【記念作品で大コケ?】ディズニー新作映画『ウィッシュ』を鑑賞!忖度なしの感想戦【ネタばれあり】
2023年、数々の名作アニメーションを世に送り出してきたあの天下のディズニーが100周年を迎えたらしいですね。私は『美女と野獣』が一番好きなんですけど、皆さんはどうですかね?なにかしら好きな作品が1つは思いつくのではないでしょうか?
そんなディズニーが去年、100周年の記念となる映画を公開!タイトルは『ウィッシュ』とのこと。人々の願いを多くテーマにしてきたディズニーはまっすぐなタイトルを選んできました。昨今のディズニー作品は、いわゆるポリコレに重心をおいた作品がことごとく批判されていまして、企業のイメージもかなりの下降線…。そんな中製作・公開したこちらの作品も、日本より先に公開されたアメリカではなかなか厳しい評価らしい…。
ただ実際に自分の目で観なければ!映画の価値は自分がどう受け取るかが大事、これが私なりの映画観。そんな感じで観てきましたこちらの映画を、私なりの感想を文章に残そうと思います。このnoteはすでに観てきた方と感想を共有したいと思い書いているので、容赦なくネタバレします。まだ観てない方は注意!
同時上映作品『ワンス・アポン・ア・スタジオ-100年の思い出-』
今回は100周年記念ということで、本編の前に短編作品が同時上映。映画の製作が行われていた実際のウォルトディズニースタジオを舞台に、ディズニーキャラクターが動き回るといった内容なのですが…
なんと過去作すべての作品の主要キャラクターが総出演!!!しかも当時の絵柄、声で!!!
これが本当に凄い。映画『ロジャーラビット』のように現実とアニメが融合しただけでなく、そのままで登場するんです。主人公とヴィラン(悪役)、有名作とマイナー作、セル画と3DCG…そういった垣根が吹き飛んだ夢の作品で、約14分とは思えない興奮と満足感。『ダイナソー』『ルイスと未来泥棒』なんかも忘れられてなかったんだなって…。また個人的には、カジモトの歌を劇場で聞けて感動しました。
『キノピオ』の「星に願いを」。
この歌の歌詞こそディズニーの理念であり、目指すところなのだとはっきり示しなおしたわけですね。
「心の底から願えば何でもきっと叶う」ここをベルが野獣の手を取って歌うの、良いですよね…
本編『ウィッシュ』
あらすじを確認すると、国民の夢がなんでも叶うというロサス王国に住むアーシャという少女が、夢を管理しているマグニフィコ王の悪事に気づき、これまた願いをかなえるスターというキャラやその他仲間とともに革命を起こす…といったもの。
観た結論から言うと、疑問や不満点がいくつかあり、面白かったとは言えない内容でした。これからいくつかそれらを挙げてみたいと思います。
迫力のない映像
予告を見た時から、絵本のような映像だなと思ってましたが、冒頭の描写からわかる通り、やはり絵本の世界を意識したものと思われます。今までの3DCGではなく、縁取りを濃くし2次元的な見せ方になっていましたが、それが裏目に出てしまったと思います。なんだかのっぺりとした映像が続く印象です。また、見せ方も物足りなかった。例えばアーシャが初めて国王の部屋に行くシーン。広々とした円形の部屋で天井が高く壁には本がたくさん。アーシャは初めて見るものに興味津々なのに、部屋全体をぐるりと見せてくれないんです。『美女と野獣』の図書館のシーンみたいに視点を動かしてバーンと見せてくれた方がよかったと思いました。
思い返してみれば、アーシャにはヒロインとしては珍しくそばかすが描かれています。別にとやかく言うつもりはないんですけど、そのことがなぜか頭に残っていたんですよね。これがなんでか考えてみたら、キャラクターの顔をアップにした描写が多かったからじゃないか、と。今作はアップの描写が多く感じましたし、迫力に欠けていたのもそれが影響なんじゃないかと私は思いました。
国王=悪者?
今作のヴィランとして登場するマグニフィコ王は、「最恐のヴィラン」として宣伝されていました。しかしこれ、ほんとうにそうなのかな?と。
国王のやっていた悪事はこう。まず国王のもとに人々が自分の願いを差し出し、国王はそれを預かります。で、年に何回か行われるイベントで、国民の前で1つ選んだ願いを魔法で叶えてみせます。この叶える願いを選ぶ、ということがポイントで、その願いが国益を損ねる可能性があると判断したものは二度と叶えず、持ち主のもとにも返さない、これがアーシャの琴線に触れ革命に進むのですが…。
これ「最恐」ですかね?
確かに、「歌手になりたい」という願いから、「若者を煽動する」という可能性につなげてしまうのは過敏かもしれません。が、国王は過去に争いから国を失い、自分の手で一から国を作り上げ、という成り立ちがあります。過敏になってしまうのも責められないのではと思ってしまいました。
むしろ突然空から降ってきたスターのなんでも願いを叶えられるという力をいきなり手にしたアーシャのほうが危険なのでは?とも…。
最終的に国王は禁じられていた魔法に手を出して暴走してしまうわけですが、アーシャの行動がなければ何もなかったのではないでしょうか。しかも一度は王妃の言葉もあって踏みとどまっていたわけですし。
おそらく国王が「最恐」といわれたのは、「誰しもが願いを持っていて、叶える権利がある」というディズニーのスタイルを否定してしまっているところにあるのだと思います。実際作中では、国王が『ピーターパン』等歴代作品の設定を否定していましたし。しかしそれは作り手の思惑で、見てる側にも国王は明確な「悪」だと思わせるような脚本や設定にしなければ置いてけぼりです。思想のみであれば『ライオンキング』のスカーや「リトルマーメイド」のアースラのほうがよほどヴィランでしたよ。もっと私利私欲に走った邪悪なキャラでよかったと思います。
主人公の魅力とは?
今作の主人公であるアーシャは、良くも悪くも「おはなし」の中に生きるキャラクターだと思わされました。美人で快活で好奇心旺盛、持ち前の行動力で作中でも話を展開させていきますが、気になったのは成長が無かったことです。彼女は勢いのまま動き続け、立ち止まって考えることもありません。仲間たちや国民の心は歌でねじ伏せます。途中彼女の祖父とぶつかりますが、そこも自分の理想を貫きます。それが本当に正しいのか一度でも思案したのか疑問でした。けっして嫌みのあるキャラクターではありませんが、最後まで我の強い少女というイメージは変わらず、好きになれるヒロインかといわれると首を縦には振れません。やはり彼女のような明るく行動力のあるタイプは、現実を知った物語中盤以降で悩みながら自分なりの答えを出す展開があれば印象もだいぶ変わるのはないかと思いました。
不評は上がりすぎた期待値のせい?
ここまで不満点ばかりあげてしまいましたが、ネットでのレビューを見てみると好意的意見も目に入ります。私が今作に対し低めの評価になってしまったのは、知らずの間に期待値を跳ね上げてしまっていたのではとも思います。「100周年記念作」という触れ込みや、本編前に上映された短編映画の満足度が高かったことなどが考えられます。
また、公式が宣伝で「アナ雪のスタッフ再集結」といっていたのを聞いていたせいで、比較対象が歴代屈指の人気作となっていたことも大きいのではないかと思います。私に限らず、世の中はアナ雪を見すぎてしまったのではないでしょうか。いい餌を与えられた動物はグルメな舌になり餌の選り好みが激しくなるように、一度あのクオリティに見慣れてしまった私たちは、自然とハイレベルな映像を求めすぎてしまいます。そういった映像と差別化を図ろうとした今回の絵本風作画への挑戦は、結果的には迫力に欠けるものになってしまいましたが、その姿勢を感じられたのはよかったです。
結論
伝えたいテーマが先行しすぎてキャラクターや脚本に無理が生じてしまった作品で、このままマイナー作品入りするであろうクオリティ。
同時上映の短編映画を60分くらいの映画にした方が記念作らしい出来になったのではないか?
最後に
いかがでしたでしょうか。あくまで私なりに思ったところを書いてみたつもりで、この考えに対して賛同もあれば批判もあるかとは思いますが、様々な意見お待ちしています。
映画について抱いた感想に正解も間違いも無い。これも私の映画観です。
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