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3.山小屋の住人より
「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」
第3話 「南極ゴジラを見た」
何ら関係ない場所や人たちが
いずれ繋がっていく
不思議のスタート
【今回の登場人物】
立山麻里 白駒池居宅の管理者
想井遣造 立山の友人 相談相手
鵜木幡猛 「山想小屋」の親父
山のおばば 「山想小屋」の名物おばば 猛の母親
3.山小屋の住人より
立山麻里の飲み友達であり、麻里の話を聴いてくれる存在でもある想井遣造と、その想井が関わっている山小屋の物語が今回の第3話でのもう一つの舞台となる。
これ以降、東京白駒池居宅介護支援事業所を中心とした話と、北アルプスの山小屋、「山想小屋」を中心とした話とが並行していく。
想井遣造の携帯に山小屋の親父から電話が入った。
「あ、親父さん、どうしたんですか? 」
電話の相手は北アルプスの山小屋、「山想小屋」の主人、鵜木畑猛からだった。
山想小屋は、恋生岳の肩にある小屋で、槍穂高の眺めがよいのと、その山の名前から、若い女性の登山者が多く利用する山小屋だった。
「いや~、想井さんに相談してもいいのかどうかわからんかったんだけど、確か介護の相談をする人を知ってるって言ってたよね? 」
「まぁ、知りあいはいてますけど、どうかしはったんですか? 親父さんが介護受けるん? 」
想井は冗談半分に返事した。
「違うがな。俺の母親や。」
「山のおばばのことか。調子悪いんか? 」
山のおばばとは、この山小屋の受付に座る人気者のばあちゃんで、鵜木畑の母親のことだった。
鵜木畑によると、いつも真っ先に起きてくる母親がなかなか起きず、窓口に座ってもすぐにうたた寝をしてしまうとのこと。
またトイレへ行く足もおぼつかなく、もの忘れも出だしたという。
「そんでな、ちょっと心配になってきて、山を下りて医者に行こうかと言っても、山小屋にいるいうて頑としていうこと聞いてくれへんねん。それでこんな時どこに相談したらいいんかなんてこと俺にはさっぱりわからんねん。高森君に相談してみてもいいんやけど、彼も忙しいからなぁ~」
高森はバイトでこの山小屋に入り、今は実質小屋を仕切っている青年のことだ。
「親父さん、わかりました。ではどこへ相談したらいいのか知りあいに介護に詳しい人がいるので聞いてみます。」
想井は鵜木畑からの電話を切ると、すぐに立山麻里に電話をした。
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