俺より熱いゲーム好きに逢いに行く!BitSummit Vol.6 で出会ったゲーム
5月12、13日に京都・みやこめっせにて行われたインディーゲームの祭典「BitSummit Vol.6」へ行ってきた。2013年から開催されているこの催しについて毎年興味はあるが、現場で何が得られるのか? というところにあとひと押しがなく、結局ネットでのレポートを見る程度になっていたのだ。
しかし今年は無性にBitSummitが気になっていた。普段レトロゲームコミュニティで活動している反動だろうか? 今のビデオゲームを取り巻く空気を肌で感じたかったのもその理由だ。
とにかく四の五の言わず、今回はBitSummit Vol.6で実際にプレイして楽しかったゲームを紹介していくことにするので、お付き合い頂きたい。
RPGタイム!〜ライトの伝説〜
開発元:DESKWORKS
来場前に読んだ、ゲームキャストの開発者インタビュー記事で注目していた作品。展示も作品のコンセプトにあわせた、小学生の教室、デスク周り、スタッフTシャツもノートに手書きロゴというこだわりにまずはニンマリ。
ゲームは、プレイアブルでの展示で特定の場所まで公開されていた。小学生がノートに綴った「ぼくのかんがえたさいきょうのRPG」を実際にノートに鉛筆で書いたイラスト風のグラフィックで展開していく内容。小学生が作ったRPGを軸に進んで行くのだが、ゲームはプレイヤーの視点以外に、このゲームを構築する神(作者の小学生)の視点でメタ的な演出も行われる。
UIのダンボール風なボタンや、進捗管理で出てくる付箋、HPのゲージはメジャーと文房具などをモチーフにして、プレイのメイン画面となるノート部分以外も作り込みに妥協がなくその世界に没頭できる。
プレイしていて思ったことは、このゲームはどの年齢層に向けてつくっているのか? ということだったが、少なくとも45歳のオッサンがプレイしてもノスタルジーを感じる楽しさがあった。ゲーム自体は丁寧に作られており、真のターゲットと思われる小学生ぐらいの子供にもぜひプレイしてもらいたいし、親子でプレイしながらワイワイやりたいゲームだと思った。
GRAY GROFA
ブースの展示を見た瞬間にわかる8bit風味のSTG、しかもMSX1っぽさに惹かれプレイ(あとで調べると、MSX上で開発されているとのこと、ガチすぎる!)。
見た目は、『R-TYPE』オマージュ? と思ったのだがショットの残数管理や、このゲーム最大のウリである敵の機体を倒すには、パイロットが搭乗していなければ倒せないというシステム。このシステムのおかげで、通路が塞がれて詰んでしまう。作者の方曰く、STGではなくパスルゲーとのこと。「デモプレイを行う人がそこに気づくかどうかを観察しながら、展示している」とのことだった。解けたときの楽しさや、パズルゲームとはいえアクションやSTGの要素があり、リアルタイムに処理をするスリリングな展開が楽しめるタイトルだった。
カニノケンカ -Fight Crab-
開発元:Nussoft
過去作に『ACE OF SEAFOOD』などがある海産物系デベロッパー(笑)Nussoftが製作をする、リアルなカニの対戦ゲーム。
ルールはただひとつ、相手のカニをひっくり返せば勝利。コントローラー左右のボタン割り振りとカニの両手がよく馴染む。去年の夏コミで公開されてから気になっていたゲームだが、実際に対戦を行っているのを見るとギャラリー受けもするのでぜひアーケードいや、EVO、e-Sportsの競技として…と夢見たくなるタイトルであった。
KOKUHAKU
開発元:1-10drive
クマっぽいぬいぐるみが主人公で、モノトーンの世界で物語が進行する。プレイ開始直後は、赤のラインが目を引く電源ケーブルをどんどんコンセントに繋ぎ動力を復活させていく。
デモプレイは早々に敵にやられてしまいゲームオーバーとなってしまったのだが、突然敵が出てきてゲームオーバーになってしまうのも程よいゲームのスパイスとなっていて、緊張感を持続できるという点は良かった。ゲームの世界にグイグイ引き込まれていく世界観を構築しているのはとても自分好みであった。
ブース内にあった主人公のフィギュアとかこういうアイテムも用意しているのが開発者のタイトルに対する愛情を感じてよかった。
〜まだまだ語りたい! がひとまずここまで〜
ーーーー こ の 間 4 日 の 時 間 が 過 ぎ た ーーーー
つづき、は〜じま〜るよぉ〜。
World for Two
開発元:Seventh rank
ピクセルアートが美しいアドベンチャー『World for Two』。何度かメディアの紹介記事を見ていたので見覚えがあるな〜という状態だったが、実際にデモをさわってみると非常に手触りが良い。
ゲームの内容は、博士が作ったアンドロイドがゲーム内の世界を救うという内容。物語のヒキや画面内の雰囲気は非常によく続きが見たくなる内容だった。この後数本BitSummitで見た日本人製作のアドベンチャーゲームを紹介するが、この分野とインディー、同人の開発というのは相性がいいものなのでは? と仮設を唱えてしまうぐらい作り手、受け手のマーケットがあると感じた。
おわかれのほし
開発元:ところにょり
『ひとりぼっち惑星』などでおなじみのところにょり氏の新作。作家性がいかんなく発揮されている、"ところにょり節"というものがあるという時点でいわゆる、ファンなら問答無用で買い! のようなデベロッパーだ。
ゲームプレイはあえてせず、他の人がプレイをする様子を見ていたのだが、モニタに映る世界、流れる時間に引き込まれる。プレイしてみたい。観戦しているだけでその気持が生まれるタイトル、プレイをせずにストーリーを追うだけじゃ感じられない体験がビデオゲームにはある。その特別な体験を与えてくれそうなタイトルであった。
Parasite Seed
開発元:HZ3 Software
『StrangeTelephone』をリリースしたHZ3 Softwareの新作アドベンチャーゲーム。『StrangeTelephone』の作者がアドベンチャー? と思ったものの、デモの動きは軽快で悪くない。ゲーム内容は、主人公がパラサイトの種を発射して、攻撃したり、フィールドに種を植え付け、パラサイトが成長しそこを足場にしたり、定置のディフェンスにしたり。パラサイトのギミックが独特のアクションを生みそうなゲームだった。
展示されていたデモでは、主人公が種を撃ち、パラサイトが芽吹く様子が体験できた。その設定、世界観の提示は作者の個性がいかんなく発揮されており、今後のステージやアイテム、ギミックの作り込みに期待したい。
UNREAL LIFE
開発元:hako 生活
ブースを見て、デモをプレイして、『StrangeTelephone』の人かな? と思わず思って「以前電話のゲームを出してましたっけ?」とかhakoさんに言ってしまいやらかしたのは私です(大変失礼いたしました)。
注目するオブジェクトの今と過去が見えることにより、ゲーム進行のヒントがわかるという記憶という時間軸を上手く使ったアドベンチャーゲーム。どこかしら見覚えのある風景がピクセルアートで表現され、この不思議な世界を構築していく。このあたりのインディーというより、同人と呼んだほうがしっくりくるタイトルの重々しい空気と、非日常感は日本人の得意とするところなのかな? と思ったりもした。
From_.
開発元:NAKAJIMA
水の国で郵便配達員となり手紙を人々に届けることで物語が進んでいくアドベンチャーゲーム。すでにリリースされているタイトルだったが、私はBitSummitの公式サイトで出展一覧の一番最初に掲載されていてPVなどを見て記憶していた程度のゲームだった。
展示されていたゲームをプレイすると、アドベンチャーというよりはノベルと言う感じで、小説を読んでいるような気分になった。BGMはピアノでの楽曲で統一され、画面はMSXかよ! と思うような単色のクラシカルな世界なのだが、BGMはリッチなピアノのサウンド。一見アンバランスと思えるグラフィックとサウンドの組み合わせだがこれが実に心地よい。リラックスした雰囲気の中進行していく物語。ここまできたらもっと引っかかりの少ないテンポの良さを期待したかったが、それはもう少しプレイして判断したいと思った。雰囲気のあるゲームは良い。
ghostpia for Nintendo Switch(仮)
開発元:超水道
iOS版でもリリースされている同タイトルのNintendo Switch版。ジョイコンをアナログのチューナーに見立てて回転させるとアナログラジオの様にチューニングがはじまり、チューニングが合うと画面に鮮明なゲームの場面が現れ。そのエピソードがプレイできる。というギミックも備えていた。
ゲームデモのプレイは短時間だったので特に印象に残ってはいないのだが、このあたりの物語を見せていくタイトルで雰囲気がよいゲームが本作以外も多数あったところが印象的だった。同人との線引も踏まえ考えさせられるところでもあったのだが。
OLIJA
ピクセルアートで構成された、2Dアクションゲーム。ヤリを投げて投げた先にプレイヤーがワープ出来るアクションが気持ちいい。ソードでの近接攻撃など爽快感のあるアクションになっている。他の出展タイトルでもあったが今までの2Dアクションから発展させたものも多数みられた。ビデオゲームの新規性というのは何なのか? ということも考えさせられた。
BitSummitで見た景色
華やかなステージイベントやNintendo Switch、プレイステーション、Xboxの3大家庭用プラットフォームのブース。2013年に約40組の出展、100人超程度の来場者で始まったBitSummit。翌年より現在のみやこめっせに会場を移し、一般公開のイベントへとなり今に至る。
「日本の独自カルチャーを持つ小規模開発のタイトルを世界に!」という当初のお題目から、市場の変化に合わせるように変貌していったこのイベント。ゲームメディアで報じられているところだけを見ていると、海外のデベロッパーが元気で、日本のデベロッパーはネームバリューのある開発者しかピックアップされない感じのイベントだと私は思っていた。
だが実際に現場に足を運んでみると、同人ゲームのイベントの様な雰囲気もある空間があったり、商業的イベント的なブースがあったりと振り幅は広く様々なゲームが見られた。その中で共通していたことは、みんなビデオゲームが大好きだ。という好きがあふれる空間だったことに尽きる。
開発者が実際にブースに立ち来場者とコミュニケーションをとっている姿に何とも言えないゲーム愛を感じたのだ。いつリリースできるかもわからない個人や小規模開発のタイトルだが、そこには好きがつまっていた。
展示されるゲームの選考基準の不透明さや、同時開催されていたメガビットコンベンションが今回は開催されなかったことなど、残念だった部分も少なくはなかったが、個人の思いでゲームをリリースし、世に問いかける。そのビデオゲーム製作の原風景を今感じられたのは非常に刺激的だった。
初日終了後に有志により行われた、開発者の集い「ポリポリ☆クラブ」にも参加してみたのだが、これも非常によいサイドイベントで、共通の話題があればぼっち参戦でも楽しめる良イベントであった(私が酒飲みで飲み会的なイベントが好きってのもあったけどw)。
BitSummitを中心とした同時開催のサイドイベントが充実したら参加する側としては忙しくて仕方ないんだろうけどお祭り度が増してもっと楽しくなりそうとか無責任に思ったものであった。
来年もまたカメラ片手に参戦すっかな!