きわきわの話(前編)
私は令和4年度の行政書士試験に合格して、会社員をやりながら副業で行政書士をしています。今回は「きわきわの話」、そう書くとなんかドキドキしちゃうオッサンです。きわきわの話とは士業間の業務の境目の話、いわゆる業際(ぎょうさい)の話について書いてみたいと思います。
業際(ぎょうさい)の話とは?
業際ってなに?聞いたこともないし、書いたことも使ったこともない方がほとんどだと思います。私も行政書士に登録するまでは全く知りませんでしたし、聞いたこともありませんでした。業際の話とは独占業務をしている士業間の業務の境目の問題でして、士業の既得権益の争い、士業同士の仁義なき戦いとも言える話です。
独占業務とは?
士業には独占業務というものがあります。独占業務とは、その資格を持っている人じゃないとやっては駄目という業務のことです。分かりやすい例えとしては、医師免許を持っていない人は医師として患者を診てはダメよとか、弁護士免許を持っていない人は裁判所で弁護しちゃダメよ、といった話になります。このように病院で患者を診るとか、裁判所で弁護するとか、分かりやすいのですが、たとえば、顧客の相談を受けたり(=コンサル)例えば相談に乗ったり、役所などに提出する書類を作成したり、といった業務でこのきわきわの問題が出てきます。
きわきわの問題が一番多いのは行政書士?
行政書士はその業務範囲が広すぎて、何をやっているかよく分からないという方も多いと思います。官公署など役所への書類提出、契約書の作成、市民法務などですが、書類の種類は1万種とも言われ、その業務範囲は広すぎることから、他の士業、特に弁護士、司法書士と仁義なき戦いを繰り広げています。もちろん、仲良くやっている方の方がほとんどですし、行政書士同士もライバルなので、このきわきわの争いは、個人同士というよりは弁護士会、司法書士会、行政書士会といった団体間の既得権益をめぐる争いといった方が正しいかもしれません。
弁護士との仁義ない戦い
まずは法律系士業の最高峰の弁護士との戦いです。
例えば、行政書士の仕事にも遺産分割協議書作成や離婚協議書作成があるのですが、弁護士も業務されています。遺産分割でも離婚でも揉めていなければ行政書士が作成しても問題ないのですが、
・法的紛争解決の必要性あり→弁護士法に抵触する
・法的紛争解決の必要性なし→弁護士法に抵触しないから、行政書士でも対応できる、ということになります。
分かりやすい例をいうと、離婚協議書でも双方が納得&合意した内容を証跡として協議書にまとめるだけなら行政書士の仕事になりますが、双方合意していない、例えば、どちらか一方だけの依頼で、その依頼主に有利な内容の離婚協議書を行政書士が作ってしまうと、この弁護士法第72条に抵触するということですね。気をつけないといけません。
司法書士との仁義なき戦い
次に合格率3%の法律系士業の難関資格の司法書士との仁義なき戦いです。
相続関連業務は行政書士のほか、弁護士、司法書士も、そして税理士も取扱い業務にしている分野となります。語弊があるかもしれませんが、一発当てるとデカいですからね。特に相続する財産の中に不動産がある時に司法書士と仁義なき戦いになることがあります。それは司法書士がその独占業務である不動産登記という業務が登場するからです。不動産は誰のものかを明確にするために、所有権の所在を第三者に知らしめる登記が必要になります。行政書士の業務には官庁署に対する書類作成ですが、この官公署が法務局、書類が登記申請書になってしまうと、司法書士とのきわきわの話が出てきます。実は行政書士が依頼人のために、官公署である法務局に提出する書類の登記申請書を作成して、依頼人自ら提出するなら問題ないかなと思っていましたが、私と同じように考えて裁判までされた方がいるようです。残念?ながら、その方は敗訴されています。つまり、登記手続を代理することだけが司法書士の独占業務ではなく、たとえば、行政書士が登記申請書を代行作成して、依頼者本人がその申請書を用いて法務局に登記申請書を提出した場合も司法書士法に違反するということですね。
税理士との仁義なき戦い
そして税理士です。税金に関しては境界が分かりやすいので、他の士業の業際の問題の話はあまり聞きませんけど。
税理士の独占業務は「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」と定めています。つまり、税務署への税金の申告、および税務署から調査や処分を受けたときの主張や陳述などの税務について、納税者からの相談に応じることが税理士の独占業務となります。行政書士として注意しないといけないのは税務相談になるかと思います。Google先生に聞いて分かるような内容でしたら問題ないと思いますが、その域を超えて、依頼人の税務相談に乗ると税理士法違反になります。たとえば、行政書士としてネットで調べて分かることを良かれと思って教えたとしても、「行政書士の先生に税金について相談して、色々と教えてもらった」という状況になってしまうと、税務相談と言われて、この税理士法に違反してしまうということになりますね。
まとめ
このきわきわの話を知らずに業際を超えて業務を行うと罰金や業務停止、そして最悪は資格剥奪になるので気をつけないといけません。一般の方には見えない且つ関係のない世界で士業間のきわきわの仁義なき戦いが繰り広げられているという話でした。どちらかというと弁護士会、司法書士会、行政書士会、税理士会といった団体間の勢力争いの感は否めませんが、士業は皆んな仲良く、日本全体を盛り上げていけるといいなと思います。
おまけ
日本の給料「職業図鑑」の中では行政書士が一番カッコいいんです!
きわきわの話の後編も書いてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました!