(毎週ショートショートnote)宝くじ魔法学校

ネット上で発表された番号と同じものが私の手の中にある。
宝くじ魔法学校卒業後も技に磨きをかけたが、いざ番号を合わせられると「こんなものか」という虚無感だけが残った。
私はPCを閉じ、銀行へと向かった。外は晴天だが心は晴れない。

銀行近くにある病院の前で一人泣いている子がいた。

「どうしたの?」
「お母さんが病気で、今すぐ手術が必要だって」
「お父さんは?」
「お空の上」
途切れ途切れに話す彼女を見て、早い内に両親をなくした私は手の中にあった紙を差し出した。
「これをあげるよ。これでお母さんは助かる」
紙を一瞬見つめて病院へ走る彼女の背中を見て、私は初めて青空を見上げた。

「総理、うまくいきましたね」
「ああ、魔法学校卒業生の活躍がこんなに公共事業の進捗に影響を与えるとはな」
「でも、子供に魔法を覚えさせて当選金を回収するってのは良いですね。誰も傷つかない」

カメラに映る男の顔は晴れやかで、いつまでも解けない魔法にかかっているようだった。

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(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました!

参考: 宝くじ収益金の使い道


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