体を粉砕してくれた。
もしその時の浮かばれない魂を亜希さんがあのボロアパート前で浮遊していたボクとあたしを拾ってくれえなかったっらどうなっていたことか?
それまであたしもボクもあのカレンダーが落ちてミニチュアサイズの有希が実体化したのが全ての始まりだとばかり思っていた。
でも実際にはそれはもう2人ともが共有していた身体が大型トレーラーに粉砕されて行く場を無くしたふたりをお腹の中で生かしてくれた亜希さんが見せてくれていた夢の中での世界の出来事だった。
「さすがにあの超巨大なミミズは引いてしまうな」
ボクはつぶやいた。
「まだ巨大精子の方がマシだね」
有希が少しふざけて言う。
「いやそれこそ洒落にならんし」
ボクは言ったが本当に洒落にならないと思い始めていた。
「でもあの子達はあの時のあたし達と同じだよ」
急に真剣な表情になって有希は断言した。
「私たちは私たちそれぞれの夢を追って競い合っていたと思い込んでいた、でも実際には・・・」
有希はそこまで行って言葉を詰まらせた。
そう、実際にはデスゲーム色の強いアダルトビデオの制作に参加させられていたに過ぎなかった。
あるものは男友達を使い仲間だった女の子に対する嫉妬から集団リンチに手を染めて挙句に手痛い反撃を受けて自らも命を落としてしまったり。
気がつくととんでもなく胸糞悪いAV作りに参加させられていた。
そしてそのアイドルチームは1人残らず殺処分されてしまっていた。
亜希の胎の中で活かされるのを許されたあたしと由紀のたった2人を除いて。
「ねえ、あの子達をどう思う?」
有希が僕に訊いてきた。
「あの巨大なミミズだって元は僕達と同じ人間だったと思う」
ボクは少し彼らに対して同情を感じ始めていた。
ネットではなく亜希の胎の中に入ってくる情報は実に膨大だった。
初めは静岡のおおい川周辺の巨大地震よる大火災で肉体を失った人達から、トンネル内で地震の揺れによるトンネル内での中央新幹線特急タキオン事故によるによる死者、そしてそれに乗っていた邪魔な女子高校生衆議院議員を殺戮するために発射されたレールガンによる死者、その衆議院議員の付き添いで同行していたハイブリッドアンドロイド椎奈の反撃により命を落としたレールガンを操作していた護衛隊の隊員達。
そしてその中央新幹線を口実に再稼働を始めた浜岡原子力発電所の技術者や運行担当者達。
みーんな命を落としてこボク達と同じ亜希の胎の海の中で泳いでいた。
みんな一人一人がそれぞれちゃんと自分の国、日本を愛する愛国者だったと言うことは同じ亜希の胎の中で絵話し合っているうちに分かってきた。
ただ彼らは純真すぎるあまり盲目的にこの国の政治家の言い分を信用し過ぎていた面があった。
「ねえ、あの子達は最初はいざという時に反撃できないとかつてのウクライナのように攻め込まれると思っていたんだよね」
唐突に有希は呟いた。
「きっとあの子達も最初は、あの元総理が言っていた、先制攻撃手段も、基地以外の中枢に対する攻撃も、考える必要があるって発言も、彼ら自分達と同じレベルの常識内での意味だと思っていたんだろうね」
有希はそう言って少し涙ぐんでいるような気がしてきた。
「そうかな?」
とボクは答える。
「先制攻撃手段もガゼ情報を摑まされれば根拠のない侵略行為になるし基地以外の中枢が攻撃命令を出す司令本部であって首都や原子力発電所の事ではないと言われたら素直に信じてしまう純粋さにも問題があったのかも」
言ってしまってから後悔したが既に遅かった。
有希は大粒の涙を流して泣いていた。
だけどボクが言いたかった事も間違ってはいないと思う。
司令本部だって、れっきとした軍事基地には違いはない。
そこではない中枢と言えば当然政治の中枢がある首都や原子力発電所の事を指すのが常識だろう。
ガゼ情報による攻撃だって「核兵器も含む大量破壊兵器を持っていると言うデマを確認もせずに起こしたイラク戦争だって記憶に新しい。
「でもそれでも酷いよ、先制攻撃だってちゃんと情報源のソースを確認するだろうって思っていただろうし、その攻撃手段だってミサイルによる通常攻撃だって思っていたはずだよ?」
そう、実はボクもそう思っていた。
しかし現実は予想の遥か大きく斜め上を行っていた。
理念と信条に同意する書類にサインしたと同時に彼らは己れの身体を兵器に搭乗させられて(正確にはあの巨大ミミズの頭脳として脳髄ごと搭載され)司令に逆らえば電流を流されるという拷問の為に地下深くを潜り込んで敵国陣営内に潜入して攻撃基地や首都などの破壊活動を行うことになるとは夢にも思わなかっただろう。
しかも正確な攻撃を期する為に彼らの脳髄には攻撃対象の画像が入ってくる仕様になっているのは間違いがない。
もしその映像の中に恐怖で怯えて泣き叫ぶまだ幼い子供の体を自分自身が粉砕している姿を見てしまったら。
「こんなのやってられないよ、あたしなら気が狂う、こんな事をさせる日本自体を恨むよ」
そう、つまりあの巨大ミミズ達は日本を恨んでの行動だった。
泣き叫ぶ有希にかけてやれる言葉をボクは思いつかなかった。
その時遠くから
「私に任せて」
ボクと有希に優しく温かい声がかけられた。
カレンダーガール12 終わり
おまけ
天界1
毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離した描写がめちゃくちゃ多数ありますことをお断りしておきます
あ、これ今読み始めたそこのあなた!
めっちゃホワイトな世界を想像したでしょ?
実際は下界なんかよりも遥かに黒い社会なんだからね!
セクハラパワハラなんて日常茶飯事。
レイプなんかあってもほのぼのと男の方が無罪釈放になって女は自己責任論とかハニートラップとか言われて落ち度をジメジメと責めつけられるわけよ。
どうしてそうなるって?
ここが〇〇の天界だからよ。
〇〇会議という場所が隣の国や外国人を差別したりヘイトしたり。
〇〇神道って神社を祀る場所が政治にやたらと口出ししたり。
人を大勢564タヒトが英霊として祀られるナゾ神社があったり。
そんな国の頭の上にある天界だものマトモなはずがないよね、って話。
あたしのここでの名前はチツノナカ
どうよ?男尊女卑のこの国にふさわしい素晴らしいネーミングセンスでしょ?
ちなみに下界での名前は可奈野椎っていうんだけど両親が『膣』なんて名前で出生届を出そうとしたら門前払いにされたんだって、当然だよね。
そんなわけであたしは起きている時は可奈野椎として、眠っている時はここ某国の天界でこき使われている。
下界でのあたしの姿は3歳児、ここでは22歳のOLなんだけど👩💼。
まさに24時間戦えますか?ってやつだ。
天界なんかでやることなんてあるのか?だって?
もちろんやる事はいくらでもある。
まずここ天界に来るべき確固たる資格があるのか?ってやつだ。
当然不法滞在者は入界管理局にて厳重に管理される。
牢屋みたいな個室に隔離されてろくに餌も与えられずに死にそうになっても医者にも見てもらえん、挙げ句の果てに命落としても自己責任にされてしまう。まあここの場合はまた強制的に生き返らされて次の瞬間から再び天界の名からは程遠い地獄のような毎日が続くわけだけどね。
天界で何度も繰り返して死ぬって洒落にならない状態だと思う。
ここ天界に入界するためにはまずそのここにきても良いような資格があるかどうか見定める必要がある。
最下界というのはあるのかどうかはわからないけど案外こことせっているんじゃないかなぁ。
「最初の人、どうぞ」
今日も受付にはもう500人以上は並んでいる。
『みんな碌な死に方しとらんな』
ほとんどの人の肉体欠損が半端ない、首から上がなかったり、腹から臓物が飛び出していたり、みんな最下界行きは間違いないと思う。
『あ、銃弾で蜂の巣にされてんの来た』
そう思った時にそいつはいきなりポケットに隠しもったバタフライナイフをあたしに向けて切り付けてきた。
頚動脈と頸静脈をセットでぶった切られてあたしの貧相な胸からお腹のへそにかけてこれでもかぁ、これでもかぁ、と言わんばかりに何度も何度も突き刺された。
もちろん血があっちこっちに勢いよく噴き出している。
「ところでこちらにいらした理由はなんですかぁ」
あたしはそこらじゅうから大量に血を流しながら眉をヒクヒクさせそいつを見返した。
「非国民の売国野郎とか、売春メスガキを最下界に送ったった」
そいつはヘラヘラ笑いながら言ったがここにきていいようなやつじゃないだろうと思っていたら背中から『ポンポン』肩を叩かれた。
「ご丁寧にお祀りして差し上げなさい」
「何故ですか?」と訊き返すとその上司は真顔で言った。
「このお方は敵国の反日を百人斬りしたかつての英霊様だ、そして生まれ変わってからもなおその英気を養うために俗国の雌を何度も己の槍で貫いた英雄だ」
『ただの殺人鬼で強姦魔じゃないか?』
そう思ったがあたしの顔を上司が冷徹な目をして見下していた。
「ハイハイ、『天界松』にようこそ」
あたしはそう言うと血まみれの書類に青いハンコをいく種類か押してそれを手渡した。
『はぁ、ますますここも生きづらくなりそうだな?』
あたしがその人を見送ろうとするとすぐ後ろに並んでいた美人を見るなり押し倒して強姦を始めよった。
「ちょっと、こんなところで始めないでください、あとつっかえてますので」
そう言うとその男を引き剥がそうとしたらまたしても上司に止められてしまった。
「君、最上級英霊様に逆らうとは言語道断、所属を言え!」
所属と言われてもあたしはしがない小田井護国神社の下っ端、だから本庁から見たら下っ端もいいところ、だからなるべくなら当たらず障らず返答するしかない。
男は散々その美人の陵辱を堪能すると満足したように去って行った。
『気の毒やな』、そう思いながらその方の名を呼んだ。
結構よく聞く名前だったがあたしには関係がない。
「ここにきた理由は何ですか?」
あたしは尋ねた。
「はあ、睡眠導入剤による自害です」
その人は無感情に淡々と答えた。
「そうですか?、それでどうしてそのようなことを」
あたしは尋ねた。普段他人には関心を持たなあたしにしては珍しい事だと言えた。
「私つい出来心で男の人の誘いに乗ってしまったのです」
要するにナンパされたと言うことか?
「ビールの2〜3本くらいなら大丈夫かな?と思い適当に話を合わせて適当に呑み食いしてから別れたんですけれど」
それを言い出してから急にその美人は泣き出した。
「駅から降りてから少ししたところにある茂みに急に引き込まれて3人の男の人にレイプされてしまったんですが、その中に私を誘惑した男の人がいて」
彼女がそう言いかけた時にあたしは上司に呼び出しをされた。
「君には荷が重い、私が引き受けよう」
はい?とは思ったが相手が悪い、ここは彼女の相手を上司に託すことにした。
あたしはこっそりと彼女の襟にボタン式マイクを取り付けた。
その美人は奥の間に連れて行かれて幽閉されたようだった。
激しい叫び声と喘ぎ声が聞こえてくる、途切れ途切れに助けを求める声が。
まさか自殺してからも天界でセカンドレイプ、いやサードレイプをを受けるなどとは夢にも思っていなかっただろう。
だからこの国でレイプされたからと言って死を選ぶ事はものすごく愚かな行為だとも言える。
また同じ事を天界でも強要されるからだ、しかもここでは助けに来てもらえるものなど1人としていない。まさに名ばかりの天界だ。
あたしは事務的に次の男の人を呼んだ。
「えーとあなたは今回はどのようなご用件で?」
あたしがそう言うとその男の人はニタニタ笑いながら言った。
「しけーだよ、しけー」
はあ、またですかと思った。
「判決内容は?」
もう聞くのもめんどくさくなってきた。
「カミさんをよお、滅多刺しにしてやったんだよ、育児に夢中になりやがって相手にしてくれなくなったんで浮気したらよぉ〜、逆ギレしやがったんで大きくなった腹を何回も包丁で突き刺してやったんだよ」
自慢げに言うがお腹の中の子と合わせて2人だ、しかもこいつはゲスいことに止めに入った上の子まで手にかけて殺めている。
「全くよぉ〜子作りは男の本能だぜ?それで死刑なんて納得がいかねぇよな」
そいつは言ったがそんな身勝手が通じるなら世の中から死刑なんてなくなると思う。
「じゃあ天界の入界は認められませんね」
あたしがそう言うとまた後ろから別の上司がしゃしゃり出てきた。
「産めよ増やせよの精神に則った立派な青年じゃないか」
そう言ってその上司は勝手に書類に受付受理のハンコを押した。
はあ?そいつは裁判にかけてもらえただけでも上等だよ?
「しかも産めよ増やせよと言っといてその貴重な子を2人も殺めた行為はどう説明するんですか?」
あたしは抗議したがまさかの珍説が上司の口から飛び出してくるとは思わなかった。
「今お腹の中に子供がいて次の子が生産できないと言うのならよそで作るのが正当な理由じゃないか?」
いつからそんなのが正当な理由になったんだ?と思いながらあたしは血まみれのまま彼を引き止めようとした。
あたしの意見謎聞く耳持たん、そんな感じでその上司はさっさと彼を天界竹の間に連れて行った。
「何故君はその男と酒を飲んだんだね?」
「この時点で君は下心があっただろう」
「暗闇に誘い込んでそんな薄着でどうか犯してくださいと言っているようなものだろう」
喘ぎ声と泣き叫ぶ声の合間に上司の声が聞こえた。
しかしあたしは何もしてやることが出来なかった。
「おい、こいつ舌噛んだぞ」
職員の誰かの声が耳に入った。
「ここじゃ誰も死ねないことを知らないんだな?まあいい、蘇生してやれ、生き返ったらまた尋問の再開だ」
ここが天界とはよく言ったものだと思う。
はっきり言って地獄と変わりがないんじゃないかと。
そんなわけで今日も30人ほど事務処理をこなした。
まあ速い方とは言えないが自分なりにこなせたと思う。
交通事故や病気、事件に巻き込まれたり人が命を落とす理由は様々だ。
あれからほとんどトラブルらしいトラブルもなく私は布団の上で目を覚ましていた。
ちっとも休んだ気になれない、当然だ、実際寝ている間も働いているのだから。もっとも天界での出来事なんてすっかり忘れてしまっているのだけれど。
パジャマから園児服に着替えさせてもらって母親と食事をして幼稚園バスに乗せられていつも通うマンゴー幼稚園に向かう。
あたしは気の合う友人達と遊んで1日を過ごした。
あたしはバスが家に着くなり眠気に勝てずに爆数してしまったようだ。
夢の中であの美女は8回目の自害を試みたようだった。
「どうやら入界管理局送りらしいな」
あたしの近くを通った男性職員がそんな噂話をしていた。
気の毒だけどあそこに入れられたものは2度と出られないと訊いたことがあった。
今日も受付には大勢に列が並んでいた。
なんだか最近は自害をしてくる若者が増えてきたような気がした。
性産業、と言えば聞こえはいいけど、これも搾取されているのに過ぎないんだよね。
「次は金髪のマリモ頭さん」
まじか?と思っていたら本当にそんな頭髪だった。
「あなたはどうしてここに、いらっしゃいましたか?」
まあ大体は予想がついたが一応は聞いてみる。
「街で就職に困っていたところ勧誘されまして」
気がついたら悪質なAV業界に売られていたってところかな?
「死因はなんでしょうか?」
お腹のゴムなしピルなしの本番撮影で子供が出来てしまって商品価値なしと見做されて首になって自暴自棄で電車の前に飛び込んでと言うことか?
ここではお腹の中の子供を巻き込んでの自殺は大罪ということになっている。
電車にはねられてのことだったがその女性の体の欠損は意外と軽度なものだった。
私は聞いてみた。
「自殺した当時、お腹の中の子は何周目でしたか?」
「はい?」
彼女は理解していないようだったけどまだここに来るには早過ぎたようだった。
「病院のベッドの上で目が覚めるように手続きをしておきました、今日は一旦お引き取りください」
あたしはそういうと彼女と彼女の中にいる子供に手を振って下界に送り返した。
続いて私の前に顔を出したのはどうみても高校生くらいの女の子だった。
「それで、念のために確認しておきますがあなたの死因はなんですか?」
「僕の死因は学校の屋上からの飛び降り自殺です」
女の子なのに『僕』と言ったこともだけど彼女には色々と違和感を感じていた。
確かに頭蓋骨は砕けて中の脳髄が飛び出して首の骨も折れていた。
しかも肋骨あたりに何か棒状のものが突き刺さっている、おそらくはそいつが彼女の心臓を貫いたのだろうか?
「ちょっと失礼してお股の匂いを嗅がせてもらっていいかな?」あたしは彼女の両脇腹を両手で掴んで持ち上げると制服のスカートの中から立ち込めてくる匂いを嗅ぎとっていた。
ほぼ間違いなく彼女は学校の屋上のフェンスを飛び越えて飛び降り自殺数前に複数の男子生徒に犯されていた。
しかもそんな中の誰かが、いや何か違う。
「あなたには好きな女の子がいましたか?」
あたしは尋ねてみた。
彼女は少し驚いた表情をしたが少し悔しそうな顔をして『いいえ』
と答えた。
本当に狙われていた娘さんはそっちの方の娘さんだったのだろう。
そしてこの飛び降り自殺をした娘は、自分の好きな彼女が目の前でレイプされているのを助けられなくて、いやそれも変だ。
「ここでは嘘は通じませんよ」
あたしはそういうと彼女の頭の中を覗き込んでみた。
どうやら彼女に関連する娘があとふたりはここを訪れてきそうだ。
ちゃんと事をまとめるためにはあとふたりも一緒に話し合う必要があると思った。
『最初の睡眠導入剤の娘、次のまりも頭の騙されてAV女優契約をさせられ、望まない子を孕まされて電車の前に投身自殺をはかったOLさん、そして飛び降り自殺をした娘、あとあたしを入れても4人足りないか?』
あたしがぶつぶつ呟いているのを上司に聞かれたらしい。
「今日は君、なんだか疲れているみたいだから早く帰って休んだら?」
と言われた。
普段ならそこですっきりと幼稚園児として目が覚めるはずだったのだがそこで私は紳士風の男に犯されていた。
場所は何故か見慣れた自分が住んでいる部屋。
私がその男に自分が身籠っていている事を告げると彼は「本当に俺の子か?」と言って去って行った。
それからだ、ヤサグレ男がこの家に入り浸るようになったのは。
そいつは私を殴って力任せに犯し始めた。
そして満足をすると私を縛り上げて逃げられなくした。
そして私のお腹の中の子が堕胎不可能な周期に入った頃、ヤサグレ男は一冊の通帳を残して去って行った。
通帳にはわずか100万円ばかりのお金を残して。
私は就職のために住民票を取りに行って驚愕した。
身も知らぬ男の籍に入れられて母子共々認知させられていた。
今日も天界の入界受付窓口は混雑していた。
最初に並んでいたのは肩より少し栗色の髪の毛が伸びた見た目は普通の子だった。いや、よく見たら額に大きな弾痕があって後頭部がほとんど吹き飛ばされていた。
「一体何があったのですか?」
尋ねてはみたが泣いているばかりで返事は期待できそうもない。
「至近距離から銃で頭部を撃ち抜かれたことになってますが、間違いありませんか?」
再度訊いてみたが泣いているばかりで返事がない。
困っていると後ろから上司の手が伸びてきて一点を指差して言った。
「国家反逆罪だな?」
意味がわからなかった。
『続けて別の少女を射殺しようとした憲兵の銃が破裂してその破片が憲兵の身体中に深く突き刺さり彼は命を落としたとあるだろう』
私にこっそりと耳打ちをしたが意味がわからない。
だいたい後頭部が吹っ飛ばされた人間にどうしてそんな事が可能だなんて思えるのだろうか?
「単なる不慮の事故では?」
あたしは問い返したがどうやらここの天界では憲兵など御国を護る兵隊さん達には向かうものは罪人と取られるらしい。
『どうする?入界管理局送りにした方がいいんじゃないのか?』
『しかし昨日の性同一性障害者っぽい奴も犯罪の匂いがするな、取り敢えず管理局に入れておくか?』
『いくらヒソビソ声でも聴かれちゃうでしょうが、ほんとにマナーのなってない連中だな』
あたしはそう思いながら、その娘の肩を抱き寄せてやることしか出来なかった。
あたしは残念なことにこの職場から離れることが出来ずに、彼女は上司らが促すままに入界管理局に連れていかれることとなった。
「はい、次の方どうぞ」
あたしの対応もどんどん事務的になってゆく
身体中弾痕で穴だらけの男が目の前に立っていた。
まあ見た目は確かに日本陸軍兵か海軍兵だ。しかしあたしには両者の区別なんてつかない。
「沖縄戦での戦死者となっていますが何故今頃?」
あたしは不審に思い尋ねた。
もう今は地上では平成6年に入っている、先回の第二次世界大戦における沖縄本土決戦から少なくとも50年近くは過ぎていることになっている。
「それでそんなあなたが何故今頃になって?」
書類の明細を読んであたしは愕然とした。
何このSFタイムスリップ設定?
それが正直な感想だった。
「えーと奪い取られた沖縄を奪い返すためにたまたま居た女学生と共に敵である米軍地に侵入、戦闘機などを手榴弾で爆破、敵の戦闘機を強奪して基地滑走路より離陸逃走とありますが?」
「はい、ワイルドキャットを強奪しました」
はい?
「別々に1機ずつ、あわせて2機強奪したのですか?」
あくまでも確認だ。
「いいえ、強奪したのは1機のみです」
またしても「はぁ?」と言ってしまった。
確かワイルドキャットは単座の戦闘機ふたりも搭乗する事なんて不可能なはずだ。
「でも確かその女学生はなんとかキャットを強奪するって言ってましたよ?」
『なんとかキャットねぇ』
あたしはやはり不審に思いながらも確認した。
「その戦闘機、本当にプロペラ機でしたか?」
普通そこでオカシイと思うだろうとツッコミいたい気持ちを抑えながら1枚のポスターを見せた。
往年の名俳優が演じたあの戦闘機ドッグファイトが観物のあのパイロットと上司の恋愛を描いた大作映画だ。
「あ、これです、これに違いありません」
彼はそいうとその複座式可変主翼のジェット戦闘機を指差した。
『それにしてもその女学生は良くもまあそんな大層なものを操縦出来たものだと感心するけどここに来たって事は撃墜されたんだな?』
と思う。
「凄かったです、ゼロ戦もオモチャみたいなものだと感じました」
あ、それ、ここでは言わない方がいいよって言いかけたが時すでに遅かった。
まあ比較する対象が違うとは思ったがここにいる連中にF-14だのF-15だの言っても理解できないかもしれない。
はっきり言って雷電や紫電以降の知識が全くない人たちばかりだから。
「貴様、非国民は入界管理局送りだ」
そう言われるとさっさと例の牢獄に連れてかれそうになった。
しかし、
「でもその女学生は最新のF-35は忍者みたいでゼロ戦みたいなとこもあってもっとすごいって言ってました」
男が言うと上司たちの待遇が一変した。
「お前、ライトニングⅡの良さがわかっているなんていいやつじゃないか、よし、君は天界松に御招待だ」
ちょっと待って、イーグルやトムキャットも知らないのになんでF-35は知っているの?とツッコミを入れたかったがよくよく考えてみればこの天界自体があの国の某団体や政権を反映しているとも言える。
F-15が老朽化したのならF-15の互換機を製造すればいいだけなのに民間機との衝突の可能性もあるステルス機能付きの劣化戦闘機を何故わざわざ爆買いする必要があるのか聞きたいくらいだ。
すると全身に激しい電流が流れてあたしはその場で意識を失い幼稚園で目を覚ましていた。
どうやらお遊戯中に眠り込んでしまっていたらしい。
あたしはまだ半覚醒したままお遊戯を終えると通園バスに乗せられて家路に向かう。
実際3歳児だった頃のあたしは基本的に天界での出来事はほとんど覚えてはいなしかしあちらのあたしはこちらの世界のあたしの事はほとんど把握しているらしくて時々だけどとんでもない介入をしてくる。
人格介入なんて序の口で念動力や物質のエネルギー化など、今考えたらなんでそんな事ができたのか不思議でならなかったけれどその後知り合った観萌ちゃんによると私が持っている能力ひとつだけで全て可能になってしまうらしい。
「ねえ君、」
あたしは家の前で不意に見知らぬ女性に声をかけられて焦ってしまった。
背は中学生でも高い方じゃないかなと思えた。
「ねえ、このへんできみくらいの女の子をみかけなかったかな?」
そう言われても鍵っ子のあたしは母親の帰りが遅いため、通園バスで帰ってくるとすぐに部屋の鍵を開けて中に入って閉じこもってしまう。
もちろん、外でどんな子供が遊んでいるのかさえほとんど知らなかった。
「ねえ、なんとか言って、その子を見失うと大変なことになるんだから」
彼女は必死に訴えていたようだったがあたしはあえてそれを無視した。
「だってお母さんに知らない人と話をしちゃダメって言われているし、おねえちゃん耳が長くて絶対に怪しい人にしか見えないんだもの」
あたしはそう言うとアパートのへやのなかにはいってなかからかぎをかけた。
「ねえ、本当に助けて早くあの子、志乃ちゃんを見つけないと」彼女がそう言いかけると遠くで『バスッ』と言う音が聞こえると同時にかすかな彼女の悲鳴が聞こえた気がした。
そしておそらく彼女が走り去る足音、そしてそれを追う2人分の足音。
あたしにはその『バスッ』っと言う大きな音に聞き覚えがあった。
迫力は全然違うがテレビの刑事ドラマとかに出てくる『サイレンサー』とかいう名前のてっぽうだ。確かあれにうたれたら主人公でなければ死んでしまうと思っていた。
あたしは思わず台所の窓から恐る恐る外を覗き込んだ。
そこには真っ赤な水溜まりとそこから点々と続く小さな赤い水溜まりが見えた。
もしもあたしがあの女の人と喋っているのを見られていたら?
もしもそ女の人を始末してからあたしも始末しにやってくるかも?
あたしは怖くなってクローゼットの中に閉じこもり震えている間に眠りについてしまった。
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あたしが天界で目を覚ますと案の定そこは入界管理局の牢屋の中だった。
目の前では昼間のあたしに声をかけてきた女性が血まみれになったあたしと同じくらいの女の子を抱き上げて泣いていた。
そのちいさなおんなのこは後頭部が爆弾のようなもので吹っ飛ばされたみたいに大きな穴が開いていて痛々しい、額にも4センチくらいの大きな穴が空いていた。間違いなく即死だろうけどなんでここ、入界管理局にいるのか不可解だった。
まずこの年齢で思想犯とか政治犯は考えにくい。
「それよりもあなたは通園バスを降りたばかりの時にお会いしたお姉さんですよね?」
あたしは確認を取るためにその小さなもう動かない子を抱きしめて泣いている女性にあえて聞いてみた。
その人も腹部と胸部に大きな穴を開け垂れていたが弾丸は貫通してはいないようだった。
口径の小さく弾薬の量も少ない弾丸が使用されたようだったけれどそれでも消化器などの損傷、特に心臓を破裂させた弾丸はまだ体内に残っていた。
しばらくしてやっとあたしの存在に気がついたがどうやらおもいだせないようだった。
仕方がないのであたしは自分が天界の入界管理局の職員であることを証明する身分証明書を見せた。
本当はやってはいけないことだったがその中には下界でのあたしを写した写真も忍び込ませてある。
それをみて彼女は理解してくれたようだ。
見た目は成人でも精神年齢は3歳児だということを、って失礼だな、おい。
ところでさっきからこの女性は眉間に激しく強いシワを寄せているように感じているのだけれど、確かこの人の名前を聞いていなかったことを思い出した。
「それでお姉さんの名前は?」
念のために確認してみた。
「SAE-Co1024、そんな名前だったと記憶しています」
もしかして人間でさえない?
そんな疑惑が生じた、がどうやら彼女には国家反逆罪の容疑がかけられているようだった。
国が軍国主義化するのに反対をしていただけなのにこの処置?
そろそろメンバーチェックを始めた方がいいかもしれない。
「飛び降り自殺したおとこの娘、彼女は『銀』死亡年は昭和13年、死亡年齢18才」
「自己紹介することなんてねえよ」
彼女は強がって言った。
「ただ先生と花奈を守れなかった、そんな自分に絶望しただけだ」
「後頭部を吹っ飛ばされた女の子は花奈、死亡年は銀と同じく昭和1313年、死亡年齢15才」
「あたしは先生と銀ちゃんさえ生きてさえいてくれればよかった、でもかおり先生は男の人たちに次々と馬乗りにされて、婚約者がいたのに戦場について行く契約をさせられてそれを拒んだところ口の中に大きな拳銃の銃口を突っ込まれて撃ち殺されました」
あれ?聞いていた話とは随分違う。
「その直後に花奈さんも撃たれているんですよね?花奈が暴発させたことになっているのですが?」
「胎に子供の種を植え付けられて腹が大きくなって働けなくなり失意のあまり電車の前に自殺したマリモ頭、文月輪、死亡年平成35年、死亡年齢21才」
あれ?確かマリモちゃんは一度下界に差し戻したはず、なのになぜまた?
「衛星軌道からの荷電粒子砲で夫婦共々焼かれちゃいました」
ちょっと絶句した、どうやら令和がまだ来ていない時間線から来たらしい。
そこに次々と国家犯罪を犯した女性達が送り込まれてきた。
ふたり共に胸まであるストレートの黒髪。
目が大きい女性が春香織、死亡年、28才
「まさか花奈まで撃たれるとは思ってもいませんでした」
「目が細くて鋭く吊り上がっている女性が月海、死亡年は昭和57年、死亡年齢27才、目の前で観萌がレイプされているのを止めようとして銃殺されている」
あたしの説明に銀が思わずあぶねえレイプ犯だな」と呟いた。
みんながいちように驚いた。
確かにレイプを邪魔しようとして殺されたなら単なる被害者、しかもよく調べたら銃の出どころも不明になっていた。
これで政治犯や思想犯としてここに送り込まれるのはおかしい。
『松』や『竹』とはいかなくともいくらなんでも入界管理局はないと思う。(ちなみに「松竹梅」でのランク分けは存在しなくて本来は全部平等らしい)
いくら共産主義的な政治運動や反原発運動をしていても松竹梅の下
「そしてあたしはここで受付をしているチツノナカ、下界では3歳児に身をやつしている」
「ところで観萌は来なかったか、あ、観萌というのは源氏名で本名は確か『さとみ』だったはず」
月海があたしに訊いてきた。
その女性なら記憶ある、確かここにくるなりレイプされて、なぜか入界管理局送りになってそこでも毎日レイプされた挙句その都度自殺を図っているという。
「あ、もしかして今最悪の状況考えていませんでした?」
あたしは月海さんの表情を見るなりドキッとした。
「最悪っすよ、、あなた方はここを地獄にしたいんですか?」
その時、あたしは月海さんの言葉の意味を深く理解していなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
突然、管理局全体に流される放送が始まった。
勇ましい音楽と共にここ、入界管理局の局長のスピーチが始まった。
「皆さま、今日もお勤めご苦労様です」
一応は労いのお言葉ありがとうございます。
しかし耳触りのいい話はここまでだ。ここからだんだんと耳障りが悪くなってゆく。
「今日は我ら大〇〇帝国の躍進に貢献した英霊様たちを慰霊する日です、今日は我ら大英霊様たちを慰めるために特別な部屋を用意いたしました、甲、乙部屋の皆様頑張って大英霊様を歓迎しましょう」
「なあ、甲とか乙の部屋って一体なんなんだ」
月海が訊いてきた。
「階級付ですね、美人で英霊に逆らわない大人しい娘たちが甲、多少元気で反抗的なのが乙、そして見かけが多少落ちても大人しいのが丙、そしてここ、反逆者ばかり集めたのが丁」
だからここ丁の部屋では各自の能力は封印されてあたしたちは無力化されている。
「じゃあ今日はここには英霊様は来ないんだね」
ホッとしたように布切れ1枚だけを纏った娘が安堵の息をついた、そんな彼女の腹に短刀が突き刺さる。
「まさか、なんで百人斬りの百人姦淫が?」
すぐ向こうの甲部屋、乙部屋から女性たちの泣き叫ぶ悲鳴が聞こえる。
今日予定の大英霊様は約1200人、対して甲、乙の各部屋の女性はそれぞれ500人前後、それでもまだ甲の部屋は良い、みんな大人しく大英霊様たちに身を任せてただ黙って犯され続けて事が終わるのを待つ娘ばかりだ、逆にタチが悪いのは乙の毛屋に押し入った連中かもしれない。
奴らはわざと挑発するかのように乱暴に娘たちを扱い殴られ、蹴られてから陵辱を受ける。
いやというほどのここでの霊力の差に圧倒されてやがて奴らをうけいれるよちほかにみちがなくなる。
ほら、100人斬りの下で暴れていた娘も諦めた表情でただ単に奴のでかいものを受け入れている、ほらなんだかんだ言っても結局はは女は男には逆らえないんだ。
娘に飽きた百人斬りは次にしのという名の養女に目をつけた。
庇おうとしたSAE-Ko1024の体が蹴り飛ばされて金網に叩きつけられて頭蓋骨が完全に変形していた。
そして百人斬りはしのちゃんの体に覆いかぶさっていきなり自分の物を小さなつぼみに差し込もうとしていた。
「急に静かになったことないか?」
銀が呟いた。
「大変だ自殺女が暴れている、大英霊様の約半分が屠られた」
「バカな、この入界管理局の中じゃ何をされても抵抗しない一番おとなしい奴だぞ」
「残りの英霊様たちも天界松と天界竹に逃げ帰った」
百人斬りの体が何者かにつまみ上げられていた。
「英霊様?前線で補給なしに頑張って餓死した下等兵を舐めているのかしら?」
毛先から毛根まで七色に輝く腰まで伸びたロングストレートヘアの美少女が言った。
「百人斬った?部下たちが死ぬ思いで捉えた捕虜達を嬲り殺しにして英雄気取り?」
「バカな、貴様は真っ先に八つ裂きにした上にガソリンをかけて燃やしたはず」
そう言い切る前に百人斬りの身体は天井に叩きつけられていた。
「さあこれからが本番よこの天界船を太平洋のど真ん中に沈めるから!月輪、銀、香織、花奈、月海、そしてリーダーの膣チャチャっと済ますから」
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それからあたし達はその天界船というUFOを太平洋のど真ん中に沈めてとりあえず志乃ちゃんとSAE-Ko1024こと冴子さんは生き返らせた
そしてあたしを除く6人はそれぞれ好きな生年月日を選んで転生した。
なお本来はあたし達の姉妹だったはずの加世だけはその時すでに連中に洗脳されて工作活動に励まされていたという。
亜希「ちょ、この設定、観萌=さとみってぶち込んだら12人枠1人空かない?」
愛「そお?」
亜希「また新キャラ考える予定?また盛大に間違えるよ」
冴子「つかいきなり天界船沈めちゃってもう話続かないんじゃ?」
志乃「天界戦艦ヤ〇〇ニとなって復活して地球を再び火の海にするってのは?」
全員「却下」
多分続かない
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