下界(パラレル)1
下界(パラレル)1
毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離した描写がめちゃくちゃ多数ありますことをお断りしておきます
「じゃあここから先はタイムバラドックスなってしまう可能性あるんでもう一緒に同行できないね」
亜希はそういうと勝手に護送車であるシビリアンを降りてしまった。
「あの、私はどうしたら良いでしょうか?」
観萌は言ったが亜希は首を横に振って言った。
「あんたの素性はここではバレてないから問題ないよ、それよりも『E8』のメンバーの1人としてみんなのサポートお願いね」
そう言われて私は亜希にこのチームをまとめるリーダーとして任命されたわけだけど
「愛知県に戻る頃にはお腹がやたらと大きな私たちと遭遇するだろうけど夜露死苦」
とだけ言われて別れた亜希は「別世界線の北九州に向かう」と言っていた。
「とりあえずどこ目指す?」
文月輪が訊いてきた。
「取り敢えず北九州を通って山口県、広島県、岡山県、兵庫県、大阪府、京都府、滋賀県、岐阜県を経由して愛知県の小田井署を目指すことにしようか」
私はそういうと自分自身が何かとても大切なことを忘れているような気がしてきていた。
それは取り敢えず後回しにいておくとして取り敢えず今一番最大にして重大な問題はこの護送車であるシビリアンには1人も警察関係者が乗っていないということだろうか?
加世は確かにこの国における情報工作員として働いていた節があった。
しかし彼女もまた彼らを裏切った危険人物と見られているのも確かだ。
「ねえ、観萌ちゃん、あたし達本当に中学生だよね?」
不意に花奈が訊いてきた。
「そうですよ?何か疑問でもありますか?」
私は訊き返してみたが返事はなかった。だけど可奈の例えようがない不安が伝わってくる。
少しまずい状態かもしれない。彼女達が信じている生年月日や年齢、そしてその容姿もかりそめのものでしかない。
それでも私達はあの倶名尚愛や山崎秋子、楓凛、冴子達に比べたら遥かに子供だ。
佐世保署から少女犯罪者を乗せて『さぬきがわ学園まで運んでくれ』との要請が入った。
「彼女をレイプした男達を5人ほど地獄に送った、凶悪な少女をふたり一緒に連れてってほしい」とのことだった。
有料道路なし、ズルなし、休憩込みだと楽勝で10時間はかかりそうだ。
途中で資金も尽きるだろうからバイトもしなければいけないんだけど中学生を雇ってくれるような場所なんてない。
「330km走るとして何リットルガソリン食うと思う?」
真顔で銀が訊いて来た。
「ちょっと調べた限りじゃ60km/h平地走行で7.3Km/Lって書いてあるよ」
と月海が言ったけれど何その不穏な計測値指数?と思った。
「まあ平たくいうと真っ平らで坂のない道を60Km/hで低速走行した数値だということだね」
銀が説明を付け加えた。
「今のエコカー基準値とかに換算すると4Km/Lくらいしか走らないんじゃ?」
月輪が突っ込んだ。いや、私の演算ではヘタをすると3Km/Lでさえ怪しいかもしれない。
「改造しよう!」突然、花奈と加世が騒ぎ出した。
いくらなんでもファンタジーワールドじゃあるまいしそんなことできるわけがない。大体部品や工具はどこで手に入れるのよ?
排ガス規制とか騒音規制とか安全性は大丈夫なのかしら?
そんなことを考えていたら全員が私を指差した。
「し、知りませんよ!もっと悪い燃費になって走らなくなっても」
私は一応抵抗したが取り敢えず設計図をひけということらしい。
もちろんのことそんな知識なんて皆無だからデタラメだ。
私が書いた中1レベルの三面図を見て一同言った言葉がもちろん「訳がわからん」といういかにも真っ当な反応だったのはいうまでもない。
正直自分でも何を書いたのか説明がつかなかったのだから。
「このエンジンってOHVのくせにショートストロークだってことだぎゃぁ」
聞きなれない言葉を言い出したのは椎だった。
「そりゃぁ中低トルクもでぇへんし、回転数も上がらへんのも納得だがなも」
月海が言ったけれど何語?
「ツインカムにするべか?」
香織が言った。
「エンジン高が高なるとエンジンルームに収まらんなるでよ、なんか工夫が必要だぎゃぁ」
なんか急にみんな日本語がバグり出した気がしよる、どないしたらええねん。
「エンジンルームを箱ごとでかくすりゃいいがや、サファリ最終型の直6、4.8Lツインカムに載せ替えたらええぎゃぁ」
なんかみんな急にジジイみたいに喋り方になってしまった。
「わかりました、それでスペースの問題はともかくとしてそんな都合の良いエンジンはどこに転がっているんですか?それと皆さん放熱の問題も忘れていますよ?同じエンジンを搭載したサファリよりも27馬力ほど下がっているのはそのためなんですけど?」
そこまで言ってみんなはようやく現実の世界に戻って来てくれたようだった。
「まあ確かによく考えてみたらそうだよね、取り敢えずコンビニで飯でも買ってく?」
月海の提案でみんなでコンビニに入ることにした。
私と月輪はミックスサンドとカツサンド、そしてフルーツサンド、花奈と香織はおにぎりを3種ずつ、銀と加世と月海はぺ・シニア焼きそばのデカいのとハムカツ、あら?1人足りない気がするんですが?
「あ、なんか椎は『隣の百均ショップで乾麺のパスタ300gとペットボトルの水とパスタソース明太子2袋とアルミの大きめのボールをかってきてくれ』っていってましたよ」
と銀が教えてくれた、がここで私は椎の不穏な動きというか企みに気がつくべきだったかもしれない。
もちろん銀と加世と月海は後ろの席に座ってコンビニでお湯切りをして来たペ・シニアの焼きそばとハムカツを食べ始めていた。
そして花奈と香織はおにぎりを3つずつ、そして月輪に私の分のサンドイッチも合わせて持ってもらい先に助手席のすぐ後ろの席に座ってもらった。
「あれ?」
月輪が変な声を出した。
「どうしたの?」
私が訊くと月輪は少し考え込んだ後に「なんか違和感が」と言った。
まあ取り敢えず私もお腹が減っていたので取り敢えずエンジンルームの箱に乗って椎に頼まれたものを渡そうとしてすぐにその違和感の正体に気がついた。
「明らかに狭くなっている、つうかこのエンジンを囲んでいる箱の高さ20cm以上高くなってませんか?」
さらに助手席に座って気がついた。
「なんでこんなにセンターの出っ張りがあるの?おかげで足元が狭くて窮屈!」
私が叫ぶと椎は苦笑いをしながら言った。
「フロントグリルからのエアの取り込み口を思いっきり大きくしてサファリ最終形態の4.8L吸気と排気共に連続可変ツインカムにしちゃって、ついでだから直噴化もしちゃったよ」
しちゃったよじゃないよ。私すごい窮屈な思いをしなくちゃいけないんですけど?
「それで、圧縮比は幾つに設定したの?」
メカ音痴にこんなこと聞いても無駄だとは思ったが一応訊いてみた。
「えーと、いくつくらいだったかな?多分11.3くらいしか上げていないよ?高々400馬力くらいしか出ていないし、トルクだって大したことないよ?」
どこが11.3くらいしかですか?あなたはウマシカさんですか?
これは多分、いや、それどころか確実に椎の『願望実現達成能力』が使えなくなった途端にエンジンブローするパターンでしょう。
「あ、大丈夫、もしもあたしの排卵日が近くなったら元の非力なシビリアンに戻るだけだから」
椎はあっさりと言ったがそんなにもうまくいくとは思えなかった。
「はぁ〜」
深くため息をついている私の横では椎が美味しそうに自分の能力でアルミボールに作った明太子パスタを美味しそうに食べていた。
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「さてと、出発しますか」
パスタをたらふく食べた椎が言うエンジンスタートボタンを押してパーキングブレーキを解除するとシフトレバーをDレンジに入れて豪快に走り出した。
多分だけど足回りも強化してあるんだろうな?
「もちろん」と椎。
途端に下から『ドン!ドン!』と激しい突き上げ。
「音も振動も激しくて眠れないよぉ!」
花奈が抗議の声を上げた。
あのどこでも寝られる花奈が眠れないと言うのはよっぽどのことだと思う。
そんなことを考えていたらいつのまにか鹿児島県警のパトカーにピッタリと後ろに着かれていた。
「そこのシビリアン、スピードを緩めて路肩に寄せなさい」
パトカーのスピーカーは明らかにそう言っていたが椎の眼は既にレーシングゲームジャンキーのそれに変わっていた。
速度計は軽く80Km/hを超えている。念のために言っておきますがここは高速道路じゃありません。しかも結構曲がりくねったワインディングロードとか言うやつです。
しかしなぜこの安定した接地感!
「あのゲームの吸引用のローターも床下に四つくらい取り付けたから」
簡単に言うが案の定、追跡して来たパトカーが曲がりきれずに土手に乗り上げてひっくり返ってしまったところを見るとまんざらうそではなさそう。
「ねえ、観萌たん、あと何時くらいに着けばいいの?」
唐突に椎に訊かれた私は素直に「あと4時間くらい」と答えてしまっていた。
もう言ってからじゃ遅い、シビリアンのタコメーターは2度と4,000rpmより下を切ることがなかった。
「まさか四駆ってことないよね?」
一応訊いてみた。
「もっちろん前輪は電子制御のモーターアシストだお」と椎。
「もひとつ念のために聞くけどアクティブ4WSなんてこともないよね?」
「えーそんなの常識だよ?スピードとハンドル角で前後の位相が変わるやつね」
さも当然のように椎。
「急カーブでひっくり返るってことないよね?」
お願いだからそんなことはないって言ってと思いながら言ってみた私は恐怖のどん底に突き落とされた。
「ん〜、それだけは、これだけ重心が高いとね、神様にお祈りしてね」
聞くんじゃなかったと思ったがもう遅かった。峠道を激しくスキール音を鳴り響かせながら鹿児島県警の護送車は峠道をひたすら佐世保を目指して走り抜ける。
後部席にはシートベルトの死の字もない護送車仕様のロングシート後ろのロールにしがみついている仲間達。
ロングシート護送車仕様シビリアンの後ろに乗せられる立場の娘達にはさぞ地獄だと思う。
「ねえ、たった一つだけお願いがあるんだけど、せめてこの車内の横Gだけでも緩和してくれない?」
そうお願いしてから椎はやっと『あ“!』っと言って本当に横Gだけ緩和してくれた。ただしやたらと硬いリジッドリーフサスからの突き上げは相変わらずだったが私達は果たしてビニール袋のお世話にならずに佐世保まで辿り着くことができるでしょうか?
下界(パラレル)1 終わり
下界(パラレル)2に続く
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