カレンダーガール9 クソガキの反抗期
カレンダーガール9 クソガキの反抗期
20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
ウソをUSOと見抜けない方の閲覧は(以下略
リニアの実験をしてみた(笑)
公害や戦争がなくならない理由はわかった。
だからこの国には憲法があり憲法第9条なるものが存在している。
「あのさあ、この国において憲法第9条は大して役には立っていないよ?」
ボクの心の内を読んだのかリナは速攻で否定した。
「例えばこの国のリニアモーターカーも超電磁砲も起源は同じなんだよね」
またまた、この幼女はボクがすごいバカだと思っているのかとんでもない大嘘を。
「どちらもフレミングの法則を応用したものなんだよね、むしろレールガンの方が構造自体は単純で作り安かったりするんだけど」
「ちょっと実験をするからあなたのオーディオスピーカーを借りるわね」
リナはそう言うと椅子から飛び降り、ボクが何度もおねだりをして親に買ってもらったCDコンポステレオからスピーカーに繋いであった結線を勝手に外して片方のスピーカーボックスを机のそばに持ってきた。
フロントネットがついていない低音用スピーカーが丸見えのヤツだ。
「ちょっとこのちょっと大きめのACアダプタもらって良いよね」
なんに使うかよくわからないままボクはうっかりそれを了承してしまう。
「それでこのDC(直流5V)側のプラグをバラして2本の電線を剥き出しにしてスピーカーの入力端子に繋ぎます」
なんか嫌な予感がしてきた。
「これからアダプターをコンセントに指すからね、ちゃんとウーファー(低音用)スピーカーの中心あたりの動きをちゃんとみておいてね」
「ダメェー」
有希の叫び声も虚しくリナはアダプターのプラグをコンセントにブッ刺していた。
『ボン!』と言う衝撃音とともにウーファースピーカーのセンター部が勢いよく前に飛び出したかと思ったら黒い煙が立ち込め焦げ臭い匂いがして白いコーン紙が燃え始めた。
慌てて火を消すのに奔放する僕たちをよそにリナはぼそっとつぶやく。
「あれ?なんで?」
本当にこいつは数百年以上生きてきた天才なのか?こいつの言うことマジで信じて良いのか?
「コイル式スピーカーに直流厳禁!」
「抵抗ほぼゼロで過電流」
2人で説明して説明してやっとリナは納得したのか右手にひらに拳を下ろして「忘れてた」とだけ言った。
「まあ今のが大まかな理屈ね、コイルをもっとぶっとくしてその中に磁性体の棒とか入れて大電流を流せばこの部屋のふすまくらい簡単に破れるよ?今ので分かりにくかったらもう一つのスピーカーでやってみよか?」
「あほ~、どうやって親に説明すりゃ良いんだ、もうボク、小遣いゼロだよ」
抗議するボクを不思議そうな顔をしてリナは見ていた。
「あなたもう死んでいるのよ?お小遣いなんて元々ないじゃない」
確かに言われてみればそうだ、しかしこの現状を見て不審に思わない大人がいるだろうか?
「簡単よ、元の状態に戻してアダプターを隠せば怪奇現象の出来上がり」
すました顔をしてりなは言うが。
「ど、どんな怪奇現象ですか?」
「そうね、さしずめ自然発火?それとも楓山ゆうき、怨念の業火?」
他人を出汁に遊ぶのはやめてください。
「あら、明日からあなたの机の上に大好物だったお菓子や料理が大量にお供えされるかもよ?」
ボクは怒りのあまりしばらく言葉を失った。
そしてしばらくして
「それをボクが食べたらさらに大騒ぎになるっちゅうの!」
「バカね、私が食べれば済むことじゃない」
リナ~!あんたが食う気か?
「当たり前でしょ、ここには生きている人間は私しかいないんっだから」
リナはそう言うとボクの遺影写真の前に備えてあった一個しかないミニ最中を一口で食べてしまった。
「あ、それボクの」
リナはボクの言うことも聞かずに話を続けた。
「リニアもレールガンも基本的には同じなんだけどリニアモーターカーでは無制限に速度を上げる事は出来ないしきめ細かな速度制御と安全性を要求される」
「どう言う事?リニアモーターカーも速ければ速い方が良いんじゃないの」
有希が話に入ってきた。
「リニアモーターカーがレールガンの弾丸並みに加速したら中の乗客はどうなると思う?世界最速のロケットブースターなんか比較にならないくらいの強烈な加速度でぺっしゃんこになるわ」
リナはそう言いながら両手で有希の顔を強く挟んだ。
「ちょ、いたい、痛いよ!」
「まっそういうわけでリニアモーターカーの制御は地上の軌道上に並べられた無数のコイルの磁場の変化をきめ細かく移動させてそれに同期させる事で速度を上げたり下げたりするんだけどある一定の速度からは車両本体にかかる空気抵抗などの理由でそれ以上同期できなくなりそれ以上は速度を出せなくなる」
リナはそういうと今度はボクの机の上の陶器の入れ物に目をつけて飲み始めた。
「それ飲んじゃダメ」とボクが言った時は時既に遅く彼女は盛大にむせていた。
「なんなの、この水腐っている」
そう言われても一週間以上は替えていないのだから当然かもしれない。
「レールガンの弾丸はただ単に最大速度で打ち出せれば良いんだから単純に磁力の反発力を使っているに過ぎないの」
「でも実際には細かい軌道修正みたいな制御は入るんでしょ?」
とボクは言った。
細かい事はわからないがレールガンとリニアモーターカーの大まかな違いがわかってきた。
「もう一つ、リニアモーターカーは走行させる区間に全距離にコイルを敷き詰める必要があるがレールガンはいくら巨大でも数百メートルあれば十分ということ、これが何を意味するかわかるかしら?」
リナは訊いてきたがボクにはそれが何を意味するのか理解できなかった。
「今の憲法では他国を侵略するための兵器を所持できない、それくらいは理解できているでしょう?」
確かにボクでもその程度の知識はある、でもレールガンは速度こそ音速をはるかに超える速度で打ち出せる。
しかし一度打ち出してしまったら細かい制御がほぼ不可能なため誘導ミサイルなどの途中で軌道を変えられる可能性のある高速飛行物体には対応できない。
早い話しが専守防衛には向かないといえる。
逆に動かない標的、敵基地などに対する先制攻撃にはかなり有効に使える武器、兵器となり完全に憲法第9条に違反する。
「でもそんな物、所有したら監視衛生などでバレちゃうんじゃ?」
ボクはリナに問いかけた。
「レールガン砲台は車輪さえつければリニアモーターカーの軌道上を移動可能なのよそれが何を意味するのかわかる?」
リナはスマホに中央新幹線のルートを示す地図を表示した。
「中央新幹線にはいくつかの車両基地があるのは知っているね」
リナは言うとそのポイントを表示した。
「中央新幹線にはトンネルがやたらと多いけどそれは何故かわかる?」
その問いには有希が答えた。
「より走行距離を短く距離曲線を減らして直線を多くするため」
それを聞いたリナはニヤリと笑った。
「教科書に書いてある事を素直に信じる日本人の鏡のような答えね」
なんかイラっとする言い方だった。
「じゃあ他にはどんな理由があると言うんですか?」
ボクの問いにリナは少々苦々しい表情で答えた。
「地下の車両基地や整備工場の名を借りたレールガン砲台の保管場所よ、しかも中央新幹線の軌道上を移動可能式の」
「スパイに嗅ぎつかれない限り見つけられないと言う事?、ある程度の発射実験ができるスペースも確保できると言う一石二鳥いや、一石三鳥といえるわね」
と有希。
「それが何箇所あるかはわからない、でも国民に知らされない限り憲法違反には当たらないのよ、かつての米軍港にに入港していた空母や潜水艦に搭載された核兵器の持ち込みと同様にね」
ボクはしばらく考えてからリナに訊いた。
「前田愛理さんは、あなたはそれを知っていたの?」
「いや、党の上層部でさえ知らなかったのよ、バーコードの元総理とかそのクラスなら知っていたかもだけどね」
有希が珍しく真剣な目をしてボクらを見つめている。
「それが本当としてもどうやって原発レベルの電力を供給可能な電源を確保する気なの?」
リナは少し呆れた表情になり返事をした。
「何故日本が省エネに優れたドイツ式を採用しないで電力馬鹿喰らいの超伝導方式を採用したのかわかってないの?レールガン砲台が移動可能な広い軌道と原発数基必要な仕様が必要だったからよ」
今どこにいますか?
「そういえば亜希さんや愛さん、秋子さん、楓凛さん達はどうしていますか?」
唐突ではあったけどボクは話題を切り替えた。
彼女達が協力してくれなければ今日のボクと有希は存在しない。多分栄か矢場町か大須あたりで地縛霊でもやっていたかもしれない。
「栄とか大洲周辺、熱田より北西で地縛霊は変な奴らに絡まれるからやめた方がいいと思うけど」
リナは変な前置きをして続けた。
「まず愛は明日の中央新幹線始発で名古屋に来るらしいんだけど目当てがやばい豚らしいからここに来るかは不明」
「やばい豚?ああ、みそかつのみせね」
有希がその店をスマホで検索しながら言った。
「秋子は援交にかこつけてなんか調査みたいなことしているらしいんだけど今はどこにいるか不明」
自由気ままにほとんどどことも連絡を取らずに行動するので居場所が全く掴めないらしい。
「楓凛は貴方達と関係がありそうな人物、芸能関係を探っているらしいんだけどこっちも連絡なし」
「じゃあ亜希さんは?」
ボクが問いかけるとリナに逆に驚いた表情をされた。
「亜希に関してはむしろあなたたちの方がよく知っていると思うけど?」
彼女はそう言うとボソリと『ユーキ』とだけ呟いた。
いや、それ誰の名前かよくわからないんだけど?
もしかしてフィギュアスケートアニメに出てくるBLなイケメン?
「別世界での由紀と有希のあだ名みたいなものよ、正確には『ユーキ』と『G』と言う人格があなたたち2人が亜希の胎の中で再生された時点で組み込まれている」
いやいや、勝手に組み込まないでほしいよ、ボク達は精神的サイボーグか何かか?
「あはは、その辺を細かく説明しだすと少し面倒なことになるんだけど亜希自体が複数の精神の複合体で出来ているからちょっとやそっとのことではくたばらないんだけどなんて言ったらいいのかな?」
いやわからないなら無理して説明しなくても。
「理解するな!感じろ!ってやつ?」
突然口を挟んできた有希。
「それならボクもなんとなくわかるんだけど、何で静岡のおおい川で上司の風間っておっさんと釣りをしているのか状態がわからないんだ」
何やら川幅自体は結構広いのだけど流れている水量がやたらと少なくて水深もくるぶしにかかるかかからない程度で魚なんているのかって感じ。
すると机のスマホに着信がありボクはすぐにそれに応答した。
「今私の噂していたでしょ?」
半ば決めつけるような亜希の声、テレパシーか何かでも感じたのだろうか?
「ついさっき盛大なくしゃみを2回続けてしちゃったからね、どうせロクでもない悪口言っていたでしょ」
思いっきりアナログな理由で電話をかけて来た。
「そこに今リナさんがいるでしょ」
疑問形でなく本当にすぐそこにリナが確信しているかのように言って来た。
しかしなんで10歳以上年下のはずのリナに対してさん付け?
「そりゃあ何千年生きて来たか判らないようなロリババァに呼び捨てはできないじゃない」
尊敬しているかと思いきやまさかいきなりデスリ始めるとは思わなかった。
「私は今、葉類知恵ってとんでもなく人使いの荒い上司の命令で『おおい川』の調査に来ているんだけど」
「あ、そうなんだ」
リナの対応は粗塩の山盛りだった。彼女にとって亜希は厄害なんだろうか?
「正直言ってここまでとは思わなかったけど南アルプストンネルの工事が終わってもう開通営業が始まっているというのに水の流れはほとんど戻って来てはいないのね」
と亜希。
「それは南アルプスのトンネル工事が始まった当初からら言われていた事で確か鉄道会社と工事業者が専用水路に電動ポンプを設置して水の流れを戻すとか言っていたような気がする、それに工事が終われば流れも元に戻るって話は聞いていたけど、ママ、いや当時は私自身か、もそれを責任者に迫っていたはずだし」
亜希の言い分を否定するかのようなリナのセリフ。
「その筈なんだけどさ、実際目で確認したわけじゃないけど最近はその電動ポンプが作動していないようだし」
「え“?」っとボクは思わず小さく叫んでしまった。
目で見たわけじゃないのにどうして亜希は見て来たかのように確信出来るんだろうか?
「それが彼女のスキルというか能力の一つでね目に見えない霊的というか精神エネルギー的な触手のようなものを無数に持っていてそれで感知できるらしいの」
リナはそう説明してくれたがボクには『なんなの?そのチート能力は?』としか思えなかった。
「それよりこの関東から中部地方を通って関西にかけるプレートの機嫌が悪くってさ、特に辺一帯の地層の歪みが酷くてさ、葉類知恵警部を通じて国の偉いさんに早いところ連絡して中央新幹線を一刻も早く全ての車両を地上部で止めてほしいんだけど、電話もラインもメールも応答なくってさ」
何故か亜希はかなりイラついた口調になり始めていた。
『いやじゃあなんでこの電話は通じているの?』
ボクの疑問に対して変な返しが来た。
『それはその部屋のスマホとあんた達の本体同士が見えないへその緒みたいなので繋がっているから、とにかくいつでも私の胎に戻れるように準備しておいて』
なんなのその意味不明な返しは?と思った途端、通話が切れていた。
「それはまさか・・・地磁気嵐による電波障害?」
リナは絶句した、そんな彼女に亜希のセリフが追い討ちをかける。
「来るんだよ、数時間か数日かはわからないけど南海トラフのでっかいやつが」
亜希の声が何か意識の遠いところで響いていた、なんなの?その非現実的な報告は?
南海トラフってどこからどこまで?
「南海キャンディーズ?」
と有希。もちろん違う。
「南海三大怪獣大決戦」
いやいや、それ昔の映画だし、有希、あんたいつの人間だよ。
「南海ドラフト生ビール」
そんなのねーよ。わざとか?有希。
「南海トラフって言っても何処からどのあたり?」
だからもういいっつうの、おふざけは・・・、あれ?
「南海トラフの範囲、って調べてみたら結構広いんですね?」
あれ、マジだったのか?ボクは有希が検索して拾い出してスマホに表示されたいくつかの地図画像を見て軽い衝撃を覚えた。
あれ?今ははネットも使えている?
「えーと、おおい川のフォッサマグナあたりから九州の宮崎南部あたりまでの太平洋側一帯って、広すぎでしょ?」
そこ全部激しく揺れたら日本は壊滅だよ?
「そんなことには多分ならないと思う」
とリナ。
でも言い切る自信がないのかさらに
「多分だけど」
と付け加えた。
「何処からどう歪みが溜まっているのか私たち素人には全くわからないし、仮にその地震の起点、震源地となりうる場所が何箇所もあったとしても同時に全部が揺れだすとは限らないし、一箇所だで済むかもしれない」
ボクと有希は一瞬ではあったけど安堵の表情を浮かべたと思う。
「での逆にその一箇所の揺れが激しかった場合それがトリガーになって複数の震源地が同時に発生する可能性だってあるの、実際にかつての東日本大地震がそうであったようにね」
リナのその一言がボクと有希の身体を凍させた。
「ねえ、それってやっぱり静岡から宮崎までの超広い範囲で激しく揺れるってこと?」
不安げに有希。
「さあ、それは断言できないけれどそこまではいかないと思うわ」
少し表現を濁らせながらも言うリナを見て一同はホッと息をついたが
「まあそれでもおおい川から紀州熊野灘辺りまでは激震区になるかも」
リナは完全に他人事のように言った。ここ、愛知小田井付近もやばいやつじゃん!
「神様に祈りましょう」
うおおい、リナ!神様なんてものがいたらこの国はこんな悲惨な状態にはなっていないよ。
「大丈夫!そんな瑣末なことを心配するくらいじゃこの先生きてゆけないかも」
のんびりとリナは言いながら、自分が持参して来たリュックサックの中からアルファベットチョコの袋を取り出し開くとその中の一包みを解いて口の中に放り込んだ。
「あ、それ、ボク達にもください」
そう言うとリナは渋々一つずつだけくれた。
「少しずつ食べてよね、あんたたちには大きすぎで多すぎな量なんだから」
「はいはい、ありがたく少しずつ頂きますとも、大昔のギャグ漫画みたいに大量に鼻血を噴いて失血死するのは嫌ですからね」
それを言ったのはもちろんボクなんだけどボク自身はその漫画を読んだことはない、ただ単に祖父から聞いた話だ。
「それよりも心配しなくちゃいけないのはそれに刺激されて富士山とかが大噴火を起こすかもしれないってことね?」
「まっさかぁ」
有希はアルファベットチョコの一角をかじりながら笑い飛ばしていたけどその目は泳いでいた。
「どうしてもあの中央新幹線が採用した超伝導リニアはフォッサマグナを刺激することになるからね、あり得ない話じゃぁないんだよ」
まっまさかね?ボクは心の中で否定した。確か富士山が大噴火となれば関東から藤枝付近にある浜岡原発も火砕流でやばいって聞いた覚えが。
「ねえ、確かあそこってリニア中央新幹線を動かすのに絶対に必要だからって国のお偉いさんと中部地方の大電力会社のゴリ押しで住民の大反対を押し切って再稼働しちゃっているよね?」
とボク、ボク自身や友人たちもSNSなどで再稼働大反対キャンペーンを展開したんだけどリニア信者達から「非国民」だの「日本の優れた技術を信じられないようなクズどもは日本から出て行け!」とか叩かれまくった挙句大人しく反論していた僕たちの方が何人かアカウント剥奪されて何故か口汚くボク達を罵っていた奴らの方が野放しになって。
「結局、国会での審議もろくにされずに閣議決定と強行採決で再稼働始まっちゃっているよね」
有希も同様な考えのようだ、まあ元といえば同一人物だったのだから当然だと言えるけど。
「安全基準は十二分に満たされている」とかカルデラ噴火でも起こさない限り浜岡まで火砕流は流れてくることは考えられないなんて言うのが理由だったと覚えている。
しかし、それを実証する根拠というのはほとんど示されていなかった気がする。
「富士山がカルデラ噴火でも起こしたらそれこそ数千万人単位で焼け死ぬから原発事故なんて些細なことは気にしなくてもいいなんて何処ぞの規制委員会の偉いさんも言っていたしね」
「あり得ない話なんかじゃないですよ?」
とリナ。
この数百年、いや数千年間精神の引き継ぎで生きて来たかどうかわからないロリババアでさえ富士山の通常噴火でさえ噴火は経験したことがないからだと言う。ましてや阿蘇山などのカルデラ噴火さえ記憶にないと言う。
そりゃあそうだ、富士山は未だにカルデラ噴火なる大噴火は一度も起こしたことがないはず、多分、起こしていたらあんな美しい形を維持できていない。
ただあの高さまで円錐状に盛り上がったという事は地殻の押し寄せによ流しわ寄せによって盛り上がった、通常の山脈とは異なりマグマだまりの噴き上げによる圧力により形成されたと見るべきだろう。
今は大人しく変形もしていないようだけど原因不明のひび割れや山頂付近の落石があった場合には注意すべきかもしれない。
ー『これは一体誰の知識だ?』ー
ボクの脳裏に疑問が湧いた。
「カルデラ噴火は今までやったことがないからってこの先起きないって保証は何処にもないんですよ」
ボソリとリナはつぶやいた。
「いや、むしろやってない高い火山ほど将来的に起きる可能性が高いと言えるんです、阿蘇山だって最初のカルデラ噴火をする前は富士山と同等、いや富士山よりもかなり高い山だった可能性はありますからね」
落ち着いて喋っているかのように見えていたリナの全身はこの部屋の中が寒くはないはずなのに激しく震えていた。
「もし富士山がカルデラ噴火を起こしたら藤枝の、浜岡原発はどうなりますか?」
ボクは恐る恐る尋ねた。
「火砕流が原発の原子炉建屋に到達して原子炉本体を、溶かす可能性があるのはもちろんだけど、高速で飛来して来る火山弾が原子炉の建屋の屋根を軽々と突き破って原子炉そのものを粉砕する可能性も考えなくっちゃね」
「そうなると中の燃料棒はどうなるの?」
有希が、いやボク地震も恐る恐る訊いた。
「まあほぼ間違いなくメルトダウン、最悪近畿から関東までは居住不可能になるかしらね」
反抗する理由
「マヂかよ」
それが僕の正直な感想だ。
東日本大震災の津波で非常電源が止まってメルトダウンしかけた時の大事故でさえ笑い話でしか思えなくなるほどの大惨事になるのは免れない。
下手をすれば近畿から東北までのエリアで通常火力電源も従業員などの避難のために使えなくなりストップすることになる。
それで話が済めば良いが問題は原発銀座と言われている原子力発電所が若狭湾周辺に密集している一帯の原子炉を誰が面倒を見るのか?という問題だろう。
「当然避難命令は出るでしょうね」
リナはあっけらかんというがボク達としてはそれじゃあ困るわけで。
「きっと総理大臣が先導して原子炉を停めて非常電源などとか、冷却水がないなら海水を導入してでも解決してくれるよね?」
ボクは微かな期待を込めてリナに言った。
「ゆきりん、あの時の総理は誰だったと思う?」
その時の頃のボクは幼すぎてよく知らない。
けれどその当時野党だった今の政権の、その後総理になった男がその当時の総理に関するとんでもないデマを流して自分が津波対策を怠っていたのを誤魔化したばかりか責任転嫁さえやってのけた話は聞いている。
「でも今はその人では無いからちゃんと対応してくれるのでは?」
と有希の希望的観測。
「いい?ちゃんと私の話を聞いて」
リナは真剣な眼差しでボクと有希を見つめていった。
「あの当時の総理は理系大学の出身者だった、だから専門的とまでは行かなくても原子力発電というものがどういったものかある程度は理解できていたしだからこそ現地に乗り込んで適切な指示を出せた、だから最悪の事態は免れたの」
あれ?でもそこはボクが聞いた話とは少し違ったような
「あの時の総理大臣が海水を冷却水に導入したから事態が悪化したって話でしょ?」
リナはそういうと深くため息をついた。
「それデマだから」
「実際海水導入の検討もしたらしいけれど結果的にはそれをやらずに済んだから、それに真水が使えなければ海水を使うのは危険だからといって何もしないのはもっと間違った選択だから」
そういうとリナは右手の拳でボクの机の天板を思いっきり強く叩いた。
「原因は原子炉を直接冷やす一次冷却水を流す配管がいたる場所で破断されてそこから大量の一次冷却水が漏れていた」
「そのせいで一次冷却水が不足したせいなんだけど、真水が足りなくなければリスク覚悟で海水使うしか他に手段がなかったっほど追い込まれてたの」
「それをどうこういうこと事態が最悪の悪手だって気がつかないほどのあのデマ男はアホだった、というのはいつぞやの布マスク大量発注とか、未曾有の大雨による大水害で国民が苦しんでいたっていうのに、赤坂亭でどんちゃん騒ぎしていたことからもわかるでしょ」
確かにそんなこともあったかもしれないそれでも、そこまで酷い対応はしないと思っていた。
「あなた達国民は知らないでしょうけれど、いいえ、野党のほとんどの議員さん達も知らないでしょうけれどあの時、その時、現場にいた私だから言えることがあるの、あの党はやっぱり根本から腐っていたって」
リナはスマホに大雑把な原子炉の図を表示した。
「原子力発電所というのはね、発電所という名前を持ちながら外部電源がないとその制御や冷却さえできないものなの」
それは聞いたことがあるでもだからと言ってそう簡単に外部電源が喪失する事態なんてあり得るだろうか?
「名古屋港や三重県の津市などにある火力発電、無人で一体誰が動かすんでしょうね?」
リナはそう言ってスマホを指差した。
そこはついさっき南海トラフ地震で壊滅状態になることが予想される地域だった。
「人がいても発電できなくなる状態も想定しておかないとね」
リナはそういうとさらに続けた。
「今のうちの党には残念だけど理論的な政策を取れる政治家なんてほとんどいないわ」
どうしてそう言い切れるのか疑問に思ったがリナは続けた。
「感情的にしか発想することしかできない連中ばかりなの、それは前回の世界規模で起きたウイルス伝染病対策でもあなた達学生だって子供の頃に嫌というほど痛感しているはずなんだけど」
確かにザルだって気を悪くするんじゃ無いかってスカスカな検閲体制にただ単に飲食業者イジメをして楽しんでいるかのようにしか見えない経済支援の足りない規制。
「断言できるのはあの党からは、いえその取り巻きの党からも命を張って現地に向かい仕事をする議員はいないだろうってこと」
リナはそう言ったが原子力発電に関してど素人の議員たちが行ったところで何もすることがない、かえって邪魔になるのがオチでは無いかって思う。
「これは愛や秋子、彼女達と同期の学生議員らと話し合ったことがあるんだけどさ、やることがない、とか完全に邪魔になるだけっていうのは単に危険な現場に行きたく無いための言い訳に過ぎないのよね」
リナはそういうと今度は机から離れて腕組みをしながら話し始めた。
「例えば現場の技術者が資材とか専門の技術者がいないために始めたい作業もできずに困っていたりしたらどうする?」
そんなことは電話か何かで反射と連絡を取って取り寄せて貰えば。
「もしも関西の電力会社本社や中部圏の電力会社でも入手が不可能な品物だったら?国の許可なくして持ち出せないものだったら?」
確かにそう言った事例は存在するかもしれない、でも。
「それこそ携帯電話なり固定電話で通話して要求すれば済むことじゃ?」
少し怖い表情になって来たリナに怯えながらボクは言ってみた。
「国から見たら電力会社の一従業員の言うことなんて単なる戯言よ、まともに相手をしてもらえるとでも思っているのかしら?」
「じゃあ電力会社の上司や社長を通じて」
ボクの声は多少震えていたかもしれない、だってリナがあまりにも凄まじい形相でボク達を睨みつけていたから。
「だからそれも諦めた方が健康にいいわよ、誰だって国や上司と作業員の板挟みになるのは嫌だからね」
返す言葉もなかった。
「愛が言うにはそんな時だからこそ自分達国会議員が出向いて党本部との中継をになうべきじゃないかって」
リナはそう言ったが愛も秋子も所詮は駆け出しのアイドル議員、やれることは変わりがないんじゃ無いかって思う。
「そうやってすぐに諦めるの君たち若者の悪い癖だよ」
リナはそう言ったが愛だって秋子だってボクと差して歳が離れていない若造じゃないか?って思った。
「本気でそう思っている?」
リナは真剣な顔でボクを睨み返して来た。
「あいつらいつもふしだらなギャルのふりしているけどさ、あんたと同じ中坊だった頃ガチで総理や関西地方を牛耳っていた市長に喧嘩を挑んだ事がある娘っ子達だからね」
正直それは初耳だと思っていた。
でも。
「通信手段はどうする気ですか基地局がやられていたら公衆電話もスマホも使えませんよ」
ボクの反論にリナはすかさず天井を指差した。
それが何を意味するのかわからないままでいると彼女は再び喋り始めた。
「地上にある基地じゃなくて人工衛星を基地局にする電話、衛星電話があるじゃ無い」
リナはそう言ったけどそんなもの誰にでも使えるわけじゃない。
ボクがそう言うとリナにあっさりと「バカね」と返されてしまった。
「だからこそ国会議員権限で使える衛星電話なのよ」
「なるほど、だからあの2人はあんなにもタカピーなんか?」
有希が突然に見当はずれなことをいいだした。
それを聞いてリナは不意に『プププ』と吹き出し始めた。
「そうじゃなきゃ総理とか党主とか相手にケンカを売ったりしないしね」
そう言うと彼女はさらに付け加えた。
「そう言う時こそ政治を自由に動かせる総理が現地に赴くべきなんですけどね」
その時ボクの脳裏に閃いたことを思わず口にしてしまった。
「もしかして彼女達の最終目的地は総理の椅子」
リナはそれを聞いた途端に思いもかけず至高の笑みを浮かべて言った。
「御名答」
と。
そして付け加えた。
「だからこそ私たちの休息時間もおわりよ」
次の瞬間ボクたち3人は懐かしい海の中を泳いでいた。
消費税〇〇%
わたしはいつものようにめがさめるとしつじをよびだししょくじのしたくをするように命じた。
「だめです、お嬢様せめてパンくらいはご自分でトースターに入れて焼けるようにならないと」
かれのいうことはいつだってただしい、でもいまのわたしはそんな気分じゃない。
ところでなんでひらがなしかないって?それはわたしが5さいになったばかりのようじょだから!
わたしのりょうしんは、このくにのこっかいぎいん、とかいうえらいおしごとについていて、ほかのげぼくこくみんとはちがい、すきかってなことをしてもゆるされるらしい。
せいじてきなりゆうがあれば、ぜいきんですきかってにのみくいしても、ゆるされるということらしい。
だからわたしは、これからおもいっきり、ぜいたくなしょくじを、することにしたのよ。
なごやえき、ちかがいにある、ちょうこうきゅうりょうりてん、わたしは、そのみせで、じゅんばんまちを、していた。
さすが、にほんは、せかいにほこる、けいざいたいこくだ、ちゅうがくせいや、こうこうせいはもちろんのこと、しょうがくせいまで、ずらっとならんでいる、みんなここの、めいぶつりょうりが、めあてだ。
ゆっくりではあるけれど、わたしのまちじゅんはちかづいている。いよいよ、あのごうかりょうりが、わたしのおくちの、なかにはいる。
「お待たせしました、ご注文は何に致しますか?」
ぐらまーで、びじんな、てんいんさんが、わたしに、めにゅーをていじして、きいてきた。
もちろん、ちゅうもんするめにゅーは、さいしょから、あれいったくのみだ、わたしは、おおごえで、たのんだ。
「ぱんけーきの、こうふくせっと、さんしゅるい、ぜんぶみっつずつ、めいぷるしろっぷ、もりもりで!」
わたしは、ほこらしげに、いった。かねなら、じゅうぶんに、かーどの、なかに、はいっている!
ぜんぶで、9しょくだ、いくらだ、なんなら、ついかで、あけびぱいをついかしてもいいぞ
「あの、済みませんがカードに入っている金額が不足していてお支払いして頂けません」
すごく、もうしわけなさそうに、びじんなてんいんさん、なぜだ!いくらきんがくせいげんが、おやにかけられているとはいえ、さいだい5000えんは、つかえるはずだ!
「5400円になりますので400円の不足です」
な、なんですとぉ!いったいなぜ?とおもい、よくたんかを、かくにんすると、500えん、ごうけいはたしか4500えんのはずだ。
なぜだ!わたしは、ぜいこみかかくをみて、ぜっくした。
『ろ、600えん!しょうひぜいが、ぜんぶで、900えんもするのかぁ』
わたしはおもわず、さけばざるをえなかった。
「おのれぇ~!しょうひぜい20ぱーせんとめぇ~!」
時代錯誤のロッカーと傷だらけの天使(少女)を拾う
「なるほど、ボク達が見て感じていた世界は夢の中での出来事だったんだな?」
ボク、こと由紀は広々とした海の中を泳ぎながら同様に泳いでいるもう1人の自分、有希に言った。
上の方から暖かな日差しが差し込んでくる。
「あんまり動き回らないで」
口を尖らせて言う見た覚えのある幼女は年相応の大きさに見えた。
「みいんな揃って中途半端にスモールサイズなんだから亜希に迷惑かけちゃダメよ」
偉そうにリナ、まあロリババアだから仕方がないと言えば仕方がない。
「それでボク達は今どこにいるんだい?」
そう言った途端に海水に差し込んでくる光の向きが変わった。
「亜希が起き上がって外の風景を眺めているみたいだから彼女がみている車窓からの風景を投影するね」
リナがそう言うとこの海水を包んだ袋が消えて乗用車の後部席から窓の外を眺めている風景を映し出していた。
「綺麗な景色だねえ、あたしロケとかでいろんな場所に連れていってもらえたけれどこんな場所は初めてだよ」
背伸びをして有希は感動したように言った。
緑あふれる山の中を走り右手方向には清水をなみなみとと流している大きな河川、おや?水がほおとんど流れていない?
「この川って干あがっちゃっているんじゃ」
ボクはすぐ隣のリナに訊いて見た。
まあ新聞とかテレビのニュースなんてほとんど観ないボク達よりはよく知っていそうだし。
「あっきれた、ニュースなんかでこの問題を取り上げるわけがないじゃない」
キッパリと言う彼女はやはり上から目線だった。
「でもこんなに水が少なかったら大問題なんじゃ?」
そう言ったボクに対してリナはあくまでも塩対応だった。
「この国のマスコミが政権とかに都合の悪いニュース報道しなくてもここの国民はだれもおこらないから!」
右手の人差し指を立てて言うリナにボクは思わず吹き出し笑いをしてしまっていた。
「今の若い子達はネットでもあまり興味を持たないんだろうね?」
前の席、楓凛は忙しそうにシフト操作とペダル操作を繰り返しながらスムーズにステアリングも操作していた。
「あ、そうそう、実際に声に出して喋っているのは亜希だけど誰のセリフかなんてすぐにわかっちゃうから口調とか気にしないほうがいいよ」
さりげなく楓凛のフォロー。
「プロジェクトの娘達の間でも人気な理由わかるわぁ」
嬉しそうな有希の感嘆。
やはりプロジェクトメンバーでも楓凛に惚れちゃった娘達は多かった様だ。
「もうそろそろおおい川の待合場所だからね」
「うん、わかっている」
亜希がボク達と同じお腹の中にいるリナに話しかけてた。
「巨大な人工地震が近くありそうってことでしょ」
「正確な時間は特定出来ないけど今から数時間もないと思う」
これ全てはたから見たらすべて亜希が喋っているセリフ、だからもしも聞いている人がいたら頭のヤバい人だと思ってしまうだろう。
「私たちはここに残って釣りをするけど、楓凛はどうする?」
亜希が楓凛に訊いているみたいだ。
「うーん、あたし的にはオッサンと釣りはきついかな?」
有希はそう言うと見えない扉を開けて異世界にあるボク達の部屋につながるドアを開いた。
「あ、ずるい、1人だけ逃げる気か?」
「わーたよ、釣りに付き合えばいいんでしょ」
有希はそう言うと亜希の胎の中で背伸びをした。
どうやら風間先輩の付き合いをする気になったようだ。
「ぜえったい釣れないよな」
ボクがつぶやいていると変な高齢者が声をかけてきた。
最初はごく普通の通行人か現地の人かって思っていたんだけれど。
「なあ、あのじいさん、いろいろやばくねえか?」
すぐにボクは異常に気が付き有希に対して警告をした。
「確かに、肉体はどこにあるのかしら?それにあの精神体は色々とヤバいよ」
珍しく有希がボクの背中に隠れるようにして怯えていた。
「確かに生きている人間のそれじゃないね、しかも後ろから亜希のスカートを捲り上げているし、うらやまけしからん」
リナはそう言うと眉をひそめてその高齢者を睨みつけていた。
「おやおやあ、まさか先住民がいたとは思いませんでしたよ」
急にその高齢者が僕達の目の目に出現して言った。
おいおい、ここは亜希の胎の中だぞ、なんでただの高齢者が入って来れるんだよ。
そう思った瞬間大地が激しく揺れ出した。
川辺の砂利が突然開いた裂け目に吸い込まれるようにして落ちてゆきボク達が住んでいる胎の主、亜希は風間とかいう刑事の首根っこを右手で掴んだまま周りの山々を見下ろせるほどの高さまでに飛び上がっていた。
「楓凛、起きて!状況やばい」
亜希が叫んだ瞬間には既にサニークーペの運転席シートを後ろに倒して寝転がっていたはずの楓凛は飛び起きてエンジンをスタートさせると同時にギヤをバックに入れると勢いよく後退させて左に舵を切るとファーストギヤに叩き込んでケツを大きくスピンさせながら全速で道に飛び出していた。
さっきまでいた場所の地面が突然開いた裂け目から吸い込まれるようにして土が吸い込まれて行き周りの樹木を飲み込むように落とし込んでいる。
楓凛はギヤをセカンドに入れさらにアクセルを深く踏み込むと目の前に出来た幅メートル程の割れ目を前輪を高々と持ち上げながらジャンプして飛び越えた。
しかしその目前には山手からなだれ込んで来ている高さが3メートル以上はありそうな土石流が、流石にこれは飛び越せそうもない、土砂と一緒にサニークーペもろとも川辺に流される!
おそらくは車中の楓凛もそう覚悟していただろう、目を閉じて天を仰いでいた。
「諦めるの早過ぎ君」
亜希はそう言うとサニークーペのすぐ右に飛び降りその重たい車体を左肩と腕で持ち上げて再び山を飛び越えていた。
「お前考えられないくらいハイスペックだな」
車中で呆れている楓凛に彼女は呟いた。
「誰かさんみたいにみかけだけの筋肉バカじゃないのでね」
ですねえ、でも羊水の中にいるボク達のことも少しは考えてくださいよ。
さっきからシェイクされっぱなしで激しく船酔いして気分悪くて吐きそうなんですが。
「瑣末なことね、それよりも近くで死にそうな奴らがいるんだけど」
地割れなどで寸断された県道に降り立つとボク達の目の前には大きな落石を含んだ土石流にぺっしゃんこにされたシボレー・カマロが目の前にあった。
「中の人、助かっていると思う?」
リナがボクの隣でつぶやいた。
「絶対死んでいるだろ、熊の餌だよ」
とは、楓凛の言葉。
いやいや、あなただって亜希姐がいなかったら同様に熊の餌だし。
「いやぁ、驚いたね、後部席の足元に落ち込んでいる女の子はともかく運転席の大男は多分ダメだよ」
珍しく亜希も同意したかのように言った。
「あのぉ、後ろの席の女の子よりも運転席の大男もピンピンしていますよ」
ボクは恐る恐る言った。
今にも天井を突き破って『ワタシまだイキってまーす!』
などと大声で叫び出しそうな気がした
「ま、その大男はともかくその後部席の女の子だけでも助けないとね」
亜希はそう言うと楓凛と協力して土石流の山の中から引き出した。
「どうやって2人を助け出す?」
楓凛の言葉に対して亜希が返した言葉は至ってシンプルだった。「ルーフを引っぺがす」
真面目に生きていくのが嫌になるセリフだった。
「こいつターミネーターか何かか?」
救出した2人を安全な場所に移動させてから筋肉隆々の大男の方を眺めながら楓凛は言った。
確かにシボレーのルーフが完璧なまでに潰れてそこらじゅうの骨がボキボキ折れて外に飛び出してあちこちから大量に出血していてもおかしくないはずなのにどこにもそんな様子は見られなかった。
「しっかし今時革ジャンに赤いペイントがところどころ入ったボロボロジーンズっていつの時代のロックミュージシャンですか?」
リナが笑いながら言っていたけれどボクにとって一昔前のロックミュージシャンって女ウケしそうな煌びやかな衣装を身にまとい華奢な体つきでマイクを舐め回すようにして歌うイメージしかなかった。
「それはゆきりんの偏見!」
すかさず有希がツッコミを入れてきた。
「これこそがあたしのギタリストの理想」
「へ?」
熱く語り始めた勇気のボクは思わず素っ頓狂な声で返してしまった。
「低くてハスキーな濁声、にもかかわらずその無骨な指が奏でる音はあまりにも甘味で繊細でメロディアス」
はいはーい、ボクと同じ体から生まれたはずなのにどうして性格も好みも全然違うのだろうか?
「それよりなんですけど、亜希さん、楓凛さん、女の子の方はどうなんですか?」
ボクは思わず亜希の口を借りて訊いてしまった。
同年代なだけにちょっと気になったのかもしれない。
「外傷もかなり酷い、だけど、これはかなりその傷を受けてから時間が過ぎていて・・・・・」
言いかけた言葉を飲み込んでからしばらく沈黙をして小声でボソリと言った。
「その、女の子としての内面が、心じゃなくって下のあそこの内面がボロボロになるまで荒らされていて」
そこまで言うと亜希はすぐ隣で気絶をしてのびている風間警部をチラリと見ると続けた。
「ちょっとの間だけ私が彼女にすることから目を逸らして見ないように、いえ、絶対に見ちゃダメよ!」
そうキッパリといった。
おなかの中は緊急避難所
「えーと、これはいったいどんな状況なのかな?」
ボク、こと由紀は突然、ではなかったがあれよこれよと言う間に緊急避難集合場所と化した亜希の胎の中で唖然としていた。
元々は最初から住んでいたリナ、こと前田リナとボク由紀とボクとは別人格のアイドルの卵である有希の3人しか住んでいなかった筈のの亜希の腹の中はどうすくなく見積もっても5,000人いじょうの大人数でごった返していた。
最初の内は150~160人の見知らぬ人たちが寄り合い場所として入って来たのだが問題なのは全員が素っ裸という状態だった。
3人しかいなかった頃、ボク達が亜希という女性の胎の中で再生中は3人とも女の子だったということもあり全員が全裸という状態でも何ら問題はなかったのだけれど亜希と風間刑事が川辺で釣りをしている時に高齢者の男性が入り込んでからというものの色々と厄介なことになり始めていた。
失礼なことにジロジロと全裸のボク達を凝視しているんだ。
「あ、あのー、おじいさんはどうしてここにいるんでしょうか?」
ボクは恐る恐る訊いて見た。
彼はしばらく考え込んでから言った。
「んー、よく覚えておらんがやっぱり女子中学生の裸は良いものじゃなぁ」
などとどうでも良いことを抜かし始めていた。
「いやそんなことじゃなくってさ、何でおじいさんはここにいるわけ?」
イライラし始めていた勇気が興奮気味に怒鳴った。
「こらこら、細かいことでウダウダいうのものじゃないぞ」
どう見ても5~6歳の幼女リナが割って入ってきた。
彼女は見た目こそは幼いが実年齢は数千年は人の精神に寄生して生きてきた妖怪だ。
しかしここで問題はどう見ても下腹部というか股間にまだ毛が生えていないピンク色の〇〇〇〇を剥き出しにしている素っ裸の幼女にしか見えないことだった。
だけど人生経験の長い彼女は押しおいた男性に見られることに対して何の抵抗もないように感じた。
「ほれ、私の美しい姿に見惚れるが良い」
そんなことを堂々というリナはどう見てもあたおかな幼女にしか見えない。
「あーわしはガキンチョには興味ないのでな、しかし膨らみ尽くしてはいない少女の胸と奥ゆかしいサラサラの毛で覆われた乙女らしい〇〇〇〇は良いもんじゃな、わしも若返った気がするわい」
「ちょっと他人の裸をジロジロ見つめないでよ」
両手で胸と股間を隠し背中を向けながら有希は老人に対して抗議するように言った。
有希はボクよりは気持ち背が高く大人びて言えたがストレートなキューティクルがキラキラの黒髪を腰まで伸ばした美少女だった。
プロポーションだって出るべきところはきちんと出ていておへそも縦長に形よく整っていて同性でありかつ同一人物であるはずのボクでさえ思わず触りまくりたくなる魅力と誘惑を感じている。
「いやぁ、乙女の背中もなかなか良いもんじゃなぁ、なんかこう生き返るような心地よさじゃ」
全然他人の話を聞いていなかった。
「あのねぇ、おじいさん、あなたが何故ボク達の部屋にいるのか聞いているんだけど」
ボクも同様に両手で胸と股間を隠しながら少し背中を向け気味に訊いてみた。
ボクといえば男の子のようなやや縮れ髪のショートカットで胸も腰も貧弱な生前は中学3年生の乙女だった。
「あーそうじゃったな、わしは久々に孫に会いにな愛知県の名古屋周辺にある小田井という町に行くために品川を6時ちょうど発の中央新幹線タキオン1号に乗っておってな」
そこから先が思い出せないのかおじいさんは再び黙り込んでしまった。
それでも視線をボク達の裸体から外さないのはさすがとしか言いようがない。
「おお、そうじゃった、甲府の駅を通過した後で『南アルプストンネルに入ります』とかいうアナウンスが入った瞬間列車が激しく揺れたかと思ったら何かに衝突したのかわしは、わしの身体は自分が座っていた座席と前席の背もたれのお弁当をのせるために開いたトレイの間に挟まれて大量の血を吐いて逝き果てたんじゃ、シートベルトなんてものをしめておったが意味なかったのぉ」
おじいさんはそう言いながら遠くを見つめて悲しげな表情をしていた、が彼の両手はボクと有希の乳房をしっかりと揉みしだいていた。
ボクは思わずメチャメチャ感じてしまい大きな喘ぎ声を出してしまった。
「ちょっと、私は昔の狭い車の中に強引に5人も押し込んで中学生くらいの女の子を治療していて忙しいんだから静かにしてもらえる?」
大家さん、じゃない、いまボク達がいる胎の主である亜希が思わず叫んでいた。
「ヒョヒョウ女子中学生じゃと、わしにも見せておくれ」
おじいさん、いや、クソジジイがそう叫ぶと胎を包んだ膜が透明になり自家用車の車内を亜希の胎内からの視線で見渡せるようになった。
「ウッヒョー最高の美少女じゃのおぉ」
最初の内は興奮して騒いでいたクソジジイだったが衣服がそこらじゅうビリビリに破れて出血をして苦しんでいる彼女の姿を見ているうちに黙り込んでしまった。
「彼女もさっきの地震の被害者かのぉ」
その一言で取り敢えずボクは彼のことをクソジジイ呼ばわりすることはやめることにした。
「おい、ジジイ、自分だけが悲運の主人公だなんて思うなよ」
ボクがそう言うとジジイはそんなセリフを無視して唐突に自分語りを始めた。
「それにしてもサニー1200GXクーペとは懐かしいのお」
前言撤回やっぱりクソジジイでいいや。
「どう?なかなかの保存具合でしょ」
唐突にリナが割って入ってきてこちらも自分語りを始めそうな雰囲気だった。
しかしこのサニークーペはこちらの世界のリナの母親、愛理の所有物だった筈。
向こうの世界でのリナ、つまりこの亜希の胎の海にいるリナはこの車のことなんて何も知らない筈だった。
しかし、実際に彼女はこちらの世界のリナに関してもよく知っているように感じる。
「しかもクロスレシオ5速ミッションとは」
「ほほう爺さん、なかなかに知っているね、当時トヨタのカローラとかはナンパな4速プラスOD(オーバードライブ)、しかーしサニー1200GX 5は硬派な5速がダイレクトドライブ、直結だったのよ、でもそれだけじゃない」
リナは人差し指を立てながら『チッ、チッ』と自慢げに語り始めた。
「レーシング用のさらにクロスレシオな6速ミッションに載せ替えたのよ」
「おおー!見かけは幼女なただの痴女だとばかり思っていたがお主なかなかやるな」
爺さんが変な意味で興奮をし始めていた。
「驚くのはまだ早いぞ、エンジンもボアアプして1400ccに排気量アップ、クランクシャフトからヘッドも交換してカムはもちろんのことロッドシャフトも交換、さらに四連ウエーバーキャブレターで最大出力はエンジン出力はグロス値でありながら150馬力」
えっへん、と自慢げにリナは言うけれどボク達にはそれのどこがすごいのか理解できない、楓凛いわく、一応10000回転以上は回るらしいんだけれど4000回転以下はほとんどトルクが出ないピーキーなエンジンらしい。
「確か楓凛って人から聞いた話だとブルーバードの1600OHCに載せ替えたって話だったけど」
ボクは一応突っ込んでみた
「あ、あれね、結局あんまり面白くなかったから元のOHVエンジンに戻したよ」
「どうして ?」とボク。
「結局整備がめちゃ、やりにくくなったんで戻した」
リナはあっさりと訂正した。
とにかくジイさんの興味がボク達の裸体からそっちに移り始めていたのはありがたかったけれど僕たちの周り、つまりは亜希の胎内が異様にざわつき始めていたことにボクと有希はやっと気がつき始めていた。
「ねぇ、いつからこんなにも人が増えちゃったの?」
なんか怯えるように有希は言った。
想像してほしい、亜希の体内の海の中数えきれないほど泳いでいる老若男女の裸体の群れ、ど、どうしてこうなった?
「あーうるさい、そう言うことは楓凛か亜希本人に聞いてくれ」
不機嫌そうな風間先輩とやらの声、もはや外の様子は裸体の群れに視界を遮られて見ることが出来ない。
「わるいけど皆んな静かにしてもらえる?こっちは死に掛けてる女の子の手当てで手一杯だからさ」
それはわかる、わかるんだけどボク達のプライバシーとか何とかしてよ」
「え~?でもこれって日本の避難所基準だよ?敷居がないことなんてザラなんだから」
と非情な亜希の返事
「あたし達だって全員素っ裸じゃ互いに気まずいよ」
ボクに続いて有希の真っ当な意見。
さすがに事態の不味さに気がついたのかさしもの亜希もしばらく黙り込んでいた。そして・・・・・
ボク達にやっとパジャマらしきものが子宮、じゃない支給された。
しかし無地の水色とショッキングピンクの長袖被りの上と長ズボンの何の工夫もない本当に普通の室内着だった。
「あんたらも中央新幹線に乗っていたんかねぇ」
不意に中年の女性に声をかけられた。
「いえ、ボク達は昨日の交通事故で」
本当は事故なんかじゃなくて事故に見せかけた殺人だったのだが彼女を不安にさせてはいけないと思い思わずウソをついてしまった。
それよりも・・・。
「おねえさん、いったい中央新幹線で何があったのですか?」
もしかして本当は若いけれど見かけが老け顔なだけの場合も考慮してあえておねえさんと言ってみた。
「何やら激しく揺れてねシートベルトをしていなかったら他の人と同様に座席から吹っ飛ばされていたんだよ」
その揺れは多分さっきのかなり激しく揺れた地震だろう、でもそれなら彼女はまだ生きている筈、それが今ここにいるということはその後何かがあって命を落としたことになる。
「そう言えば5時間ほど前の大地震で品川発のタキオンがトンネル内に閉じ込められたらしいな」
車を止めて一旦エンジンを切った楓凛がボソリと言った。
「何故車を停める?」
風間先輩の問いに楓凛が即答した。
「あれが見えないの?町や村が火の海だよ?」
と
「しかし妙だな、リニアは絶対に脱線しない、トンネルも崩れる心配はないと言う話だったが」
風間刑事は疑問を呈した。
「確かに脱線はしていないよな、コンクリートの壁面が壊れなければ軌道から飛び出す心配はほとんどないし、事実発表でも脱線はしていないと言っていたし」
「そんなの詭弁だよ、事実列車はあっちこっちに激しくぶつかってシートベルトをしていなかった人たちは皆んなその時に死んでいた」
おえねえさんが声を荒げて叫んだ一方亜希の胎の外で楓凛は呟いていた。
「さっきネットで動画が配信されたけれどよ、たしかにトンネル自体は崩れていなかったように見える、でもトンネル出口上からの大規模な土砂崩れには対応出来なかったみたいだね」
だとすれば生き残った人たちは何とか避難用の通路を通って非常脱出口から逃げられたはず、もうそろそろ助かった人たちのニュースが流れてもおかしくはない頃だが?
「そうだよ、思い出した、添乗員の案内で外に脱出しようとした時、後ろの方から熱くて黒くてデカい何かが私のすぐ横をすごい速さで駆け抜けていって添乗員や乗客を座席もろとも吹っ飛ばしていっただ」
そう言うとおねえさんは恐怖を思い出したのか激しく震え始めた。
「その直後私も爆風に吹っ飛ばされて灼熱の炎で焼き尽くされたのよ」
それを聞いてボクと有希は顔を見合わせた。
あの夢の中で思い当たる節があった。
大手芸能事務所の社長がボク達に使ったそれ。
あのアニメの美少女ヒロインが撃ち放つそれとは違い機械的に強力な電磁力で金属弾を超高速で打ち出すだけの大量殺戮兵器。
「レールガン」
ボクと有希の2人は声を揃えて言った。
だとするとこれ程までに亜希の胎の中が人でごった返している理由が説明できた。
「いいえその程度じゃ済まないわよさっき楓凛が言っていた目前の大火、数万人単位でこの胎の中に入って来るかも」
リナはそう予想を立てたけれどそれはそれだけ多くの人たちが命を落とすことを意味するわけで。
「ちょっと冗談じゃないわよ、そんなにもいっぱい私の腹の中に入ってこられたら、いくら一人一人に小さく収まってもらったとしても」
亜希はそこで困惑した表情でしばらく黙り込んだ。
「どうなるんだ?」
と楓凛。
「私のお腹は臨月寸前よぉ!」
亜希の叫び声がボク達のいる羊水全体に響き渡った。
カレンダーガール9 終わり
おまけ
愛「臨月といえば?」
亜希「中島みゆき」
愛「あんた、やっぱりいつの時代の人間よ」
亜希「そんな〜時代もあったねと」
愛「レールガンといえば」
亜希「大統領」(それはレーガン)
愛「はー、情けなさすぎて言葉も出ないわ」
椎「それでもあたしたちのグランマですよ?」
愛「は〜、納得、ってあんた誰よ?」
椎「あたし?あなたの妹ですよ?よろしくね」
愛「膣?あたし、そんな破廉恥な名前の妹なんて持ったことないんだけど」
椎「逆さ読み厳禁」
同時に愛の頭上には肉厚のデカいタライが降ってきた。
リナ「まあここにもにもコロナウイルスに関する何たらかんたらなんてのが先頭に貼られるだろうけれど個人的な感想を言わせてもらうならこれも立派な言論統制だからね、もちろんわたしが言う事が正しいなんて大見得を切るつもりはないけど100%間違っているなんてこともないから」
亜希「つかあんた誰に向かってもの言っているのよ?」
リナ「誰だっていいでしょ!〇〇ライナと〇〇アの問題だろうが慰安婦だろうが強制労働だろうが満州事変だろうがこれからも言いたいことはガンガン言わせてもらうって話」
亜希「100%フィクションの世界でそれを言ってもねえ」
愛「だいたい読んでいる人の記事あたりの平均が1桁どころか片手で間に合うような読者数でそれを言っちゃうのもねえ」
椎「まあグランマの妄想日記みたいなものだから」
金(文月輪のお腹の中にいる子)「ボクからしたら亜希はグレートグランマだよ、ヨボヨボの」
言いかけた瞬間、文月輪の頭上に落第が落ちて彼女の髪はチリチリの金髪になった。
全員「キメツネタヤメー‼️」
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?