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水道法改正がもたらした変化と民営化のリスク
2018年12月に成立し、2019年10月に施行された改正水道法は、人口減少やインフラ老朽化が進む中、水道事業の基盤強化を目的に策定されました。その中で、特に注目を集めたのが「官民連携の推進(コンセッション方式の導入)」です。この仕組みは民営化の一歩として大きな議論を呼んでいます。
改正水道法の主な変更点
1. 広域連携の推進
都道府県が市町村を超えた広域的な視点で水道事業者を調整し、水道事業の効率化を図る仕組みを導入。
2.適切な資産管理の推進
水道施設の維持・修繕義務を明確化し、老朽化したインフラの適切な管理を促進。
3.官民連携の推進(コンセッション方式の導入)
地方自治体が水道施設の運営権を民間事業者に委託できる仕組みを導入。これにより、民間企業の資金やノウハウを活用し、運営の効率化を目指す。
4.指定給水装置工事事業者制度の改善
指定工事業者の資格に更新制(5年)を導入し、事業者の資質保持を図る。
民営化がもたらすリスク
「コンセッション方式」は地方自治体が水道事業の主体を維持する一方、民間企業が運営を担う制度です。しかし、この仕組みには以下のリスクが伴います。
• 公共性の低下: 利益追求が優先され、住民サービスや水質管理が疎かになる可能性。災害時の対応が遅れる懸念も。
• 料金の高騰: 民間企業の利益確保のため、水道料金が上昇するリスク。
• 情報の透明性不足: 民間企業が情報公開を十分に行わない場合、水質や運営状況に不安が生じる。
• 外資系企業の参入: 外資が地域事情を無視した運営を行い、利益が海外に流出する可能性。
世界の水道事業と主要企業ランキング
世界の水道事業は、以下のような巨大企業が牽引しています。これらの企業は民営化による成長を加速させており、日本市場への参入も視野に入れています。
1. アメリカン・ウォーター・ワークス(アメリカ)
売上高:約3兆6,718億円
アメリカ最大の公共水サービス会社で、複数の州で上下水道サービスを提供。
2. ヴェオリア(フランス)
売上高:約2兆8,729億円
世界最大級の環境サービス企業で、水道事業においても圧倒的な影響力を持つ。
3. 香港中華煤気(香港)
売上高:約1兆9,849億円
天然ガス事業を主力としながら、水道事業にも幅広く取り組む。
4. エッセンシャル・ユーティリティーズ(アメリカ)
売上高:約1兆3,707億円
水道と天然ガスのサービスを提供し、幅広い顧客層をカバー。
5. ユナイテッド・ユーティリティーズ(イギリス)
売上高:約1兆1,775億円
イングランド北西部で上下水道サービスを展開する大手企業。
まとめ
改正水道法で導入されたコンセッション方式は、民間企業のノウハウを活用する一方で、公共性をどう維持するかが大きな課題となります。水道料金の上昇や水質管理の不安、災害時の対応力低下など、住民に影響を与えるリスクを軽視してはなりません。
一方で、世界の巨大水道事業者が示すように、利益を追求する民営化の波は止まることなく広がっています。こうした中、日本の水道事業が持続可能な形で公共性を守りつつ発展していくためには、慎重な議論と規制が求められます。