(毎週ショートショートnote参加作品)チャリンチャリン太郎
喫茶店でコーヒーを待っている間に手に取った週刊誌。あるページがふと目に入った。
「あなたのお仕事、増やします。チャリンチャリン太郎」
男の経営する工場は、安価な海外製品に押されて仕事が大きく減っていた。
藁にもすがる思いで、男はそれを購入することにした。
自宅に届いたチャリンチャリン太郎は、おかっぱ姿の少年を模した人形で、なぜか自転車に乗っていた。
こんなものが本当に役に立つのかね。
そう思った矢先、電話が鳴った。
電話の先は縁遠くなっていた取引先からで、注文を知らせるものだった。
電話を切った後、またすぐに電話が掛かってきた。
まさか、な。
ちらりと机の上の人形を見ながら、男は電話を取った。
「しかし、社長のところもお忙しそうですね。儲かってるでしょう?」
「それが、売り上げが入ってくるのはまだ当分先だから、今はなんとかやりくりしているところで、苦しさは変わらないんだよ」
「なるほど。自転車操業ですか」
机の上にある人形が、ニヤリと笑った気がした。
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たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。いつも、ありがとうございます!