カレンダーガール10 想定外?
カレンダーガール10 想定外?
当作品は毎回とは限りませんがエログロ描写、及び官能描写を含みます。
なので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♫
ぎゅうぎゅう詰めの仮想避難所
「何とか命だけは取り留めたみたい」
私はそういうと少女の身体を抱き寄せた、いやそんなことしなくてもサニークーペ1200GXの後部席は狭くてギュウギュウだった。
もっとも1970年代の車じゃ贅沢は言えないかもしれないけれど。
「よくもまあこんな骨董品が残っていたものだな」
一応私、亜希の中の一部分、風間志乃の父親である、風間先輩が呆れたように言った。
2030年も近いというのに60年近く昔の車をリストアして乗っているなんてよっぽどの好きものじゃないと出来ない事じやないかな?
「言っておくけれど俺はこの車を運転しているだけで所有者は前田愛理と言う衆議院議員だよ」
目前に広がる数キロ先の大火災を見ながら言う楓凛は見た目が筋肉隆々のマッチョな女性だが実はカメラマンであり私たちの友人かつ仲間だ。
「あのおばさんにそんなスキルがあったとはね」
しかしその前田愛理はとある事件に巻き込まれて行方不明となっている。
そしてその娘のリナは名古屋市のどこかにいるという話だ。
政府与党第1党の女子高校生衆議院議員である倶名尚愛はそろそろこっちに向かって来ているはずだったが、
今朝、乗車しているはずの始発名古屋行きタキオン1号が30分以上遅れて品川駅を出発して、南アルプストンネル内で先ほどの大地震に巻き込まれて連絡が取れなくなっている可能性が高い。
一方彼女とは別の政党の女子高校生衆議院議員である山﨑秋子は東京付近のどこかにいるということだがここ数日全く連絡が取れていない。
さて、私、葉類亜希といえば母親でもある葉類知恵警部の命令でおおい川に来て川を流れる水の量が相変わらず減少しまくっているから調べて来いとの事だったが風間先輩は趣味のヒッチハイクで可愛い女の子をナンパしながら来るとか言ってはいたが彼がそんなにモテるはずもなく結局はタクシーで現地まで来て私と待ち合わせすることにしたらしい。
私といえばとある事件で知り合いとなった楓凛というカメラマンの友人の運転をする車でここに乗せて来てもらうことになっていたのだが・・・途中で色々あって私のお腹、胎の中は大変なことになっている。
出発前の日深夜、いつものように酒とタバコは二十歳からと言う法律を無視して住んでいるアパートの2階自分の部屋の前のベランダでそれらを同時に嗜んでいた。
そんな私のすぐ前を2体の霊体、実際には少し違うけれどその2人の少女が通り過ぎようとしていたのだけれど思わず自分の胎の中に取り込んでしまったというわけだ。
元々は私の胎、つまり子宮の中にはリナという成長しない胎芽が住んでいたのだが彼女は眠ったままでいたはずだった。
しかしその晩私がうっかり取り込んで取り込んしまった2体の少女の霊体は私の子宮の中で胎芽として実体化して成長を急速に始めていた。
いつもなら私の精神と一体化して実体化はしない筈なのだが私が別の時間の流れの世界で殺害してしまった少女、リナのようにこの世に未練を強く残した霊体は生き返りたいと強く願う願望がそうさせるのかたまに彼女達のように胎芽となって実体化してしまうようだ。
ただ、リナと違うのはその2人はそのまま成長を始めて8ヶ月相当の2体の胎児になってしまった。
だけれど絨毛膜が1つ、羊膜が1つの中でリナの育たない胎芽と共存しながら2人はどんどんすごい速さで成長をしてしまった結果、楓凛が迎えに来る頃には私のお腹は出産間近の大きさになってしまっていた。
さすがに動くのもしんどくなって『成長してもいいからこれ以上大きくならないで』と願ったらサイズはむしろ小さくなりながら出産っごの赤ちゃんみたいに成長して再最終的には体長14mmの女子中学生の体型にまで育っていた。
最初のうちは2人で夢を共有していたようだった。
どうやら過去の実体験を含めた実際には体験していないことまで含めて夢として仮想体験していたのかもしれない。
そしてその夢の中には彼女達、いや正確には由紀と有希は同一人物だったのだが彼女たちの死がある悲惨で凶悪な事件に巻き込まれた結果だったということがわかって来た。
けれどそれに刺激されたのかリナも意識を取り戻してその夢の中に入り込み彼女の胎芽も2人と同様小さなサイズのまま5〜6歳の女の子に成長していた。
しかし一番困ったのはどうやら私自身や楓凛もその夢に強制参加させられている気がしていたことだな。
楓凛も車を運転している最中に何度か激しい睡魔に襲われて幻覚を見たと言っていた。
それからここで合流して風間先輩と釣りなんかやらされていたんだけれどその最中今度はおじいさんの御霊体を通り混んでしまいめんどくさいことに私のお腹の中でセクハラ行為をおこなってくれたから困ってしまった。
しかしどうやらそのおじいさんは今日の始発の名古屋行きタキオン1号の乗っていた乗客のようでやはり成仏できずに彷徨っていた、ってかんじ?
だがその時はまだ地震も列車事故も発生しておらず彼は時間を遡って来て私に何らかの警鐘を鳴らしに来ていたのかもしれない。
彼もまた3人と同様一つの羊膜の中で彼女達の夢の中に参加していたということだろう。
そのあと次々とタキオンに乗車していた人達も私の胎の中の羊膜に入り込んできた。
どうやら列車に乗車していた乗客は殆どが命を落としていたらしくて私の中に入り込んできてわずかの時間で小さいサイズのまま死んだ直後の年齢まで育っていた。
そこで問題なのは全員が生まれたままの状態、つまりは素っ裸だったことか?
当然、由紀や有希を始め大勢の女性からの抗議を受ける事になってしまってシンプルなピンクとブルーの室内着、つまりパジャマを支給いてやることにしたんだけれど。
許して欲しい、これはあくまでもこれは彼らが夢の中で見ている世界の中での話で、実際の私の胎の羊膜の中ではポン!つまりは素っ裸のままなのですよ。
まあ知らぬが仏ですけどね?
彼らの思考は私の意識に意作用して、私の口を通してすぐそばの人たちにまる聞こえになってしまうので穏便に済ませたかった。
その後、地震の直後に土石流に潰されたデカい外車の中から2人の男女を助け出したがその場に放置しておくわけにはゆかず、このクソ狭いサニークーペに同乗させることになった。
1人は楓凛曰く、たまーにアイドルのバックでテレビに派手派手しくギターを弾くミュージシャンらしくてこちらは全然死にそうもないくらいで怪我も少なかったけれど問題は後部席の少女の方で、最初はこちらも無傷に見えたけれどガラスの破片などでかなり深い傷をそこらじゅうに負っていて出血も多いことがわかって来た。
「もう私の近くで人が死ぬのはゴメンだわ」
センチメンタルに呟く私を見てクソ風間先輩は大声で笑い出した。
「そりゃ臨月寸前の胎をした女が言うセリフかよ」
こんな狭いギュウギュウづめの車の中でなければ思いっきりぶん殴ってやりたいところだ。
まず私のお腹の中がどんな状態か考えやがれってものだ。
たったひとつしかない羊膜を満たしている羊水の中を超微粒サイズとはいえ数万人の老若男女の裸体が泳いでいる、全員が男が水色、女はピンクのパジャマを着ていると思い込んでいるからいいようなもののもし全員全裸だと気づかれたら大パニックだ。
その中の3人、リナと由紀と有希はもはや身内なのだけど他の大半、数万人は赤の他人だ。
わかって来た事実と照らし合わせた内訳は。
まず最初の二十数人は中央新幹線タキオンが地震によりトンネル内で起こした事故によるもの、シートベルトを着用していなかったり、していても運悪く上から落ちて来た重い荷物が頭に当たったり、たまたま開いていた食事用トレイに挟まれて腹部や胸部を圧迫した人たちだった。
しかし信じられないのが残りの100人以上、これは事故とは何ら関係のない故意の殺人、いやテロ攻撃によるものだった。
これは由紀と有希があるご夫人や何人かの犠牲者に聞いた証言によりたどり着いた結論だけれどどうやら直線区間のトンネル軌道内で車両の遥か後方から何か巨大な砲弾らしきものが打ち込まれたらしい。
それによりタキオンの車両の中は熱く熱せられた高速弾でくり抜かれて車内は一瞬にして灼熱の焔で焼き尽くされて命を落としたようだ。
そして今彼らの魂は極小の裸体を手に入れて私の胎の中の羊膜に包まれた羊水の中で泳いでいる。
もちろん彼らにはパジャマを着ていると認識してもらっていることにはなっているが?
そして大地震の後何とか通れそうな河川のほとんど水が干上がった河原の上を走り両側に広がる炎の海を黙って見ていた。
「うーん、これは」、両側に広がる炎の海を黙って見ていた。
焼け死んだり倒壊した建物の下敷きになってお亡くなりになられた方々の緊急避難所として私の胎は使われている様子だった。
なんかこの中ではむしろ重体で意識を失っっている一部被害者を除く命からがら逃げ伸びて助かっている人たちの方が死んだことにされているらしい。
しかしながらこの中の人たちは妙に明るい、世間話やら体験談に花を咲かせている。それは別に構わないんだけれど?
問題はそれらの話し声がごちゃごちゃにミックスされて私の口から騒音として出ていることだった。
『それより他の3人とは連絡取れないの?』
私はメモ帳に筆記してそれを楓凛に見せた。
私の口から溢れ出している数万人分の喋り声が騒音となって話を伝えられないからだ。
楓凛もそれに気づいてメモに手記をして見せてくれた。
それは恐るべき内容だった。
『たった今衛星電話のメールにて秋子から連絡あり、この地震は人工的なものであり、ねらいは倶名尚愛の命、レールガンの使用も許可されておそらく彼女はもう殺されていない』
たったそれだけだったが私を半狂乱に陥れるには十分だった。
休火山だったはずの富士山の方向から噴煙が立ち上るのが見えた。
私の精神の乱れが富士山の地下深くに溜まっていたマグマを刺激してしまったかもしれない。
『落ち着け、愛を信じろ』
楓凛がそのメモを見せてくれなかったら富士山はどうなっていたかわからなかった、もしかしたらカルデラ級の噴火を起こしてたかもしれない。
ただその時私は愛の声を聞いたような気がした。
『もうダメ、登れない』
確かにそれは愛の声だった。
私は精神のアンテナを南アルプストンネルの方向に集中させて彼女の存在を探った。
それは非常出口用の斜坑トンネルの階段半ばで流れ込んでくる水の圧力に逆らえず今にも押し流され戻そうな愛の姿が見えた。
私は彼女の背中と腰を後ろから押し上げてやった。
彼女は再び自信と気力を取り戻したのか階段を力強く登り始めていた。
『さすが私の親友』
心の中で呟いたけれど私の中の騒音にかき消されてその声は届かなかった。
火災からの救出
ボクと有希とリナ、そして風間先輩、こと風間達也さんの4人に亜希さんから出動命令?が出た。
「なんで俺が・・・・・」
愚痴っていた達也さんだったけど両胸ポケットにに入っているボクと有希を見てニマニマしている顔は正直言ってドン引きするものがあったが普通に仕事をしている時は割とまともに見えた。
仕事とは言っても単に救助の手伝いと避難の誘導くらいしかやっているようにしか見えなかったわけだけれど。
それでもう1人の小人、幼女リナだけれど達也さんの履いているズボンの左前ポケットに潜り込んでいた。
彼の鼻息が時々荒々しくなるのはひょっとしたらリナがポケットの中で良からぬ事をしているからかもしれない。
「やっているわね、絶対」
と言ったのは有希。
あのサイズで手コキとか足コキしても効果があるかどうかはわからないけれどさすがは精神年齢数千年以上の妖女だと思う。
「ボク達なんかまだ十数年しか人生経験ないもんな」
そう言いながらボクは達也さんの股間を見た。
なんかズボンの膨らんでいるところが脈打って、なんか黒いシミになってゆくのが見えた。そして生臭い。
「痴女さん、ボク達は何をすれば良いですか?」
ベトベトに濡れた顔をズボンのポケットから出したリナにきいてみた。
一体ボク達は何のためについて来たのだろうか?
「そりゃあもちろん、消火活動に決まっているじゃない」
いやだからこの身長22センチメートルの小さな体でどう消化しろと、しかも亜希の胎の中から各自外に転送されたのはいいけど素っ裸じゃないか?
「当たり前じゃない、私たちは妖精って設定なんだから」
いや、顔だけじゃなくてほぼ全身を精液に浸された状態で『妖精』などと言われても。
ボクはしばらく絶句するしかなかったがあえて気力を振り絞って言った。
「さっきから男の人たちの視線が痛いんだけど」
今のボク達のサイズは身長22センチくらい、iPadの縦の長さよりは控えめなんだけどしゃがんでもヘソから上が露出してしまう。
すれ違う人達の多くは気まずそうに目を逸らすけれど中には2人の胸と顔をガン見してくる男の被災者もいる。
なんで亜希さんは服を着せてくれなかったんだろうか?しかもこんなにもポケットからはみ出してしまうサイズで。
「被災者に笑顔を、そのためよ」
いやその理屈わかんないし、喜んでいるの男達と一部の腐女子だけだから。
そう心の中に呟いているとほぼ半壊に近く崩れてその1階端っこあたりから出火し始めている二階建ての民家、いや豪邸の前に辿り着いていた。
「おーい、中に誰かいませんか?」
達也さんの大きな声がボク達の身体を震わせた。
わざとだろうか?いやそうでないと願いたい。だってその振動で身体全体がものすごく感じてしまったから。
「達也さん、私たちにペットボトルの水をかけて」
ズボンの中ポケットからリナの声、達也さんは背中に背負ったフタの開いたリュックサックから水の入った2リットルのペットボトルを取り出し蓋を開けるとためらいなく自分の頭から全身に振りかけた。
もちろんボク達も全身びしょびしょだ。
その瞬間にも達也さんは家の窓ガラスを蹴り破って家の中に突入していた。ちょっと見た限りじゃリビングのように見えたその部屋には誰もいなかった。
「火元はリビングキッチンの配電盤付近、火の回りが早くここ一階が2階の重みで潰れるのも時間の問題、急いで」
リナの指示が飛ぶ。下の階には人がいないと願いたいがどうやら廊下を隔てた和室の中で両足がタンスの下に挟まっている中年、とはいえ恐らくは50代くらいの男性を発見した達也さんは一目散に走り込みタンスを起こそうとする。
「ちょっと待って、下敷きになってからどれくらいたったはわからないけど止まっていた血流が急に流れ出すと」
リナは達也さんのズボンのポケットから飛び出すと両手をタンスの端に入れて少しずつ持ち上げた。
そして3分くらいかけてなんとか足が抜ける状態になると一気に年相応、5歳くらいの大きさになり『どすこい』と言ってそのタンスを跳ね除けた。
なんかギャグ漫画みたいな光景にボクは唖然としたがリナは考える隙さえ与えてはくれなかった。
「ボケっとしていないで下が潰れる前にあなたも大きくなってその人背負って窓から飛び出して」
そう言われたボクは言われた通りにその男の人を背負いリビングに戻ってさっき達也さんさんがぶち破った窓ガラスから逃げ出そうとしたが既にリビング自体が火の海だった。
「迷わないで、この部屋の窓をぶち破るのよ」
『簡単にいうなぁ、ボクもこの人も血まみれになるよ』
そう考えている間も無く火の手は和室にも入り込んでいた。
『もうこんなのはゴメンだよ』
そう心の中で呟くボクの耳にリナの罵声が飛び込んできた。
「達也、グズグズしないでそこの階段を駆け上がって2人の小さな女の子を助けに行くわよ」
その語尾はボクが突き破ったガラスが割れる音でかき消されていた。と同時に『メキメキ』と柱が折れる音がして振り向くと左に傾きながら一階が潰れてペシャンコになった家の2階窓から飛び出す2人の姿が見えた。そして難なく着地をした。
有希は2人の小学生半ばくらいと同じく小学生上級生くらいの女の子を両脇に抱えて、もう1人は達也さんが、ではなく気絶した彼をお姫様抱っこしたリナだった。
そして火の手は2階全体に燃え広がり、やがて2階も屋根の瓦の重みに耐えられずに潰れた。
「乙っかれさまだよぉ、4人とも良くやってくれたね、大感謝だよ」
頭の中で亜希の声が響いた、いや正確には直接脳に言葉が響いたというべきか?
「でもボク達の仕事は火を消す事だったんじゃ」
ちょっと違和感を感じて亜希に問いかけた。
「あはは、騙したみたいでごめんね、でもその人には自分がしたことの罪深さを知って欲しくてあえて助けたんだよ」
またしても響いてきた言葉。
「まあ2人のお孫さんはあんた達なら助けてくれると信じてあえてリナには指示しなかったけどね」
そこまでして助けたかったこのオヤジは一体何者だろうか?
「うーん、おおい川の水源問題に関する調査データーを偽造した人、かな?」
随分と曖昧だな、で、それは誰情報な訳?
「あなた山崎秋子って衆議院議員知っている?」
顔までは思い出せないけど確かトイレ個室で女子中学生に対する性的暴行をはたらいた外道鬼畜な女子高生衆議院議員!
「ちょっと中途半端に仮想空間でのシミュレーション覚えすぎ」
びっくりしたようにリナは言っているけどさっきからすぐそこをわざとらしく近くの避難所からここまで駆けつけて手にしたスマホでパシャパシャと写メやムービーを撮りまくっている男どもは問題ないのだろうか?
だってボク達3人とも素っ裸のスッポンポンなんだよ?
「元気があっていいじゃないか?」
と亜希、ちっとも良くないよ、ちょっと前ネットを大炎上させた草薙敦子みたいになったらどうするのさ。
『マジな話彼がおおい川の水量枯渇や戻し水とその水質データーを偽造しなければ中央新幹線は完成せずトンネルは埋め戻されて、まあ色々説明がめんどいけれどこんな大惨事にはならなかったという事ですよ』
そういう言葉が頭の中で響いた後に突然目の前に迷彩色の服を着た同じ顔、姿と姿勢の美少女が出現した。
数えたら全員で12人もいた。
「この一帯の火災鎮火しました、なるべく犠牲者を減らす方向で行きましたがごめんなさい、5,000人ほどまた亜紀さんの胎送りになります」
淡々とリーダー格らしい彼女は言ったが要するにまた追加で5,000人ほどお亡くなりになられたということか?
「ところで君たちは?」
ボクはさりげなく訊いて見た。
どう見ても全員カタギの人間じゃない、どっかの軍隊の工作員みたいな雰囲気だ。
「あ、私『A』」
「ぼく『K』」
「拙者は『I』」
「あ、もういいです」
長くなりそうだったんで自己紹介は遠慮してもらうことにした、要するに『A』から『L』まで12人いるチーム、というよりは部隊らしい。
「取り敢えず3人の衣服は用意しましたのでお着替えをお願いします」
12人の中で一番おとなしそうな子がボクにそれらしき服を渡してくれた。しかし、
「あのぉ、これは一体なんのコスプレですか?」
思わず問いかけずにはいられなかった。
「コスプレなんかじゃありません、私たちが長年愛用してきた戦闘服です」
一番おとなしそうな子がキッパリと言った。
「なんで綿の純白のTシャツが半袖より短い袖のフレンチスリープなんだ?」
「それは私たちの講師がこれを着て訓練をしろと言って渡されたものですから」
よくよく見ると彼女達の中と背中に迷彩パターンに混じって妙なパターンの模様が、よく見たらそれはそれぞれが別々の一文字のアルファベットの大文字だった。
そして今それを言った一番おとなしそうに見えた娘の文字は『G』だった。
「なんでこのシャツこんなに薄地なのぉ!乳首が丸見えじゃない!」と有希。
「いや、それは私たちの講師の趣味で」
え、『G』さん?
「じゃあなんでこんなに袖口が短いのよ?これじゃ腕を水平に上げたら横から乳が丸見えじゃない!」
同じく有希。
「それも講師の趣味で」
おおい、『G』さんよ、それしか言えないのかよ?
「じゃあこのブルマ、なんでこれもこんなに薄地でハイレグ仕様なのよぉ〜!」
うんうん、さすがにボクもそう思う。
「確かに注意しないと股の間から縮れ毛がはみ出しますね」
いやに冷静に『G』さんは解説している、おおい!大問題じゃないか?現にしっかりボクの縮れ毛がはみ出しているし。
「もちろん皆様、ちゃんとお手入れに毛をお剃りになっていますよ?」
そ、そうなのか?そこまでしなければならないなんてどんなエロい組織だ。
「多分」
『G』さんのすぐ隣にいた、『I』さんがボソリと言った。
剃ってなくて縮れ毛をはみ出させていた奴もいるのか?
「そう言えばあのエロ講師、うちらの事を『パイパン戦隊』だなんて失礼なこと言っていたよな」
ボクのすぐ後ろに立っていた『D』が呟いた。ろくな奴じゃないな、その講師。
「ところでそのエロ講師、一体何を君達に教えたんだ?」
とボク。どこかの国から送られたスイーツトラップスパイかよ?
「主に国家の要人に対する暗殺や重要施設に対する破壊行為を習得させられました」
『B』はそう言うと「フッ」っと笑みを浮かべた。
「それと世間に強い影響を与えることの出来る学者や評論家、芸能人達の洗脳」
『A』が横から物騒な言葉を挟んだ。
「もちろんあいつらに不利な行動をする政治家もね、私のパパとママもこいつらに殺されたし」
リナが暗殺部隊の少女達を睨みつけて言った。
このリナの両親は別の時間世界で彼女達に暗殺、いや惨殺されたらしい。
「ごめんなさい・・・」
『G』がすごく申し訳なさそうにリナに謝った。
そしてリナ自身は『G』に惨殺されている。『G』が全力で投球した拳大の鉄球で心臓をぶち抜かれて即死したのだけれどもしも他のメンバーに殺されていたら今のリナはおろかこの暗殺部隊や亜希は存在していなかったと聞く。
「まさかとは思うけれどさっきボク達が助けたあのおじさんもあんた達が洗脳したの?」
ボクは「G」に訊いてみた、彼女は首を横に振った。
「このリニア工事に不利なデーターを次々と改竄した科学者さんのことですね、あれは私たちとは別の存在が生み出しもの、あなた達が遭遇した大手芸能事務所の社長さんと同じであそこに寄生している、なんと言って良いのか」
そう言って『G』は恥ずかしげにボクが助け出して抱き抱えている中年科学者の股間を指差した。
「そ、それは・・・・・やっぱり・・・」
有希もボクも顔を見合わせて凍てつく、あの悪夢を思い出してしまった。男の太い棒を破り裂いて出てきた白い〇〇まみれの美少女の小人を。
「もちろんあなた達がその寄生虫、じゃなかった、美少女を始末してくれるんでしょ?」
完全に青ざめた有希が言う。絶対にお断りと言いたげ、まあ当然だと思う。
「是非ともそうしたいところですけど、そうする為には精〇レベルの大きさまで小さくなる必要があるの、でも私達にはそれが出来ない」
残念そうに『G』は言うとボク達3人を見た。どうやら彼女はこの3人が自身の身体の大きさを〇子レベルから500メートル級の大怪獣レベルまで大きくなれるってリナか亜希に聞いたことがあるのかもしれない、ただし大きくなればなる程能力が反比例して弱くなることが欠点らしいけれど?
ボクと有希とリナの3人は顔を見合わせて苦虫を潰してしまったような顔をしてしまった。
リナが言うにはなんでも理論上は精〇レベルの大きさになった場合〇ー〇ーマン並みの力を発揮できるらしい、知らんけど。
「ジャンケンですね」「サイコロね」「そこはあみだくじで」
3人の意見が分かれたが紙や筆記具もサイコロもないことからジャンケンで決めることにした。
「ジャンケンポン、あいこで・・・」
勝負は最初の一回で決してしまった。ボクの一人負けだった。
ボクは今日ほど自分の不幸を呪った日はないだろう。
ボクはしばらく悩んだ後に自身の身体を1ミリ以下までに小さくした。
そして中年科学者のズボンの裾から入り込むと全速力で駆け上り寄生虫、じゃなくて美少女の棲み家への入り口、正しくは尿と〇〇の排出口から尿管に潜り込みそこに居座っていた美少女、あいつと対峙して一瞬でそれを退治した。
ボク達、20人がサニークーペに戻ると亜希の胎は大変な事になっていた。やはりいつ破水してもおかしくないような大きさまで膨れ上がっていたのだ。
「するか」
亜希には早速ティッシュ箱を投げつけられてしまった。
今、彼女のお腹の中の人口は早くも3万人を突破したそうだ。
このままでは彼女自身の身が持たないし私たちが連れてきたジジさんとその孫2人がサニークーペの車内に入らないために一工夫をする事にした。
例の暗殺部隊12人は取り敢えず亜希の精神、正確には少女Aや風間志乃、など数十人分の精神複合体なんだけれど取り敢えずそっちと合体してもらう事にした。
そうする事で亜希自身の身体の状態も安定して胎の中の3万人越えの胎芽、じゃない被災者らも安全な状態になるそうな。よくわからんけど。
ただ問題はボク達、ボクと有希、そしてリナの3人が亜希の胎の中に戻ったとしても焼け落ちた豪邸から連れてきた中年科学者と彼の孫娘の3人をどうするか?だった。
どう考えてもこの狭いサニークーペにそんなにも乗れるわけがない、しかも生きている人間じゃ亜希の胎の中に入れることはできないし『L』達のように精神的に合体することも不可能らしい。
「いっそのこと一回死んでもらうか?」
楓凛は冗談めかして言ったがそれはもはやまともな人間として活動できなくなる事を意味する。
家主である亜希の胎普通の人間を振舞って生きられると言うだけのことらしい。
みんなが困り果てた時に一台のオフロード系のミニバンが河原を上流方向から近づいて来た。
運転していたのは運転席の上で立って運転をしている幼女、つまりこの世界のリナだった。
「たかいびるはひっくりかえるし、でんしゃはだっせんするし、くるまはびりやーどはじめるし、そこらじゅうひのてがあがってそこらじゅうわ」
彼女はそう言うと後ろのセカンドシートで寝息を立てている少女とまだ幼い半ズボンの少年、そして多分アンドロイドを見た。
だって身体の一部か明らかに金属製の機械丸出しだったから
しかしどうやって来たんだろうか?
そっちの方向には地震による崖崩れなどによる崩壊でマトモな道は残っていないと思われた。
「どうやって名古屋から来れたんだ?」
当たり前の質問を楓凛はリナにきいた。
「どうしたもこうしたも、きがついたら、ちかちゅうしゃじょように、とめてあったはずの、まっはごうの、なかにわたしがいて、すごくしかいがぶれたとおもったら、こんないなかのやまのみずのないかわのなかにいて、うしろではあいと、わたしがつくったしいなと、しらないおとこのこがねているし」
なんか要領を得ないぶっ飛んだ説明だった。
「わたしは、ぜんざいさんをはたいて、ぱんけーき、ひとつへらしてもらって、8枚しか買えなくて、それでもおいしくたべていたの」
ちょっと待って、全財産って5歳の幼児だろそれが何で我慢するとかしないとかの話になるんだよ?
「どうせおもちゃ付き幸福セットだろリナのカードは確か5000円までは買えたはずだけど」
と楓凛。
後ろの席では風間達也さんが何やら不機嫌そうにしている。
「おいおいそれなら12個は買えるじゃねえかよ、それにしてもよくそんなにも食うな、ガキのくせに」
「いつの値段の話をしているのよ」
早速、亜希に突っ込まれていた。
多分リナも昔の感覚で買おうとしてしまったのだろう。
自分の意識がまだ母親である前田愛理の中にあった時の記憶の値段で。
「それは私がまだ小さかった頃の話、今は税込600円なの!」
亜希はそう言うと窓越しにミニバンのセカンドシートで眠る愛を見つめていった。
「ほんっと、愛の能力は自分が使いたい時にはほとんど役立たずで自分の意志とは関係なく突然に無制限で使えちゃうのよね」
リナの危機を直感で感じて彼女と彼女の愛車である魔改造パジェロを無意識に転送してしまったと言うことか?
「それはどうかとは思うけど助けた中年科学者は魔改造パジェロの助手席に乗って、その小さい子2人はサードシートに後ろから入れて」
亜希に言われて2人の男は渋々動く、まあ風間達也さんにしてみれば赤の他人だからわかるけれど2人の女の子の祖父であるはずのこの男の動きが緩慢なのは理解できなかった。
「他に家族の方はいなかったの?」
と問いかけた亜希に対して原寸大のリナは魔改造パジェロから降りて答えた。
「あんたのおなかのなかにいるリナにいわせるとどうやらまっさきににげだしたんじゃないのか?ってはなしみたいよ」
リナはそう言いながら後ろを振り返りサードシートに乗せられて気を失っている2人の少女を見つめた。
何故か亜希の中のリナは亜希はもちろん、ボクや有希にも口を閉ざしてしまっていた。
さっきの火災現場で嫌な気配を感じ取ってしまったようだ。
sunnyは宙を飛ぶ?
「お、おい、この車なんで宙(そら)を飛んでいるんだ?」
亜希のお腹を通して今、彼女の胎の中にいるボク、こと楓山由紀と同じく楓山有希そして異世界人のリナだけ限定でこの車、魔改造サニークーペを運転している楓凛の驚く声が伝わってきた。
ちなみに他の避難民達には申し訳ないけど不安を煽るだけなのでブロックしてあるそうだ。
そのかわり箱根湖をゆったりと渡る観光船の映像と心安らぐ音楽を流しているらしい。(まああのアニメを知っている世代が不穏な空気を感じ取ったらしいが大丈夫!ここには誠君も世界ちゃんもいない)
「ちょっと静かにして、飛んでくる火山弾とか避けながら着地場所を探してるんだから」
亜希の声。
「リナ、これは想定内なの?あまり驚いていないように感じるけど」
亜希は自分の胎の中にいるミリサイズのリナに問いかけた。
「さすがにここまでは、富士山かその周辺の火山の噴火はある程度なら予想していたけど」
けど、って何?
富士山の噴火ってその程度の出来事なの?、ボクは少なからず不安になってきた。
「今、高度は約500メートル、御前崎市方面に飛行中」
突然、後部座席の亜希と風間達也さんの間に座って気を失っていた少女がボソリと言った。
「な、なんだってそんな方向に」
楓凛の声がした。
「気になることがあるの、浜岡原子力発電所をすぐに探して」
彼女は起き上がって席から立つと「やっぱり」と呟いた。
一体なんのことかわからなかったが風間達也さんのセリフで理解した、いや理解したような気になっていた。
「建屋が5つとも真っ赤に燃えてやがる、さっきの火山弾の直撃を受けて5つとも炉を破壊されてメルトダウンしたのか?」
「ちょっと待っていくら再稼働しているといっても1号機と2号機はもう運転を終了して再稼働していないはず」
信じられないと言いたげな亜希の声がした。
「いいや、実際にはあれは世間に対する言い訳だったんだ」
楓凛は苦々しく口を開いた。
「もともとあれらは40年経過した西暦2009年時点で運転を終了した、しかし国は「大幅な部品交換や炉の強化と整備点検を条件に最大20年延長を可能とする法案を提出して数の力で可決した」
「それは聞いた、だけどそれもとっくに切れていた筈」
亜希が否定する。
「とんでもないルールを閣議決定で採用したんだよ、それもサッカーのな」
楓凛の言葉を受けて風間達也さんは続けた。
「停止していた期間十数年をロスタイムとしてカウントしなかったって事だな」
しかしなんで今朝早くの地震ですぐに止めなかった。止まらなかった?
「なんでかって?その地震で既に原子炉の制御機能と冷却装置が破壊されていてもう既に暴走状態だったのかも」
見た目には女子中学生にしか見えない女の子、ボソリと言う、いや、多分女子中学生なんだろうけれど。
「俺たちが恐れていた事が起きてしまったか?」
助手席の男が目を覚まして呟いた。
さっきの少女もこの男も地震の後に移動していた最中、土砂崩れの下敷きになっていたクソでかいアメ車の中から楓凛と亜希と風間達也さんの3人で助け出してこの車に乗せることとなった2人だ。
ちょ、待ってそんなとこに近づいていいのか?強力な放射線の影響は?
ボクの言葉は亜希の胎を通して彼女の口から発せられた、それに対して楓凛と風間達也さんはそろって口を揃えて言った。
「大丈夫!ここにはまともな人間1人もいないから!」
そういう問題か?
異世界というか外来生物の変異種に改造が施されて色々なオプションがてんこ盛りな亜希はともかくいくら屈強そうに見えても楓凛と達也さんはごく普通の地球人だし、途中で拾った男女2人だって多分ごく普通の地球人だろう。
「さっきのあまりにも急な火山発生もメルトダウンにより溶け落ちた大量の燃料棒が地下深くまで沈み込んでマントル層を刺激した結果かもしれないし」
少女がボソリと言った。
この娘どう見てもボクよりは年下の中学生だよね?
実はよくアニメとかで有りそうなロリババアとかリナみたいな精神生命体じゃないよね?
隣を見たら何故か有希が満面の笑顔で笑っていた。
ああ、これは多分考える事を完全に放棄した顔だ。
で精神的ロリババァのリナを見たらなんだか真剣に考え込んでいた。
「これはまずいですね」
そりゃそうだろう、東北から北と四国中国から西を除いたほとんどの人間が放射線にやられて全滅だよ。
また亜希の胎の中が大変なことになるよ。
「日本沈没か?」
助手席の男がボソリと言った。
「あ、この声、聞いた事がある」
唐突に有希、急に何を言い出したかと思った。
「アイドルのコラボのバックでたまにギターで参加する人だよね」
「おおーよく気がついたな、そんなにかっこいいか?俺に惚れちゃダメだぞ俺にはもう既に彼女がいてだな」
言っておくがボクと有希とリナの3人は亜希の胎の中にいて直接外の人と話はできない、だから亜希の口と耳と眼を借りてコミニケーションするわけだが相手は当然と亜希としゃべっているつもりでいる。
「いやあろくに映らないクセに自己陶酔しまくりで大声で奇声をあげているから笑えちゃって」
「コラ、人の口を借りて失礼なことを言うもんじゃない」
「いやだって本当のことだし、こないだなんてチャック全開で中身出してギター弾いているところ丸写しで、速攻で画面切り替えられて、こっちがドン引きだったよ」
「だから人には黒歴史ってものがあるからそんなとこえぐるのはダメだろ」
これらのセリフを同じ人が続けて爆笑したり怒ったりしながら言っているのを見たら人は多分相当頭がおかしな人だと思うだろう。
しかしその間にボソリと亜希の隣の少女がつぶやいた言葉に車内の人間全員が凍てついた。
「それで済めばまだいいよ、最悪は地球崩壊ね」
なんでそうなる?
と思った。
「まずは富士山のカルデラ噴火、それに釣られて伊豆火山帯の火山が次々と大噴火、そして本格的な南海トラフ地震と阿蘇山と鹿児島湾でのカルデラ噴火、いえ日本中の火山という火山が大噴火」
メルヘンダウンって、なに?
ボクと有希は相変わらずμmサイズで亜希の胎の海の中を泳いでいた。
とにかく亜希の胎の中は人が多すぎて2人はすぐ離れ離れになってしまう。
それでもリナよりは何度か顔を合わせている方だろうか?
中の人は中央新幹線の事故で命を失った人から始まって、その後の謎の車両火災、それらが数100人ほど。それから火災や原子炉爆発事故などによって数百万人、今は小さくなって亜希の胎の中にいる。
地震による火災による焼死者、これは人災と言えるかもしれない。何故ならおおい川の水量は南アルプストンネルの工事が終了して本中央新幹線が開通した今になっても結局はほとんど回復しなかった。
人工池に一時的に貯めて電動ポンプでトンネル出口付近、長野側と山梨側から遠心分離機を通しておおい川に戻してはいたが静岡県との約束の全量還元には程遠いと言わざるを得なかった。
理由は長野側と山梨側のトンネル出口付近から湧き出していたおおい川の上上流、川の水源となるはずだった山の湧水が南アルプストンネルの外壁の周りを伝いトンネル出口付近から大量に湧き出ていたせいもある。
トンネル出口周りは半径十数メートルをコンクリートで固めてはあったがその水はそのさらに外周から湧き出していた。
結果そのままではおおい川には水は戻らず工事の時に運用していたトンネル出口から流れ出していた湧水を再びおおい川中流より上流側に戻すための水路を引き続き運用し続けなければならなくなったらしい。
やれやれだ。
しかもその戻し水の水質を保証するために間に通す遠心分離機には処理能力の限界あるよね。
それに定期的にフィルターを交換しなければならずその都度戻し水の流れを止めなければならなかったので結局は静岡県側が要求していた全水量還元にはほど遠いのもしかたがないね。
本当に水質問題を解決できたかどうかは常時水質検査しているわけじゃないからさ、なんとも言えないんじゃないのかな?
おおい川中流以下周辺の地下水に関しても似たようなことが言えてやはり計画通りには戻っては来なかったと言うことらしい。
そこに昨日の早朝の大地震だ。ありがちな建物崩壊や交通事故などによる火災型数件発生したんだけどいざ消火しようとしたら水が全く不足していたらしい。
地下水の減少による井戸水の枯渇、おおい川からの給水もままならず、水道の浄化槽も地震による破壊もあって、たちどころに枯渇したらしい。
原因はいくつかあってまずトンネルの外壁が至る場所で破壊されてそこから山の中の地下水、本来ならトンネル出口に設置された回収用の人工池には行かず非常用の通路を伝い大量に県外に流れ込んでしまったのと、
それがなくともおおい川に戻す水路に水を送るためのポンプが停電のために動かなくなってしまった。
それらがさらにおおい川中流以下の水流と地下水の枯渇化を致命的なまでに加速させたかもしれない。
そのため消防隊も消火を思うように進めることができずおおい川沿いの町中が火の海になるのにさほど時間を必要とはしなかった。
一方浜岡原子力発電所ではその日の早朝に起きた大地震による大きな揺れで炉を直接冷却する一次冷却水を通すパイプがほとんどの炉で破損して大量の一次冷却水を失っていたらしい。
これは亜希のスキャン能力により分かったことらしいんだけど失った冷却水を確保するのが困難な状況になっていた事を現場の遠隔盗聴や透視で知ることができたらしい。
まあその辺りの水道菅自体があちらこちらで寸断されていたし、そもそも地下水も元々枯渇状態に近いことになっていたため一次冷却水のパイプの中が空になるのにさほど時間を必要としなかった。
なぜって?
それは原子炉が非常停止してくれなかったから。
自然に発生した地震ならその予兆となる波が最初に来て、しばらくしてから本震が来るからその間に作動して制御棒がほぼ安全な状態まで挿入出来る。
まあそれが安全を保証する機能なんだけど。
昨日早朝の地震にはそれが全くなかった。しかも想定外に激しい揺れのやつが。
故に激しく横に揺れている最中に制御棒が挿入される事態となり燃料棒と制御棒はガイドを破壊して激しくぶつかり合いそこで制御棒の挿入も進まなくなり最悪の事態を招いたってことらしいけれどはっきりとは見えなかったらしい。
どちらにしても想定を遥かに超える悪条件が重なったって事かも、知らんけど。
「私にはよくわからないけど『人工地震をなぜ今起こしてしまう?』って感じで発電所所長がパニクっていたらしいわよ」
背後から急に有希に声をかけられて振り返る。
「原発がフル稼働中に人工地震?正気か?なんかの間違いだろ」
ボクは有希の言ったことがにわかには信じられなかった。
いくら今の原発が十二分に地震対策が施されていたとしてもそれはあくまでも自然に起こる地震に関してのみのはず、つまり人工地震は想定外と言って良い。
「この国の政府は実験としてそれを行う計画があっても不思議じゃないよ、ってうちの母、いや葉類知恵警部が言っていたよ」
突然胎の海の外から亜希の声が聞こえて来た。
「そう言えば事前連絡もなかったって言っていたね」
またしても亜希の声。
確かにこの国の政府が人工地震を起こすなら政府は当然、稼働中の原子力発電所に対して地震予知情報を流して原子炉を非常停止させるはず。
だけど何故今回はそれがなかった?
「多分それも違うわね、以前九州でも大き地震が発生した時、河内原発は何事もなく無事に停止したって報道が流れていたそうじゃない?」
これは誰に問いかけているのだろうか?
「ああ、あの時も人工地震説が流れていたな、真相は闇ん中だが、それがどうした?」
少し渋い男の人の声、風間達也さん、亜希の父親の声だ、何度聴いても癒される。
おっと今はそんな話ではない。
「確か、って言うか私が一度殺される前の記憶だからあまり定かじゃないけど」
『だったら言うな』と心の中でボク、が外に漏れてしまったようだ。
「ガキは黙ってて」
と速攻で言い返される。
「おっと今はそんな話じゃ、あの時はただ緊急停止したと言うだけでどのタイミングで止まったかなんてニュース流れたかな?」
「いや、娘よ、そんな話は聞いていないぞ、それがどうした?」
「P波で止まったかS波で止まったかなんて報道したっけ?」
「いや、しなかったな、何故それを気にする?」
「確かあの時は河内では震度3、本震で緊急停止してもさほど問題はなかった筈、その時もしももっと激しい揺れだったら?」
なんかめんどくさい話になって来た。
「だからガキは黙って、そもそも緊急停止信号がかかってから数秒で制御棒は挿入可能なの?」
「まあ確かにその時にブレて擦りあったと言う説もあったが政府と安全委員会によって完全に否定されたけどな」
めんどくさそうに答える達也さん、素敵。
「どこが、このバカ親父おだてると図に乗るからやめなさいよ、それはそうとS波、本震でやっと緊急停止に入ったって可能性だってあるよね?」
うーんもう親娘喧嘩に口挟むのやめようかな?
「それ以前に今の政権の政治家や護衛隊のトップはそう言う原子炉に関する知識を持っていると思うか?」
突然、楓凛が口を挟んできた。
うん確かに、今や総理大臣は〇〇でもなれる!とさえ言われている。
「そんな事も知らなきゃ人工地震を起こす情報だって流さないでしょ、『どんな地震でも安全に停止します』って原発推進派の言い分を疑うことなく信じちゃうような〇〇な連中なら、それに直下型なら自然発生の地震でもP波とS波間隔はほとんどないでしょ?」
まあ確かにそうだ、それも憶測に過ぎないのだけれど事実なのは地震直後原子炉は冷却手段を失い制御棒が動かせない状態のまま核分裂を抑えられなくなって暴走しているところに火山弾が降り注いで火砕流も流れ込んでいると言う今の事態だ。
「原子炉の外の使用前、使用済み燃料棒も過熱し過ぎて地面に溶けこんいるわねぇ、あれだけ大量の燃料棒だとプレート突き抜けてマントル層に達するのも時間の問題かしら?」
突然あらわて他人事のように言うリナ。
「マントル嬢?それは素晴らしい!」
意味不明な事を言い出してしまった風間達也さん、亜希はさすがにちょっと引いてしまったようだ。
「黙れ!このエロオヤジ!」
『パーン!』という平手打ちの音と共にその怒鳴り声が胎中に響いた。
リナ「あのさ、もう静岡だけの問題じゃないから、どっかのバカ達が『静岡の知事だけが駄々っ子ね、』って言って南アルプストンネルの工事を強行して中央新幹線の運行を始めた結果なんだから!もうすぐ日本中がやばいことになるわよ!」
亜希の胎の中で突然リナが大声で暴れ出していた。
確かにリニアと原発がセットだというのもこの国を仕切っている政治家たちは忘れているよね。きっと、
はい?
「ふぇ、フィックショーン」
あたし、倶名尚愛は盛大にくしゃみをしてその反動で後ろに倒れて尻もちをついてしまった。
誰かがあたしの悪口を言っているのだろう。
しかし柔かな砂利だな、まるで少し硬めのソファーのような感触だ。
長いところ歩いたり、走ったり、ジャンンプしたり、階段駆け登ったり、ほふく前進したり、滝のような雨に打たれて疲れ切ったんだろう、その割にはほとんどあたしの身体は濡れてはいなかったがあたしと椎奈は間に挟んだ少年にもたれかかるようにして眠りについていた。
しかし今日はとんでもなく忙しい1日だった。
まさか日本ご自慢の超電磁、じゃない超伝導リニアモーターカーのタキオンが事故るとは思わなかったし、先頭車両付近が何かに正面衝突してしまったかのように車体が変形してしまうとは予想もつかなかった。
しかも車両後方から大砲のような砲撃を受けて数両分車体が繰り抜かれて灼熱の炎に焼かれてしまうとは、まあそれに抱かれて死ぬつもりは無いんだけれど。まさかあれがレールガンなるものが打ち出した砲弾だったとは椎奈の解説を聞くまでは信じられなかった。
数回あたし達3人の身体が揺れた。しかし地震などの余震などでは無さそうだった。
「なんかきゅうてんかいで、ここにもたいりょうのあまみずがながれこんできそうよ」
聞き覚えのある幼そうな声で偉そうな口調。
だれだっけ?・・・・・。
ああ、あの天才幼女、前田リナだ。
しかしなんでこんなところにいるんだろうか?
確か彼女は今、両親から解放されて名古屋市で自由を謳歌している筈。
しかもこのエンジンの振動、覚えがある、魔改造されたディーゼルパジェロだ。ディーゼルに高出力発電機、そして大容量バッテリーとインバーター、そして高トルクモーターを組み合わせた簡易ハイブリッド。しかし最高速度は120Km/hほどしか出せないものの床下に左右に分割された仕込まれた前後に移動可能な2基の大容量バッテリーを移動させることにより40度近い坂の昇り降りが安全に行えるというウソみたいな魔改造モンスターオフロードだ。
後ろのハッチドアが『バン!』と閉じられる音、そしてパジェロはゆっくりと、じゃない!全速で走り出した。
「な、なんでぇ!」
思わず叫んでしまう、舗装された道ではない、乾いた河川の砂利の上をガタガタ揺れながら全速力で走っています感。
「なんでって、そりゃうしろからだくりゅうが、ぜんそくりょくでおいかけてくるからよ」
とリナ。
でもちょっと待ってほしい、さっきの大地震、南海トラフの太平洋、海洋が震源地なら海の方から川沿いに大きな津波が押し寄せてきている筈、なんかおかしい、今回の地震。
「あ、ずっこい!」
リナが大声で叫ぶ。
「能力使って空飛んでる」
訳のわからないことを言い出した、と思い目を見開き前を見ると見覚えのある旧車が宙を浮いていた。
「なんじゃそりゃあ」
あたしは思わず跳ね起きて助手席と運転席の間からフロントウインドウ越しに見えたその旧車を改めてマジマジと観察した。
「うん、確かに楓凛の愛車、サニークーペだ」
いやいや、そんなことよりあたしが驚くべきポイントはそこじゃない。
「あなたのはためいわくな、のうりょくのせいで、まきこまれちゃたじゃない」
迷惑そうなリナの声、彼女は運転席に立ってハンドルを必死に操作している。
「ここは、一体?」
あたしの自問にリナは丁寧に答えてくれた。
「だからさっきいったでしょ?あなたのはためいわくなのうりょくのせい、わたしはくつろいでいた、ばーがーやから、このぱじぇろはちかちゅうしゃじょうから、なぜかこんなどいなかの、ひからびたかわのどまんなかにとばされたって」
「聞いていないよ、それに目の前でさっきから黒煙と火を吹いている川をさえぎるあのすこし大きい山はなに?」
あたしは完全にパニックに陥りながら自分も何言っているかわからなくなっていた。
椎奈がムックリと起き上がってその火を吹いている1Kmほど先にある微妙な大きさの山を見つめた。
「推測、いえ、憶測ですがほとんどの過程を飛ばして言えば超電磁リニアモーターカー関連の開発が日本を終末に招く事になってしまった様です」
「ハーレムなら大歓迎だ」
むくっと起き上がった少年が右手の親指を立てて言った。
こいつ一体どんな家庭環境で育ったんだ?
「それよりあの山、ってか火山だよね?いつの間にできた?」
まあ噴煙は少なくって、火を吹いているっていっても溶鉱炉程度だし、100メートル以上はあるかな?
「もしかしたらあれがこの辺一帯の火災原因になっているのかもですね」
「あの山、根性がたりねぇな!火山噴火っていったら『カルデラ噴火』しかないだろう!」
と少年、こらぁ!
挑発するなあ!
本当にそうなったらどうする?
思う間も無くその山の上半分が大爆発と共にふっとんでいた。
「な、何か俺は変な悪夢でも見ているのか?」
助手席に座っていた見知らぬおっさんが驚いた声を上げる。
「どうしてあんなところに火山が?」
あたしはリナを問いただした。
「あんなところ?ばかいうんじゃないわよ、りにあえんせん、かながわけんからやまなしにわたって、ふじいずかざんたいがしげきされてマグマだまりが、つぎつぎとはっせいしているって、じょうほうがかざんがくしゃのあいだに、もれはじめていて、こうあんけいさつと、こうあんけんさつが、じょうほうとうせいに、うごきだしているってはなしよ」
とリナは言っているがそんな事は既に体験済みだ。
あたし自身がリニア車両ごと砲弾で撃ち抜かれかけたんだけれどあたしはそんなに自分が所属する政権の邪魔になるような事はした覚えはない。
「ちょとしゃれになんないことになっているんだそうよ」
リナが巧みにステアリングとマスコンを河原をパジェロで走破させながら叫んでいる、再びおおきな砂利の山に乗り上げ、2メートル位ジャンプをした。
いつもなら『爽快!』と言いたいところだけれど今日はとてもじゃないけれどそんな気にはなれない。
「あきの、こうはんいすきゃんのうりょくによると、いまのだいばくはつでたいりょうにそらたかくふきだしたふんえんにまじって、かぞえきれないほどのかざんだんが、すうせんめーとるいじょうのたかさまでうちあげられて、このへんいったいに多大な被害をだしてすこしはなれたひなんじょのやねをぶちぬいたって」
「あ、有り得ないだろう」
助手席の中年男性が頭を抱えて取り乱している、いや、そんな事よりその火山弾があたし達が乗るパジェロや目の前を十数メートルの高さで飛んでいるサニークーペに命中しない方が信じられないけど。
「やばいかも」
リナは呟いた。そりゃそうだろう、後ろからはなんでかは知らないけれど2メートル近い高さの濁流が追いかけてくるし、前の火山からは真っ赤な火砕流がこれまたすごい勢いで乾いた河川を駆け登ってきている。まもなく挟み撃ちだよ?
「しゃあない、はらくくって」
リナはそう言うなりステアリングを思いっきり右に切ってマスコンを全開位置に引いた。
パジェロは左の大きく傾きながら土手を軽快に駆け上ってゆく。
駆け登った勢いで数メートルジャンプすると既に火砕流が流れ込んでいて火の海と化している街並みだったはずの風景が見えた。
「ちょ、あそこに着地する気なの?死ぬ気なの?」
あたしが大声で叫んだことなんてお構いなしにリナは言った。
「きみはどこにおちたい?」
いや、いや、そんなどこかのアニメで聞いたような決め台詞なんて言っている場合いじゃないでしょ!
火砕流の海の中にパジェロが墜ちた、と思った瞬間周囲は真っ白になり割れ目だらけの道の上にあたし達の乗ったパジェロは着地していた。しかしそのまま走り続けてはいる。かなりのスピードだ。「ちょ、前、人、人ブレーキかけて!」
騒いだあたしの反応などお構い無しにリナはステアリングをフルに右に回してマスコンを少し前方向に押した。
パジェロはスピンしてかろうじてその人の1メートル近く手前、というかテールから離れた場所で止まった。
「ごめん、そのまま轢き殺してもよかったわ」
あたしはリナに謝った。
尻もちついた若い女性というか少女がこっちを睨みつけている。
「あなた、私を殺す気満々だったでしょ?」
すごい怨念の波動を撒き散らしながら少女は言う。
「えーと、証拠が残らないように始末を、って火砕流はどこに行った?なんで秋子がここにいる!ここは一体どこ?」
あたしは完全にパニックに陥りながらも後ろの席の幼い女の子2人を覗き込んだ。
この娘達もいつの間に乗り込んだんだ?
ふとそんな疑問も湧いたが助手席の中年おじさんもそうだ、いつ乗ってきたのだろうか?
いや、いや、そもそもあたし達3人もどうやってこのパジェロに乗り込んだか記憶にないし、この幼い2人の女の子もおじさんも誰だかわかんないし、ただ一言言えるのは。
「生きているって、素晴らしい!」
それだけだった。
よくわからないけれど後部席の3点式のシートベルトは首にかかって彼女らの首を絞めるようなこともなく、2点シートとして彼女達を守ってくれていたようだった。
「ふーん、愛に隠し旦那と隠し娘がいたとは思わなかったわ」
秋子は棘のある言い方をした。
あたしの所属する党とはライバル政党の女子高校生衆議院議員でありあたしの憎っくき宿敵でもある山崎秋子とは彼女のことだ。
「南アルプスのトンネルの中でタキオンの車両もろともレールガンで撃ち抜かれて火葬までしてもらえたんじゃなかったの?」
つくづく失礼なやつだ。
まあ何故それを知っているかの方が問題なんだけれど、こっちだってききたいことは山ほどある、だけど取り敢えず
「ここはどこ?」
そう聞いたら奴は小馬鹿にしたようにあたしを見つめていった。
「お、だ、わ、ら」
あたしの頭の中が真っ白になったのは言うまでもない。
カレンダーガール10 終わり
おまけ
愛「うーん、小田原って駅伝でよく映る場所だっけ?」
秋子「そーだよ」
愛「じゃあ今回の事件がもっと早かったら優勝していたね」
秋子「ふざけんといて、オ〇〇を晒しながら走ってテレビで全国中継されろってか?」
愛「いいんじゃない、過去最高の視聴率間違いないよ」
秋子「ほお、貴様も人に言えない恥ずかしい能力を暴露されたいと」
愛「いやだなぁそんなのあるわけないじゃないですか」
秋子「例えば100万回レイプされても再生できちゃう処刑少女の蘇る幕とか」
愛「あーそれ略さないで」
秋子「ワレメ(ピー)から突然(ピー)してむっくり起き上がって(ピー)するアレとか?
愛「あれ?『さぬきがわ学園』事件の時に秋子はいなかったはずなのになんで知っているんだろう?」
犯人はわかりますね?今一生懸命偽造警察手帳を作っているあの人です。
亜希「これで100冊目、いくらで売れるかなぁ」
亜希は本当に無責任に言っていた。
風間達也「こら、そんなことしている事がバレたら智恵にどやされるぞ」
亜希「へー、シーノのパパは意外と真面目なんだ、あっちに関してはなか〇〇刑事の異名を欲しいがままにしているのにね」
達也「それはちゃんと双方合意の元でだな・・・」
亜希「双方合意ねえ、それって強姦魔がよおく使う言い訳だよね」
亜希はそれが必要になってくる日が来る予感をひしひしと感じていた。
終わり
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