再会14

闘いの再開14

過激な性行為描写など描写を含みますので20才未満の方の閲覧はご遠慮してください

教員室の中は誰もいないかのように静まり返っていた。

「待ち伏せされているかと思っていたがそうではなさそうだ」
楓凛は小さな声で囁いた。
教員室まで500メートルは離れている、今の時点では、だが。


ーーーーーーーーーーーーーーー

亜希から全員に言われている目的と警告はただ一つずつ。

あの体育館で亜希(私)は右手の人差し指を立てて言った。
「目的はこの『さぬきがわ学園』の教職員の正体を探ること」

次に中指も立てて言う。
「そして警告はこのメンバー5人[愛、敦子、楓凛、『あつこ』さん、『かなえ』さん』)では勝てる相手ではないと判断した場合は必ず逃げる事」

長い廊下を歩きあと200メートルに迫った時に全員に全身の血の気が引くような悪寒が走った。

5人がここに来るまでの体育館での作戦会議の内容を思い出していた。

「ここの、『さぬきがわ学園』の造りは『B』達が教育訓練を受けていた『特殊部隊訓練所』にとても似ているって亜希『B』さんが言っていたけどどう言うことかしら?』
『かなえ』さんはここに来るまでに首を傾げて聞いていたが彼女も『あつこ』さんもあの白い大きな建物の研究所しか知らないから無理もないことだと敦子も思った。
実際に自分のあちらの時間線での敦子『ニナ』が行った大虐殺とどうでも良いこっちにきてからの恥ずかしい話が暴露された時。
その時にそのお返しとして『少女A』から始まる平行時間をいくつも隔てた旅の話を亜希の中の『B』とやらに聞かされた。
しかし何度聞かされても、いや、聞かされれば聞かされる程頭の中がスパゲティになる程入り組んだ話だった。

「問題はその『悪魔』とやらがさまざまな方法を使って受胎させて出来た受精卵を現代科学にて複製化して12体の受精卵にした、ってそんなのわざわざセックスしなくても体外で人工授精をすれば済むことじゃない?」
愛が訊いた。
要は受精すれば良いのだからそんなややこやしくも不確実な方法を取る必要はないのではないのか?
普通に考えれば当たり前な疑問だった。
あの特殊部隊訓練所にいた頃、『B』はあらゆる方法を使って奴らの歴史を記録したファイルは存在しないか探っていた。
彼らはまんべんにこの地球にいたわけではなくこの極東の地に太古から住んでいた。
彼らには肉体というものが存在しなかったので地上のありとあらゆる生物とも交配することは不可能だった。
一種の思考するエネルギー体のようなもので人々は彼らを幽霊と言ったり神や悪魔と言った表現をするようになった事に気がついた。

いつまでも彼らはエネルギーを失うこともなくそのままこの地に安住できると思い始めていた。
しかしある時に信じられない事実が彼らに突きつけられた。
この地球が放つかすかなエネルギー、放射線が彼らのエネルギー体を少しずつではあったが蝕みつつあるのがわかってきた。
「そんなわけあるかい」
敦子は突っ込んだ。
しかし亜希の中の『B』は至って真剣そのものだった。
彼らは最初のうちは始終、人類の傍観者であることを務めようとしていた。
「しかし彼らはやがて自分達の見通しがものすごく甘かったことに気がつく、人類は『E=mc2』と言う方程式をとある科学者が発見してしまいました」
「ああ、あのアイシュタインの」
『B』の説明に対して楓凛は素直に答えた。
「いいえ、その時の時間線でのその公式を発見したのは全く別の科学者でした」
『B』はサラリと楓凛の言葉を否定した。
「気に障ったら御免なさい、私はこの世界線での史実を否定する気はないの、ただもしも彼がその公式を発見していなくても別の科学者が発見していた可能性は高い遠い思うの」

地球の中心部が放つ放射線の影響

彼らのエネルギー体に悪影響、

しかしさほど問題のある量ではない

『E=mc2』の発見

濃縮ウランの生成に成功

プルトニウムの開発に成功

水原(核融合)

亜希『B』はホワイトボードにそう書くと
こう付け加えた。
「別に彼らにとっては人類が核戦争で滅びようがわりとどうでも良いことだったんです」
そう言うとさらに付け加えた
「問題なのはその時に発生する放射線量であって、この時の予想ではあまり脅威を感じてはいなかったようです、やたら大量に保持してもその破壊力自体が人類自らを滅ぼす脅威となりますからね、だからそれが無制限に製造されたり使用することはないと考えていたようです、しかし想定外の出来事が起きました」
「核の平和利用、核分裂を利用した発電機構や動力源に利用する方法」
愛がボソリと言った。
亜希『B』はさらにホワイトボードに付け加えた。

地球の中心部が放つ放射線の影響

彼らのエネルギー体に悪影響、

しかしさほど問題のある量ではない

『E=mc2』の発見

濃縮ウランの生成に成功→→→→→ウランによる原子炉
↓ ↓
プルトニウムの開発に成功→→→→高速増殖炉
↓ 使用済み燃料の再利用

「むしろこっちの方が厄介でした、なぜなら事故でも起こさない限り人類はそれを使うのを止めようとしないのは目に見えていたからです」
「そして実際に大きな事故が起きても人類はそれを使うのをやめようとはしなかったと」
そう答えた楓凛に対して亜希『B』は続けた。
「結果地球上の放射線量は桁違いどころでないほど増加してしまいました、しかもその半減期はとてつもなく長期にわたるものだったのです」
「それで人類に働きかけて反原発、反核運動を起こそうとしたわけね」
敦子の発言を亜希『B』は「いいえ」とキッパリ否定をした。
「彼らは人格を直接操る術を持ってはいなかったので時間を操作することにしました、江戸時代以前に戻して違う流れになる事を期待しました」
「それが今の時間線なのか?大日本帝国から世界大戦に至るまで、自分達を神格化したのはその時か?」

「いえ、それも想定外の出来事だったと思います、しかし彼らは人類に一筋の光を見つけ出しました」
「遺伝子工学ですね」
『あつこ』さんが言った。
「そしてとある国の科学者はとんでもないものを作ってしまいました」
「死者を蘇らせるための器」
楓凛は言った。
「そう、それが彼らのエネルギー体が作用して自由自在に操れるようになったモンスター、最初は癌細胞をコントロールするのが目的の技術でした、しかしそれは当初の目的から結果は大きく外れてゆきとある国の中枢を乗っ取ってしまいました」
「時間を遡り過去の世界に移動できる能力」
亜希『私自身』が付け足した。
「その能力はこの国の過去における失態、いえ、犯罪を無かったことにしたい集団にとってはとても都合が良いことでした、過去に暗殺者を送り証人を殺して証拠を隠滅してくれば良いと思ったです」
亜希『B』の説明を聞いてから敦子は続けた。
「私がここに送り込まれた理由はわからない、ただお世話になっている父親の頼みを無下に断れなかった」
亜希は続けて言おうとする敦子の口を自分の掌でふさいだ。

それから亜希はそこにいる女子生徒全員に対して声を大にして宣言した。
「もうすぐ『こじろう学園』の男子どもがここにやってくる、だけど命のやり取りをするような戦いはしなくていい、男子どもの中にもそんなアブナイ奴がいたら私が葉類亜希刑事見習いの名をかけて全力で止めるから安心して闘いな、あんた達の命は私が必ず守る」
その時自分の義母、葉類智恵警部の口調が写ってしまっていた事に私自身(亜希)は気が付いていなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「話には聞いてひたがこれほどまでとは」
敦子、愛、楓凛、そして『あつこ』さんと『かなえ』さん
その5人は教務員室に入った途端、全員絶句をしてしまった。
「ここにいたはずの先生方は?」
と敦子。
少なくとも男性教師15人以上、女性教師も7人以上はここにはいたはずだった。
この引きちぎれた手足と破裂して胴体、潰されてぐしゃぐしゃにされて胴体からもぎ取られたと思われる異臭を放つ液体で濡れた頭蓋骨。
女性教師の遺体も異常だった。
腹の皮が裂けて内臓をぶちまけている遺体。
腹から上がペシャンコになっている遺体。
「まるで内臓が吸い取られてしまったようだ」
楓凛が感想を述べた。
その瞬間、まず敦子の身体が吹っ飛び天井に背中を減り込まされていた。
「わしらの計画を邪魔するとは愚かな」
地響きのような太い声が聞こえたと思った次の瞬間、敦子のヘソのあたりが大きく窪み彼女は口から大量の吐血をしていた。
「小娘どもがわしらの邪魔をするとは小賢しい」
続いて愛と楓凛が教員の机の上に押し倒されていた。
2人ともジャージのズボンと一緒にパンツまで引き摺り下ろされて股を押し広げられたかと思うと何もない空間から2匹の蛇が出現して舌で2人の股間の割れ目をぺろぺろ舐めたかと思うとその谷間の間に頭を潜り込ませた。
2人最初のうちは首を左右に激しく振り目を見開き尋常でない悲鳴をあげていたがやがて動かなくなった。そして口や鼻から大量のドロドロとした液体を吐き出していた。
天井の敦子も股を大きく広げられてみるみる腹が膨らんでゆき破裂するとその裂け目と口からやはり大量のピンク色のドロドロとした液体を吹き出していた。
そして青白い顔色に変わり動かなくなった。
「やっぱり奴らだった」
『あつこ』は叫んで今立っているその場から飛び退けようとしたがどこからか現れた蛇の舌に右太ももを巻きつかれて思わず悲鳴をあげながら床に転倒した。
舌に巻き付かれた部分の太ももの皮膚と皮下脂肪が溶けて中の筋肉がむき出しになっていた。
そしてその筋肉も中の骨も溶けて真っ二つに分断された。
声にならない悲鳴が教員室中に響きわたる。
また別の蛇の長い舌が現れたと思った瞬間それは『かなえ』が一振りしたサバイバルナイフが切断していた。
しかしその彼女が油断した隙をやつは見逃してはくれなかった。
いきなり全長3メートル直径が20㎝はありそうな蛇が出現したかと思うと彼女の腹に巻きつき、強く締め上げた。
口から血反吐を吐いた『かなえ』の股間をその蛇の頭は襲い周囲の膜を破り真っ赤な血を滴れせながら深く潜り込んでいった。
『あつこ』の目から見ても『かなえ』はとうの昔に息を引き取っているかのようにしか見えない。
蛇の口の先からはあるとあらゆる有機物を溶かす有機溶剤が吐き出されていた。
『あつこ』も無事ではない、両足を蛇の舌が溶かして身動きができなくなったところを別の蛇の頭が彼女の膣口に深く潜り込んだ。
大量の有機溶剤が子宮口から子宮に流れ込み彼女らの子宮はもちろん他の内臓を溶かし始めているのは火を見るよりも明らかだった。
「ふん、ワシの分身ども、きゃっつらの養分を吸い尽くすが良い」
姿の見えない老人の声が聞こえた。
と同時にどこからか笑い声が教員室中に響き渡った。
「じいさん、あんた、私を始末しようとした時にこの特殊な有機溶剤を使ったのは失敗だったね」
どこからともなく声が聞こえた。
「まさか本当に引っ掛かってくれるとは思わなかったよ」
その声がそう言うと愛、敦子、楓凛、『あつこ』、『かなえ』はそれぞれの温度を急速に100度以上に加熱させた。
激しい爆音と同時に教員室はもちろんのこと周囲100メートル以上は跡形もなく吹っ飛んでいた。
「お待たせ」
私は今日職員室から200メートル以上離れた場所で待機していた5人に対して挨拶をして遅れてきた理由を説明して詫びた。
「あの『こじろう学園が独自で開発した有機溶剤、ただ単体で気化した時よりも有機体を溶かしてそれと混合してから加熱した方がヤバいってのが説明書きでわかっていたから試しにやってみて正解だったよ」
私が言うと『あつこ』さんが不思議な顔をして訊ねてきた。
「あのダミーは精巧に動いて喋っていたけどどんなカラクリですか?」
私は一瞬どう説明しようか考えた後にこう言った。
「私の中の小人の『H』から『L』の5人が憑依して遠隔操作していていたんだよ、そしてそのダミーはそれぞれみんなの意識と常にリンクしていたはずだよ」
私の説明は適当ではあっても皆んなは納得してくれたとは思っていた。
ただ1人、敦子だけは非常に不満そうな表情をしていた。
「亜希、なんで私のダミーは顔面と胸まわりだけ崩壊していたのかちゃんと説明してもらえますよね?」
「え“?忠実に再現したと思ってけど」
そう言った私の顎に敦子の右アッパーが炸裂していた。

ーーーーーーーーーーーー

「どうでもいいけどさ、うちの親が言うにはこの両学園は国立にもかかわらず不穏な事をしているってだからそれを内偵して来いというのが任務だったのよ」
私はここに来る前に敦子が言っていたセリフを思い出していた。
世界的に増え続けた原子力発電所、特にこの地震や火山など災害が多くそれに巻き込まれたら大事故につながる原子力発電所を50基以上も作って稼働させてしまう異常さ。
「ねえ、なんで彼らは自分達の首を絞めかねない事を放置しているのかな?」
呟いた私に楓凛は速攻で反論する。
「だから人類はそいつらには直接操ることはできないって話を聞いていなかったのかよ」
あ、そうかしれもそうだけど人間の意識は直接コントロール出来なくとも」
「宗教だね」
『あつこ』さんが言った、そして続ける。
「自らの意識を注入できるモンスターの製造に成功した以上、そいつらを政界の主要人物とすり替えて反原発、反核兵器の方向に持っていけるはず、でも実際には真逆、特に大和会や大和神路のような大きな組織がこの国の最大与党を支配するようになってからむしろ原発推進、非核三原則の撤廃に走ろうとするのはなぜだろうか?」
「そのモンスターを過去に遡らせて人類に対する干渉を起こそうとした、『B』さん、その最初の時間線で例の公式を発見した科学者はどうなったの?」
『かなえ』さんが訊いた。
「この学園、いえ、正確にはここの学園の生徒と付き合って孕まされた女子生徒が時間を遡りナイフでその科学者を滅多刺して死亡させたと記録にはありました」
私『B』は答えた、そして続けた。
「しかしその公式は全く別の人間が発見してしまいました、楓凛さんの言うとうり、アイシュタインです、しかも彼は最初の時間線での科学者よりも圧倒的に有能でした、アメリカの大物政治家との太いコネクションを持っていました、それが皮肉にも核兵器の開発を早めて、すぐにそれ強力化、作り過ぎでそれは行き詰まり原子力の平和的利用をスローガンとした原子力発電の方向転換を逆に早めてしまう事になってしまったのです」
「なるほど」
楓凛は納得が行ったようだ。
「元々いた『あつし』と付き合って孕まされた少女たちの大半が行方不明なままなのは現代に戻ってこれないほど過去にまで戻される指令を受けて途中で老衰で死んだと」
私『B』は楓凛の説にうなづいた。
「だけどそれだとまだ謎が残るよ、なんで老衰ってほども歳をとっていないにもかかわらず死体で発見された少女たちが結構いるのかって話」
愛が疑問を挟んだ。
「これは憶測に過ぎないのですが胎芽の指令に逆らった場合、母体が自死をするようなカラクリがあったのかも」
現代の検死技術では特定出来ないような自死をさせる方法があるのかどうかは疑問だったが受精卵の複製までやってしまう様な事もやってしまう連中だ、なんでもアリな気がしてきた。
しかし愛や楓凛ははなぜそうならなかったのか疑問が浮かぶ。
「それは実に簡単な理由です、愛さんも秋子さんもそして楓凛さんも胎芽に意識を乗っ取られることのない強い心をもっていますね」
私『B』は指摘した。
そしてこの場でそのカラクリを暴露して良いものか少し悩んだ後に続けた。
「例えば愛さんのご友人の秋子さんは定期的に生まれ変わりますね、そして楓凛さんもまた同様な能力を持っている、もちろん愛さんもね」
他の2人は知らないけれど秋子に関しては薄々感じる部分があった。
定期的に古い身体を捨てて新しい身体に乗り換える能力のことだろう。
その時に胎の中にいた『あつし』が仕込んだ胎芽は古い体と一緒に捨てられる。
たまたまそう言ったタイミングみたいなのがうまく合ったのかもしれない。
愛と楓凛に関しては謎が残るけどあの2人もどう考えても普通とは言えないから想定外なんだろうな。
「でもそれだとますますわからなくなってきた、奴らは何をしたいんだ?」
楓凛は頭を抱えて悩み出した。
それ、私たち全員同じ思いだと思う。
それを知るためにはまず『B』や『G』達が言う『悪魔』とやらと対峙する必要があるだろう。
私たちはこの学園のすべての情報とデータベースの処理と管理を担っている電算機学習ルームに向かって歩いていた。
って、えっ?なんで廊下を1200メートルも歩かなくちゃならないの?
『さぬきがわ学園』敷地面積広過ぎでしょ!

15に続く
:

闘いの再開14 終わり

敦子(あつし)の華麗な学園ライフ2



後ろを振り返る、誰もいない。
天井に誰かの気配を感じる、天井を見上げるが誰もいない。
「確か、突然便器から手がのびてマソコをグリグリしてくるとかいう学校の怪談があったような気が」
私は思わず楓凛の膝上から飛びのいてしまった。彼女が座っている便座の中から手が出てきそうな気がしたけど流石にそれはないだろうと思いつつ覗き込むと・・・
『ニョロニョロ』と這い出てくると一匹は楓凛の割れ目ちゃんに、もう一匹は私の割れ目ちゃんにそれぞれ潜り込んだ。
さっきの楓凛とエッチした時とは真逆な嫌悪感、そしてなんとも表現のしようがない吐き気が二人を襲った。鱗で内面を引っ掛けるようにして内部で這いずりながらズリズリと胎の奥に入っていく、信じられないことが私達の目の前で起き、やがて頭の中が真っ白になり私たち二人は真っ暗で狭い空間に閉じ込められていた。

タイヤが地面を転がる音、吹き上がるエンジン音、これはOHV8気筒か。
どうやら走っているアメリカンなスポーツカーのトランクに閉じ込められたようだ。
二人とも両手と両足をそれぞれ縄のようなもので縛られていて身動きが取れない状態?
と思っていたけど腕は前で縛っていて、足は足首のみ。ある程度動こうと思えば動ける、
自分の股間でさえも・・・・・触ろうと思えば触れた。
触った感じでは完全な女体状態になっていた。
ポケットサイズのLEDライトをこっそり召喚する。
激しく刺すようなか腹痛と吐き気、意識も混濁気味、触れればすぐそれとわかる持続的な割れ目ちゃんからの出血、そこら中がヒリヒリする手足の擦り傷、膝を曲げて押し込められた私と楓凛は上下逆さの向かい合わせ状態となり全裸で押し込まれているのだけは判った。
うっすらとではあるが苦痛に歪む彼女の表情だけは暗闇の中見て取れる。
『酷い1日だった』
そう心の中で呟く、こんな目にあわされるのなら家の中で『ゴキブリとして毒殺死』していた方がましだったかもしれない、まあそれくらいの薬剤で命を落とすようなことはないかもしれないけど。
『こんな状況下でも私は私自身のムラムラは止められないのだな』と私は思いながら楓凛の苦痛に歪んだ顔をペロペロ舐め回していた。
血なまぐさい匂いが鼻をつきふと上を見上げると彼女の胸から股間あたりまで見渡すことができた。彼女もまた擦り傷だらけだった。
巻きついた蛇が這いずり回りながらその硬く先の尖った鱗で彼女の肌に傷をつけたのかもしれない。
股間から脈打つようにして流れている出血は左太ももを伝い流れてトランクルームの床に血溜まりを作っている。その血溜まりに私の頭髪も浸されていた。
私の方よりも彼女の方が早急な手当てをしなければ命に関わるのは確か。
ちなみに私の『派遣』は決して別場所への『テレポーテーション』などではない、その移転先での生命維持はもちろんのこと原型維持でさえ全く保障がされないものだから。
『召喚』も同じことが言える、『別の場所にある全く同じものを移転してくる』わけではない。ある意味『テレポーテーション』よりも高度と言えるかもしれない、『錬金術』と言えるのかもしれないけど。『斧やカッターナイフ』のようなものは割と簡単に召喚できるけど『スマホやノートパソコンみたいな複雑な構造の物は絶対に無理!』的な?
今、現在走っている車のトランクの中から脱出するのは不可能かもしれないけどいつでも反撃、脱出できるように準備しておいたほうがいいかもしれない。
それまでに二人の体に血液が残っていることが最低の条件、失礼、二人の心臓と肺が動いていて脳細胞が生きているのが最低限の条件だろうけど・・・
私はともかく楓凛の方がかなり切羽詰まった状態かもしれない。
室内越しに聞こえてくるのはエンジン音とミッション名護の歯車が噛み合う音だけ(多分)、運転手など人の声は一切聞こえてはこない、息遣いでさえも。
私は多目的トイレの中で『謎の蛇』に陵辱されてから今に至るまでの出来事をなるべく思い出そうとしていた。
今、思い出しても吐き気がするほどえげつない体験だと思う。私と楓凛の『女の子』(膣)に突き刺さって奥まで入り込んだ蛇の頭は楽々と二人の身体を高々と持ち上げて前後左右に振り回した、それに比べたら今日の午前中に無理やり乗せられたジェットコースターなんて児童用のアトラクションみたいなものだった。体全体にかかる『G』も確かにすごかったけど『女の子』自体にかかる負担が半端なく、これはもう痛いとか苦しいという次元で語れるものではなかった。
ここで喉の奥から苦く熱いドロドロしたものが吹き出して私は縛られた両手で口を抑えようとするが抑えきれずに楓凛の顔にそのゲロをぶっかけてしまった。
「わ、なんだ!クッセェ」
しかめっ面をしてようやく風鈴が目を覚ました、というよりは意識を取り戻した。
よくよく見れば私が彼女の顔にぶっかけた嘔吐物には少なくない吐血が混じっているかのように見えた。
さっきの回想に戻るけど天井にぶっつけられたり床に落とされて引きずり回されたり、そのまま男性小便器に押し付けられたり、とにかくよくぞ死なずに済んだなとは思う。
「お、お前汚えことするなよ」
風鈴様、目覚めて最初の一言がそれですか?あなたは出血多量でその命が風前の灯状態なのですよ?
「ここがどこかわかりますか?」
私は念のために聞いてみた。案の定
「多目的トイレの中だろ?」との返事が返ってきた。
「どこまでなら覚えていますか?」と私。
「あのニョロニョロしたやつに散々振り回された挙句・・・そこから先は」
やはり覚えていない様子だった。
彼女の目が突然に泳ぎだして何か探し物をしていることを告げていた。
「ご自分の身体のセルフチェックはできますか?」
私はあえて聞いてみた。これは前世界で『かなえ』に口すっぱく何度も注意されていたことだったのを今更のように思い出していた。
何者かの襲撃を受けて意識を失うなど空白時間が生じたときに必ずやれと言われていたことだ。
「まず衣服のチェック」
これは『性的乱暴』や『暴行』を受けたかどうかのチェックらしいのだけど二人とも『全裸』なのだからなんと言ったら良いのだろうか?
二人とも『女の子』の穴に蛇の頭を突っ込まれた時点で完全に『性的暴行』を受けたことになるのだけど。
「次に身体が受けているダメージはどこにどの程度」
これは主に視覚で自分の外傷や打ち身などによる内出血を確認しなさいということ、そして痛みや傷口以外からの出血を確認しなさいということらしい。
ただし、出血などの割に痛みをほとんど感じないときは要注意してくださいと言われていた。鎮痛剤や脳髄が何者かによりコントロールされていて痛覚が麻痺している可能性があるって口すっぱく言われていたのを思い出した。
「痛いところは別にない、いたって大丈夫だ」
「それだけ擦り傷や打撲があって全然痛くないって、絶対に危ないパターンですよ、ちなみにここはおそらく旧車マスタングのトランクルームですよ」
私はそう言いながら楓凛の股間を見上げた。どう見ても出血が止まっているようには見えない、何か異様な生き物に頭脳を支配されていたりするのかも。
そういえば『かなえ』も口煩く言っていた。
流石に楓凛も自分の股間からの出血を見たら真っ青になって私の顔に大量の嘔吐物をぶっかけてくれた。
私もその匂いに耐えきれなくなり彼女にぶっかけてしまう、そのお返しとばかりに彼女も私にぶっかけ返してくれた。私たちは一体何をしているんだろうか?
胃の中に履くものがなくなった頃私たち二人は見つめ合いながら大爆笑をしていた。
「オメー朝何を食ってきた」
そう言われた私は「チーズバーガーとミンチカツサンド」とだけ答えた。
本当はそれぞれ10個ずつ食べたのだけど『何を食べてきた』とだけしか聞かれなかったのでわざわざ言わない。
「聞いて驚け!俺は朝から『A5ランクステーキ』だ」
どこのグルメな金持ちですか?聞きたかったけどあえて無視することにした。
「何キロ食べた?」
「3Kgかな?ん~それ以上」
「どこの大食い選手権ですか?」
「敦子こそ今吐いた量から想像するに結構食べてきたんじゃないか?どのくらいの量だ?」
「小麦粉2Kg、ひき肉3Kg、使いました」
すべて自炊自作だった。
私は『召喚』した短刀で自由になった右手の拳を突き上げ、声高々に宣言?をした。
それがたまたまトランクリッドに激突して『ゴーン』という大聞き響く音を立てた。
「車が止まったら私がトランクオープナーを利用してトランクリッドを開けるから一緒に飛び出すね」
そういう約束だった。
「今の音はなんだ!」
とおそらくは運転手の声
四つのタイヤの車軸を司る車軸に取り付けられた大口径ディスクをブレーキパッドが力強く挟み込み、急制動がかかった。まあ早い話がただの急ブレーキなんですけどね。
運転手らの叫び声と同時に私たち二人はトランクリッドを跳ね上げて飛び出していた。十メートル以上飛び上がり危うく横断歩道橋の下面に激突しそうになる。
そのまま真っ直ぐに落下してルーフに着地?する。『ゴーン!』という音が響き、中の二人が慌てて外に飛び出した。
あれ?確かルーフを潰すつもりで全体重に召喚ウェイト100Kg増しで着地したのになんでこうなる?というかどうしてジャンプして外に飛び出せたのが私一人なの?
ふとトランクリッドの方を見たら楓凛が頭を抱えてうずくまっている。
「あれ?なんで?」
「なんでじゃねぇ!なんで二人同時に飛び出せられると考えたんだよ、リッドの大きさと形状を考えろよ!」
キレ気味に抗議をしているけどごめんよ、マスタングのトランクリッドが逆L型だったこと忘れていた。😂それにしても後になって私だけでも良く飛び出すことができたなと感心する、下手をしたら胸の脂肪をざっくりと削り大出血だった。
『召喚!金の斧と銀の斧!』
私の左手には金の斧、そして右手には銀の斧が握られていた。
「あなたが落としたのは大野銀ですか?それとも大野菌ですか?」
念のために聞いてみた。やはりこっちのいうことなど全く聞く気がないかのように二人とも銃をこちらに向けて構えている。
助手席側の男を優先すべきか?運転席側の男を優先すべきか?
私はためらわず助手席の男めがけて銀の斧を投げつけた・・・つもりだった。
手が滑って落としてしまう。銀の斧は『くるくる』と回転しながら助手席側の男の股間を襲う、ざっくりとズボンごとお大事なゾウさんを削ぎ落としたのが見えた。
「痛そう」と楓凛。
続いて金の斧を両手で構えて運転手席側の男めがけて飛び降りた。そして頭部をかち割るつもりで振り下ろそうとしたが手が滑って落としてしまった。
『くるくる』回転しながら落ちていった金の斧は絵の部分が男の頭に命中して気を失わせた。
「楓凛先輩!こいつらを取り押さえるの手伝ってください!」
私は大声で叫んだ。ふと先輩を見ると片手でトランクリッドを外から左手を伸ばして押さえつけて右手で胸を隠して隠れるようにトランクルームの中に顔だけ出して身を潜めていた。
「何をしているんですか先輩、ちゃちゃっと悪党どもを確保してくださいよ」
私は腕組みをして大股を開き大見得をきった。
さっきからザワザワと人が集まってきたがその中になぜか私の父上も混じっていた。何やら大声で叫んでいるような気もするがきっと私の大活躍を絶賛してくれているのだろう。何しろ連続女児誘拐拉致犯を確保するのに成功したのだから。股間からの出血がなかなか止まらなくて多少はフラフラしているけど些細な問題だ。
「敦子ぉ!お前素っ裸だぞぉ!」
楓凛先輩が大絶賛をしてくれた。
「ありがとう」と言って私はそれに応える。
慌てた顔をして父上も私の元に駆け寄ってくれた。なぜか自分が羽織っていたスーツを私の方にかけようとする。「しかしそんな高価そうなものを今の私にかけたら血で汚れますよ、父上殿?・・・」
私は今の自分が言いかけたセリフに引っかかるものを感じて『マスタングのトランクルームの中で意識を取り戻したところ』から詳細な記憶を呼び返していた。
そしてしばらく固まる。
「皆さん見ましたよね?私の素っ裸?」
この世界に来たばかりの頃ならともかくさすがに今は私でも全裸を人前に晒してはいけないことぐらいは知っている。
ドロドロした例えようのないダーティーでドスグロイ気持ちが私を支配した。
「そうよね、ここにいる全員564てしまえば何の問題もないのよね」
私はそう言ってから続けて宣言しようとしていた。
「召喚!大型石油タンク!空から降ってこい!」
最後まで言い切ったつもりだった、しかし私の口はマスタングのトランクルームから飛び出してきた楓凛の抱きつき攻撃により彼女の巨乳が完全に封じこんでいた。
私は大量の鼻血を吹き出して今度こそ失血死することになった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

私はほぼ全身を包帯でぐるぐる巻きの状態にしてベッドの上で寝かされていた。
「あ、なにこれ?私って今どんな状態なの?」
心配顔で覗き込んでいる母上に尋ねてみた。
「あなたトラックにはねられそうになった小さな女の子を助けようとしてトラックにはねられてしまったそうよ、こう言っちゃ悪いけどお隣のベッドのお嬢さんたちとは大違いね」
と言って母上は顔をしかめた。
どちらかといえば狭い病室にはベッドが三つほど並んでいて私のベッドが一番窓際、そして私のすぐ隣のベッドには楓凛、私とほぼ同じく包帯でぐるぐる巻き状態でベッドに寝かされている、なんか私の顔を見てそっぽを向いてしまった、すこぶる機嫌が悪そうだ。
そのさらに向こう、廊下側には同じく包帯がぐるぐる巻き状態の状態で寝かされていた。私たち二人と決定的に異なる点はやたらと元気なところか。年の頃は私の素の状態とほぼ同じくらい、11~12才くらいだろうか?
「ちょっと!凛!ちゃんとあたしにバイト代を払ってくれるんでしょうね」
何やらさっきからこんな調子で凛に対して気軽にタメ口をきいている。
「ちゃんと払うってば、入院費も合わせて10万円な」
楓凛はなだめるように言ったがお姫様はそれでもご機嫌斜めの様子だった。
「もう一つ、追加でホテルのスイーツバイキングね」
どこまでもわがままなお嬢様だ、私は苛つきを隠せなかった。
「ところで今日あたしたちが捕まえた女児の誘拐拉致犯は結局何者だったの?」
「いや結局わからなかったらしい、自分の意思で動いているどころか『神のお告げ』とか危ない事を言い出す始末で」
諦めたかのような楓凛のコメント、どうやら犯行目的とかに関しては黙秘を貫いているという事か。
「そうなんだ、テレビでそれ関係のニュースとかやっていないかな?」
「わっ、ヤメロォ!」
なぜかリモコンでテレビのスイッチを入れようとする少女と彼女にタックルを仕掛けて必死になって止めようとする楓凛。しかしタッチの差で少女はテレビのスイッチを入れてしまう。
「今日午後三時過ぎごろ街中でテロ行為を働いたとして二人の少女が補導されました」
アナウンサーがはっきりと『テロ行為』と言い切っていて私は思わず吹いてしまった。
「これがたった今視聴者から送られてきた事件の生録画画像です」
そう言われて画面に映し出された動画には見覚えのあるマスタングが映っていた。
その前、運転席側前にすっぽんぽんの女の子が写っていた。乳房の大きさからしてそれは間違い無く私だろう。
しかし問題は『仮名、倶名尚愛』という名前が入っていて体、特に股間や胸では無く顔にモザイクがかかっていたという点だった。つまり問題というか放送コードに引っかかりそうな部分をわざと残してあるという。
みるみるうちに少女の顔が真っ赤に染まってゆき怒りに震えてゆく。
「ちょっと、凛!話が違うじゃない!あたしはどこの破廉恥ヒロインよ」
楓凛の顔をめがけて果物ナイフを投げてきた。それを楓凛は左手の人差し指と中指だけで挟んで受け止めた。
「しかもなんで身代わりなのに身体と本名を隠さずに晒して顔だけモザイクかけるのよ」
今度は包丁が飛んできた。これも器用なことに楓凛は右手の人差し指と中指で挟んで受け止める。
「なんでって、いいじゃねえか、現物よりも巨乳ということにしてもらえて」
その楓凛が無神経に放った一言がトドメを刺した。
「バカァ!」
そう叫んで少女が投げたものは椿を植えた鉢だった。
今度ばかりは楓凛も避けきれずに顔面にヒットさせてしまう。
ちなみに『椿の鉢植え』というのはお見舞いに持ってはいけない花の最悪のパターンだそうだ、それは彼女がクラスメイトとかからよほど嫌われていることを証明していた。

「母上、僕は明日から学校に行くことにしたよ」
私の中では『男の子』として生きて行くのも悪くはないかな?と思い始めていた。
その頃はまだ『倶名尚愛』という少女が意外と手強い存在であり、私のもう一つの人格である『あつし』を大きく、凶暴に狂わせることとなることを全く予想することも想像することもできなかった。

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私は鏡の前に立ち自分のスーツ姿を見て悦に入っていた。
「ほぉ、『馬子にも衣装』とはこのことを言うのだな」
背後から父の声が聞こえた。しかしその表情はまんざらでもなさそうだ。
「父上はこれから例の事件の取り調べですか?」
私は数週間前の『謎の美少女誘拐拉致事件』の顛末を思い出しながら問いかけていた。
もちろんあの事件の被害者二人は私こと『草彅あつし』と『楓凛』の二人であり犯人を確保したのもこの二人なんだけど・・・
この事件は表向きには『二人の少女が起こしたテロ事件』ということになっていた。
主犯は『仮名、倶名尚愛』と『仮名、楓凛』の二人だった。
彼女たち二人は、実際には一人は『倶名尚愛』ではなく私『草彅あつし』が女体化している『敦子』だったのだけど内閣調査室の圧力で前者として報道されている。自慢ではないが女体化した時の私はあんなクソ元気なだけが取り柄の『倶名尚愛』のような引っかかるところのない『ど貧乳』な『洗濯板』とは違いナイスバディだと自負をしている。それはあの日の夜に放送事故とはいえ全国放送されてしまった『顔だけモザイクの全裸動画』が証明しているのだがあいにくと私はこの事件には関わっていないことになっている。いわゆる大人の事情ってやつだ。
そしてあの事件は内閣調査室的には女児誘拐事件の犯人逮捕劇ということになっていたらしいんだけど、どうやら彼らは何者かに操られていただけで主犯格でもなければ共犯者でさえなかったということですぐに釈放されてしまったらしい。
「父上はこの一連の少女から女児に至るまでの幅広い誘拐拉致事件についてどう思われていますか?」
私は事件に関して問いかけてみた、それは自分自身に関わるものかもしれない。
「お前がいう黒い蛇というのはにわかには信じられないがいくつかの納得がいく部分もあるからな」
父は顎に手を当てて考え込んだ。私と楓凛のダメージの受け具合なのだけど楓凛の方がはるかに重傷で私が比較的に軽傷だったのは『体重差』が大きかったのではないのか?ということだという。
体重が重くなれば重くなるほど振り回された時の慣性も大きくなり『女の子自身』にかかる負荷も大きくなりダメージが大きくなるのは当然なこと、なんだけど問題はその『黒い蛇』がなぜ洋式便座の中から出てきたのか?
それは本当に生物なのか?
私と楓凛の胎内に残留した体液(と言って良いかはわからないが)を調べてはみたが楓凛に関しては別人の精液と思われる体液が既に大量に入っていたために特定ができなかったらしい。もちろんそれは多分私のものなんだろうけど楓凛の言動からしたら私以外の他の男子、いや男性とすでに交わっていたかもしれない、何しろ彼女は彼氏は欲しかったのではなく男が持つ『精子』が欲しかっただけの様子だったから。
私に関してはサンプルが取れはしたけど期待したような結果が得られなかったらしい。
事後に派手に動き回ったのがまずかったのかも知れない。
あれから一年近く過ぎて今日は二年生としての登校日だ。それも始業式ではなくて4月半ばというなんとも中途半端な時期に・・・
出席こそしてはいないものの私は自宅での通信授業により一年の学位は習得していた。
まあ要するに無事進級できたわけだ。出席単位だって政治力をもってすれば・・・
最もそれがなかったとしても『父上殿』の『謎大人パワー』で進級できたかもだけど・・・
さて事件のことはともかく私にしてみれば今日は初の出校日だ。だけどスーツの方はバッチリ決まったけど髪型が決まらない。
七三分け?センター分け?
部屋の勉強机の本立てにあった写真アルバムを見たらセンター分けが多い、
もしもいじめとかによる引きこもりだったらいじめた奴らに対する逆襲的なエピソードを採用して『リーゼント』とかもありなのかな?まあ女性だった頃とさほど違和感のないセンター分けがベストなのかもしれない、だからそれにしてみた。
しかし『あつし』はなんで登校を拒否していたのだろうか?その辺の事情に関しては私には理解できない部分はあったけど・・・、まさかそんなことを両親には聞けないよね。
前の世界で何人も手にかけた殺めてきた私にとってはいじめとやらは何の脅威にもならないが、最もビデオや本とかから得た知識で、実際のいじめを私は知らないだけなのかもしれないが。それは私自身が登校してみればすぐに判るだろう。
制服のスーツを着込んで食卓に行くと父はもう仕事場に出て行った後で私に席には目玉焼きとおみおつけとご飯、そして味の干物焼きとたくあんが一つのプレートとお椀、茶碗に盛られていた。いつもと変わらない朝食だけど、今日は新鮮に感じた。
いつもなら、またこれから部屋に戻るところなんだけど、今日は家から外に出て色々な人と会わなければならないということか?
今までの10年足らずの人生の中で全然他人と関わらずコミュニケーションがなかったわけではないので人との付き合いに自信がないわけではない、むしろ本物の『あつし』よりは上手く人付き合いができる自信はある。
問題はその『あつし』が関わってきた人たちに関する記憶を私がほとんど持っていないということだ。
もし挨拶されたらどう返せば良いのだろうか?
うつむいたまま無視してしまえば良いのだろうか?
人が変わったように見ず知らずの相手にも愛想を振り撒けば良いのだろうか?
家を出てから色々考えている間に最寄りの駅に着いていた。
自分が本やネットなどから得ていた情報をもとにして想像していたよりも駅周辺と駅の構内は込んではいなかった、しかし改札を抜けてホームに上がるとその印象はあっさりとひっくり返された。
人、人、人!、まさにその一言に尽きるくらいにごった返していた。
主に学生が大半で残りをサラリーマンと会社勤めの女性、そしてほんの少数派ではあるけど小学生らしき男女が混じっていた。本来なら私はこの少数の中に属していたのだろうか?
一目で次にホームに横付けに停車する列車にここで並んで待っている人たちの半数近くが乗車出来ないことはすぐに予想は出来たがそれ以上に驚きだったのはその列車がホームから離れてたいした時間を置くこともなく次の列車がホームに横付けにされる事実だった。
これにより次々と階段を登り、ホームに上がって来る乗客がパンクすることなく捌かれているのはまさに驚きだった。
しかしこれは逆に言うとなんらかの事故や列車の故障などにより運行が止まってしまった時にここがどんな状況になるかも容易に想像がついた。
今のところ誰からも声をかけらえれてはいない、私が通う男女共学の学園がある高校の最寄り駅は4区以上先である上にこの人混みでは数少ないであろう『あつし』の知り合いに遭遇することはまずなさそうだ。
時間も十分以上に余裕を持たせていたこともあり私は一本多く見送りホームについてから三列車目に乗り込むことにした。
列車内は文字通り床が見えないほど混んでいて隣の女子高生や男子生徒同士の体が押し付けられるほどでもあった。
駅を出て間も無く鼻を突く匂いがして周りを見回すと一人のセーラー服を着た女子中学生っぽい娘が顔を真っ赤にしていたかと思ったらみるみる青ざめてゆくのが見て取れた。少し赤みがかった黒い髪の毛を肩まで伸ばして少し青みが勝った大きな瞳を持つその子はモチっとした頰にふさわしい豊満な胸の持ち主だった。肩から背筋の反り返ったラインからのセクシーに突き出したヒップは痴漢をするようなケモノまでではなくとも性欲を掻き立てる何かがあるのだろう。
しかしそれは彼女の罪ではないし、彼女にしてみれば邪魔なものかもしれない。痴漢や性犯罪に巻き込まれやすいリスクが高まるだけの代物でしかないだろう、現に・・・
吊革にかろうじてつかまっている細いきゃしゃな手が小刻みに震えている。
どうやら彼女の正面に立ち向かい合わせに立っているサラリーマン風の中年男の挙動が怪しいのがすぐにわかった。
その男は周りに押し倒されたふりをして彼女にもたれかかりその豊満な胸に左手をつき、もう一つのて、右手は器用に短めなスカートの中に潜り込ませて股間にあるものを模索していた。
それどころか自分のズボンのチャックを下ろして中のものを引きずり出そうとしている、マジでヤバイ奴だ。
私は状況を分析しながら隙間のほとんどない人混みの中をかき分けて、彼女らに近づき二人の間に割って入った。
まずは中年男性の方を向き、彼の両手を取って「大丈夫ですか?」と声をかける、しかしもちろんこれは彼を気遣ってのことではない、むしろ警告の意味を込めた拘束だ。
「ごめん梨沙子、待ち合わせ場所に遅れちゃってさ」
私は背中に恐怖による怯えに震える少女の鼓動を感じながらなるべく柔らかめの甘い声で語りかけるように言った。気のせいか抱きつかれているような気がしたが多分本当に気のせいだろう。
私は続く言葉が思いつかないまま、目の前の中年サラリーマンを拘束しつづけていた。
しばらくその状態を続けた後、私は大きく息を吸い込んだ。
「その子は俺の知り合いなんだ、彼女と君はどう言った関係かは知らないが私と彼女の中に割って入らないでくれ」
突然わけのわからないことを言い出したので私は彼を睨みつけて囁いた。
「あのなぁ、おっちゃん、あんたが私の友人に仕掛けた愚行をここでバラしちゃってもいいんだけど・・・」
これは『あつし』としての言葉ではなくて『に』こと、『にぼし』としての言葉なのだけどもしかしたら『あつし』というキャラクターから大きく外れたセリフと行為だった可能性を考慮すべきだったかもしれない。
まあそれはとりあえず横に置いておくとして満面の笑顔に切り替えて周りにも聞こえるようにして言った。
「次の駅で降りるって?それではここでお別れですね」
そう言ったら彼は慌てて次の駅での乗降口に向き、列車がホームに滑り込みドアが開くと同時に慌てて人混みをかき分けて出て行った。
背中から伝わってくる激しい鼓動と息の乱れが収まり彼女が落ち着いてきたのを確認すると私は少し離れようとした。
「突然声かけちゃってごめんね」
私は囁くように言った。体が男状態になったからと言って心まで簡単に男に切り替れるというわけじゃない、よっぽど意識をして喋らないとどうしても中性的な喋り方になってしまう。
「ありがとう・・・」そう言われたような気がした。幻聴かもしれない。
もう安心していい状態なはずなのに彼女の体が小刻みに震えてくるのが感じて取れた。
私はちょっと状況がつかめないまま私が通う共学高等学校の最寄駅で降りたが彼女は背中にしがみついたままだった。
「あの、君が降りる駅はここなのかな?」
私は確認するように聞いてみた。
「先輩は私が通っている中学校の高等科の生徒さん、私の先輩ですよね?」
そう聞き返された、そう言われれば私が通うことになっている高校は同じ敷地内に中等部が立ち並んでいるいわゆる中高一貫学校であることを思い出していた。制服で判ってしまったのかも。
中等科と高等科の区別をつけるためにあえて制服を変えているとのことだったんだけど・・・
彼女にしがみつかれたまま駅を出て学校に向かい歩き始めた私はほとんどの人の注目の的に晒されていた。
「あれ?梨沙子じゃねえか、朝から見せつけてくれるな」
突然声をかけられて後ろを振り返るとそこには見覚えのある美少女が学生鞄を片手で肩に引っ掛けて立っていた。
とはいえ美少女というのはあまりにも雑な表現なんじゃないかと思う。
人によっては10頭身で胴体よりも多脚が長い切れ長の目を持つ細でありながらそこそこの大きさではあるが形が整ったバストを持つ大人っぽい表情の少女を思い浮かべる人もいれば彼女のように『ボン!キュ!ボン!』のバストがやたらと大きくて腰のくびれもしっかりあってお尻も上気にでているひたすらセクシー系を想像する人だっているだろう。
でもね、彼女、腕も、脚も、実は筋肉がすごくてどちらかというと少年ぽいというか男らしい面も持ち合わせていた。にも関わらず服の上から見たぱっと見は実に女性らしい肢体だ。
そもそも身長が170㎝を軽く超える女子中学一年生なぞ滅多にいないだろう、むしろ高校二年生男子の私と設定を入れ替えても良いくらいだ。まあおそらく男性によっては少し『気持ちが悪い』と思われてしまうタイプかもしれない。
「誰かと思えば『あつし』先輩じゃないですか」
いとも簡単に捕獲されてしまった。彼女の名前は『楓凛』あの事件における被害者仲間であり、共謀者でもある。しかし二人の接点はなかったことになっているからとりあえず知らないフリをしよう。
そう思った瞬間には彼女は私の背中に回り込んでいた。
『君の正体をバラしてもいいなかなぁ』
そ、それはまずい!彼女に話を合わせるべきか?
「あつし、誰なのその男子」
いつの間に目の前に立っていた聞き覚えのある元気な小娘の声、ストレートなツヤのある黒い髪を胸まで伸ばしたその娘は・・・
「鉢植!」
思わず叫んでしまった。
「誰?男装した男の娘?」
意味不明なことを言われ元気だけはやたらと良い小学生児に睨みつけられながら、というか正体を見抜かれているのか?眼は黒目がちで大きいがキツくつり上がっているが故に人によっては美少女とは見られないであろう、まあジャンルとしては幼女の部類に入るかもしれないけど彼女は多分楓凛の向こうのベッドで入院していた『倶名尚愛』
「それにしても去年は散々な一年だったわ、痴女の代理で入院させられるし」
鉢植え幼女は口をとんがらせていう。痴女というのは多分私のことだろう。
「小柄なイケメンさん、痴女というのは公衆の面前で裸体を晒して飛んだり跳ねたりしてどこぞの魔女みたいに斧をどこからともなく出して暴れまわった逝かれた奴のことなんだけどもし知っていたらあたしに教えること、いいわね!」
雑な説明をありがとう。でも今の私は赤の他人という設定になっているの、ごめんね。
「君はどこの小学生かな?セーラー服着るには幼すぎるね」
ついつい本音を言ってしまった。女子で中学1年生にしては有り得ないくらい低い身長だ。
多分140cmしかないかだろう、おまけに洗濯板。
「あたしはもう13才だが何か?」
はっきりと言い切った。すぐ隣に並んでいる楓凛は身長170cm以上の『ボン!キュ!ボン!』でまだ12才、夏が過ぎて誕生日を迎えれば13才になるんだけどとにかく大きいボリュウムの肉体を所有していた。
そんな彼女と『倶名尚愛』こと『愛』のコントラストは極端すぎて面白く感じた。
「それにしても『梨沙子』と『あつし』はいつからそんな間柄になったんだい」
興味深そうに楓凛に問いかけられたが今朝の電車内での出来事は言って良いものかどうか迷った。
「来る途中で電車の中で・・・・されかけたところを助けてもらったんです」
私の背中に張り付くように抱きつかれながら彼女、『梨沙子』ははっきりとその行為を意味する言葉を口にした。
私の右太もも、裏側に押し付けられた緩やかで柔らかな丘が熱い。
私の背中に次第に荒くなり始めた息遣いを感じた。どう対処したら良いのかわからなくなった私は思わず『楓凛』に対して助けを求めるアイコンタクトをとってしまう。
すぐに彼女は私の意図に気づいてくれて『愛』に目配せをした。
『愛』は深くため息をつくと素早く私に接近をして『梨沙子』の肉体を私から引き剥がした。
最初は不服そうな顔をして再び私の前からしがみ付こうとした『梨沙子』だったが『愛』に耳元で何事かを呟かれると何かの憑き物が落ちたかのように離れていった。
「じゃあ、今日は『愛』に教室まで送ってもらいなよ」
そう言われた『梨沙子』は感情が薄めな笑みを浮かべると中等部の校舎に向かって『愛』に手を引かれながら歩き出した。


「迷惑をかけたね」
楓凛に言われたがどういう状態で言われたセリフなのか理解できなかった。
「彼女さ、俺たちの同級生で元はこの辺に住んでいて同じ小学校に通っていたんだけど男性の本能をくすぐる、というか性欲をやたらと刺激するらしくてさ痴漢の被害によく会うんだよ」
確かにそうかも?と思った。しかし次に聞かされた『楓凛』のセリフは耳を疑わざるを得なかった。
「実際に電車の中で性行為に及ぼされたこともあってね、その後の処理に俺たちが苦労させられた経験もあるんだ」
そうだ、今思い出したが楓凛も一応私の父の仕事、内閣調査室のバイトでそういう関係にもちょくちょく首を突っ込んでいるとのことだった。しかし内閣調査室っていうかこの国の政府も大概いい加減だな。
私はしばらく絶句をしたのちに確認するように訊き返した。
「エロ漫画やAVでの話じゃないですよね?」
私の感想は正直なところ『いやいや、そんなことして周りが気がつかないなんて有り得ないでしょう』、ということだ。
「いや、実際に彼女の性器からその男性のものと思われる精液が検出されたから」
至極真面目な顔をして楓凛は言ってのけた。私なら途中で大爆笑をしてしまうところだ。
「それってもしかして今日の一件も彼女から仕掛けたハニートラップ、ということで良いのかな?」
確かに今日の加害者であるはずだった中年サラリーマンの挙動も少し妙な違和感があった。
いくら密閉された電車の中とはいえ発覚すれば人生を台無しにすることぐらい分かりそうなものだ。しかも彼は楓凛の挙げた一例のように性行為に及ぼうとしていた。
実際に下着に阻まれ中まで入れられたかどうかは不明なのだけど。『梨沙子』の衣服を濡らすことぐらいならできたと思う。
「ところで彼女のフルネームって」
今更ながら私は彼女の名前を本人からは聞いていなかった。
「『桃井梨沙子』・・・っていうんだけど『あつし』先輩は中学の一年からずっと休んでいたから知らなくて当然だね」
そんなにも有名な子なのか?と思ったけど四年近くも学校を休んでいた『あつし』としては知らなくて当然なのでここは黙っておくことにした。


ーーーーーーーーーー

風鈴と別れた後、私はスマホのマップに従いながら高等科の教室に向かっていた。
すれ違う女子たちはセーラー服ではなくてブレザー、そしてスラックスもありのようだった。
あらかじめ教えられていた靴だなの指定箱に用意されていた上履きに履き替えようとする。
とてもわかりやすく画鋲がてんこ盛りに盛られていた。
実に惜しい、これが一個や二個なら気がつかずにそのまま履いてそれを仕掛けた誰かに痛い思いもさせられたのに。
まあ気がついてしまったのだから仕方がない、私はプラスティック製トランクケースを開き中に入っていた空き缶を取り出してそれにそれらを放り込んだ。その空き缶はスーツケース内のスペースの半分ほどを占拠していたがさほど問題はないまだ上履き2足分の画鋲なら余裕で入れられる。残ったスペースに教科書やノートだって余裕で・・・
今日の授業の教科書を忘れてきてしまったようだ、まあアレをやればなんとかなるだろう。
さて、私の教室といえば北側校舎の二階一番東側の・・・
「2E1か」
呟きながら入口の引き戸を開けると上から何かが落ちてくる気配を感じた。
「きゃー!」
甲高い悲鳴が聞こえたかと思うと二メートルほど離れた目の前で女子生徒が水浸しになって尻餅をついていた。スカートまでびしょ濡れになっていて透けた布から太腿のラインがあらわになっていて見るも哀れな気がした。もちろん彼女には何の落ち度も罪もない、誰が悪いのかといえば多分私だろう、見上げれば下向きにぶら下げられたバケツから水の雫がまだ数的、ポツリ、ポツリと落ちていた。
「あーいろいろとごめん」
私は一応詫びを入れておく、それを言われた彼女は何が何だかわからないだろう。
なぜこんなことになってしまったのか?それは多分『かなえ』による教育の賜物だろう。
私は常に自分に迫った危機に対する防御体制がいつでも取れるように、彼女、『かなえ』によって教育されていた。
上から危険が狭ているのは分かってはいた。ただそれが命に直結するものか、いたずらされる程度のものかまでは区別がつかなかっただけのことで・・・
上から降ってくるものを私の目の前、数メートル先に派遣しただけのことなんだけどそこがたまたまその女子生徒だっただけのことだ。
ちなみにその技を『派遣』と言って良いかどうかは私は確証を持てない、この世界に転生してくる前の世界で私を教育してくれた『かなえ』が教えてくれたことだから、本当は別の言い方があるのかもしれない。
「ちょっと待ってて、今着替えを出すから」
私は右手にぶら下げていたプラスティック製トランクケースを開いた。
するとそこには空き缶と教科書類ではなく女子生徒用の制服一式と下着類が詰まっていた。
「風邪をひくから、さあここですぐに着替えようか」
そういった私は思いっきり『グー』で殴られた上に左足で蹴り上げられていた。
「『あつし』のバカァ!」
そう叫びながら教室から走り去っていってしまった。
何か私は取り返しのつかないミスでもしでかしてしまったのだろうか?
ーー毎日トランクケースの中に女物の着替え一式持っているなんて『あつし』君やばくない?ーー
ーーあいつ前からおかしなとこあったけど女装の趣味があったとはなーー
ーーそれな、自分の女装姿を見てマス掻いているかもしんねぇぜ、陰キャラの『あつし』らしいよなーー
ーーそれって自分を強姦する妄想か?それとも犯される妄想か?どっちにしてもキメェなーー
ヒソヒソ囁き声が聞こえる、やはりみんなからとんでもない誤解をされているような気がした。みんなの前で着替えをすることのどこが悪いというのだ。
ーー優希の気持ちもわかるわ、あのトランクの中の制服や下着だってどんな体液まみれになったものか分かったものじゃないしーー
いや、だからそれは召喚したてだから新品そのものだし。
まあいいか、私は自分の頭をポリポリ掻きながら自分の席に向った。
机の天板には黒、赤、青色の黒マジックで色々と何やらたくさん書き込まれている。
これは私にとってはさほど害にはならないので周りの人に対しても迷惑にならない筈だ。

次に椅子を引き無意識のまま座ってしまった。これがまずかったかもしれない。同時に、同様にして座ろうとしていたすぐ前の女子生徒が『キャ!』と悲鳴をあげた。
思わず立ち上がったであろう彼女のスカートのお尻には赤、青、黄色のドロドロとした粘着性の何かがこびりついていた。
「あ、ごめんなさい」
私はまた思わず反応してしまった。(二重の意味で)もちろんその『ドロドロとした粘着性の何か』は私の席の椅子にあったはずのものだ。
「ごめん、これ履く?」
私はトランクケースから女子生徒用のスカートを取り出して言った。ちなみに校則を読んだ限りでは『女子生徒用の制服を男子生徒が着用してはいけない』とか逆に『男子生徒用の制服を女子が着用してはいけない』という規則もないようだ。
だから私のトランクケースの中に女子用生徒の制服や下着が入っていたとしても何ら不審な点は存在しないはずなのだが。思いっきり平手打されてしまった。
『バカァ!』と叫んで走り去る。向かう先はトイレだろうか?ここで『ドロドロとした粘着性の何か』を落としても構わないのではないのかと思うのだが。
「あのなあ『あつし』、だからと言ってカバンに下着を入れるやつはダメだと思うのだが、それに何で学生鞄じゃなくてトランクケースなんだ?」
心の内を読み取られたかのように後ろの席の誰だかわからない男子生徒に指摘されてしまった。
振り返るといかにもな不良少年、などではなく品行方正っぽい眼鏡の七三分け少年が私を見つめていた。
「父の形見なんだ」
もちろん大ウソだ。単純に色々な大きめなものを大量に出し入れしやすいに過ぎない。
「・・・・・あ、そう、でもまさか本当はお前マソコ持ちじゃないだろうな」
いきなりパワハラワードをそいつは投げつけてきた。
「別にいいけど、きみこそ彼女に謝るべきじゃないのか?」
そう言いながら私はズボンのチャックを下ろして『陰茎』と言われているものを引き出してそいつに見せつけてやった。
「わ、わかったからさっさとそのデカイ物しまえよ」
首を激しく横に振り手のひらを前に突き出して拒絶のポーズをとりながらそいつは言った。
それはいいんだけど他の生徒の視線も集めてしまったようだ。何かおかしいことを私はしたか?みんな(AVなどで)見慣れていると思うのだが。←絶対に見慣れていません、特にリアルじゃ)
「別に構わないけどさ、これ以上僕に構うのなら関係のない犠牲者が増えるだけだよ、もっとも、もう向けるべき矛先が誰かわかってきたから大丈夫だとは思うけどね」
私がニッたりと笑いながら言うとそいつは顔を引きつらせた。机のいたずらはもちろんのこと教室入り口に仕掛けられた水の入ったバケツも彼の仕業だろう。
「ところで一つだけ聞きたいことがあるんだけど」
「な、なんだ?」
と彼、べつに難しいことを聞きたいわけじゃないのだけど。
「短小包茎ってどういった意味だい?」
「お前本当に『あつし』か?お前のことなんだが・・・」
いっている間に私が再び『陰茎』なるものを見せると彼は『ゴクリ!』と唾を飲み込み目を背けながら続けた。
「あんた本当に『あつし』かよ、性格も、そのなんだ、全くの別人だ」
驚いたかのようにいったがもしかして私はやらかしてしまったのか?普段の私の振る舞いに両親は何も言っていなかったので本物の『あつし』もそんな感じで良いのだと思っていたのだけど。
その時は大変まずいことをしてしまったと思っていたが・・・、実は難敵は中等部にいたと気がつくのはずっと後のことだった。
「ところで『結城』さあ、中等部の『桃井梨沙子』って知っているか?」
私は後ろの品行方正の方を向きながらそれとなく聞いて見た。
本物の『あつし』は『桃井梨沙子』に関してはよく知っているかもしれないけどこの世界に『転生?』してきてわずか一年程しか経っていない私にとってはわからない事だらけだ。
「お前わざとか?俺は『サトシ』だっつうの」
「あ、ゲットだぜ」
「ちげーよ、もっといじめられてぇのか?」
隠そうともしなくなっていた。やはり犯人はこいつで間違いなさそうだった。
「もっといじめてくれるのは構わないけど、その『桃井梨沙子』ってどんなやつだったか覚えているか?」
もう疑われても構わないから彼女のことを知りたくなっていた。『楓凛』が言っていたイメージだとおそらくは上級生とのトラブルも多かっただろう。
「ああ、ヤリマンか」
いきなり失礼なパワーワードが飛び出した。
「てかお前も被害に遭っていただろ?覚えていないのか?」
そうだっけ?そういえば楓凛もそんなようなことを言っていたかもしれない。
「お前本当に自分がやったことも忘れちまったのかよ、あいつを孕ませちまったんだぞ、お前が目の敵にされている理由を忘れちまったのか?」
「いや僕はずっと引きこもっていたはずだし、本当なのか?」
口が滑った、と言うべきか?
「お前マジで言っているのか?小五のあいつにレイプドラッグ使ってホテルに連れ込んで、やりまくったって噂だぜ、しかも親父の力で隠蔽しやがって」
『サトシ』は私の襟首を掴みネクタイごと締め上げた。そして私の顔を睨みつけながら続ける。
「てめーの味方なんてこの学校には、いやこの街には誰もいねぇよ、俺たちの天使を陵辱しやがって」
はぁ?何言ってやがんだこいつ、と正直思った。それにそんなことは楓凛も言っていなかったぞ。それにさっき言っていたことと矛盾している気がする。
「それ、梨沙子が言ったのか?」
「いや、言ってねぇ、だがあいつの仕草がそれを語っていた」
「そっか、じゃあそれが真実なんだろうな」
おそらくはデタラメなのだろうがここで話を拗らせても仕方がない、欲しいのは情報。
「疑わねえのか?」
「否定して欲しいのか」
「ならば梨沙子に直接きけよ」
私が知りたいのは真実なんかじゃない、『梨沙子』がみんなからどう思われているかということなんだ。
「実は僕この学園でちょっとしたゲームしていてさ、それが『百人孕ませられるかな?』ってアダルトゲームだと言ったら信じるかい?」
「はぁ?テメェふざけてるのかよ」
まあ思った通りの反応だ、けれどとにかくこの世界の男は彼女を前にすると平常心を失うというのも事実らしくて、でも少なくともそれは私には通用しないということか?
いや、そうとも言い切れないな、事実私だって人目がないところで抱きつかれたらどうなっていたか自信が持てないし。
「そこの二人、もう授業は始まっているのだが、それに『草彅あつし』君、君はなぜ先に職員室に来なかったのかね?」
いつの間にか教壇に立っていたセンコー、じゃない、先生に注意されてしまった。そういえば確かに直接教室に向かわずに職員室に来いって言われていたっけ?
「あ、えーと、可愛い女子が多いって聞いていたんでつい会いたくなってこっちに来ちゃいました」
あながち嘘ではないとは思う、女子たちにはドン引きされているだろうけどやはり私は男子に興味はない。むしろ嫌悪感さえ感じている。
「そりゃそうだがお前が『男子大好きだ、会いたかった』なんていうとそれこそドン引きの対象だぞ、とにかくこっちに来い、まずは自己紹介だ」
そう言われて私は教壇に向かった。そして教師の隣に立つと黄色のチョークを手に取り黒板に大きく私の名前を縦書きした。
「えーと、僕の名は『草彅敦子』と書いて『くさなぎあつし』と読みます、趣味はネトゲー、特技は電脳世界に対する侵入、好きなものは甘味、苦手なものは茶色くて苦い肉系の食べ物、以上です」
私は一方的に喋るとさっさと自分の席に向かって歩き出した。
みんなの視線が、特に女子たちの視線が痛かった。まあ少なくともそれは好意的なものなんかじゃないことぐらいはわかったがまさかこれほどまでとはな。
ーー隣の今休んでいる国生ゆかりちゃん、今休んでいるけどうちの生徒の『草彅』っていう男子生徒が孕ませたからだって噂ね、やっぱりあいつだったんだーー
ーー噂通り見た目はイケメンだけど私には無理って感じ、どのツラぶら下げてたぶらかしたのよって感じ、私なんかあいつに見られただけで妊娠させられそうな気がしたわーー
女子達のささやき声が頭の中で響き渡った。
私は自分の席の椅子を引きその座面に何があるかろくに確認することな悪腰掛けた。
ちくっと刺すような痛みが走り腰を浮かしてその部分をまさぐると金属製の画鋲がいくつか突き刺さっていた。
私は思わず後ろを振り返りタケシの顔を見た。
「なんだヨォ、俺じゃねぇぜ」
予想通りの答えが返ってきた。もしタケシが犯人なら数個の画鋲は奴のお尻に突き刺さっている筈だ。
「わぁてるよ」
私もそっけなく答える、彼が犯人ではないとしても一体誰が画鋲を仕掛けたのだろうか?
そしてなぜ私の『派遣』は正常に機能しなかったのか?
怪しいといえばすぐ前の席に腰掛けている女子生徒だって怪しい。
気のせいか『くすっ』と笑う声が聞こえたような気がした。
ーーさっきのベトベト、君が犯人だというのはわかっているよーー
とろけるような甘く囁く声が聞こえたような気がして目の前の女子生徒を見て私は愕然とした。さっきまで思わず触れたくなるような華奢で柔らかそうな首筋、うなじに女の子のくちびるが生えていて私の視線に気がついたのか『チュッ』っとまるでキスでもするかのような動作をした。
「君が何者かは僕は詮索しないけどさ、中学んときに一緒だったあつしくんとは別人だよね」
その唇は明らかにそう囁いていた。
「君は信じられないような目をして僕を見ているよね、流石に後ろに目はないからこの姿勢のまま確認はできないけどさ、僕のセカンドマウスをジロジロ見つめているのはちゃんと感じているよ?」
そういうとくちびるは一旦消失して色っぽいうなじを見せた、と思うまもなく目の前の女子生徒は振り返り私を見つめていた。
「ジロジロ見ないで変態!私を孕ませる気なの?」
信じられないパワーワードを容赦なく放った彼女のくちびるはさっきまでうなじに生えていたそれと全く同じ形状で同じ色だった。
「いや何を言っているんですか、僕にはさっぱりわからないよ」
そう言った私の目が確認したのは彼女が意外と美少女の部類でも特上ランクだったことくらいか。
彼女は不機嫌な表情のまま前を向くとそのうなじにはまたさっきと同じくちびるが生えていた。
「君はさっき後ろのタケシ君に見せて自慢していた股間に生えたご立派様を僕に挿入しようとしていたね、でもね僕を孕ませようとしたらこっちの方に挿れなきゃだよ」
謎の唇はそういうとまた消失して今度は別のものが浮かび上がってきた。わたしはそれを視認したわけではないがなんとなく直感でなんであるか察したので思わず両手で覆い隠そうとしてしまった。
しかしわたしの手に触れられた女子生徒が驚いて振り返ったせいでわたしの左手の指先が新たに出現した別のくちびる、いや俗に言うところの割れ目ちゃんの中に吸い込まれるようにして入ってしまった。まあ驚くのは当然なことではあるけど。
「ばかあぁ!赤ちゃんができたらどうするのよ」
彼女の唇からとんでもない言葉が飛び出していた、と同時に平手が水平ではなく垂直に私の側頭部頭蓋骨を砕いていた。いや、そんな気がしただけで実際には割れてはいなかったのだけど。
そもそも入れたの指だし、そもそもそんなとこに生えたわれめちゃんに射精したところで受精などするわけもなく、それくらいの知識は実年齢10才でなおかつまともな性教育を受けた覚えのない私でもよく知っている。
しかし目の前で見せつけられている怪奇現象とそのカマトトぶりとのギャップに思わず微笑んでしまう。
しかしさっき指先を挿れてしまった時の感触は女体化した時の自分のそれと全く変わらない、どころかむしろ指先でとろけるような柔らかさがあった気がする。
「川崎透子くんと草彅淳さん、授業中にいちゃつきすぎて子供を作っちゃダメですよ」
ダメだ、この学校は先生からしてオカシイ、そんなことを言っていたら生徒全員不純異性交遊で退学だろう。
「もう私に指一本触らないで!」
目の前の女子生徒、いやもう名前がわかったから川崎透子なる稀な美少女というべきか、彼女は前を向くとうなじに生えたくちびるからそれはもう深いため息をついた。
まあともかく川崎透子なる美少女はとてつもなく面倒くさそうなので私はうつむき教科書のみに集中することにした。
本当は黒板と先生の方を見続けていなければいけないのだろうが見てはいけないものが視界に入ってきそうな気がしていたので顔を上げることができなかった。
授業の内容に集中しなくちゃいけないはずなのに先生の声が全く聞こえない、耳に入ってこない。
すぐ前の透子の息が気になって仕方がない。吸う息、吐く息、それに合わせて自分の呼吸も忙しくなってゆく気がつくと彼女は息を荒げて小さな喘ぎ声をあげていた。
それにつられたかのように顔を上げてしまった私の視界にとんでもない光景が目に入ってきてしまった、
彼女の左手の指先は首筋、うなじをポリポリ掻いているだけのように見えたがよくよく見ると縦に生えたわれめちゃんに差し込まれてその中にあるものを掻いていた。
(お、オナニー?)
ふとそんな言葉が脳裏をかすめた。
しかし周囲を見回してもさっきからそれを見て騒ぎ出す生徒はいない、あの唇も声も他の生徒達には見えないし聞こえなかったりするのだろうか。
私の目には指の動きは次第に激しさを増してゆき呼吸も淫らに激しくなってゆくような気がしてきた。
もちろん私はそのようなものなど直視はできない、かといって無理に視界から外すとかえって不自然な挙動になってしまう。
ーーなぜ目を逸らすのだーー
透子の声が聞こえたような気がした。しかし先ほどの彼女の口調とは全く異なる。
ーーそれにしても君は本当にバカだなぁ、僕のとは少し違うようだけどそんな便利な能力があるなら自分のアソコと口をスワップさせてその蛇みたいなやつを噛み切るけどなーー
目を見開いて直視してしまった。やっぱりしもの口が喋っているわけじゃない、ということは脳から脳に直接転送しているのか?
(他人事だから簡単に言えるよな)
私は心の中でだけ愚痴った。
ーーへえ、君は自分が本当は女だということはあっさり認めるんだねーー
間を置かずに返信脳波送信?少なくともどうやら私の思考は目前の透子にはダダ漏れのような気がしてきた、いや事実ダダ漏れなんだろうけど。
(いや、今は男だし、穴はふさがっているし)
ーーでも中身はまるっと残っているんだろ?ーー
(それよりもあんたと透子は一体どういった関係なんだ?二重人格というわけではなさそうだけど)
ーー君こそ面白いことを考えるね、そもそも人格とは一体なんだい?君は地球上にあるユーラシア大陸と北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、アフリカ大陸がそれぞれ全くの別物だと思ってやしないか?ーー
(別物だろ?違うのか?)
ーーそれらは海で隔てられているに過ぎないだろ?もし地球上の海水が完全に干上がったらどうなる?ーー
(どうなるって、・・・)
そこで私の思考は停止してしまった。もしもだけど、完全にそうなる事はまずあり得ない事だけどそれらの概念は全て無意味になってしまう。
ーー人格にしても同じだよ、全体の意識を覆っている海水の下にあるのが深層意識とするならその海面から上に飛び出しているのが表層意識であり人格だと言える、君や僕らという惑星の上に、いや表面上に海水が満たされている以上いくつもの人格という大陸があるのは至極当たり前なことなんだよーー
(えーと、君はもしかしてすごく賢いことでも言っている気なのか?)
念のために確認してみた、流石にすぐには返信がなかった。

ちゅぢゅく

というか絶賛頓挫中です、続きが書けません(^_^;)

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基本全話無料です、お代はもしお気に入って頂けたらで良いのでm(._.)m

私は誰5の続編です。 亜希の始祖とは? 並行世界での異種族の干渉とは?

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