コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて
「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」
コラム(2) 認知症の人のアタッチメントについて
この小説の基盤は、「セキュアベース 心の安全基地」なのですが、今回の薬師太郎さんにとっては、妻の通子さんがそのセキュアベースなのです。 太郎さんに限らず、認知症の人は認知機能の低下により、不安感が増幅します。それが心の混乱となり、様々な行動へと繋がっていきます。
その不安感を、太郎さんは通子さんにくっつくことで安心感を得て、ネガティブな感情を落ち着かせようとする、つまりアタッチメントを求めているのです。
アタッチメントとは元々、子どもの養育に関わる言葉なのですが、今は人が生きていく上においてとても大切なものとして捉えられています。
アタッチメントとは「不安な時に特定の人にくっついて安心感を得る本能的な欲求」という意味ですが、当然認知症の人にもそのような人が必要になります。
太郎さんは通子さんにアタッチメントを求めているのです。しかし通子さんにとってはそれが逆に負担になっています。
通子さん自身にもアタッチメントを求められるセキュアベースが必要なのです。
通子さんにとってのセキュアベース、それはケアマネジャーをはじめとしたケア従事者になるでしょう。
介護家族の会はそのものがセキュアベースであり、一人一人がアタッチメント者と言えるかもしれません。
そして太郎さんもアタッチメントの対象は通子さんだけではなく、太郎さんを支えようとする多くの人たちと言うように、複数のアタッチメント者を増やしていくということ、例えば、太郎さんにとってのセキュアベースが通子さんだけでなく、デイサービスなどに広がるのです。
因みにセキュアベースは単なる心が安心するだけの場所ではなく、そこから前へ進んでいける、まさしく「スタートレック」の言葉のように、新たなる冒険に出て行こうとする勇気をもらえる場所でもあるのです。
認知症の人にとってのアタッチメント、まさしくそのもの、或はつなげていく役割を持つのがケアマネジャーなのです。
素晴らしきかな介護支援専門員。
でもそのケアマネジャーにもセキュアベースが必要です。それがこの小説の中にあるのです。
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