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◆9ISkCpDN.U作品解説1 概要と短編編

 これまで何度か触れた伝説のやる夫スレ作者(主に主観による)である◆9ISkCpDN.U氏について、もういっそ解説しちゃえよということで。
 作品及び作者解説、墓場(Internet Archive)からサルベージした作品閲覧サポートまでやってみようかと思います。


■ ◆9ISkCpDN.U氏について

 例によってやる夫Wikiに記載があるわけですが、その記載熱量は決して高いものではなくマイナー作家どまりのものです。

 初投稿は2008/10/25、投稿作品は「やる夫で読む大いなる遺産」。
 これは色々な意味で伝説の作品となっていくのですが、当初はガチ海外文学作品をやる夫スレ化した物珍しさはあったものの、地味な作品群の一角といったところ。

 2008年というのはいわゆるやる夫スレ4大長編と呼ばれた作品群の開始~全盛期にあたり、そういった意味でも目立つ存在ではありませんでした。
 ・・・あの年末がくるまでは。

■作品リスト(時系列)

 作品数が多いわけではありません。
 残されたのは長編2(あるいは3)、中編1、短編3といったところ。
 以下に作品リストを時系列でまとめます。


「やる夫で読む大いなる遺産」(長編)2008/10/25 ~ 2009/1/10
 原作(小説):チャールズ・ディケンズ「大いなる遺産」

「やる夫のクリスマスキャロス」(短編)2008/12/24
 原作(小説):チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」

「金糸雀「やる夫のタッグバトルかしらー!」」(短編)2008/12/31

「やる夫で読む大いなる遺産 幻影旅団編」(長編)2009/1/18 ~ 2009/5/3
 原作(小説):チャールズ・ディケンズ「大いなる遺産」

「やる夫は英国式に人生を歩むそうです」(中編)2009/8/18 ~ 2009/9/13
 原作(小説):チャールズ・ディケンズ「デイヴィッド・コパフィールド」

「やる夫さんの心はホンマ愛の宝石箱や」(短編)2009/12/24
 原作(小説):チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」

「やる夫は地上の星になるそうです」(長編)2010/2/20 ~ 2010/8/25エター
 原作(ゲーム):「ドラゴンクエスト9」


■初期短編2編

 最初に扱うのは2008年末に投稿された短編2編。
 大いなる遺産と並行して投下された短編2編は、この作者の異能を界隈に知らしめると共に作品群の大きなターニングポイントともなりました。
 なお以降、自前ブログへのリンクがありますが内容は「やる夫観察日記」様の当時の掲載内容を「Internet Archive」経由で転載したものになります。

①「やる夫のクリスマスキャロス」

 原作(小説):チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」
 作者の愛するチャールズ・ディケンズ作品のやる夫化第二弾です。

 原作であるクリスマスキャロスはディズニーで複数回アニメ映画化しており、スクルージ・マクダック主演による同作品は多くの方が見たのではないでしょうか(ディケンズ作品とは知らずに)。

 原作では守銭奴な主人公がクリスマスなんぞ怠け者のサボる言い訳などとイキっていたら、3人の精霊なるものにブレインをウォッシングされて普通のいい人に堕落?するというお話です(悪意のある超意訳)。

 ではこの短編、そんなハートフルなイイハナシダナーになるのかというと当然、そんなこともなく。
 主人公であるやる夫は守銭奴ではありますが、特に原作では描写された覚えのない鍛え抜かれた鋼の肉体と、極まった格闘技術を持ったチョイ?悪中年オヤジなのでした。

記念すべき?やる雄誕生の瞬間
原作ではやる夫としか呼ばれていないが、
そのインパクトからやる雄、あるいはキャロル夫として別キャラ扱いになった
カタンスレではお世話になりました

 この作品の見所はなんといっても濃厚なバトル描写・・・とそれに至る過程の超展開。クリスマスも、それに浮かれる人々も全てくだらないと断じ、肉体鍛錬に勤しむやる夫がいつの間にやら悪霊とバトルが始まり・・・あれ?・・・。
 あと投下が実際にクリスマス・イブに行われているというのも、付き合って合いの手をいれるvipperとの一体感があり高ポイント。

クリスマス・・・キャロル・・・?

 やる夫+ディケンズ+オリジナルAA+バトルという食い合わせな闇鍋をVIPで鍛えたシュールギャグで強引にまとめきる、この作者だけに許された黄金比を確立させた作品と言えるでしょう。結末が投げ気味なのも含め・・・。

②「金糸雀「やる夫のタッグバトルかしらー!」」

 衝撃のクリスマスキャロルからわずかに1週間後、年末大晦日に投下されたのがこちらの「 金糸雀「やる夫のタッグバトルかしらー!」」。
 原作は特にない、あえて言うなら潮吹あわび風ドラえもんとRozen Maiden(ローゼンメイデン)でしょうか。

 一応説明しますと金糸雀(かなりあ)はローゼンメイデンの登場人物。
 版権作品キャラを自由に使うやる夫スレで、当時はRozen Maidenのキャラが多用・愛用されており、金糸雀も(当時は)「誰?」、「リアル不人気」、「ファンは全国で5人」など覚醒前のオリックス・バファローズのように愛されておりました。
 そしてこの短編でも別に主役ではない・・・。

 この作品の概要を説明するには言葉はいらず、1スレ目を見れば十分。
 まぁこういうことです。

年末の名物だった格闘技番組感

 この作品の見所は(なぜか)わずか1週間で圧倒的に進化したバトル描写。様々な制約のあるAAという手法にも関わらず人物間の大きさや遠近法も考慮した構図・描写は絵として見ているだけでも面白い。
 そしてインパクトのある新造・改変AA。本当にここらへんは隙がない。

いや、なぜ長門が?
圧倒的な奥義『時間凌辱』、しかしそれの会得のためには悲しい過去が・・・

 しかしバトルだけをしているわけでもなく、最終的には壮大な伏線回収?と共に宿命付けられた対決に結末が訪れます。

 ディケンズ要素のない珍しい作品ではありますが、それ故に物語的な制約もなく、やりたいことをやってサッと終わりにした感。
 ちょうどスレの終わりに(リアルに)年が明けるという情緒も含め、非常に綺麗に(あるいは汚く)終わっています。

 作品としてはクリスマスキャロルで確立した格闘物要素に能力バトルを噛み合わせ、その後の作品の方向性を決定づけた作品と言えるでしょう。
 具体的に言うと、大いなる遺産が年明けから幻影旅団編として文学物から能力バトル物に移行する壮大な前フリとなりました。
 ・・・何を言ってるかわからねーと思うが、そのうち解説する予定だから待っててくれ。

■今回の結論

 というわけで◆9ISkCpDN.U作品の短編2本の紹介でした。

 (実質)クリスマスキャロルの続編で短編最終作の「やる夫さんの心はホンマ愛の宝石箱や」も加えてもよかったのですが、内容の一部が「やる夫は英国式に人生を歩むそうです」を読まないとわからない、あるいはネタバレを含むため後日にしたいと思います。

 時系列的には「やる夫で読む大いなる遺産」から説明するのが筋というものですが、正直に言って遺産は序盤の展開に退屈成分が多いため、まずは入門編として短編をご紹介したものです。

 まぁ当時の空気感やキャラの(やる夫スレ的な)扱いなんかも含めて面白い作品であって、15年以上の時がたった今となっては通用するかわかりませんが(やる夫スレとしては)短いのでまずは読んでみて、面白いと思ったあなたは才能?があります。
 深淵なる◆9ISkCpDN.Uワールドに迷い込んでみてください。
 勝手ながらお手伝いしますので。

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