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日本の漁業が危機に瀕している理由――改正漁業法の影響とは?


スーパーの店頭で目にする魚介類。多くの人が「日本の魚が少なくなり、輸入物ばかり」と感じているかもしれません。背景には、日本の漁業政策の大きな転換があります。その一端を担うのが、2018年に施行された改正漁業法です。

70年ぶりの改正と外資の参入


2018年6月、政府は水産政策改革を掲げ、同年12月に改正漁業法を施行しました。それまで日本の漁業権は地元の漁協や漁業者に優先的に割り当てられていましたが、この改正により優先順位の規定が廃止され、外資を含む一般企業の参入が可能となりました。

政府の目的は、漁獲量が減少傾向にある中、外部からの企業参入によって養殖業を活性化し、生産量を増やすことです。実際、30年前には1000万トンを超えていた日本の漁獲量が、現在では500万トン以下にまで減少しています。しかし、企業参入が本当に日本の漁業にとってプラスになるのか、疑問の声も上がっています。

新潟の漁業と魚市場の現状

日本海に面した新潟県では、ブリやサケ、カレイ、イカなど、豊富な魚種が水揚げされます。新潟市中央卸売市場や寺泊の「魚のアメ横」など、地元市場では新鮮な日本産の魚が並び、多くの消費者や観光客でにぎわっています。これらの市場では、地元漁業者が直接提供する魚介類が多いため、日本近海で水揚げされた魚が主流です。

一方、スーパーでは輸入物の魚が多く陳列される傾向があります。例えば、冷凍サケやエビなどは、チリやノルウェー、ベトナムといった海外からの輸入品が主力です。この違いは、価格や供給の安定性を優先した流通システムが影響していると考えられます。

日本の魚が「日本のもの」でなくなる危機


漁業権の見直しにより懸念されるのが、日本近海で獲れた魚が「日本のもの」として扱われなくなる可能性です。現在、海洋法では200海里内の近海で獲れた魚はその国の資源とされています。しかし、外資系企業が漁業権を取得した場合、日本の近海で獲れた魚がそのまま海外へ輸出されるリスクが生じます。

例えば、中国やアメリカの企業が漁業権を取得した場合、日本近海で獲れた魚が日本国内ではなく、海外市場に流れる可能性が高まります。国内で魚を食べたい日本人が買い戻す際には、以前よりもはるかに高額な価格を支払う必要が生じるかもしれません。結果として、日本人が手頃な価格で新鮮な魚を楽しむことが難しくなる恐れがあります。

養殖業も万能ではない


「それならば、天然魚ではなく養殖魚を増やせばよいのでは?」と思う方もいるでしょう。しかし、養殖業には養殖業なりの課題があります。餌となる小魚の確保や環境負荷の問題など、養殖拡大には克服すべき障壁が多く存在します。

さらに、今回の改正漁業法には、養殖業を積極的に推進する具体的な内容は含まれていません。この法律が果たして日本の漁業を持続可能な形に導くのか、疑念を抱かざるを得ない状況です。

地元の魚を守り、味わうために


地元新潟では、魚市場に足を運ぶことで、日本産の新鮮な魚を手に入れることができます。新潟市中央卸売市場や寺泊魚の市場通り、佐渡の魚市場などは、新潟近海で水揚げされた魚が豊富に並び、観光や地域振興にも寄与しています。

一方で、スーパーでは輸入物が多い現状が続いています。これを変えるには、地元産魚介類の価値を再認識し、積極的に購入する消費者の行動が重要です。また、漁業政策に関心を持ち、地域の声を国政に届ける努力も必要でしょう。

まとめ


今回の改正漁業法は、日本の漁業に大きな影響を与えています。新潟のように豊かな漁場を持つ地域では、地元産の魚を守る取り組みが求められています。私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、地元産魚介類を選ぶことで、日本の漁業を支える一助となるでしょう。

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