華
どうしてこわかったんだろう。
こんなに愉しいこと
こんなに愛していたことが
こんなに
そのためだけに生まれてきた
このわたしの宝物が。
どうしてこわかったんだろう。
ずっと長い間
たたまれていたわたしの翼。
蕾のままだったわたしの華。
もういいんだよ。
外に出ておいで。
もう寒い冬は終わり。
俳優たちは皆
己の天職を愛し
それに溺れるために
今日まで歩いて来たのだ。
責任で、演技は出来ない。
お金で、作品を定義することは出来ない。
お客さまが
お金を払い
足を運び
時間を共に過ごして下さる
それは愛だ。
愛に応える
いや、爆発し輝き続ける
発光体としての演技を
お客さまに手渡すのだ。
それは華。
それは翼。
それは…生命そのもの。
あいしている。
今日までのすべて。
出逢った人たち。
友だち。
夫。
母。
あいしている。
とめどなく激しく。
どうしようもなく
激流のように。
それの何が
こわいことがある。
わたしはただ
ずっと
すべてを愛したかった。