【最高のコーチは教えない】吉井理人のコーチング哲学
実は吉井理人さんを意識して見始めたのはWBCの頃だったと思う。
すらっとした長身と白髪が印象的で、スポーツタイプの眼鏡姿がなんともお似合いのイケオジな雰囲気の人だなぁと思った。
時折見せるチャーミングな仕草や表情に加えて、ゆったりとした関西弁、穏やかに選手を見守る姿も気になった。
あ、そうだ。この人「佐々木朗希のパパ」だったっけ?みたいな……?
現ロッテの吉井理人監督(この本が書かれた時はピッチングコーチ)のコーチング論はなかなか面白かった。
この理論、スポーツはもちろんのこと、中間管理職のビジネスパーソン、子育てをしている方、悩み相談を受ける方なんかにも応用できるので、おすすめしたい。
さて、この本を読むと、WBCであんな風に選手を穏やかに遠くから見守っていた理由がよーくわかる。
WBCではピッチングコーチをしていた吉井さんは、ほとんど選手に教えていたり指示している姿は見なかった。
にこにこと一言二言声をかけたり
「お、がんばれよー!」とか
「いけそう?」
みたいな声しかかけていない感じ。
これ、あえてなんですね!
WBCに選出されるような選手たちというのはもう超一流ばかりだから「既に主体性を持って自分の目標を持ち、自分の課題を認識して、コツコツと持続させたり修正させる能力」が備わっている。まあ備わっているからこそ超一流なんだけど。
だから教える必要すらないわけだ。
だけど、そんな選手ばかりではない。そんな時にはカテゴリー分けして指導の方法を変える。
①右下)指導型コーチング
技術やスキルを優先して教えるべき人へ
・高卒ルーキー〜3年目ぐらいまで
・新入社員〜3年目ぐらいまで
②右上)指導育成型コーチング
実力は中級者レベルだが難易度の高い課題が与えられる
自ら課題を発見し、モチベーションを上げるためのコーチングスキルが一番難しい局面
・二軍に登板機会がある
・一軍と二軍を行き来している
・肩書きがつく前の中堅社員
③左上)育成型コーチング
技術やスキルはほぼ完成しているが、プライドが高く精神的には未熟
迷いが生じるので細かい技術指導はせず、練習の仕方や社会でのあり方を指導する
信頼関係を損ねないように苦心する
・(たぶん)一軍レベル
・主任、係長、チームリーダー
④左下)パートナーシップ型コーチング
コーチはほとんど何もせず見ているだけでいい
問題が起きた時のために周到な準備が必要
・ダルビッシュ投手ぐらいのレベル
・たぶんWBCクラスの選手
というわけで、④ばかりの選手が集まったWBCでは見守っていればよかったのだなぁとわかる。
そして、各々のパターンでどのようにコーチングしていくか、かなり詳細に語られているので「教える」仕事をしている方には是非おすすめしたい。
3ステップのコーチング
①「観察」相手を知る
②「質問」相手に質問する
③「代行」相手になったつもりで答える
本書ではものすごく具体的な例を挙げながら解説してくれているのでイメージしやすい。
また繰り返し書かれているのは「選手主体」であること。
教える(teaching)ではなくコーチング(coaching)でなければならないということだ。
人から教えられたことを遂行できる能力をつけても伸びに限界がある。
だからいつも選手が自ら主体的に考えて動ける力をつけることが大切なので、時間がかかっても答えを教えない。
「今日のプレーはどうだった?」
「どうすればよかったと思う?」
「これからどうしたらいいと思う?」
など声をかけて自分で振り返りをさせながら自分で答えを見つけさせる。
その時に人によって答え方の深い浅いは当然あるので、焦らずに待つことも大切だということだ。
絶対に難しいですよね……。
頭ではわかっていても、答えを教えた方が早いとか、自分でやった方が早いとか、イライラしてしまうと思いました。
吉井監督は若い頃それはそれは暴れん方で短気だったそうです。
上手くいかない時には壁に穴を開けたり、ベンチに吉井さん用のサンドバッグが置かれていたりと、随分と気性が荒かったそうです。
(古田さんの証言有り)
なので、若い選手のために自分を理性で抑え、今はご自身の感情を制御されて、それがとてもナチュラルに見えるところまで来られているのが凄いことだと思いました。
かっこいいし、おしゃれで、紳士的で、おちゃめな吉井監督が好きです!
吉井理人監督の一日
気さくに誰とでも会話しながら、じっくり選手を観察する姿や、選手たちだけで輪になって気になる点を話す場面
筋トレが趣味な吉井監督が、さらっと「筋トレしている選手も見られるしね」とおっしゃったところが印象的でした。
※個人的にはカメラに映った時に帽子のつばを指でスライドさせるのが好きです
(ちなみに私はオリックスファンですが、ロッテも好きで安田選手推しです)