(毎週ショートショートnote参加作品)バイリンガルギョウザ
曽祖父の頃から東京に住んでいる俺は生まれながらの江戸っ子として育てられた。
東京から一歩も出ることなく40年近く生きてきた俺は、窓ガラスに貼られたメニューに目を引かれた。
「バイリンガルギョウザあります」
新しいもの好きなのも江戸っ子の気質だ。俺は暖簾をくぐって店に入った。
店の中はこざっぱりとしていて、無駄なものはない。気に入った。
ずっとこの店の中だけで生きてきたような高齢の親父さんが厨房から出てくる。
「おとっつぁん、バイリンガルギョウザっての一つ!」
「うちのは大きいけど大丈夫かい?」
「あたぼうよ!たのまあ!」
「あいよー!」
見た目からは想像もできない大きな声を出した親父さんも気に入った。
5分ほど待つと、うまそうな焼き餃子が現れた。
まさかこれを食べたらバイリンガルになれるのかと自分の妄想に苦笑しながら餃子を口に入れた。
その時、親父さんが言った。
"How is it?"
「あんたが言うんかい!」
初めての関西弁が生まれた。
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(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました!