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カフェでお仕事してみたい

車で坂を下りて街に出るとカフェがある。
 
田舎暮らしの私は「カフェでお仕事のようなことをする設定」に憧れていた。そう、私は大学生。カフェでお勉強は定番ともいえる。いまこそ、そのときなのだ。

 いつもより少しおしゃれに気を配り、持ち物は、この時に使っていた試験問題集。本当はコーヒーを横にPCパチパチしてみたかったのだが、なんせ自分のPCは、たぶんカフェに持ち込むにはサイズオーバーだろう。これを買った頃は持ち運び用のソフトケースに入れて皆さんこのくらいのサイズを持ち歩いていたんだけどな。たった数年しかたっていないのに。時代に置いて行かれゆく私とマイPC、同志よ!まだまだ行けるよ!頑張ろう!
だけど、今回は私がカッコツケルために、同志にはお留守番をお願いすることにした。

 さて、いざ入店。いるいる、かっこいい皆さん。みんなちょっとおしゃれで、何というのか垢ぬけて見える。ここは結構な田舎町なのだが、カフェという空間の演出はやはり凄い。
 ここで勉強していたら私もそんな風に見えるのかしら。そんな幸せな勘違いをしながらも、目的は勉強なのだからと、いそいそと問題集に取り組む。

 5分、10分、あたりで限界が来た。
全く集中できない。耳はおしゃれな音楽に、鼻はいい匂いに、肌は気持ちよすぎる空調に、そして目も常にその端で周囲の動きを追っている。これで脳だけ問題に無理やり持っていくのだから疲れないわけがない。
 コーヒーを飲みながら店内をゆっくり見渡すと、おしゃれな皆さんは周りなど一切気にならない風に静かに何事かに取り組まれている。何故そんなことができるのだろう。もう一度頑張ってみる。

 5分、10分、20分ほど過ぎた時、問題文と違う選択肢を読んでいることに気づいた。もうだめだ、時間の無駄だ。

・・・・・・ヤマに帰ろう。・・・・・・

 家に帰りいつもの勉強机と同志PC。目には遠くの山なみ、耳には鳥の声。椅子の上であぐらをかき、競馬新聞でも読んでいるのかというスタイルで選択肢をチェックしていく。

 これでいいのだ。これが自分なのだ。

 でも、楽しかった。お洒落ごっこ。
これも大学生になったからできたことだと思うと幸せだ。
めげずにまたきっと挑戦すると思う。

今度はせめてコーヒーのサイズ名は事前に学習してから行こうと思う。


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